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因果応報とスライムも言う。

前回以上に猟奇的に人が痛めつけられる描写があります。

お読みの際は、ご注意ください。

苦手と感じたら、即座に読み止めることをオススメします。

ちょっとだけBL発言が出てきます。



「くそっ! 痛いぞ! イスマエル! どうして我が痛い思いをしなければならないんだ? お前が護れないのが悪いんだぞ!」


 衝撃で尻餅をついた……たかだかその程度の痛みでも初めてだったのか。

 動揺して自ら殺したイスマエルに罵声を飛ばしている。

 助けを求めるのならば、せめてBL妄想でもしてやるものを。

 この男には妄想する価値すらもない。

 自己顕示欲が強すぎる奴に対して一番応える反応は、きっと忘却の一択だ。


「おい! イスマエル! 何をしているんだ! 早く我の痛みを消し、我に痛みを与えた者どもを殲滅せよ!」


「……いい加減に目を覚ましたらどうなのです? イスマエル殿は貴様が殺したのではないですか?」


「だよねー。自分が殺した相手に懇願の色すらない命令とか、ないのねー」


「最悪の手段として、我が仇を討つぞ! くらいは言って欲しかったのよ、ええ主従萌的に」


「んっ! 最悪すら選べない馬鹿なの!」


「う! 同意するのよ!」


 スライム達が怒濤のように詐欺師を追い詰めていく。

 私の出る幕などない。

 詐欺師もきっと、私よりもスライム達に追い詰められる方がダメージ甚大だろう。

 ローズの発した不穏な内容に気が付いたら更に追加ダメージを与えられそうだが、そこまで望むのは酷というものか。


「き、貴様らごとき弱小モンスターに! 貶められる我ではないぞ! さぁ、イスマエル! いい加減にしろ!」


「もぉぉおお! いい加減にするのは、アンタよ! アンタしか真っ当に動ける人間はいないんだって自覚できないの? 子守をしてくれたイスマエルは死んだの。アンタが殺したの! だからせめてもの贖いに! 私を助けなきゃ駄目なのよっ!」


 自分勝手どころではない娼婦の言葉だったが、同レベルの人間だからだろうか。

 詐欺師には話が一部だけ理解できたようだ。


「イスマエルが死んだだと? 馬鹿な! 奴が我を置いて死ぬはずがなかろう!」


「はぁ? アンタが殺したんじゃん! 自分だけ美味しい物食べて許せないとか、冗談みたいな理由でさぁ!」


「う、嘘を吐くな! お前は何時も嘘ばかりじゃないか!」


「詐欺師のアンタが嘘吐き呼ばわりとかないわー。誰よりもアンタには言われたくないわー。って言うか! 早く助けなさいって、何度言えば解るのよ!」


「黙れ、淫乱がっ! 今のお前を助けられる者など、この世のどこにもおりはせぬ! 我が帝国の優秀な者達でも無理なものは無理なんだ! 自分の身体をよく見てみろ!」


 自分がどれほどの残酷な絶望を放ったのか、詐欺師には解っているのだろうか。

 娼婦には、声を大にして言ったところで、どこまで話が通じるか解らないのだとしても。


「ひぃぃぃ! 何これ! 何これ! なんなのよー!」


「ふん! 我を詐欺師呼ばわりする女にお似合いの因果応報じゃないか! あはっ、あはっ、あっはっはっはぁ!」


 何と詐欺師は娼婦を指差して大笑いしている。

 これで狂っていないのだから悍ましい。


「あし! 足がない! 私の美しい脚線美が! 嫉妬するには大概だわ、小娘ぇ! 腕っ! 手まで消えるとか! そ、そうよね! 幻覚なんだから、痛く、痛いぃいいいい!」


 娼婦は両足を欠損し、右手の肩から指先までを失った。

 指の骨が剥き出しになっている右手を残しているところが、えげつなくて素晴らしい。


「その無様さは、いっそ見事だ! 褒めてつかわす! 今のお前みたいな芋女いもめを高級娼館で見たな!」


「芋女じゃない! 芋女は四肢欠損した芋虫みたいな人間じゃない! 私には、まだ、右手が! ないいっっっっ!」


 詐欺師の言葉に遠い目をしてしまった。

 この世界でもあるらしい。

 疎ましいことこの上もない、業が深すぎる性癖を満たせる場所が。


「……う! 迷ったけど右手も解体したのよ! 芋女って……初めて聞くのよ? 皆は詳しく知ってるのよ?」


 サイに尋ねられたので、思わずリリーを見る。

 目をそらされた!

