スライム愛好会を訪ねてみる。6
マジカルミライ2025に行ってきました。
途中サウンド酔い? を経験して心臓がばくばくとなり驚いた次第。
来年は暑くないといいなぁ……。
クリストバルがおもむろに腰を上げる。
「……フォルス様、少し席を外してもよろしゅうございますか?」
「ええ、勿論。構わないですよ」
「では、失礼します」
背中にそこはかとない怒りと哀愁を漂わせながらクリストバルが席を外した。
代わりとばかりに、クリストバルの席に紫色のスライムが乗ってくる。
何か訴えかけてくるが、詳細はわからない。
通訳所望です! と思っていたら、ローズが飛んできた。
「そんなに心配しなくても、クリストバルが貴方たちを嫌いになるなんて起こりえませんわ。彼、私たちも呆れるほどのスライム好きですもの」
ああ、秘密にしていたから嫌われてしまった……と思ったのか。
ローズの言葉に不安げな気配が消える。
「しかし、あなた。食品系の研究室に移った方が良いわよ。そちらに才能があるわ」
『希望シテ、イイノ?』
「当然よ! 貴方には決まった人はいないんでしょう?」
『憧レテイル人ハ、イルノ』
「じゃあ、尚更申し出ないと。クリストバルも貴方が我慢してここへ居続ける必要なんてないと判断しますわ」
適材適所ができていないのは寂しい。
スライム愛好会と名乗るのであれば、スライムたちの希望をしっかりと優先してほしいものだ。
クリストバルが険しい表情のまま戻ってきた。
付き従う者はいない。
ただこちらを伺う気配はあった。
「……大丈夫?」
「……研究員たちの意識の低さに呆れます。私たちはあくまでもスライム愛好会ですのに彼らはスライムよりも研究優先で、私の話を聞き流しました」
俯いて拳を握り締めるクリストバルを宥めようとしたのか、紫スライムが新しいアイテムを差し出す。
「こ、これは! パープルベリーそのものですか?」
『ソウナノ』
ローズがいてくれるので、紫スライムの話す言葉は脳内に直接響く。
「君もしゃべれるのかい? ああ……これはローズさんの力ですか」
「うちの子たちは優秀だからね。通訳は全員できるわよ」
「はぁ……フォルス様のスライムたちは何処まで優秀なのでしょう……通訳ありがとうございます」
「気にしなくてよろしくてよ。この紫スライムは食品開発に才能がある個体ですわ。どうぞ、移動をさせてあげてくださいまし」
「そうなんですか! 気がつかなくて、ごめんよ? 希望があるなら聞くから、早速移動の手配を取ろうか」
「えぇ! 困りますぅ。この子は優秀なんですよ?」
クリストバルが真摯に謝罪をして、即座に手配を試みれば邪魔が入った。
一言の断りもない態度に、一番怒っているのはローズだろう。
「……我が主と会長の話に割り込んでくるとは、恥を知るがよい」
「え? でもこの子の移動とか困るんですけど」
「困ればいい。この愛好会で最優先されるのはスライムの意思。そうであろう、クリストバル」
「ええ。そうですよ。会長である私の会談中に断りも入れない、無礼な輩の意見など聞く耳は持ちませんね!」
『コノ人、嫌イ。毎度毎度、変ナコトスルカラ』
「変なこと?」
「え! 何でしゃべれるの? よ、余計なことを言ったら許さないからね!」
女性はつかつかと近寄ってきて、クリストバルの膝の上へ移動していた紫スライムを鷲掴みにしようとした。
当然ローズが許さない。
「ごっ!」
ローズが勢い良く足元にぶつかれば、女性は顔から床へダイブした。
「とんだセクハラ屑ですわね」
らしい。
スライム相手のセクハラ……とローズが憤る横で、浮かんだ妄想を振り払う。
あるじゃない?
男性向けによく。
スライムプレイとかさ。
「セクハラ、ですか?」
『ソウナノ。研究室ノスライムハ、全員被害者ナノ』
「はぁ……本日三人目の放逐ですね。完全防護服研究室の者っ! 放逐者が出ました。速やかなる排除を最優先なさい」
クリストバルの声に、引き続き様子を窺っていた者も、そうでない者もわらわらと集まってきた。
「彼女はスライム相手にセクハラ行為を働いていました。まさか黙認していた者はいないはずですよね?」
「えぇ? スライムたちにもセクハラをしていたんですか?」
男性が一人、声を上げる。
内容からして、人相手にもセクハラをする、屑中の屑だったようだ。
相手を選ばなすぎるわ!
