スライム愛好会を訪ねてみる。8
ふと思い立ちドアマットヒロインものを書き始めました。
最後まで書き上げてから投稿の予定です。
今年中には投稿できるといいなぁ……。
全三十話、10万文字予定です。
スライム育成によるマンドラゴラや高品質野菜に果物などを大量にもらって、二階へと降りる。
うちの子たちはもらったあれこれで何を作るか熱心に語り合っていて可愛い。
「二階はスライムとのふれあい場所になります。受付でスライムと触れ合う際の簡単な誓約書を書いてもらった上で楽しんでいただく場所なのですが……」
クリストバルは目の前の光景に頭を抱えた。
「お、お母さん。駄目だよ! スライムちゃん、嫌がってるってば……」
「うるさいわね! あんたの世話で私はストレスがたまりまくっているのよ? 一緒に連れてきてやったんだから、あんたも遊べばいいでしょ」
母と娘で仲良くスライムと戯れる……普通に広がる光景があちらこちらで見える中、その場所だけが異質だった。
周囲に人もいない。
母の暴挙を咎める娘は涙目だ。
「こいつらなんて、人間様のストレス解消にしか役立たないんだから!」
「そ、そんなことないよぅ。いろいろな場面で役に立ってるって、受付で説明してもらったじゃない」
「は! スライム愛好会とかいって、マズい実験をたくさんしてるって有名じゃない」
「マズい実験だったら、すぐに捕まっちゃうよ?」
「どうせ賄賂で逃げてるんでしょ。はぁ。それにしても気持ちいいわぁ……」
母親はスライムを尻の下に敷き、激しく尻を押しつけている。
また手に持ったスライムを引き千切らんばかりの勢いで、両側に引っ張っていた。
正直、その程度でスライムは傷つかない。
傷つかないが、嫌な思いはする。
特に自分を心配して泣く者がいれば尚更だ。
「お母さん、もう、やめてあげて! スライムちゃんが苦しそう……」
娘を心配してか母親が抱えていたスライムが暴れ出す。
尻の下に敷いたスライムにいたっては、母親を天井までぽーんと弾き飛ばした。
「ぎゃああああ!」
母親の絶叫が上がる。
娘は心配するどころか母親を見もせずに、虐げられていたスライムの確保に走って行った。
「いたっ! 痛いじゃないの!」
天井まで弾き飛ばされて怪我一つしていないのは、スライムたちが一瞬だけ寄って来て母親の体を優しく受け止めたからなのだけど、どうやらそれには気がついていないらしい。
助けたスライムたちも絡まれるのが嫌だから、一瞬で元の位置に戻ったから仕方ないといえばそうだけどね。
「これは慰謝料をもらうしかないわね……ちょっと! あんた、ここの会長でしょう? 私に慰謝料を支払いなさいよ」
クリストバルが会長だと気がついたらしい母親が小走りに寄ってくる。
しかし彼女は私の近くにいるうちの子たちを見ると、わかりやすく目をぎらつかせた。
「……へぇ。珍しいスライムじゃない。こいつら全部、私への慰謝料にもらってあげるわよ」
頭のネジが三本飛んでいる人間はどうして同じ台詞を吐くのだろう。
「慰謝料を支払うのはお前だ、屑。可愛いうちの子たちは大金を積まれたって譲らんわ!」
心の中で叫んだはずが、口に出てしまったらしい。
仕方ない。
それだけ腹立たしかったのだ。
「はぁ?」
「娘さんは会員になってほしいくらい良い子なのに、どうして貴様は屑なんだ?」
娘の前で母親を罵倒するのはどうかと思ったが、ここまで酷い母親ならいらないだろう。
実際着飾っている母親と違って、娘の着ている服はかなりぼろぼろだった。
虐待の疑いもある。
「く、屑なんて!」
「屑だろう? スライムを虐待しているじゃないか。まさかとは思うが、娘さんも同じように傷つけているんじゃないだろうな?」
「娘なんて、いるだけでストレスがたまるのよ。家に住まわせてもらってるだけで感謝してもらわないとね!」
母親が胸を張る。
娘は少し離れた場所で、二匹のスライムを抱えて俯いていた。
「……血の繋がっていない娘さんだとしても、その態度には問題しかないわよ」
「何言ってるの? 血はちゃーんと繋がっているわよ。正真正銘! 私の実子。だからどう扱ってもいいんじゃないの」
駄目だ。
話が通じない。
真性のモンスターに遭遇してしまい溜め息しか出なかった。
「娘さん。実母がいても孤児院に入れるわ。同じ境遇の子もいると思うの。一番近い孤児院は私が信用している人が関わっているから他の孤児院より待遇がいいわ。こんな毒親と一緒にいるよりもずっと幸せになれるでしょうね。紹介、しましょうか?」
「実の親を捨てるとか許さなっ!」
ローズが母親を包み込んだ。
全身を溶かしこそはしないが、苦しめてはいるようだ。
