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スライム愛好会を訪ねてみる。4

 健康診断へ行ってきました。

 健康診断が終了したあとで、すぐにわかっている検査結果を教えてもらって驚きましたよ。

 検査結果が届くのはまだ先ですが、重篤な問題がないとわかっているので安心して待てるのはりがたいですね。


 

 

 クリストバルにもう一部屋御覧になりますか? と訪ねられて迷う。

 一番マシな部屋がジャングルなんでしょ?

 それ以上っていうと……氷漬けの部屋とかマグマ風呂のある部屋とか、よもや宇宙空間かもしれない、と妄想が捗ってしまった。


「……うん。スライムとして気になるお部屋なので見せてほしいのねー」


 私の思考を読み取って温い表情をしたリリーがそんな声を上げる。

 スライムとして気になる部屋って? とリリーの言い回しが気になるので、隣で大きく頷いた。

 

「ではこちらにございます。フォルス様を御案内したい。準備はいいかい?」


 扉をノックして中の様子を聞く。

 返事はすぐにあった。


「お! 光栄だぜ。びっくりすると思うけど、フォルス様たちに何の支障もねぇから、安心して入ってきてください」


 今度は男性の声。

 なかなかのイケボだ。


 扉があちら側から開かれた。


「え?」


 扉からはみ出してきたのは淡い水色に染まった、たぶんスライムの一部。


「この部屋=スライムの体内なのねー。抵抗感は入るときだけだから、頑張って掌を押しつけるのねー」


 幾度となくスライムの体内へ入れてもらっている。

 私の感想としては、優秀な結界、だ。

 しかし他の個体が同じ機能を持てるとは思わない。

 何しろうちの子たちは度し難いほど規格外なのだ。


「よっ! と! おうふ!」


 最初に感じたのは空気がしっかり入ったタイヤばりの弾力。

 数度感触を確かめてから、力を込めればずぼっと手首まで入ったと思ったら、全身が収まってしまう。

 大きく傾いだ体は床に倒れ込んだ。

 ぽにょん、と優しく受け止められる。

 勿論痛みも怪我もない。


「すみません。この部屋の特性をわかっていただこうと思いまして、あえて事前にお知らせいたしませんでした」


 深々と頭を下げた男性が手を差し伸べてくる。

 研究職には珍しいゴリマッチョだ。


「ちなみに部屋の設備も全て同じ個体のスライムが頑張ってくれています」


 部屋の中には普通に家具がある。

 椅子にテーブル、机やソファ。

 ベッドは見当たらないが掛け布団が部屋の隅にあった。

 スライムを敷き布団代わりにしているのだろうか。

 更に冷蔵庫は中身が見えるスケルトン仕様だ。

 便利と思うか、丸見えで恥ずかしいと思うかは本人次第。


「……凄いですね……」


 としか言えず、天井をぼんやりと眺めた。

 つぶらな瞳が二つ、こちらを見詰めてくる。

 手を振ればにっこりと目が細められた。


「自分はこの中で生活をしています。そろそろ三年になりますね」


「そうだね……食事も中で取るとか言いだして。スライムを食べつくすんじゃないかと思ったよ」


「はははは。会長を驚かすつもりはなかったんですけどね。マンジュウとは事前に話をつけていましたし」


 テーブルを挟んで対面に座った彼は、優しくソファを撫でる。

 と思ったら、ソファの角をつまみ上げた。

 ぷるんと水饅頭のような塊が取れる。

 彼はぱくんとそれを飲み込んだ。


「……基本はほんのりと甘い水饅頭なんですけどね。それ以外の食べ物にもなってくれるんですよ。スライムのフルコースだってできるんですから……どうぞ、召し上がってみてください」


 今度はテーブルがごっそりと欠けた……次の瞬間には元に戻っていたが。

 皿の上に置かれた水饅頭によく似たものとスプーン。

 一口掬って食べる。

 口の中で甘い水が溶けたような、秀逸な味と食感だった。

 まさしく甘露。


「美味しいわ!」


「フォルス嬢を笑顔にさせるなんて、さすがは俺のマンジュウだぜ!」


 日々褒めているのだろう。

 彼はソファを撫でながら大きな声を上げる。


「……スライムのフルコース。今度再現して、アイリーンに食べさせて差し上げましてよ」


「マンジュウと情報交換するのねー」


 私が幸せそうに咀嚼するのを観察していたうちの子たちのスイッチが入ったようだ。

 マンジュウの体に触手を差し入れて何やら真剣に語らっている。


「おぉ。フォルス様のスライムたちも勉強熱心ですな」


「ええ。私が食べることが大好きなので、そっち方面は特に頑張ってくれるのよ。しかしその……着る物は透け透けなのね」


「はははは! 面目ない。今の所これが一番の改善点ですね。感触は良いし、透明な物はいろいろと使い道があるので商品化はしているのですが……うん? どうした? マンジュウ」


 スライムたちの情報交換は済んだようだ。

 うちの子たちも揃ってほくほく顔で私の側に戻ってきた。

 そしてマンジュウもどうやら成果を彼に語っているらしい。


「な、なんと! 服が透けなくなりましたぞ!」


 実は彼、透け透け服を着ていたのだ。

 やー。

 目のやりどころに困ったよ、本当!