 少なくともリリーは知っているらしい。

 反応からして、サクラとローズも理解してるようだ。

 サイとモルフォが仲良く首を傾げている。

 

「世の中にも知らなくて良い事があるんだよ、サイ」


「そうなのねー。サイとモルフォには、そのままでいて欲しいのねー」


 殺伐とした光景を前にする会話とは思えない、ほのぼのしたやりとり。

 更に相槌を打とうとすれば、詐欺師の絶叫が上がった。


「なっ! なっ! なんなんだ!」


「あー? あはっ! あはははっ! ざまぁみろ! 私を助けないんだから、当然の報いだ! 因果応報だ!」


 サクラがゆっくりと詐欺師の捕食を開始したらしい。

 痛みに呻かれる鬱陶しさの排除を優先したようで、詐欺師は自分の足首までが白骨化しているのに気が付かなかったようだ。


「足っ! 白骨化だと? 有り得ぬ! こんな現象は有り得ぬ! スライムにこんな上級モンスターのような所業ができるはずがないっ!」


 確かに一般的なスライムにここまでの殺傷能力はない。

 そもそも子供でも注意すれば簡単に殺せる最下級のモンスターなのだ。

 もしかしたらうちの子達のようなスライムも存在するかも知れないが、知る者はたぶん極々一部で、関われる者はもっと少ないだろう。


「だから! 幻覚だって! ああぁ! やめて、そこは! そこは壊さないでぇ!」


 娼婦が自慢していた身体の中には、男を銜え込んで離さない場所もあった。

 サイは性器を内側から破壊したようだ。

 壊された女性達から見れば、同じ目にあっただけの話。

 自分がしでかしたことが、そのまま、自分に返ってきたのだ。

 さて。

 まだ悲劇のヒロインを気取れるだろうか?


「ああ、もうだめ。こわされちゃった。ぜんぶ、こわはれちゃ……」


 口の中がくぱりと開かれて、みるみるうちに歯が全部溶かされた。

 歯がない口による男性器への奉仕は、得も言われぬ心地良さだという。

 純真無垢なサイがまさか、下のお口が駄目なら上のお口でご奉仕すればいいよ! と思ったはずもないだろう。

 しかし娼婦は目を輝かせた。

 

