レッドアップルのコース料理。後編
新作書き始めました。
賞にあわせて書いているのですが、最低文字数が八万文字……。
久しぶりに追い立てられている心持ちです。
とにかく締め切り前までに八万文字を書ききりたいものです。
兎獣人が心得たとばかりによく冷えたレッドアップルミードを置いてくれる。
「おーい! 俺にもよく冷えた……」
「ボノ様は先に出した物を飲み干してから、御注文くださいませ!」
「スルバラン……」
「手伝いませんよ!」
「アランバルリ……」
「一本だけ、お助けします」
「フォルス嬢……」
「私たちが美味しくいただくのです!」
私が返事をする間もなく、怒った声のサクラが封を切っていない二本と飲みかけの一本を浚っていく。
「アランバルリも冷えた物をいただくといいのです。ボノは反省するのです!」
アランバルリを思いやっての行動だろう。
うちの子たちってば本当に優しい。
「お、おう。すまんかった! 小まめに注文するぜ……面倒じゃねぇか?」
どうやらボノは可憐な兎獣人に気を遣っていたらしい。
注文数を減らした方が楽なのでは? と考えた模様。
「……面倒ではありませんよ。仕事ですし。でも……そうですね。瓶を冷やす道具をお持ちしましょう」
兎獣人は自分の接客態度を振り返って反省したようだ。
声のトーンが少しだけ落ちた。
なるほど振り返ってみればボノに対してだけ気安すぎる。
よくよく思い返せば、客としてのボノはそこまで困った客ではなかった。
がんがん注文してくれるし、細かいことを気にしない点ではむしろ良客といえるだろう。
兎獣人の近くにある大きめのランチョンマットの上に、ワインクーラーが現れる。
こちらでは初見だ。
「おや、いいんですか?」
「はい。フォルス嬢との同行人であればと」
「俺の人徳じゃねぇのかよ!」
「無理かと」
「……難しいかと」
アランバルリの間が地味に厳しい。
『ワインクーラーは高貴な方向けなのねー。平民に出すと罰せられたりもするのねー』
『え? まずくない?』
『愛は平民だけど、扱いは貴族以上なのねー。そんな手配が取られつつあるから問題ないのねー』
『そうなんだ……』
貴族とはできるだけ関わりたくないのだが……これから行く予定になっている教会の偉い人が、何やら手配をしているのかもしれない。
むしろ手配済みなのかもしれない。
……深く考えるのはよそう。
『愛は好きに振る舞えばいいのねー。火の粉は私たちが払うのねー』
『『『『ねー!』』』』
ああ、優しいけれど好戦的な子たち。
久しぶりに揃った脳内声を聞いた気がする。
私は気を取り直してランチョンマットに出現した料理に目を向ける。
待っていたように、兎獣人が説明してくれた。
「ブラックゴート&ホワイトゴートのトメト煮込みにございます。味の違いをお楽しみくださいませ」
黒山羊と白山羊で味の違いがあるのかしら?
あちらでは山羊の乳チーズしか食べた経験がないからなぁ……。
臭みが強いと聞いていたが、こちらでは違うらしく、所謂獣臭はほとんど感じない。
しっかりと噛み応えのある肉で、ホワイトの方が若干やわらかい気がした。
口の中で肉の線維を噛みきっていると、じわじわ肉の旨味が出てくる。
ブラックの方が味的には好みかな?
トメトの酸味も良いあんばいですね。
「うんうん。やっぱブラックだよな! この噛み応えと肉肉しさは美味いぜ!」
「最近やわらかい肉が主流になりつつありますからねぇ……」
「男性には特に人気が高いですよね、ブラックゴート」
……そんな感じらしいですよ?
『う。ゴート皮は丈夫で冒険者に人気なの』
『ん。ホワイトは女性に、ブラックは男性に人気なのよ』
肉だけじゃなくて、皮も使い勝手がいいらしい。
あちらよりは普及している感じなのかもね。
少し熱かったかな? と思うスープも飲み干して、アイスアップルミードで口の中をリセットする。
この繰り返しなので、飲みすぎかな? と思うも、今の所酔っ払い特有の感覚はないので、大丈夫だと信じたい。
「ムーンベアのステーキでございます。狩人の腕が良かったので、そのままか、ホワイトロックソルトをつけて召し上がるのをお勧めいたします」
「へぇ。うちにも卸してほしいぜ。ベア系は下手な奴が狩ると、買い取り拒否したくなるほど駄目な肉になるからなぁ」
「そういう人は、毛皮や内臓の処理も駄目な場合が多いですからね……しかも買い取り価格に文句までつけてくるというおまけつき……」
「……狩人に頼んで研修などを試みてもいいかもしれませんね」
ふーん。
冒険者とは別枠なんだね、狩人。
何となく職人って気がするけど、実際はどうなんだろう?
