お風呂で水分補給。
前回更新は10月でした。
どちらの作品も最低月一は更新したいのですが、ままならないものです。
同時進行の旦那様がちょうど猫足バスタブの話を書いていたので、妙にリンクしている! と一人盛り上がってしまいました。
何となしに私達が泊まるようにと言われた小屋に向かいつつ、スライム達の楽しそうな様子に微笑を浮かべる。
「ご飯は当然BBQよね!」
「「B・B・Q! B・B・Q!」」
ローズの主張にサイとモルフォが賛同する。
三人で肩? を組んで左右に揺れ始めた。
どこの酔っ払い? そんな雰囲気が漂っているが、可愛いので良しとしておこう。
「バーベキューも良いと思うのですが、水分補給をした方が良いとも思うのです」
「あー、結局お茶できなかったしね」
「後は全身何となく血生臭いので、お風呂に入るのも捨てがたいのです」
血臭は未だ村中に漂っている。
掃除魔法を使ったところで、根本的な解決にはならないような気もした。
やはりを消臭魔法を独立させた方が効果は高いだろうか? と考えるも、村中を浸食している血生臭さの払拭には別途思うところがあるので、先に自分達の身体を綺麗にさせる方向に気持ちが傾いた。
「じゃあ、お風呂に入りながら水分補給もする方向で!」
「皮膚と口からの水分摂取なら完璧なのね-」
「じゃあ、お風呂セットするねー。その間、何を飲みたいか考えておいて下さいな?」
円陣を組んで猫会議のような雰囲気を醸し出しつつ相談するスライム達は可愛らしくて、脳内で思いっきり悶えた。
元気な返事を聞きながら風呂の準備をする。
風呂魔法のお陰で簡単この上ないのが大変ありがたい。
「取り敢えずレベル四発動で大丈夫かなー?」
全員が入っても余裕のバスタブが設置できるバスルーム。
ちなみにバスタブは日本式で深めの四角型。
ゆっくり浸かりたい時は、スライム達がこぞって枕やクッションになってくれる。
全く以て愛情豊かで面映ゆい。
着ている物を脱いで、バスルーム機能に付いている脱衣籠の中に纏めて放り込んでおいた。
「……どうせなら、洗濯魔法もかけとくかー。レベル七。うーん。一応血が付いているかもしれないからレベル八発動で!」
脱衣籠の衣類が空中に生まれた水の玉に吸い込まれていく。
ぐるぐると衣類が回るのを腰に手をあてて仁王立ちで眺めてから、バスタブの中に肩まで浸かった。
「う! 決まったのよ!」
サイの声と共にスライム達が飛び込んできた。
「わぶっ!」
思い切り頭からお湯をかぶる嵌めになったが、リリーが顔面に張り付いて、すぐさま水分を拭い取ってくれたので、被害は最低限に止まった。
「申し訳なかったのです。つい、興奮してしまったのです」
サクラの謝罪に他のスライム達も側に集まってくる。
反省しているらしく、皆揃ってしょんぼりしてしまった。
「大丈夫だから気にしないで欲しいなぁ。リリーがすぐ綺麗にしてくれたしね。全く以て問題ありません! で! 飲み物は何にしたの? 嬉しいことに私好みの飲み物なんでしょう?」
「それは当然なのよ! もちの、ろんなのよ!」
「ん! セントジョーンズワートのハーブティーにしてみたの!」
「おー! 随分とぴったりのハーブがあったねぇ。何時の間にストックしてたの?」
鬱時の薬として使う国もあるほど、リラックス効能の高いハーブだ。
微かな苦味を感じるが、すっきりとした爽快感もある。
ニードルビーのハチミツをたっぷりと入れて堪能したい。
「モルフォがハーブの群生地を色々と探してくれたのねー。他にも色々あるのねー」
「おー! さすがはモルフォありがとね!」
「ん! 皆に喜んで貰えて嬉しいのっ!」
「では、ローズが注ぐわ!」
赤い触手がうにょりと伸びて、陶器製の保温機能付きポットとティーカップが空中で踊る。
陶器に描かれているスライムマークが既に赤く染まっていた。
ティーカップにセントジョーンズワートのハーブティーが存分に注がれる。
「う! 甘さはニードルビーのハチミツがお薦めなのよ?」
「さすがは、サイだね! 私もそう思ってたんだ-」
同意すればサイが、何時の間にか制作したらしいティーカップとお揃いのハニーポットで蜜を注いでくれる。
「くーるくる。あ、それ、くーるくる」
時々料理を作っている時に無意識に出てしまう鼻歌を真似されて色々と居たたまれないが、歌うサイが可愛いので、サイは当然他の子達にも動揺を悟られないように耐える。
マドラーも当然とばかりにお揃いの陶器製。
私のスキルならいざ知らず、この子達がどうやって同じ物を作るかは謎だ。
腰を落ち着けて生活できるようになったら、そんな話もしてみたい。
「う! どーぞ、なのよ!」
サイの満足いく甘さになったらしい。
口に含むと甘さに全身が痺れた。
普段なら甘すぎただろうが、今はちょうど良い塩梅だ。
自分で想像していたよりも大分消耗していたらしい。
「くぅー! 甘さが全身に染み渡るぅ!」
「お疲れさんだったのねー。お花畑の相手は想定以上に疲れるものねー」
