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スライム愛好会を訪ねてみる。2

 夏のホラー企画作品を書き始めました。

 昔同人で書いたものの設定を流用したら別作品になりそうです。

 

 



「エンマ・アグアージョ! カジェタノ・ベタンコウルト! 金の十字架をお持ちの方に、どれほどの不敬を働けば気が済むのだ? さっさと中に戻って、副会長より罰を受けたまえ」


「え、会長? 酷すぎますぅ」


「横暴だ! 横暴が過ぎるっ!」


 一目見て苦労をしてます、といった雰囲気の男性が二人を咎める。

 彼は比較的真っ当な部類の人間らしい。


「二人を拘束のち、副会長に任せるように!」


 建物の中に向かって叫べばばらばらと人が溢れ出た。

 全員が暴れる二人よりもローズに注目しているのが、スライム愛好会員らしいといえよう。

 二人が引き摺られていき建物の中へ入りきるのを見計らって馬車の外へ出た。

 男性はゆっくりと近付いてくる。


「はじめまして、アイリーン・フォルス殿。この度は当愛好会の会員が大変失礼をいたしました。代表者として深くお詫び申し上げます」


 深々と頭を下げた男性はそのままの体勢で固まっている。

 許しがでるまで頭を上げないようだ。


「頭を上げるといいのねー。そして、名乗るのねー」


「はい。ありがとうございます。自分はスライム愛好会会長を務めております、クリストバル・ブスタマンテと申します」


「クリストバル会長とお呼びしても?」


「光栄でございます。フォルス様は当愛好会に如何なる御用件で来られましたのでしょうか?」


「スライム好きな方が多いのであれば、いろいろなお話ができるかと。まぁ、うちの子自慢になりそうですが」


「ふふふ。優秀と有名でございますものね。自慢したい気持ちもわかります。どうにもスライムは下に見られがちなモンスターですから……と、入り口でするお話ではありませんでした。どうぞ、中へお入りくださいませ」


