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ここはステーキ一択で! 乾杯!

本来の21話に当たる『ここはステーキ一択で! 乾杯!』の話が抜けておりましたので、挿入しました。

話が微妙に通じてなくて失礼しました。

読み返して気が付いた次第です。

この後は、22話『ここはステーキ一択で! 食べますよ!』、23話『甘い物は別腹のようです。』と続きます。




 こんこんとドアがノックされる。

 ドアの近くに侍っていたローズが、開けるわよ! と言うので、頷いた。

 ゆっくりとドアが開かれる。

 詐欺師も真っ青の貴族的雰囲気を纏った二人が顔を覗かせた。

 文官風サンダリオと武官風もしくは騎士風イスマエルだ。

 しみじみ詐欺師の下にいるのが勿体ないなぁと思う。

 どんなに改心したとしても、罪が深すぎて世間的には許されないだろう点も含めて。


 背後から押し入ろうとする有象無象の中に、娼婦と詐欺師の姿を見つけて呆れる。

 二人とも目が血走っていて鼻息が荒い。

 当然のように中には入れない輩を、サンダリオは見下し、イスマエルは嫌悪しながら中へ入ってきた。


「いらっしゃい」


『『『『『おいでませー!』』』』』


 スライム達も一斉に歓迎の言葉をかける。

 聞こえなくとも歓迎の意思は通じたようだ。


「お邪魔するぜー」


「ご相伴に預かる」


サンダリオは堂々と周囲を見回して、部屋に設置された調度品の価値を計っているようだ。

 イスマエルは素早く目線だけで、恐らくは逃走経路の確認をしているらしい。

 黙って見詰めていれば、イスマエルが一歩足を踏み出した。


「……貴女方の好みにあうか自信はないが……受け取って貰えればありがたい」


 差し出されたのは無骨な傷だらけの指の中に、ちんまりと収まっている可愛らしいミニブーケ。

 イスマエルの趣味で作ったのならば驚きだ。


『……キズナオール草、ドクケセール草、マヒキエール草、おちつく、めざめばなの変異種で作られたミニブーケなのです。変異種はどれも希少なのです。特に生花のまま保管しておくのはかなり難しいのです。勿論、全部薬剤として使えるのです。高級素材なのです!』


 サクラが興奮しながら鑑定結果を教えてくれる。

 

「可愛らしいだけでなく、高級な素材にもなる花束なんて凄く素敵ですね。とても嬉しいです。ありがとうございます」


 にっこり笑ってお礼を言う。

 愛想笑いではない笑いだ。

 実際希少種は持っていなかったので嬉しい。

 イスマエルの頬がほんのりと赤く染まる。


『イスマエル×サンダリオと思っていたけど、サンダリオ×イスマエルなの!』


 リリーの腐った悶え声にはぬるっとスルーしておく。


「俺はこれで! 手持ちの中では一番気に入っていた奴なんでね。大事にして貰えたら嬉しいやねぇ」


 サンダリオが差し出してきたのは、掌に乗るサイズの紫色をした正方形ケース。

 覗き込めば、ぱかりと蓋が開けられる。

 中には爪の大きさほどの深い紫がかった青い石が嵌まった指輪が収められていた。

 一流の職人の手によるのだろう、見事なスクェアカット。

 スライム達からも感動のさざめきが伝わってくる。

 

「……タンザナイト?」


「おっ! 知ってるかい? もともと希少宝石なんだが、こいつは色がいいんだ! 一財産になるぜ」


『……呪い? じゃなくて、魔法? 祝福? この世界の技じゃない何かが干渉しているのです。悪い効果ではないのです。たぶん、持っているだけで、複雑な問題が解決できるのです。隠れた名品です』


 あー。

 確かパワーストーン的な目線で見ると、そんな効果があったような気がする。

 何かしらの不可思議な力が働いて、強い効果が宝石に宿ったのだろう。

 サンダリオの妙に勘が鋭い所は、この指輪のおかげなのかもしれない。

 サクラに鑑定できないとなるとかなりの代物だ。

 指輪というのには抵抗があるが、魔法アイテムと思って有り難く頂こう。

 

「こんな高価な物を頂くわけには……」


 一応日本人の謙遜で、一度は断ってみるも。


「何! 俺はオスカルじゃねぇからな。こんな壊れそうな指輪をする趣味はねぇし。この先良い取引ができるんなら、惜しかねぇ。それに、ほら。綺麗な宝石ってーのは若い子がしてた方が良いだろう?」


 笑って後押しされた。


 最終的には自分の元に戻ってくるのだと信じて疑わないのだろう。

 宝石の冷ややかな輝きは、既にサンダリオへの守護を放棄しているというのに、気が付いていないようだ。


『おばかなのねー』


『んっ! 男はみんな愚か者なのよっ!』


 まぁ、二次ならそれも萌えるし、三次なら相手が間抜けな方が色々とやりやすい。

 悪いことではないのだ。


『悪女なのねー』


 リリーさんや?

