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同情の余地もなし。

さくさくさくっと人が死にます。

一部に猟奇的な会話があります。

想像力の豊かな方は特にご注意ください。

前回更新が6月で驚きました。

ホラー企画への気力が、常に保たれていればいいのにと思います。



 まぁ、曲がりなりにも王族として生まれたにも関わらず詐欺師の職業を得るくらいだ。

 口だけで人を煙に巻き生き長らえてきた手前勝手な屑なのだろう。

 サンダリオはさておき、ひたすらに忠誠を誓ってきたイスマエルは不憫だ。


「おい! 早く家へ迎え入れろ! 王族の我が食べてやると言っているんだ! 全く初めて嗅ぐワインの匂いまで漂わせおって! こやつらに与えた物より高級な物を饗さねば許さなんだからな!」


『許される必要など、どこにもないわ!』


 肩の上に乗ったローズが、鼻? を鳴らしている。


『随分言葉遣いがおかしくなっているのです。人外による精神汚染で色々と判別がつかなくなっているのです』


『んっ! 王族の称号を剥奪されているのに名乗るとか馬鹿なのっ!』


『うっ! 所詮は詐欺師の戯言に過ぎないのよっ!』


 詐欺師はやっぱり狂っているらしい。

 そして、それ以上にお馬鹿らしい。


「早くしないかっ!」


「そうよ! 早くしなさいよ! 全く、貴女のような子供には似合わないその服も私に献上しないと許さないわよ!」


『……そもそもサイズが合わないと思うのです』


『なかなか良い突っ込みなのねー。せっかくだから、愛。命止魔法の練習をするといいのねー』


「あー。だったらもっと残して置けば良かったかしら?」


 モンスター相手に戦闘をした結果。

 命止魔法はレベル3まで上がっている。

 

「サクラー、あいつらのレベルってどんな感じ?」


 まだまだ育っていない命止魔法には制限が多い。

 危険を避けるには、レベルに応じた対応が必須だ。


『レベル50越えが詐欺師と娼婦。レベル30越えが5人。レベル10以下は瀕死の女性二人で、他はレベル20以下なのです』


「じゃあレベル2と3でさくっと人数を減らしながら、詐欺師と娼婦を叩き潰す方向で」


『ん! 人数減らしている間に、女性を助けるといいと思うの!』


『う! 傷ナオールポーションと栄養剤で一命を取り留められるのよ!』


 女性二人は恐らく浚われた挙げ句、性的暴行を受け続けたのだろう。

 30人もの盗賊達相手に、女性三人は少なすぎる。

 娼婦は本人も楽しんでいるようだが、女性二人に生きる気力が残っているかどうかが問題だ。

 心身完全回復したとて、陰惨な記憶は残ってしまう。

 何かにつけて思い出してしまうはずだ。


『助けたくないなら、別にそれでもいいわ! 今は瀕死状態だから解らないけど、回復した女性が良い人とは限らないしね』


『そうなのねー。恩知らずの可能性もあるから、愛が決めて良いのねー』


 助けるか否かを迷っていると思われたらしい。

 スライム達は愛の性根を見抜くのだ。

 そして、選択を委ねてくれる。

 更には決して、選択結果を否定しないだろう。

 それが、どんなものであっても。


「そう、だね。助けてから考えましょう。落ち着くまで寝ていて貰えばいいしね」


『薬を飲ませても、しばらくは起きられないと思うのです』


『ん! たぶん盗賊殲滅しても、寝たきりなの!』


 多少の消耗であればポーションや栄養剤を飲んで程なく回復できるだろう。

 だが消耗の激しい彼女達では、サクラとモルフォの言うとおり即座に快調とはならないはずだ。

 案外とちょうど良い薬系の検証ができるのかもしれない。

 リアル人体実験を自分がする羽目になるとは思わなかった。

 魔法の検証と薬の検証は、私の中で何となく重さが違うようだった。


 溜息を吐いて切り替えてから、命止魔法を発動させる。

 魔法は無詠唱でも発動するけれど、イマヒトツ魔法が身についていないので敢えて詠唱するようにしていた。

 自分がどんな魔法を発動しているのか、きちんと認識した方が効果も良くなるだろうという思惑もある。


「命止魔法レベル2発動。同時に命止魔法レベル3発動」


 どこからともなく絶叫が聞こえた。

 一つではない、複数だ。

 詐欺師や娼婦達にも動揺が走る。

 絶叫がまさしく死の断末魔だったからだ。


「ん? 重症だと即死になるのかな?」


『命止魔法の定義は何分以内って設定されているから、当然即死もありえるんじゃない? 最高設定時間目一杯までかかる方が、むしろ少ない気がするわよ』


 ローズに言われて納得する。

 早く逝ってくれる分には大変宜しい。


 理想に近い感じで暴れている奴等の動きも止まったので、抜かりなく施錠をお願いして、ついでに結界も張って貰って玄関を出た。


「お! おい! 我の命令が聞けぬのか! くっそ! 止まれ! 止まらぬか!」


『詐欺師の言葉を聞く愚か者なんて、ここにはいなのねー』


 リリーが軽くお尻? を突き上げてふりふりと動かす。

 他のスライム達も倣った。

 ちなみに、凄く可愛い。


「くっそ! スライム如きが我を馬鹿にするなぁあああ?」


 こちらへ食ってかかろうとした詐欺師は、娼婦含め家へ雪崩れ込もうとした団体に弾き飛ばされた。


「な、何で扉が開かないのよ! きゃあああ!」


 娼婦も結界に弾かれて吹き飛んだ。

 パンツが丸見えだ。

 カボチャパンツで、色は深紅だった。

 思わず生温かい視線を向けてしまう。


「……真っ赤なカボチャパンツで興奮できるんだ……」


 遠い目をすれば、スライム達がぽんぽんと全身を使って優しく宥めてくれる。

 

