スライム愛好会を訪ねてみる。10
そろそろ頃合いかなぁと、乾燥しておいたラナンキュラスの球根を植えました。
ちゃんと芽が出るといいなぁ。
以前チューリップの球根を植えたときは、芽は出たけど花が咲かなかったのを思い出します。
「ふぅ……これでゆっくり販売商品を御紹介できますね。御要望がありましたら遠慮なく申しつけてください」
クリストバルが深々と頭を下げれば、周囲で伺っていた人たちの興味も商品へと戻っていく。
「お勧めはある?」
「いろいろありますよ。一通り、人気の品を御紹介いたしましょう」
お子さんをお持ちの皆様へ、と大きな看板がかけられたコーナーに止まったクリストバルが指差す方向には、平たくなったスライムが山積みされている。
「お子様が転んでも安心なスライム床材です。壁にも使えます。色は見やすいように薄いブルーで色づけしておりますが、別料金で希望の色をつけるのも可能です」
子供部屋などに敷き詰めておくと良さそうだ。
孤児院や学校などからも大口注文がくるだろう。
一枚十ブロン。
十枚で一割引き。
百枚で三割引き。
少し高いかな? と思ったが、何年も使えるのなら安価かもしれない。
「生きたスライムを所望するお客様も多いのですが、スライムの希望が優先されるので、床材で我慢されるお客様が多いですね。十枚購入のお客様が一番多いです。そこそこの重さなので敷き詰めサービスも好評なんですよ」
勧められるまま一枚持ってみた。
50×50×5センチ。
確かになかなか重い。
「刃物で切り裂いたり鈍器で殴りつけたりと、過剰な負荷を与えなければ一年は持ちますね」
「買い換える方は多そうね?」
「買い換えの場合は古いものを引き取って割り引きもいたしますよ」
随分とサービスが良い。
それだけスライム商品に自信があるのだろう。
満足して、常連になる客は多そうだ。
「こちらはスライム寝具。生きたスライムを希望される方がやっぱり多いのですが、これまた難しいので需要は高いです」
これは薄いオレンジとブルーの二色が用意されていた。
ぱっと見、枕、マットレス、敷きパット、シーツ、掛け布団があるようだ。
「お手入れもさっと拭くだけで大丈夫なので重宝されますね」
「カバーとかも不要かしら?」
「ええ、基本は不要です。ただ見栄えのために使われる方は多いですね。サイズに注意すれば一般的な寝具と同じもので問題ありません」
「二色展開なのはどうしてなのねー?」
「ああ、オレンジは温かさ、ブルーは冷たさを維持しやすく作っているんですよ。無論オレンジで冷たさを、ブルーで温かさを求めても使えますが」
「ふふふ。商売的には無難な展開だと思いますわ」
「恐縮です」
それぞれの枕を触ってみれば、オレンジはほんのり温かく、ブルーはほんのり冷たかった。
「より温めたければ暖炉の近くに置いたり、冷たくしたければ濡れたタオルで拭いたりしてもらえれば、その温度を維持できるようになっています」
「あら、優秀」
「欲しいなら、作るのです」
「おや。買っていただけないのですか?」
ここで全員が私を見る。
え、どちらを選んでも蟠りが残りそうなのですが。
「一通り購入して、皆にも作ってもらう!」
ま、これよね。
両方を選択。
勿体ないとは思わない。
使い道はたくさんあるからね。
うちの子たち産は、誰かにプレゼントしてもいいし。
「……自分たちが作った方が性能がいいのねー」
まだ不満らしいが、クリストバルはほくほく顔だ。
「御自分で選ばれますか……と聞くまでもなかったですね」
サクラが鑑定でもしたのか、しばばばっと希望する一式を店員に指示して運ばせた。
「マンジュウが作った物は特別扱いされておりますが、他の商品も美味しいですよ?」
スライム=葛扱いなのか、葛餅、葛切り、葛湯、葛干菓子と葛を使った和菓子がずらっと並んでいる。
「……葛系は全部購入するとして、スライム粉も大量購入いたしましょう。使い勝手が良さそうですわ」
今度はローズが指示を出して、希望する一式を店員に指示し始めた。
「スライム粉も当愛好会人気の品ですね。幼児から老人まで幅広く人気ですよ」
葛と考えたら本当に使える範囲は広そうだよね。
私も使って何か作ろうかしら?
