教会でのひととき。2
ゴルゴンゾーラが高血圧に良いという記事を見て、食べる頻度を上げようかと思ってしまった。
行きつけのスーパーでスライスした各種チーズが詰め合わせて売られるんですけど、よく半額になるんですよね。
実は先日も購入してきました。
ゴルゴンゾーラではないんですけどね。
以前カッテージチーズとリコッタチーズができた話は聞いていたんだけれど……。
あ、プアゴテエモで燻製カマンベールチーズを入手したのかしら?
「……何時の間に?」
「チーズがワインのおつまみに凄く合うと知って頑張ったのねー」
「プレーン以外の研究も進んでいるのです」
「まずはお勧め五種類をお出ししますわ」
スライムたちが厳選して出してくれたチーズは以下の通り。
グラナパダーノ
ランクSSS
ハードチーズ。
向こうでのイタリア産。
ワインのおつまみ以外でもいろいろな料理に使える万能チーズ。
自浄作用効果大。
筋肉の成長を助ける効果大。
歯と骨の健康を守る効果有。
ブリー
ランクSSS
白カビチーズ。
向こうでのフランス産。
林檎とも相性が良い。
風邪予防効果大。
高血圧予防効果大。
認知症予防効果有。
ミモレット 十二ヶ月熟成
ランクSSS
ハードチーズ。
向こうでのフランス産。
熟成期間によって味わいが変わります。
虫歯予防効果大。
筋肉の成長を助ける効果大。
健康状態を良好に保つ効果有。
ゴルゴンゾーラ
ランクSSS
青カビチーズ。
向こうでのイタリア産。
蜂蜜との相性抜群。
血圧を下げる効果大。
腸内環境改善効果大。
髪や肌を美しく保つ効果有。
ゴーダ トリュフ
ランクSSS
セミハードチーズ。
向こうでのオランダ産。
贅沢にもふんだんにトリュフが練り込まれている。
筋肉の修復を助ける効果大。
免疫力増加効果大。
骨の健康促進効果有。
サクラがいそいそと解説してくれた。
「……どれ一つを取っても、凄まじい効能ですね」
「……商売の種にしたいですが、手に負えない気がします」
「早く喰いてぇな!」
「フォルス様のいらした世界は本当に食文化が進んでおるのですね……」
日本のチーズも美味しいのがたくさんあるんだけどね。
やはりワインに合うチーズというと、外国産の印象が強い。
スライムたちが厳選したのなら、どれもワインに合うチーズで、とても美味しいのだろう。
「それでは、いただきましょう」
「ええ、遠慮なく」
サカリアスがうきうきとチーズに手を伸ばした。
最初にゴーダトリュフを選ぶあたり、王族なのだろう。
贅沢に慣れている。
私もトリュフが練り込まれたチーズは初体験だったので、同じものを手に取った。
スルバランは一口ずつ全種類、アランバルリは万能チーズのグラナパダーノ。
ボノはゴルゴンゾーラを手に取ると。
「ニードルビーハニーをくれ!」
容赦なくそんな希望を出してきた。
「ん。ボノは贅沢者なの」
「う。でも気持ちはわかるのよ!」
その組み合わせだとピザが食べたい。
今度食べよう。
空気を読まないボノにだけは食べさせないけどね!
いそいそとニードルビーハニーを用意するモルフォを何か物言いたげに見詰めていたサイは、私の心の声を聞き満足げに頷き倒した。
「……すばらしいですね。どのチーズもワインにあいます。従来のおつまみだと物足りなくなりますね」
「もっと明確にこのチーズはこのワインに合う! みたいな感じらしいけどね。私はそこまでワインには詳しくないから、ゆっくりとこちらでの組み合わせを検証してくださいな」
「それはレシピを売っていただけないと難しいかと思いますが……」
スルバランはさささっと全部の味見をしたらしい。
早い。
「うーん。チーズは専門家が作る印象が強いんだよね……一般的にレシピを公開する前に、白モーモーの数を増やしてからの方がいいんじゃないかなぁ」
「白モーモーですか」
「モーモー種の育成は随分と前から試みてはおりますが……」
「放牧とかやってる?」
「放牧、でございますか?」
「あー、モーモー種が好む草が生えてるところに放して育てる方法か?」
驚くべきことにボノが知っていた。
「え! ボノ知っているんですか?」
「すっげぇ山奥でたまたま見かけただけだぞ。珍しかったんで質問したら、怒濤のように語られたよ。そこは村ぐるみでやってた。年に一回だけ山から下りて売りに出すんだとか言ってたぜ」
「……耳にしたことがありますね。王族所有の地でも飼われていた気がします」
サカリアスも知っていたようだ。
自然と密接に暮らしていると、放牧を思いつくのだろうか。
「モーモー種が好む草が荒れ地でも育つなら楽だけど……どの手を取るにしても時間とお金はかかると思うよ」
「いいですね。使えない土地なんて売るほどありますから、いろいろと検証させましょう」
真っ白いはずのサカリアスの微笑が真っ黒にも見えた。
さすがは生粋の王族。
「ワインと一緒に嗜めるここまで美味しい物でしたら貴族たちも動かせるでしょう」
目を閉じたサカリアスは協力してくれそうな貴族たちを思い浮かべているのかもしれない。
口はしっかりともぐもぐしているのが微笑ましかった。