 モルフォの先導に従って、女性が閉じ込められている小屋へと足を運んだ。

 近付くにつれて、腐臭が酷くなってきた。


「いきなり小屋を綺麗にして、即死とかないよね?」


『うーん。微妙なのです。私達が薬を飲ませてきますから、その後で掃除魔法を発動させるといいのです』


「宜しくお願いします」


 臭いが酷くて近付く気力が萎えてしまったので、ローズ以外に任せた。

 ローズは当然のように護衛だ。


「は! どうした? なんなんだ! どうしてお前らが突然死ぬんだ?」


「嘘でしょ? ちょっと! 起きなさい! どきなさいよ!」


 命止魔法の効果は上々らしい。

 レベル20以下の盗賊達が全滅したのだろう。

 この調子で、さくさくと他の盗賊達にも逝って欲しいものだ。


「しかし……凄い臭いだなぁ」


 小屋から漂ってくる臭いは一向に衰えない。

 こんな酷い臭いを嗅ぎながらも欲情できるのは、盗賊達の鼻が既におかしくなっているからだろう。


『臭いの遮断に特化した結界に切り替えてもいいわよ?』


「うーん。ローズに頼りっぱなしなのもなぁ……これって掃除魔法で何とかならないかしら?」


 掃除魔法の詳細を頭の中に思い浮かべる。

 ふと、思い至った。


「掃除魔法レベル8発動。消臭効果強めで!」


 範囲指定できる掃除魔法を発動させてみた。

 自分の身体がぴったりと収まる箱を想像したお陰か、一瞬で悪臭を消せた。


「おー! 成功した」


『さすがは愛ね! 消費MPがすっごく抑えられているわ!』


「MP∞だから、イマヒトツありがたみが薄いけどねー」


 それでもまぁ、エコ仕様なのはいいなぁと思ってしまう貧乏性は、一生抜けなさそうだ。


『お待たせなのねー』


 スライム達が戻ってきたので、早速小屋にレベル10の掃除魔法をかける。

 所要時間は五分。

 待っているうちに詐欺師と娼婦以外は全滅しているだろうと頷いて、くるりと背後に向き直れば、立っているのは既に二人だけだった。


「わぁ、呆気ない」


『ん! レベルは上がったの?』


「残念ながら、まだ無理みたい」


『そろそろ上がるかしらとか、思ったんだけどねぇ?』


『う! 詐欺師と娼婦をやっつければ上がると思うのよ!』


「うーん。でも命止魔法だと簡単に死んじゃうじゃない? こいつらには、もっとこう絶望して欲しいんだよねぇ……」


 詐欺師は、忠義の者を己の欲望に任せて殺したのが許せない。

 娼婦は、単純に、自分本位過ぎるその性根が許せない。


『それなら、私達がじわじわ殺すのです』


『う! 生きたまま解体とか、良いと思うのよ!』

 

『だったら、娼婦を生きたまま解体しながら、それを見せつけつつ、足から時間をかけて詐欺師を捕食する感じで完璧なのね?』


 ここが王都であれば、生き恥をさらさせるという手もあったけれど、こんな田舎では観客がいないので意味が無い。

 女性二人になって貰うという手もあったが、彼女達のトラウマをダイレクトに刺激してしまいそうだから止めておいた方がいい。


「じゃあ、それでいこうかー。二人とも宜しくね?」


 死屍累々の中、ようやっと自分達しか戦える人間がいなくなったのに気が付いた二人が早速逃亡の体勢を取った。


「逃げたところで、逃げおおせるはずも無いだろうにねぇ?」


 私の言葉にスライム達は二人を追うのを止める。

 戻ってくるのを待つ気になったらしい。


『どうせすぐに戻ってくるのね? 愛は小屋の中の様子を見て待つと良いのねー』


「そうね。掃除が完了してなくても、腰を落ち着ける程度にはなってると思うし」


 病人がいるので、念入りな掃除をする意思を乗せた。

 そろそろ部屋自体は綺麗になっているはずだ。


『ん! 彼女達の身体を洗ったり、着ている物やシーツなんかの洗濯をした方がいいの』


「あー忘れてた。そっちが先だね」


 まぁ、どちらも時間はかからない。

 どうせ小屋にも結界を張って貰うから、おめおめと逃げ帰ってきた二人に惑わされもしないだろう。


『う! 彼女達を綺麗にしたら、お茶にするといいのよ!』


 たいした労力ではなかったが、身勝手な言い分に精神的な消耗は少なくない。

 私はサイの提案に頷きながら小屋の中へと足を踏み入れた。



早いところ詐欺師と娼婦のざまぁまでいきたいものです。

好きな作家さん達のように、怒濤の言葉責めができればいいなぁ。


次回は、相応の末路(仮)になります。


お読みいただいてありがとうございました。

引き続き宜しくお願いいたします。

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