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スライム愛好会を訪ねてみる。7

 待望の月見バーガーの時期がやってきました。

 全部食べるのは無理なので、何処の月見バーガーを食べるか迷います。

 そして、ビアードパパの月見シューも気になるのです。

 餅とシュー生地食感の違いが楽しそう。

 


 スライムが食べ物になる異世界話はよく見聞きしていた。

 一番多いのはゼリーだろうか。

 そのまま刻んで食感を楽しむというなかなか猟奇的? な作品もあった。


「……想定外」


「これは、虐待ではないのですが……そう見えるのは重々承知しています」


 目の前に広がった光景が意外だったので思わず呟けば、酸っぱい物を食べた顔でクリストバルは肩を竦めた。


 壁一面に設置された棚の中。

 スライムが鎮座している。

 鎮座したスライムの天辺から、様々な食材が生えていたのだ。


「水も肥料も不要で、かなり育成が難しい植物が育つという結果がでております」


「……これは……」


 生えている葉っぱがぶんぶんと意思を持つように揺れているので質問すれば。


「マンドラゴラでございますね。育ちきると自分で出てきます」


「あ……」


 ちょうどいいタイミングだったようだ。

 だから葉が揺れたのかもしれない。

 葉がスライムの天辺を押し出すような所作をしたと思ったら、すぽん! とい小気味良い音がしてマンドラゴラが現れた。

 短い大根に手と足が生えたような、鉄板のマンドラゴラだ。

 ただし色は白い。

 両手を振られた。

 なかなか友好的な個体らしい。


 クリストバルが慣れた手付きでマンドラゴラを持ち上げる。

叫ばず素直に抱っこされた。

 つぶらな目が可愛かった。


「通常の方法で採取されるマンドラゴラより効能が高いとのことで、一定数栽培しております。次もマンドラゴラを育成するかい? それとも他のものに? 勿論休憩するのもありだよ」


 私たちに丁寧な礼を尽くした研究員が恭しくマンドラゴラを連れていけば、クリストバルはマンドラゴラを栽培していたスライムに優しい声をかける。

 ほんのりと白っぽさを残したスライムは首を傾げて、ぴょんと大きく跳ねた。


「おや。またマンドラゴラ育成を頑張ってくれるんだね。嬉しいけど、無理はしていないかな? 君は連続で十回もマンドラゴラを育成しているんだよ」


 同じ植物の育成は大変なのだろうか。

 連作障害的なものがあるのかもしれない。


『スライムによる育成に連作障害はないのねー』


『あ、そうなんだ』


『この子たちはいろいろ考えて、ゆっくりじっくり育成する方法を選んでいるみたいだけど、本気になればもっと効率的な生産もできましてよ?』


『それは止めた方がいいよね……』


『全員がクリストバルレベルにスライムを大切にしてくれる研究員たちばかりなら、やってもいいと思うのです。でもそうでない以上スライムたちは自分の身を守らなければならないのです』


 どうやら愛好会所属のスライムたちは、かなり頭の良い子たちらしい。

 そして自分たちに優しい者を厳選して甘やかしているようだ。


「フォルス様、如何いたしましたか? もしかしてこの子、無理をしているのでは!」


「大丈夫よ。この子が好んでやっているなら、ストレスはないみたい。むしろ何十回でも望むならやらせてあげて」


「いいんでしょうか」


「いいのよ。この子がそれを望んでいるのだから。全ての子たちが同じ希望を抱くわけでもないのだし」

 