声を上げた男性はふくよか体型だったので、もしかするとぽよぽよした者に興奮する性癖なのかもしれない、
どんな性癖だろうと頭から否定する気はないが、周囲には迷惑をかけないでほしいと思う。
「……貴男もセクハラの被害にあっているのなら申し出なさい」
「いやぁ……自分のようなデブがセクハラをされたとか言っても、信じてもらえないかと思いまして……」
「ご、ごめん。視界に入っていたけど、セクハラと認識できてなかったわ!」
違う男性が声を上げる。
なかなか難しいよね、セクハラの認定って。
「いやいや。俺も徹底的な拒絶をしなかったし」
「そ、そうよ! 喜んでいたじゃない」
「それはないな」
『ナイデス。彼モ、僕モ嫌ガッテイマシタ』
「おぉ……俺は気がつけなかったのに、フォローしてくれるなんて。ありがとなぁ」
男性が紫スライムを優しく撫でる。
「では、放逐はセクハラを受けていない者たちで頼む。私物の持ち出し、特にスライムの持ち出しは厳禁だ!」
『部屋二監禁シテイルスライムガイルノデ、解放シテアゲテクダサイ』
想像を軽く超えた問題発言に、部屋の空気が数度下がった。
「か、ん、き、ん?」
『新シク増エタ子ヲ、申告シナイデ隠シテイタノデス』
「最優先で監禁されている子たちの確保をお願いします!」
何人かが大急ぎで走って行く。
「……貴様は今後、スライム愛好会所属のスライムへの接触を未来永劫禁止させていただくっ!」
「会長」
「ああ」
「え? 嘘! やめてっ! やめてよ」
一歩を踏み出した女性がクリストバルに腕輪を手渡した。
三人がかりで押さえられても尚暴れる鬼畜の手首に、その腕輪は嵌められた。
「犯罪者によくつけられる腕輪なのです」
犯罪に走ろうとすると昏倒するらしい。
何それ?
怖いわ。
どうやって犯罪に走る瞬間を察知するのかも謎。
でも犯罪者につけさせれば再犯はなくなるよね。
一般人が所持できるなら持っておきたいかも。
「いやあああ!」
女性は腕輪を取ろうと必死にあがく。
無理だと思ったのだろう。
あがいた時間は短かった。
しかし女性の諦めは悪く、紫スライムに手を伸ばした。
途端、昏倒。
今度は後頭部から倒れ込んだので、顔から倒れ込んだときとは違う鈍い音がしていた。
懲りない人間って何処にでもいるよね……。
気絶した人間は重い、しかし抵抗しないのは有り難いと誰に言うでもなしに呟いた人たちが女性を運び出していった。
ほどなく放逐されるのだろう。
「重ね重ね……申し訳ありません」
クリストバルはすっかり疲れ切ってしまった。
紫スライムが同情して新作を出す。
「パープルベリーキャンディなのです。疲労回復効果があるのです。クリストバルは美味しく食べるといいのです」
「……私の癒やしは君たちだけですよ」
口の中でころころとパープルベリーキャンディを転がすクリストバルをしばし見守った。
他のスライムたちも戻ってきた。
伝えるべきものを全て伝えきったのだろう。
頭の上に小さなスライムをそれぞれ乗せている。
説明されるでもなく、それが監禁されていた個体だと理解した。
「この子たちはこの研究室に置いておけないわね。心身を癒やせる場所はあるかしら?」
「五階のスライム休憩所がいいでしょう。あそこのスライムたちは癒やし効果が高いですから」
ぷるぷる震えているのが不憫でそっと指先を伸ばす。
我先にと近寄ってきたので、そこまで人間不信ではないようだ。
これなら回復も早いだろう。
今後は真っ当な人間と楽しく過ごしてほしい。
「紫スライムを食品研究室へ連れて行きましょう。ついでにそちらも紹介いたします。この子たちは……ああ、貴方が連れて行ってくれますか?」
クリストバルの言葉に、一匹のスライムが立候補した。
ほんのりと黒い色をまとう個体だ。
頷いた黒スライムはミニスライムたちを体の上に載せて、素早く移動していった。
「では自分たちも移動しましょう」
紫スライムを抱えて立ち上がったクリストバルの精神は随分と落ち着いたようだ。
素敵な効果のパープルベリーキャンディー、幾つか売ってもらおうかしら?
と考えていたら、紫スライムがそっと小瓶を渡してくれた。
中には美味しそうなパープルベリーキャンディがみっしりと詰まっている。
しみじみ自分はスライムに愛されるなぁ、と飽きもせず感動しながら、紫スライムの頭をそっと撫でた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 パープルベリーキャンディの効能に感心中new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
そしてローソンのボーカロイドライブに応募しました。
着席の席、当選してくれたら嬉しいのですが。
次回は、スライム愛好会を訪ねてみる。7(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。