リリーが労ってくれた。
他の子達も、うんうんと頷きながら、同じようにカップを傾けている。
「愛はこの後、どうするのです?」
「BBQ!」
「それは楽しみです。でもその後の話なのです」
「あー。せっかくだから、この村を復興して私達の村にできたら良いなぁとか?」
盗賊村になっていたと証明できたなら、殲滅したともなれば問答無用で村長になっても良い気がしている。
しっかりとした拠点は前から欲しいと思っていた。
村ほど大きい必要はなかったが、これはちょうど良い機会の気がするのだ。
整備は必要だが、村として土台ができている分、一から作るよりも断然楽だろう。
気になっている農業も十分できそうだ。
「愛が望むなら、全力で頑張るのね-」
「問題ないの?」
「病人が起きて、聞き取り調査をできたら確定できるのね。たぶん、大丈夫なのね。推測だけどね?」
と、リリーの語るところによると。
盗賊に占拠された村は、何かしらの旨味があれば討伐部隊が出て盗賊を殲滅し、新たな村長を派遣するらしいけれど、旨味がなければ基本放置らしい。
この村のように辺境にある場合は、モンスターの強さや食料の乏しさ、村人以外の出入りの少なさなどが要因として、村を維持できず自滅する事が多いせいもあるようだ。
「旅人でも商人系は勘が良いから、この村が盗賊村だって認識して逃げおおせたりもしたと思うのね? そうすると、恐らく。この村を保有する領主は、盗賊村と断定して放置を決定したんじゃないかと思うのね?」
「なるほどねー」
「まぁ、きっちりと村を運営していたら、その内領主の使い的な何かがやってくると思うから、その時に交渉すれば問題はないのねー」
交渉はスライム達に任せたい所存だが、私がやるしかなさそうだ。
面倒だが、それも必要な事だろう。
最悪、折角育てた村だが、捨てる、という選択肢もある。
私は、この子達がいればどこでも生きていけるのだから。
「先の長い話なのです。まずは、きっちりと村を作るのです!」
「う! 農業楽しみなのよ!」
「ん! この村は農業に適した村なのっ」
「そうよねー。本当、彼奴らって勿体ないことしてたわよね! この村には彼らがいるのに気が付いてなかったのかしら?」
ああ、どうやらスライム達も気が付いているようだ。
そう。
この村を拠点にしたい最大の理由がそれだ。
この村には、トレント。
それも、エルダートレントが居るようなのだ。
周囲の木々を鑑定しても、木、としか出ない。
だが、それが怪しい。
本当にただの木であるならば、もっと詳しい鑑定ができるはずなのだ。
例えば……。
モミの木
種子は小動物が好んで食べる。
クリスマスツリーとして重用される。
小屋を作るのに適した木材。
といった具合だ。
今までは特に鑑定をする者がいなかったので、ばれなかったのだろう。
今後のためにも、彼等には上手な情報操作方法を教えておきたいところだ。
人間よりも彼等と友好関係を築きたい自分は、やっぱり異端なのだろうが、その考え方を変えるつもりは毛頭ない。
過去の経験から、人ではないモノとの方が信頼関係を築けるのだから。
「トレントって、バーベキュー食べられるかしら?」
「たぶん美味しく食べられると思うのねー。この世界で流通している知識では、トレントは綺麗な水しか飲まない、とされているけど、それは正しくないのねー。正確には、芽が出るまでは水しか受け付けない、なのねー」
リリーの知識は何処までも広く深い。
アカシックレコードに、実は接触できるのねー! とか言われても、素直に信じてしまいそうだ。
「じゃあB・B・Q! な接待で、楽しく共同生活を送る方向で話を進めたいけど……大丈夫そう?」
「無問題だと思うのです」
「ん! トレントと親しくなれば、綺麗な水の入手には不自由しないのっ!」
「う! どんな荒れた地でも水脈を見つけられると、有名なのよっ!」
「美味しい農作物が仕上がるフラグが立ったわね!」
皆賛成らしいので、良かった。
バスルームでの声は、特に防音を施していない。
トレント達も、この会話を聞いているだろう。
さて、どんな対応をしてくれるのか。
実に楽しみだ。
*今回ステータスの変動はありません。
喜多愛笑 キタアイ
料理人 LV 3
スキル サバイバル料理 LV 4
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV∞ 愛専用
命止魔法 LV3 愛専用
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
友人宅が超素敵な古民家で、広い庭の一角でBBQをやった楽しい記憶を思い起こしつつ、書きたいなぁ。
炭おこしができる人って、尊敬しますよね!
自分は食材下準備係基本です。
次回は、つぶらな瞳でした!(仮)になります。
お読みいただいてありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。