「……フォルス嬢はやらねぇのか、放牧」
ホルツリッヒ村でも放牧は可能だ。
トレントたちが逃げ出さないようにしっかりと監視してくれるだろう。
しかし人の手が足りない。
「人の手が足りないわね。ホルツリッヒ村には信用できる人しか住んでほしくないわ」
移住の話も多く出ており、すぐ近くに簡易住まいを作る者も出だしたようだ。
明確な村の境界線を作っていないので、その辺りもきちんと手配しておくべきなのかもしれない。
「そういえば村の境界線とかって、どう決めるものなの?」
「人が少ない場所では曖昧ですね。明確に定められているのは国境ぐらいでしょうか」
「その国境すら甘いところもありますよ」
「で、諍いに発展する、と」
「言った者勝ちになる場所が多いように思います」
明確に定められていないなら、一番近い村から適度な距離を置いてとっとと確保しちゃおうかな。
トリアに頼めば境界線ならぬ境界樹を手配してくれそうだ。
「放牧の土地を考えて、ホルツリッヒ村の敷地を取ってしまってもいいかしら。うちの副村長がエルダートレントだから、境界線に樹木を植えてもらおうと思うんだけど」
「……本当にエルダートレントがいらっしゃるんですね。しかも副村長ですか……エルダートレントの名前を出しても難癖をつけてくる輩がおりましたら、私の名前を出していただいて構いません。一応正式な書類も手配いたしましょう」
「助かります。じゃあ、放牧含めてチーズ作りにも手を出そうかしら……」
「細々と放牧やっている奴らにも教えてやってほしいな、チーズ作り」
「じゃあ、信用できる人をこちらへよこしてもらえる? 真面目に勉強してくれるなら衣食住はこちらで持つわ」
「お。喜ぶと思うぜ。早速手配するわ」
「自分も何か所か知っていますので、話をしてもよろしいでしょうか?」
「アランバルリが責任を持って手配してくれるなら」
「了解いたしました」
チーズ作りが可能になれば村の運営も楽になるだろう。
山奥の村ならばそれは死活問題だ。
裏切る者は少ないはず。
まぁ、裏切られたところでどうとでもできると思うけれど。
「スルバランが活躍するまで時間がかかりそうだけど、我慢してね?」
「はははは。何も販売するだけが商人ではありませんから。私も放牧をしている方々を探してみましょう」
アランバルリとは違うルートで見つけられそうだ。
スルバランなら無理強いをせず、いい感じに話をまとめてくれるだろう。
いろいろな地域で特色のあるチーズが作れれば、更にチーズが広まるに違いない。
「チーズを使う料理もいろいろあるのよね。そうそう。サバイバル料理以外にもコース料理のレシピ提供も考えているのだけれど……」
「コース料理、でございますか」
「教会での厳粛な儀式のあととか、前にもいいわよね。国賓を歓迎するときに提供するのもありかしら。あとは王族の誕生日に出すのもお勧めね」
「まだ単品しか食べたことねぇけど、さぞ美味いんだろうなぁ」
「プアゴテエモのレッドアップルコースは肉多めだったけど、私が提供するのは私が知るフルコースね。アペリティフ、アミューズ、オードヴル、スープ、ポワソン、ヴィアンド、グラニテ、ロティ、サラダ、チーズ、デザート。パンはオードブルと一緒に提供してお代わり自由なスタイルよ」
「なるほど。正にフルコースに相応しい流れになっていますね」
「プアゴテエモはレッドアップルのフルコースだったから、特産がある地域は特産品をメインにすえたフルコース作りに頑張っていただきたいわね。私が提供するレシピは材料確保に苦労するかもしれないわ」
「その点は料理人が己の職務を全うすれば叶うことでしょう」
サカリアスはさらっといっているけれど、採算度外視なら簡単だけど、予算があると難しいと思うのですよ。
今は触れないでおくけれど。
「フルコースはそれぞれテーマがある場合が多いけれど、今回はテーマとか関係なくそれぞれ三品ずつ提供するわね。レシピも渡します」
「料理人のやる気がますます上がるでしょう」
深々とボノ以外が頭を下げた。
以前提供したサバイバル料理のレシピは料理人たちの目から鱗をはがしまくったようだ。
サバイバル料理の材料って今まで捨てていた物、だからねぇ?
できる料理人だったら、今まで捨てていた物の再検証を始めると思うもの。
「それぞれ三品ずつだとフルコース三人分になるけど、どう提供しましょう?」
「全部順番に出してくれてかまわねぇぞ?」
「それは貴男だけですよ! さすがに一度には無理ですから!」
スルバランの主張に、サカリアスとアランバルリが仲良く頷くのにほっこりしてしまった。
喜多愛笑 キタアイ
状態 ほっこり気分 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
ミスドが春の定番ドーナツを出すそうなので買いにいく予定です。
今年から苺も販売されるらしい……好みの味だと良いなぁ。
次回は、 教会でのひととき。3(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。