 せっせと植物を育成しているスライムたちが、一斉に頷いた。

 ちょっと怖い。


「そうなんですね……あ、運動とかはした方がいいんでしょうか?」


「……したい? 運動」


 早速新しいマンドラゴラの種を植えてもらって、御機嫌に揺れるほんのり白スライムに尋ねてみる。

 白スライムはぴたっと止まって。

 ぶぶぶぶぶぶっ! と凄い勢いで振動した。


「この子はしたくないみたいよ」


「他の子はどうかな?」


 大半の子が白スライムと同じ反応。

 しかし頷く子もいた。


「数は少ないけど運動をしたい子もいるみたいね」


『個体差なのねー。本人の希望を聞いてあげればストレスが減るから、植物は立派に育つのねー』


「なるほど。ストレス軽減に繋がって、植物の育成にも良いから、スライムたちの要望は聞いてあげる方向がいいみたいよ」


 またしてもスライムたちが一斉に頷く。

うん。

 二回目はちょっと慣れたよ。

 怖さは軽減しました。


「しかし、今まで希望を言う子はいなかったの?」


「……いませんでしたね。ただ、植物が枯れることは何度か」


「あー、我慢してストレスを溜めちゃったのかもね」


 うちの子たちは自由にさせているけど、それでもストレスは溜まる。

 私が過小評価されたときなんて、背後に燃え盛る炎の幻覚が見えるほどだ。

「……スライム如きがストレスとか、何様?」


 背後を通る研究員がぼそっと囁いていく。

 小さな声だが私には聞こえた。

 スライムたちにも届いたようだ。

 クリストバルは聞こえなかったらしい。


「……会長」


「何でしょう」


「今、通り過ぎた研究員って、優秀?」


「どちらかといえば、無能寄りですね」


「く、クリストバル様ぁ?」


「会長と呼びなさい。貴女に名前は許していません」


「名前ぐらいいいじゃないですか! クリスとか愛称で呼んでいるわけでもありませんし」


 影ではそう呼んでいるんですね、わかります。

 くねくねと体をくねらせて頬を染めながらクリストバルだけを見詰める女性。

 化粧が濃いなぁ……香水の匂いもきつい。

 クリストバルを伴侶にと狙っている気配がする。


「よくありません。私が貴女と個人的にお付き合いする日は未来永劫まいりませんから!」


「照れないでくださいよ。私もそろそろいい年齢ですし……待ちくたびれました」


 うるうる目で唇を突き出してくる女性。

 突っ込みたい。

 いろいろと突っ込みたい。

 でも私は沈黙を守る。

 代わりにスライムたちが突っ込むからだ。


「スライム如きがストレスとか何様! と陰口を叩く女性に、クリストバルが胸襟を開く日なんて永遠にきませんわよ?」


「そうなのねー。クリストバルのスライム愛はなかなかのものなのねー。理解できない者に伴侶の資格なんて微塵もないのねー」


 ほらね、うちの子たち、容赦ないのです。


「なっ! スライムのくせに生意気なのよ! ちょっとあんた、スライムたちに暴言を吐かせているんじゃないわよ。ずっとクリスを独占して。何様なの?」


「スライム愛好会名誉会長予定様」  


「フォルス様が了承くださいましたらこの瞬間にも、貴女がスライム愛好会の最高権力者です! 私の使えるスライム愛好会永久追放の権限も使いたい放題です!」


 クリストバルが拳を握りしめて熱く語ってくれた。

 私を名誉会長にしたいのはさて置き。

 よほど彼女に辟易しているのだろう。


「は、はぁ? クリス。こんな女の何処がいいのよ! 私の方が良い女じゃ! ぶひゃ!」


 ぶひゃとかなかなか女を捨ててますなぁ。


 ちなみに棚の中のスライムが女性の口の中に向かって、体液を吐き出したのだ。


「な、何これ? お、おぇええ。苦いぃ」


 女性がその場で嘔吐しようとする。

 しかし棚のスライムが次から次へと女性の口の中に体液を打ち込んでいた。

 死因は溺死か窒息死になりそうだ。


「単純に客への暴言とスライム愛好会の理念に反する行いで、強制退場でいいんじゃない?」


「そうさせていただきます」


 クリストバルが言った次の瞬間。

 棚の中のスライムが十匹ほど出てきて、女性の体を持ち上げた。

 窒息しないように体を横にして運び出す。

 優しい。


「いやだー、私は、クリスと結婚するんだぁー」


 スライムたちの親切は女性の口を自由にしたらしい。

 凄まじい雄叫びが聞こえたが、速効で小さくなって消えた。


「会長。彼女の荷物は処分でいいでしょうか?」


「全処分! と言いたいところですが、精査してください。共有物を隠匿している可能性が高いです」


「了解しました」


 真っ当な職員は必ず私とスライムたちに頭を下げていく。

 名前も知らない女性の後始末は二人の男性がするようだ。


「……最後まで伴侶認定されました。ですがこれで完全に縁も切れましたね。安心してこちらの研究室へも足を運べます」


「そこまで酷かったんですね」


「ええ。研究室以外の立ち入りは禁止していましたから、どうにか回避できていた状態だったんです」


「うわぁ……」


 あーそんな状況だから、この研究室のスライムは遠慮していたのかしら。

 自ら率先して女性を捨てに行くほどだし。

 

「スライムたちのストレスも大分軽減されそうですね」


「もっと早く決断していれば良かったです。彼女の場合標的が自分だけだったので、強制退去までは厳しいかな……と考えておりまして」


「愛好会の面が強いなら、いいんじゃない。そもそも彼女、スライムに愛なんてなかったみたいだし」


「そうですよね。私の前では可愛がる振りをしていたみたいです。はぁ……私も反省する点が多いですが、彼女の件は綺麗さっぱり忘れます」


「ええ、それがいいと思います」


 私が同意すれば、うちの子たちは当然として。

 棚の中のスライムも揃って大きく頷いていた。

 全くクリストバルはスライムに愛されている。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 善良な人が愛される様子にほっこり。new!! 


 料理人 LV 4


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     口止魔法 LV10


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ) 

 プランターの花が枯れたので、植え替えをしたい今日この頃。

 安価花屋さんへ行かないと……。

 毎回行く度に気になる花が安価になっているのが嬉しいです。


 次回は、スライム愛好会を訪ねてみる。8(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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