「防護服関連はイマヒトツですが……この手袋は水仕事に重宝されています。冒険者も水辺での採取に使っているようですね」
指差す先には薄いゴム手袋。
こちらはほんのりとミルク色。
「耐久性はありませんので、基本は使い捨てですね。原材料も安価ですので、値段もお手頃かと」
十二枚入りで一ブロン。
お買い得でしょう。
私が手に取る前に、サイが何箱か運んでいる。
「こちらはオーダーメイドが人気ですが、気軽につけられる安価ラインも掘り出し物があるので、御覧になっては如何でしょう?」
アクセサリー各種がずらり。
今度はレジン扱いなのかな?
ペンダントトップの中にピンク色のスライムが鎮座しているものを手に取った。
「購入一択なのです」
サクラがそのまま持って行ってしまった。
自分と同じ色のスライムなのがツボだったのかもしれない。
「う。緑スライムのイヤリングを見つけたのよ!」
「ん。青スライムのブレスレットもあったの!」
「白は透明不透明どちらもあったのねー。指輪なのねー。二個購入なのねー」
「赤はチャームが……まぁ! チャームなら全色揃いましてよ。こちらも絶対に購入ですわ」
さすがはスライム愛好会。
スライムモチーフのアクセサリーの種類は類を見ないだろう。
うちの子たちが選んだ物は当然全部お買い上げだ。
「おぉ! 大量購入ありがとうございます。個人でここまで購入されるお客様はそうそうおられません」
楽しそうなスライムたちの様子に、他のお客もアクセサリーを漁り出す。
普通に宝石なども使われているからそこそこの値段はするのだが、財布の紐は緩みっぱなしのようだ。
「お勧めはこの辺りでございますが、まだ御覧になりますか?」
「いえ、もう十分よ。後日私たちが遭遇した新しい商品が並んでいたら、そちらを購入したいから」
パープルベリーのゼリーやお茶の仕上がりが見てみたい。
あ、透明じゃないひんやり衣類も気になる。
「また来ていただけるんですね! ありがとうございます」
クリストバルの声が今までになく弾んでいる。
災難に見舞われがちなクリストバルが少しでも癒やされたなら何よりだ。
山と積まれた商品の会計をすませる。
商品をスライムたちがどんどん収納に入れている様子は、感嘆の声を持って受け入れられた。
誰もが当たり前のように感心しているが、スライムを自分の所有にしよう! という邪な考えは伝わってこなかった。
少なくとも今フロアにいる人々は善人揃いらしい。
放逐された冒険者のような客が再びやってこない可能性は低いけれど、しばらくは安心して買い物ができるだろう。
誰かが罵声を発しているだけで売り場の雰囲気は悪くなるものなのだ。
「こちらはおまけとなっております」
満面の笑みを浮かべた店員がおまけをくれた。
「……おまけ?」
「おまけです!」
カウンターの上に、ぷるんと小さなスライムが揺れている。
しかも五体。
色はクリア。
「……全員いい子なのです。私たちの元で修行したいのだそうです」
「しゅ、修行」
五体がぷるるんと震える。
一体どんな修行をするのだろう。
うちの子たちが歓迎している以上、問題はなさそうだけれど。
「何もおまけ扱いしなくても。正式に預かる形を取ってもいいんだけど?」
「……こんなに小さいスライムたちが自分の意思でおまけとして扱われたがっているのです。どうぞ皆様のお好きに修行をつけてやってください!」
クリストバルが涙目で力強く言い切った。
や、本当に。
なんで、おまけ?
一人首を傾げるも、私以外は和気藹々と話をしており、一端スライム収納内で修行に勤しむべし! との方針が決まったようだ。
「まぁ、楽しそうだから良としましょうか」
「ええ、よろしくお願いいたします」
クリストバルが深々と頭を下げるので、私も可愛い子供たちを預かる認識で深く腰を折った。
喜多愛笑 キタアイ
状態 ミニスライムって可愛いよねー。全力で愛でないとねー、とわくわくしている。 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
シーツを取り替えようと思ったら、穴が空いていてびっくり。
生地が劣化していたようです。
新しい物を買いにいく所存。
次回は、スライム愛好会を訪ねてみる。11(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。