 そこまで格好良くはない。

 善人の思考ではないだろうけれど。


「ではありがたく、頂きますね……さぁ、どうぞ? そちらへ座ってください」


 頂き物は一番近くにいたモルフォに保管して貰う。

 クッションを置いてある椅子に二人を先導した。

 座り心地は最高なはずだ。

 サンダリオは座る前に、手で触ってやわらかさを確認し、イスマエルはぎこちなく、しかし深々と腰を下ろしている。


「肉は少し食事が進んでから焼きますので……乾杯用のワインは、ブラウンワインを用意しました」


「本当か!」


「……凄いな」


 ブラウンワインはリリー曰くの、完全異世界ワイン。

 アルコール度が高く、特に男性に好まれるワインらしい。

 またアルコール度が高い酒は造りにくいらしく、希少性が高いとのことだった。


 色々なベリーを取ってきて貰って、料理用のワインを作るついでに、飲む用ワインも少しずつ作っておいた。

 ちなみに、スライム達にもそれぞれワインの好みがあって可愛い。


 ワイン在庫は以下の通り。


 ホワイトワイン

 ランクS

 野生のグリーンベリー(マスカット系)で作成。

 さっぱりあっさりしていて、喉越しが良い。

 口の中に優しいグリーンベリーの香りがふわっと広がる。

 リリーとモルフォのお気に入り。

 魚料理にあう。

 酩酊効果有。

 奇病抑制効果有。


 レッドワイン

 ランクS

 野生のパープルベリー(メルロー系)で作成。

 濃厚で渋みがある。

 口の中に強いパープルベリーの味と香りを残す。

 サクラとサイのお気に入り。

 肉料理にあう。

 酩酊効果有。

 記憶力上昇効果有。


 ピンクワイン

 ランクS

 野生のピンクベリー(異世界種)で作成。

 甘みが強いが、後に残らない甘みなので苦手な人でも少量なら飲める。

 ローズのお気に入り。

 乾杯用、食前酒などに多く用いられる。

 デザートワインとされる場合も多い。

 酩酊効果有。

 ダイエット効果有。

 

 ブラウンワイン

 ランクS

 野生ブラウンベリー(異世界種)で作成。

 苦みと渋みが強い、通好みの味。

 アルコール度が高い高級品なので、男性憧れのワインと言われてる。

 食後にシガーなどと一緒に楽しまれる例も少なくない。

 酩酊効果有。

 眼病予防効果有。


 雰囲気と話の流れ次第では他のワインを出すのも吝かではない。

 スライム達に乞われて出す予感もした。


「……カップも綺麗だな」


「壊してしまいそうだ」


 さすがにガラスはまだ作れていないので、スライム達による陶器製のカップだが、土は厳選している。

 高評価のようで誇らしい。


「おっと! いけねぇ! オスカルから渡してくれと言われた物があったんだった」


 綺麗にラッピングされた木箱の中には、雑貨屋で頂いたティーカップと茶葉が入っていた。

 ここで出すのも駆け引きの一つなのだろうか。

 やはり本職の手による陶器は格別に繊細だ。

 スライム達が、何時かは到達してみせる! と奮起している。

 リリーが収納したのを見計らって、乾杯の音頭を取った。


「それでは、乾杯!」


 乾杯! の声が部屋に響く。

 乾杯の挨拶はこちらにもあるようだ。


「! うめぇなぁ! どこのブラウンワインだ、こいつぁ!」


「……オスカルなら、解るかもしれない」


『うっ! 解らないと思うのよ!』


 サイが胸? を張っているが、ここは沈黙を守るに限るだろう。

 この先、順調な取引が万が一にもできるというのなら、ネタバレしてもいいが。

 その機会は残念ながら、ないに違いない。

 家を囲む気配は、家から一歩でも足を踏み出せば、嬲り殺されるに違いないレベルで殺気立っているのだから。





 *今回ステータスの変動はありません。


 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 3


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用 

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用

     人外による精神汚染 


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化 


 称号 シルコットンマスター(サイ) 



 はぁ、びっくりしました。

 珍しくストックがあったと思ったら、このミスですよ。

 とほほ……。


 次回は、ここはステーキ一択で! 食べますよ! になります。


 お読みいただいてありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。



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