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異世界BBQ!

 あれもこれも食べたい!

 でも、食べられる量に限界があるのです、うわーん!

 と、バーベキューをやる度に思います。

 自分が参加したバーベキューは、焼きそば派とおにぎり派と両方派で分かれていました。

 自分はおにぎり派です。

 友人の握ってくれた新米おにぎりは最高でした!



 異世界でのバーベキュー。

 向こうの世界と何が違うのか?

 単純に食材が違う。

 似た物も多くあるが、食材の味が濃くて好ましいという嬉しい仕様だ。

 向こうにない食材も、今の所は美味しい物しか食べていない。


 トレント達が集まって、葉っぱがはらはらと落ちるほど身体を揺らして興奮しながら覗き込んでくる中で、私とスライムはせっせと準備をする。


 サクラは野菜担当。

 ローズが肉担当。

 サイが魚担当だ。


 ちなみに、リリーがタレ担当で、モルフォが麺担当。

 ルンとピュアは食べるの担当。

 ルンの上にピュアが乗っている何時ものスタイルで焼き待ち中。

 トレント達に何やら質問されて誇らしげに答えている。

 私は一応、全ての焼きを統括する担当だ。


「い、何時の間に中華そばを! ちょ! 生きが良すぎるわ!」


「ん! こっちでは『ちゅばーそ』と言うのっ! バーベキューの話を聞いてから、焼きそばは作らねば! と思って、狩りに行っていたのっ!」


 今日も麺物の生きが良すぎる。

 びっちびっちと跳ねまくるちゅばーその生地を、モルフォに押さえ込んで貰って容赦なくどうん専用包丁で切り刻んだ。


「あ! 凄い。何となくちぢれ麺になってる!」


「ん! 出番が少ないから、包丁もやる気に満ち溢れているのっ!」


 オーブンには意思があると信じて疑わないが、もしかしたら包丁にもあるのだろうか。

 幅広のどうん包丁が、ぎらぎらと輝きを増した気がする。

 麺物を出す機会も増やすとしよう。


 一山ほどのちゅばーそを切り終えた私の手から包丁が奪われて、代わりに二枚の皿が渡された。

 良い感じに焼けた肉と野菜が入っている。


「これは?」


「サクラから、絶妙な焼き加減のトメト、イモジャガ、スーナの三点セット。ローズから、ホワーンラビットにぱらりと岩塩をまぶして焼いた物。皿が空になったら、サイがスケットダラのバター焼きを用意してるのねー」


 凄く拘りの品々です、ありがとうございます!


 まずは、トメトを口にする。

 焼きトマトは初めて食べた時、衝撃だった。

 それまでは生とか煮込むとかでしか食べたことがなかったんだよねー。

 嫌味しか言わない後輩だったけど、社員義務出席のバーベキューの席で、焼きトマトを食べさせてくれたのには唯一感謝をしている。


「うーん。完熟仕様で甘いなぁ」


 トメトは青臭さがなく、フルーツトマトのように甘い。

 うっとりと堪能していると、サイのプレッシャーが凄いので、ほくほくのイモジャガととろりと口の中で中身がとろけたスーナを味わって、空いた皿を差し出す。

 

「う! 新しい皿が沢山あるから、皿の使い回しはしなくて良いのよっ!」


 それぞれのコンロの側には綺麗な皿が山と積まれている。

 食べながらトレントの間を移動するルンが皿を回収してもいるらしい。

 更に皿を丁寧に洗ってもいるらしい。

 何時からルンに、洗浄機能がついたのだろうか?

 君は、掃除機ではなかったのだろうか?

 どうやら食洗機を新しく作る必要はなさそうだ。


 肩を竦めながら、初めて食べるブルー岩塩がまぶされたホワーンラビットに齧り付く。

 口の中で驚くほど肉汁が溢れた。


「面白そうだから焼き担当にも挑戦してみたいんだけど、駄目かな?」


 ほふほふと肉の熱気を口から逃がしていると、エルダートレントが近くに寄ってきて、つぶらな瞳を瞬かせる。

 木の枝は何枚もの皿を持っていた。

 楽しんでくれているようで嬉しい。


「うーん。もうちょっと食べて欲しいかな? スライム達も、食べさせるわ! 全力で焼きまくるのよっ! って、気合い入っているから」


 私の料理を横で見ていたスライム達は、どうやら誰かに自分の料理を沢山食べさせたい! という欲求が溜まっていたらしい。

 お客様をもてなすという機会も初めてで楽しいのだろう。

 イスマエル達をもてなす時すら気合いを入れていたのだ。

 興奮が覚めやらぬのも無理はない。


「じゃあ、もう少し食べようかな? 村人達にも色々な料理を食べさせて貰ったけど、君達の料理は初めて食べる物ばかりで、どれもこれもとびきり美味しいね!」


「喜んで貰えて私達も嬉しいわ。他のトレント達も楽しんでくれてる?」


「うん。あんなにはしゃいだところは初めて見るね。スライム達とは既に完全な意思の疎通ができるようになったみたいだよ」


「おぉ! 美味しい物の力は偉大だね」


「後は、あれだね。君達の懐の広さに感心して信頼を置いているんだよ。村人達と一緒に心は豊かだけど貧しい食生活を送っていたからね。こんなに多彩の美味しい料理を出して貰って、ありがたいやら、申し訳ないやら、嬉しいやら……心から感謝するよ」