首元を引っ掻いて目を見開いている。
「……母を捨てても許してもらえますか?」
「ええ、私が許します。この子たちも許してくれるわよ」
「わ! ふふふ。ありがとう。冷たくて気持ち良い……」
どうやら全身にあるらしい傷の上にスライムたちが、それぞれ鎮座している。
真横に座っている子もいた。
よく落ちないものだ。
「……君たち、この子が気に入ったみたいね。時々愛好会に遊びにこれたら、この子と一緒に過ごしてみたい?」
私の知るスライムは基本弱者に優しい。
そして人の善し悪しを見抜く。
母親から必死に庇おうとした娘は間違いなく善良だろう。
二匹のスライムはぽんぽんと楽しそうに跳ねた。
「クリストバル、この子たちをお嫁に出してもいいかしら?」
「それが望みであるならば。この子となら末永く一緒にいれるでしょう。里帰りは何時でも歓迎ですよ」
「ふふふ。お嫁に出すみたいね」
「どちらかと言えば婿に出す感じですかね」
ふふふと二人で顔を見合わせて笑う。
クリストバルとしてはスライムが幸せなら嫁&婿に出すのもありらしい。
もしかして今までもこんな風に愛好会を去ったスライムがいるのだろうか。
「母親は児童虐待で牢に入ってもらって娘さんには接触禁止。娘さんは孤児院に預かってもらう方向で大丈夫かしら」
「ええ。それでいいと思いますよ。できればローズさんにはそのままの状態で、娘さんと一緒に教会へ行って説明していただけると……」
「そうね。うちの子がいれば話の通りも早いでしょう。ローズ、いい?」
「任されましたわ。あと母親は見えなくしますから、怯えなくてもよろしくてよ」
ローズが言う側から体の色が変化する。
透明から不透明に。
音は元々しない設定にしてあったらしく、母親の罵声は聞こえない。
事情を知らなければローズが人を、その体内に生きたまま収めているとはわからないだろう。
ローズがにゅんと触手を出して娘の手を握る。
娘はびくっと一瞬だけ怯えたが、付きそう二体のスライムに励まされたのか、ぎゅっと握り返していた。
いいわー、幼女とスライム。
と後ろ姿を見送ると、クリストバルも同じように見送っていた。
何なら他のスライムや、戯れていた人たちも微笑ましげに見送っている。
「お騒がせして申し訳ございませんでした。皆様には引き続きスライムとの触れ合いを御堪能くださいませ」
うん、うんと頷く大半がスライムたちとの触れ合いに戻った。
そのうち一人がゆっくりと歩み寄ってくる。
「その……初めて見る色の子なので、よろしければ少し観察させていただくのは可能でしょうか?」
うちの子たち可愛いからね。
この愛好会でも似た色の子はいても同じ色の子はいない。
あとここまで頭が良い子もいない気がする。
「触ってもいいのねー」
「わぁ!」
リリーが話しかけてきた女性の腕に飛び込んだ。
女性はよほどのスライム好きらしい。
顔が駄目な感じに微笑み崩れた。
「ぼ、ぼくもいいですか? そっと触ります!」
男の子も許可を求めてくる。
「う。ぎゅっと抱き締めてもいいのよ?」
サイが飛び込んでいく。
緑の鮮やかなスライムは男の子が好みそうだ。
「すりすりしてもいいでしょうか?」
なかなかたくましい男性とよく似たその息子らしき人が、そんなことを言ってくる。
力ありそうだしね。
加減が難しいのかもしれない。
「ん。高速すりすりも許すの!」
言いながら男の肩に乗って高速ですりすりを始めたモルフォに、男性がふぉぉぉぉ! と喜びの雄叫びを上げている。
息子は羨ましそうに見詰めながら律儀に順番を待っていた。
「私はアイリーンの側にいるのです」
そう言って肩に乗ってくる、サクラのつるすべボディを、私は意図せず高速で撫でてしまった。
喜多愛笑 キタアイ
状態 サクラのつるすべボディは最高! と満ち足りています。new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
利用している女性向け予約サイトから、気になっているお店の貸し切り情報が……。
しかし平日に一万円近いランチもしくはアフタヌーンティーに付き合ってくれる方はなかなかいないのです。
平日ランチやアフタヌーンティーを楽しめる趣味友を探そうと思ったのですが、それもまた難しく。
一人で行ければいいんですが今回はペア限定なんですよね。
敷居が高いお店なので良い機会かと思ったのですが、たぶん見送るかなぁ……メニューを見てはあはあして満足しようと思います。
次回は、スライム愛好会を訪ねてみる。9(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。