特に下半身がね……。


「すばらしい。うっすらとした水色。マンジュウの色ですな。涼しい季節や地域に喜ばれそうだ。インナーとして着るのなら、何処にでも売れますぞ!」


 筋肉がぴちって鳴った気がした。

 脳筋あるあるだ。

 光る筋肉、音がする筋肉……ふぅ。

 彼がいい人なのはわかっているけど、音はしない方向でお願いしたい。


「ありがとう、フォルス様。スライムたちが提供してくれた情報みたいです」


「こちらこそありがとう。早速スライムフルコースを作ってくれるそうよ。楽しみだわ」


「私からもありがとうございます。またしてもスライムの新商品が出せて、寄附が増えます」


「あ、私も寄附しようかしら」


「いやいや。フォルス様にはいただくばかりですから、寄附までは……な? 会長」


「それもそうですね。名誉会長に就任していただく人から寄附をちょうだいするわけにはまいりませんな!」


 確かに! と頷きそうになって明後日の方向を凝視する。

 マンジュウと目があった。

 にっこりと微笑まれてしまう。

 マンジュウにも会長就任を望まれているようだ。


「さぁ、忙しくなるぞぉ! 自分は書類などを認めますね」


「そうだね、よろしく。では我らはこれで失礼するよ。まだ何か質問等はございますか、フォルス様」


「ないわ。これからも貴男とマンジュウの活躍を応援してるわね」


「光栄です! できあがった商品は笑納させていただいても?」


「ええ。有り難くいただくわ。こちらも何か贈るかもしれません」


「では楽しみに待ちますわ!」


 遠慮しないところがいい。

 

「……貴男の名前を聞いておくのねー」


 リリーも気に入ったようだ。


「! 失礼いたしました。名乗りもせずに。自分はブエナベントゥラと申します」


 格好良く敬礼された。

 たぶん貴族っぽい名前だと思うけれど、名字はないのかしら。

 ……捨てたのかな?


『そうなのです。騎士系の名家ですが、スライム好きが当主に理解されず離籍したのです』


 サクラ情報があった。

 筋金入りのスライム好きだね。

万が一切って捨てた家族が絡んでくるなら力を貸したいものだ。

 復縁する場合も同様に。

 スライム好き仲間に悪い人はいない……はず。


 なかなかの集中力らしい。

 懸命に書類を認めるブエナベントゥラに変わって、マンジュウの触手が伸びてくる。


『アリガト』


 おぉ、言葉が聞こえた。

 しみじみ優秀な個体だ。


「こちらこそありがとう。彼と末永く仲良しであってね?」


『ハイ。彼トハズット一緒デス』


 うんうん。

 相思相愛は良き良き。


 外へ出るときは普通の扉と一緒だった。

 心なしか、そっと背中を押される感覚があった程度。


「フォルス様……何処まで感謝申し上げればよろしいのでしょうか。ありがとうございます。彼はどうにもマンジュウ以外の存在に興味が薄すぎるところがありましたので……」


 やはりクリストバルは人が良い。

 商売の話より、ブエナベントゥラが積極的に私とやり取りできたことに喜びを感じている。

 ……仕方ないから、なろうかなぁ、名誉会長。


『いいと思いますわ。皆賛成いたしましてよ? でも念の為……最後まで見てから口になさってくださいまし』


ローズは慎重だ。

 他のスライムたちもクリストバルの目に触れないところで揃って頷いている。

 うん、過保護。


「……次の階は通いの者たちの研究室ですね。こちらでも様々な研究が行われております」


「何となく四階の方が困難なテーマに挑んでそうな気がするわ」


「実際そうなりますね。あとは共同研究が多いでしょうか?」


「やはり食べ物関係?」


「……フォルス様のお心にはそぐわないかもしれませんが、軍事関係が多いです」


「ああ、地位に名誉にお金かな」


「お金を一番に考えているところが愛好会員らしいのですが、地位や名誉を求める者もおりますね」


 苦笑するクリストバルは、愛好会が存続できる程度あればいいと考えていそうだ。


「フォルス様! どうぞこちらへ来てください」


 三階へ降りた途端、走ってきた男性に手首を掴まれそうになる。

 くるっと回転すれば、男性は勢いを殺せずに階段を転がっていった。

 階段のスライムは彼を助けないようだ。

 悲鳴を上げながら転がっていく。

 クリストバルが深い溜め息を吐いた。

 またしても会員の暴走らしい。


 私はクリストバルの丸まった背中を軽く叩いて宥めた。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 スライムフルコースが気になって仕方ない感じnew!! 


 料理人 LV 4


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     口止魔法 LV10


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

 友人との食事会(焼き肉)に向けて、安価ワンピースでも新調しようかなぁと思うも、これだ! と思う物がありません。

 久しぶりに服を購入するとやはり試着をしたいので通販も迷います。

 想定より大きいサイズを購入すれば大丈夫かしら……。


 次回は、スライム愛好会を訪ねてみる。5(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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