「……お墓を作ったら、新しい料理はお墓に供えるようにしましょう。で、時間が経ったら貴方達に食べて貰えば、貴方達も村の人達も嬉しいんじゃないかしら?」


「君のいた世界は、そこまで死者を大切にするのかい?」


「程度の差はあるけどね。ご先祖様は大事にしなさいって教えは普通にあるかな?」


 愛自身、名前の件以外にも両親には色々と思うところはあったが、年に一度は墓参りもしたし、処分しようか迷った仏壇も何だかんだで手入れをし、お供え物も忘れなかった。


「良い風習だな。こちらはそこまでのことは……恐らく上流階級の一部だけがやっているのだろうね。基本的に食生活が豊かではないからさ」


「そうなんだ? スライム達が優秀なのもあるけど、結構野生の野菜や肉魚は充実している印象があるけどね。あ、ありがとう。これは?」


 エルダートレントと話しながら食べていた皿が何時の間にか空になっているのを見計らったかのように、リリーが料理の盛られた新しい皿を用意してくれた。


「ネギタマは、リリー特製焼き肉だれ。リンギエは、バター醤油。ポークは脂がすっごいので、そのままで。ぽしゃーん魚は、さぬーき風白出汁をちょっと振りかけたのねー」


「す、凄いねぇ。何かバーベキューの領域を超えている気がするんだけど?」


「まだまだなのねー。愛の知識には、燻製とかローストビーフとかを作るなんていうのもあるのねー?」


 私の頭の中の、どこからそんな知識を得たのか解らないが、それらはかなりの上級者編だと思う。


「エルダートレントさんは、何が気に入った?」


「キノコ類だなぁ……このバター醤油? 最高だと思う!」


 見れば皿にはキノコ各種が山と積まれている。

 木と言えばキノコとは密接な関係なので、何となく納得だ。

 

「この味付けなら、ポックリとかケタケタとかも食べられそうな気がしてくるね!」


「き、危険な名前がするキノコっぽいから、止めておこうね? 止めておこう、ね?」


 つぶらな瞳が怪しく光るので、大切な事は二度言う勢いで止めておいた。

 エルダートレントともなれば例え毒キノコを食べたからといって即死はしないと思うが、体調を崩して欲しくない。

 怪しい物に挑戦したい気持ちは解らないでもないが、その辺は譲らない方がいいはずだ。


「そうだ! ねぇ、皆。エルダートレントさんが、焼く側に回ってみたいって!」


「じゃあ、私と交代して欲しいわ! その前に! 肉を焼くコツを伝授しますわよ!」


 ローズがしゅたっと手を上げる。

 肉食なローズ的には、そろそろ限界じゃないかと思っていたところだ。


「望むところだ。君の満足いく焼き加減ができるように、是非とも伝授してくれたまえ!」


 エルダートレントもしゅたっと勢いよく枝を上げている。

 バランスが崩れて落ちそうになった皿は、他のトレント達が見事な連係プレーで回収してくれた。


 ローズとエルダートレントが仲良く肉を焼いているのに心が引かれるのか、何人かのトレント達がスライムの側へ近寄っていき、上手な焼き方を伝授して貰おうと、おねだりをしている。

 トレント達にも個性があるらしく、枝を手のように擦り合わせている者、幹を深々と折っている者、まず美味しかった感想を怒濤のように語る者、上から目線でふんぞり返って強要しかけた者は近くのトレントに引き摺り戻されていた。

 

「ツンデレなのかしら?」


 上から目線のトレントは、他のトレントから怒られて反省しているようにも見える。


 アンタは、何時もそんなんだから誤解されるのよ! 

 親切を仇で返すって、アンタみたいな奴のことを言うのよ!


 で、でも!


 で、でもも、へったくれもないわぁ!

 私もいい加減アンタの尻拭いは、こりごりなのよぉ!


 尻拭いって、ひどっ!


 強い感情だからなのか、しっかりと二人の会話が聞こえてくる。

 間に割って入るべきか、静観するべきか。

 思わず腕を組んで考え込んでしまったところに、それは現れた。

 


 バーベキューは、何も食べずにつけることも多いですが、塩だれが好きです。

 最近タレの味を強く感じるので、自分で調合すべきなのか迷い中……。


 次回は、迷いラミア。 の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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