『冒険者と同じで玉石混淆なのねー。冒険者でも同レベルの人間はちゃんといるのねー』
結局本人次第なわけね。
わかります。
「あら、美味しい」
これなら生でもいけるんじゃないかしら。
あちらでは熊の生肉は食中毒必須だった記憶があるけれど、こっちならいけるんじゃない?
食べてみたいな、熊肉の刺身。
レアな焼き加減で提供されているところを見ると生でも大丈夫な予感。
『新鮮な物ならぎりぎり大丈夫なのです。狩りに行くのです?』
『あ、大丈夫なのね。じゃあ、今度皆で行こうか、熊狩り』
『ムーンベアの肉は美味しいし、皮を含めた素材が高額で売れるからお勧めですわ』
『じゃあ、そのうち行こうね』
熊狩り。
ムーンベア以外も狩ってみたいね。
狩りごたえがありそう。
そのままで半分、ホワイトロックソルトをつけて半分。
美味しくいただきました。
肉汁とかパンで吸い取らせたかったよ。
「あ、そういえばパンとかライスって出ないの?」
「頼めば出るぜ? この店は料理の増量ができるから、パンを頼む奴あんまいねぇんだよ」
「パンはお腹を膨らませるための料理という印象は根強いですしね」
「安価なコースにはパンがつきますし、パンの食べ放題も料金次第では可能ですよ」
「じゃあ、少しだけいただけるかな? この肉汁を綺麗に食べたいの」
「畏まりました」
「へぇ。フォルス嬢は気にしねぇんだな。下品だっつー女は多いぜ?」
「美味しく綺麗に食べる方が最優先かな。下品という人とのお付き合いは御遠慮したいわね」
兎獣人が出してくれたのは黒パン。
ハードタイプだったけど、肉汁は綺麗に取れました。
焼いてなかったせいなのか、思いの外残さず取れましたよ。
大満足。
「当店自慢の養殖バロメッツのローストでございます。付け合わせの野菜もバロメッツ畑の野菜を採用してございます」
バロメッツ畑! 何たるパワーワード。
子羊のローストに季節の野菜を添えて、のノリなんだろうけど、異世界感満載だよ!
外はパリッと中はジューシーの仕上がり。
ソースは蜂蜜なのかな?
甘いけど、美味しい。
そして養殖バロメッツ!
『わかっているのねー。スライム収納でも育てておくのねー』
バロメッツ畑の野菜は、なんと生で出されていました。
新鮮で美味しかったです。
こちらはかりっと焼いた黒パンでソースを拾いました。
蜂蜜トーストっぽくて美味しかったです。
「燻製カマンベールのレッドアップルソースがけ、レッドアップルとヨーグルトのケーキ、レッドアップルシャーベットは一緒にお出ししますね。こちらでコース料理は終了となります」
「お! カマンベールを黒パンにのせたいので、追加で頼むぜ。焼いたのとそのままと両方な」
「畏まりました。新しいレッドアップルミードもお出ししますね」
コーヒーか紅茶……と思ったが、最後までミード一択だった……。
いろいろと試したい自分としては珍しい。
まぁ、それだけ飲みやすくて飽きがこない味だったんだけどね。
あとそこまで酔わないのも良かったよ。
ちなみにお菓子の感想はこんな感じ。
燻製カマンベールのレッドアップルソースがけ。
カマンベールあったのね!
そして燻製にするとお酒のあてに最高ね。
カマンベールも忘れずに増産してもらいます。
レッドアップルとヨーグルトのケーキ。
酸っぱいかなぁ? と思いましたが、そんなこともなく。
ふわふわの生地と素朴な風味で、毎日食べても飽きがこない美味しさでした。
朝食に食べてもいい感じ。
是非朝食のルーティーンに入れたいです、ええ。
レッドアップルシャーベット。
さっぱり美味しい林檎のシャーベットでした。
たぶん砂糖不使用。
そう考えると、レッドアップルの糖度ってどれぐらいなんだろう? って考えさせられました。
……サクラ曰く、糖度二十度、とのことでした。
そりゃ、レッドアップルを中心の料理を作りまくるはずよね……と妙に納得させられる結果でした。
喜多愛笑 キタアイ
状態 食事を堪能中
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
いろいろな苺のアフタヌーンティーの広告を見かけます。
一人で行ける所はあるかなぁ……。
出かける予定があるので、それにあわせてアフタヌーンティーの予約を検討するも、一人じゃ駄目なお店がしみじみ多いんですよね。
一人で行けるお店が増えますように。
次回は、 お腹もいっぱいになったことですし……。(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。