 建物は五階建て程度。

 王都の建物の中では大きい方ではない。

 しかし愛好会と謳う場所と考えるのであれば、大きな規模ではなかろうか。


 中へ一歩足を踏み入れると、視線が集中した。

 こちらへ走り寄ってくる気配もある。

 しかしそれぞれが止められて、突撃は誰一人として成功しなかった。


 クリストバルの先導で階段を上る。


「え?」


 階段を踏む感触に驚いた。

 スライムを踏んだときと同じ感覚だったのだ。


「おや。さすがでございますな。友好的なスライムが運んでくれるようでございます」


 クリストバルの説明が終わるのと同時に、緩く膝から下を拘束される感覚があった。

 スライムたちが止めないので、そのままにしておく。

 友好的なスライムはエスカレーターや動く歩道と同じ役割を果たしてくれた。


「ありがとうね」


 無色透明のスライムは初めて見たかもしれないと、膝下辺りを撫でる。

 ふるんと揺れてスライムは離れた。


「さすがは、希少スライムのマスター。スライムの扱いはすばらしゅうございますな」


「あらそう? お世話になったら御礼を言うのが常識でしょう? あと、この子たちがむしろマスターよ。私はこの子たちに守られているの」


「……主従関係ではないと?」


「一番近い表現では家族ね。この子たちは、絶対に裏切らない家族……かしらね?」


 私の言葉にスライムたちが揃って大きく頷いた。

「……理想的な関係ですなぁ。羨ましがる会員は多いでしょう。どうぞ、お座りください。そのソファもスライムを使っておりますので、心地良いと思われますよ?」


 こちらも透明で大きなスライムだ。

 そっと手で触れると、遠慮なくお座りください! といった感じでふるっと震える。

 そっと腰を下ろせば、体がやわらかく包み込まれた。

 仄かに温かいのが気持ち良い。

 耳に優しい音楽でも流れていれば、速攻で眠りにつけそうだ。


「おや。寝かしつけの状態ですね。お疲れですか?」


「いえ、そこまで疲れていないわ」


「では、ぞんぶんに休んでいただこうというスライムの意思なのでしょう。珍しいことです」


 頷きながらクリストバルの指がそわそわしている。

 私はわかりやすく笑って言った。


「記録を取りたければ、どうぞ。遠慮なく」


「かたじけない!」


 服の中から年季の入った分厚いノートが現れた。

 ブックカバーをつけて丁寧に使っているのが見て取れる。

 クリストバルは物凄い勢いでメモを始めた。

 これだけの時間でよくもそれだけ書くことがありそうだ、と感心するほどだ。


「ありがとう」


 夢中になっているクリストバルの前で一端止まってから、透明スライムがティーポットとカップを持ってきてくれた。

 受け取ってテーブルの上に置く。

 テーブルは木製のようだ。

 ティーポットの中身は鮮やかな青い液体。

 香りは紅茶のようだが……。


「……全身麻痺になる強力な薬が入っているから飲んではいけないのです」


「まぁ、随分と物騒な」


「はぁ? ちょ、ちょっと失礼してもよろしいですか!」


 サクラと私のやり取りは集中しているクリストバルの耳に届いたようだ。

 ティーカップを持ち上げて中身を確認している。


「す、スライムがやったのではありません!」


 クリストバルに取ってそれが一番に主張すべき内容だったようだ。

 研究対象として見ていても愛着はあるんだなぁ、と微笑ましい気分になる。


「そうでしょう。大丈夫。スライムは私を放置するクリストバル会長にちょっとだけ呆れて、私たちにお茶を届けてくれただけです」


「む! 申し訳ありません。つい、集中してしまい……」


「しっつれいしまぁす!」


 頭を下げかけたクリストバルの発言を遮るように扉が開け放たれた。

 

「無礼ですわ」


 低い声で咎めたローズが入ってきた人物を触手で持ち上げる。


「ふおおお! すばらしい! はははは。ちっとも逃れられません」


「ナイフは止めなさいと言っているでしょう!」


 拘束された人物はローズの触手にざっくざっくとナイフを突き立てている。

 その程度でローズに傷などつけられない。

 つけられないが、許せる行為ではなかった。


「い、いたいっ!」


 私の感情に感化されたのか、サイが包丁ですぱりとナイフを持った手首を切り落とす。

  

「……よく切れる包丁よね」


「う。こいつは食材にしないから安心するのよ!」


「いた、いたい! か、会長! ちゆを、治癒をお願いします!」


「申し訳ございません、この大馬鹿者が! まずは謝罪をせよ。お許しがなくば治癒などせぬわ」


 手首を切り落とされた男性に反省の色は見られない。

 所謂マッドサイエンティストというやつなのだろう。

 問題はあるが研究には大きく貢献している存在といったところか。


「へへへ。すみません。珍しい上に優秀なスライムとか見たら、興奮しちまって……次は許可を得てからやりますんで」


「許可は永遠に出しません。謝罪をしない口であるなら、永遠に噤みなさい」


 自分の大切な者を傷つけられて黙っている性分ではない。

 久しぶりに全開の威圧をかけた。


「お、が、あ! すっげ! すっげ! このまま、ころされてぇ……」


 声が出せるとは随分と精神耐性が強い。

 更に内容もあれだ。

 

 威圧を解いて治癒の指示を出す。

 慣れているのだろう。

 クリストバルが乱雑に切断された手首を押しつけて、ポーションをぶっかけた。


「しっかり押さえていなさい! あとは二度とフォルス様やスライムたちの前に現れないようにするのです。誰かっ!」


「すらいむだけでなく、あんたも、けんきゅう、してぇ!」


「却下です」


 手首を切り落としてもぶれずに主張する様子は研究者らしいのだろう。

 けれど。

 賛同する気にはなれない。


 わらわらと集まってきた会員が手早く変態を拘束して連れて行く。

 口もしっかり塞いでいたので、彼らも日々不愉快に思っているのかもしれない。


「……あれでも、この会の副会長なのです」


「あれが!」


「はい。あれが、です」


「人がいないにもほどがあるんじゃないかしら、この愛好会」


「お恥ずかしい限りです。私としては研究したいし、愛でたいので愛好会にしたのですが……」


「完全な愛好会にするか、研究会に切り替えるか。どちらかにした方がいいかと」


「とても難しいです……」


 クリストバルががっくりと肩を落としてしまった。

 彼としては現在の方向性がベストなのだろう。

 問題が多いとしても実績があるなら黙る者が多そうだ。


「……お話をするよりも、施設の拝見をお願いしようかしら。攻撃されたら同じものを返してもよろしいですね?」


「はい。よいデータが取れると喜ぶ者しかいないと思いますので!」


 そこ、自信あります! みたいに発言されても困るよね……。


「マッドサイエンティストなら仕方ないのです」


「あら、彼もそうなの?」


「程度の差はあれど、会長を務めるほどであれば、その気はあるのねー」


「はははは。お恥ずかしい。少しでもお楽しみいただけますよう、手配いたしますね」


 どんな手配なのだろう。 

 ささささっと静かな音をさせて散っていったスライムたちが頑張ってくれるのかもしれない。

 ほどほどでいいからねー、とスライムたちに向かって脳内で囁けば。

 声にならないやる気に満ち溢れた気配が返ってきた。

 




 喜多愛笑 キタアイ


 状態 変態の登場でよろしくない気分。new!! 


 料理人 LV 4


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     口止魔法 LV10


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)   



 夫婦揃って足をつる今日この頃。

 漢方の使用を検討しています。

 短時間ですが激痛なので地味に辛いですよね……。


 次回は、スライム愛好会を訪ねてみる。3(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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