「ほれなら! ほれなら、おとこを、よろこばせられる、だいじょうぶ、わたしはまだ、いきていられる、すてられない!」


 今の娼婦に性欲を抱く者は皆無に等しい。

 詐欺師ですら、徐々に白骨化が進んでいく自分の足下と、娼婦の身体を交互に凝視しながら恐怖を宿し始めている。


「わらしは! うつくしいのよ! わたしのまえには、どんなおとこもひれふふのよ!」


「ないのねー。今の娼婦はスライムにすら、馬鹿にされるのねー」 


 リリーは全身を透明化させる。

 初めて見るスキルだ。

 まるで鏡のように透き通った表面に娼婦の無残な姿が映し出される。


「ほら? どうなのね? これでも、男を銜え込んで離さないでいられるのね?」


「え? これ、わたしぃ? うそ! うぞよぉ! わたしは、うつくしいのよっ! おうぞくをまどわせるくらいに、うつくしいのぉぉ!」


 己の姿を睨み付けたまま限界まで見開かれた眦から、血が一筋流れ落ちる。

 歯が全てなくなったのがよく見えるように大きく開かれていた口は、そのまま固まった。


「ん? 憤死なの?」


「う! 自分が二度と男を惑わせられないと解った上での憤死なのよっ! 完璧なのよっ!」


 世の中の全てを恨むような、一度見たらなかなか忘れられなそうな怨念の眼に怯える私ではないが、詐欺師は茫然自失状態に陥ってしまったようだ。


「あらあら。娼婦を見習って貰わないと困るのです」


「ひぐああああああ!」


 切断していた痛みの回路を繋げたらしい。

 目を剥いて泡を吐き出した詐欺師に、サクラは大慌てで再び痛みを遮断する。


「想像以上に弱っちいのねー」


「イスマエルが守っていたからだと思うわ! 主従萌-」


「まぁ、得てしてDV野郎って痛みに弱いみたいよ?」


 既に膝までが白骨化している。

 膝から上は寂れた村の長としては豪奢すぎる衣装を纏っているので、滑稽で仕方ない。


「わ! 我を助ければ、思いのままの褒美を取らすぞ! 我は!」


「既に存在すら消された大国の王子。誰が褒美をくれるの?」


「嘘を言うな! 我はジャクロット王国の第五王子っ!」


「現在公式で発表されている第五王子様は、オビディオ君なのねー」


「お、オビディオは能なしの第六王子っ!」


「貴様の悪評が広まりきったから、ジャクロット王は決断したのです。オスカルは我の子ではなかったと。お母様は愚か一族郎党皆殺しにされたようです」


「本当は、知っているんでしょう? サンダリオとか、情報収集上手そうだったもんねー」


 顔色どころか髪の毛まで真っ白になった詐欺師は、全身を震わせながら慟哭する。


「我はっ! 捨てられてなどおらぬ! 父上は! 我が手柄と共に凱旋するのを待っておられるのだ! お前! お前を連れて行けば! 希少なスライムとシルコットンマスターと繋がりがあり、あれだけ美味な物を供せる者を連れていけば! 我は再び第五王子として、王族の一員に戻れるのだ!」


 案の定、王族でなくなってしまった自覚はあったようだ。

 盗賊村で部下をこき使いながらも再起を図っていたのだろう。

 その努力を王子であった頃に発揮できていれば良かったのに。

 こんな風に見当違いの努力をされたら、最終的には切り捨てられただろうけれど。


「ん! その身体じゃ無理なのっ!」


「う! アンデット扱いで排除されるのよっ?」


 詐欺師の身体は既に腹部までが白骨化している。

 ゲームや小説でも余り見ない猟奇的な状態だ。


「も、戻せ! 我の身体を元通りにしろっ! できるんだろう、貴様らならっ!」


「できるのねー」


「なら!」


「でも、しないのねー」


「何故だ!」


「……それがただのオスカルにとって分相応の死に様だから。今まで貴方が詐欺行為で酷い目に遭わせてきた人々を、元通りの生活には戻せないでしょう? 今すぐに被害者一人残らずその生活を幸せなものにできるのならば、貴方は助かるわ」 


「できるぞ! イスマエル! できるなっ! イスマエル! 返事をしろ!」


 ここにきてもまだ頼っている。

 地獄にいるだろうイスマエルは、これで少しは報われただろうか。


「イスマエル! 何故いない! 我が……殺したから、いない?」


「そうよ。だから貴方は、貴方だけの手で、誰の力も借りずに、成し遂げねば駄目なのよ」


「だ、大丈夫だ! だから、ここから解放しろ!」


「……サクラ」


 名前を呼べばサクラは詐欺師を吐き出して距離を取った。

 吐き出された詐欺師は地面をコロコロと転がって、木の根元にぶつかる。

 勢いに負けた下半身の骨は粉々に砕けてしまった。


「さ、頑張ってね?」


「ま、待て! 何処に行く!」


「え? 絶対無理だから、見届けるまでもないと思って。お腹も空いたことだし、食事でも取ろうかと」


「我にも! 我にも食べさせろ!」


「……その身体じゃ無理じゃない?」


 既に胃はない。

 サクラの溶解は離れても継続しているようだ。

 何時の間にか胸下までが白骨化した。

 食事が終わる頃には、全身余すところなく変化を完了させるだろう。


 誰にも看取られずに、じわじわと己の身体が白骨化していく恐怖を味わえばいい。


 この期に及んで、助けを呼び続ける詐欺師の声が遮断される。

 ローズが気を利かせてくれたのだ。

つるりとした身体を撫でながら私は、詐欺師に背中を向けると、彼の姿が見えない場所で食事の準備を始めようと足を進めた。

 



 *今回ステータスの変動はありません。



 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 3


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用 

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化 

 称号 シルコットンマスター(サイ) 




やっとこさ盗賊殲滅完了です。

ご飯回の出番が作れなかったので、気合い入れて、殲滅おめでとう食事会をしたいところ……。

と思ったのですが、食事会の前に汚れた身体を綺麗にしないとね! ということで。


次回は、お風呂で水分補給。(仮)になります。


お読みいただいてありがとうございました。

引き続き宜しくお願いいたします。



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