レッドアップルのコース料理。中編
マクドナルドの福袋、落選しました。
しょぼーん。
ビックマックのランタンが可愛くて欲しかったのですが。
来年は当選するといいなぁ。
「……美味そうに飲むなぁ。ホットってそんなに美味かったか?」
「女性向けの味と言われていますよね」
「そうですね。この街でも昔から女性が好むと聞いております」
「そうなのね。アイスよりまろやかというか、優しいというか……」
「あ、それもよく聞く感想だな。ま、美味いんなら、引き続きホットでもいいんじゃねぇの?」
「次はサラダだから、引き続きホットかしらね」
ちらりと兎獣人を見れば、大きく頷いてサラダの説明をしてくれた。
「レッドアップル、ウォールナッツの生クリーム和えサラダでございます」
ガラスの器の中にこんもりと盛られている。
皮付きのままを使っているので、赤色が鮮やかに目立つ。
そして生クリームも普通に食べられるのね。
この街、結構食特化なのかしら?
「……生クリームって、だだ甘いんじゃねぇの?」
ボノが不満そうな顔をしている。
「まずは召し上がってから、おっしゃってくださいませ」
兎獣人が不満そうにボノに強い視線を向けた。
そう。
生クリームは砂糖を入れなければ、濃厚なクリームとして美味しくいただけるのだ。
ボノは生クリームを甘くすれば美味しいと思っている人が、作ったデザートを食べてしまったのだろう。
「うん。美味しいわ」
兎獣人のアドバイスを受けてもまだ胡散臭そうにサラダの器を見詰めるボノに、言い聞かせるように咀嚼する。
実際、美味しい。
向こうの世界でも食べたが、こちらでも変わらずに好ましい味だ。
うちの子たちが作った生クリームは、控えめに言って最高だけどね!
ウオールナッツのかりっと感とレッドアップルのしゃきっと感もポイントが高い。
「お! 本当だ。甘くない生クリームもあるんだなぁ」
「……貴男がよく食べるシチューなどの隠し味にも使われていますよ」
「そうなんか?」
「ええ。生クリームは濃い味のシチューなどにまろみをつけるためによく使われていますね」
知らないのはボノだけだ。
照れくさそうに頬を掻いた彼は、それでも美味しそうに三人前のサラダをぺろっと食べ尽くした。
「続いてレッドアップルとモイサツマのポタージュでございます。お好みでブラックペッパーをおかけください……ボノ様、せめて一口飲んでからおかけください」
「かてぇこと、言うなよ。どう考えても甘いスープだろう?」
確かに、レッドアップルとモイサツマのポタージュなら甘いのは間違いなかろう。
けれど甘さにも種類や程度があるわけで……。
私はまずはスプーンで一口いただく。
コンソメスープと一緒で、飲む気になれば一息で飲めてしまう分量だ。
スプーンも普通のスープスプーンより小さい物が提供されている。
「この量なら、いらないかも?」
「私もですね」
「自分は少しだけ……」
スルバランは私と同じく使わない派。
アランバルリは少量使う派の模様。
「このぴりっとするのがいいんじゃねぇか!」
ボノはそれなりの量を使っている。
個人的にはもっと素材の甘さを堪能してほしいところだが、突っ込みは入れるまい。
「フォルス様。アイスレッドアップルミードも御用意いたしましょうか?」
「ええ、お願い」
「あ、俺は三本ぐらい置いてくれ」
「飲み過ぎでは?」
「店員の言う言葉じゃねぇなぁ」
飲み過ぎを心配している良心的な店員さんだと思いますよ? と心の中で呟いていると。
「飲み過ぎを心配しているんです。感謝なさい」
スルバランが声に出していた。
ボノ……そこまで伝わっていないのか。
「お、そうなんか。ありがとうな。でも俺は飲むぞ!」
「……ボノ殿……」
アランバルリですら呆れている。
兎獣人は店員としての務めは果たしたとばかりに、スライムたちが食べる様子を温かく見守っている。
ちなみにスライムたちは大きいテーブルの上で、私と同じ量を堪能していた。
どれも美味しいから定番レシピに加えておくのねー、というリリーの声が聞こえたので、お願いすればスライム収納に収まっている材料で同じ料理を作ってくれるだろう。
「こほん! では引き続き次のお料理です。レッドアップルとクックルー卵のおかずタルトでございます」
「おかずタルトぉ?」
「タルトと言えばデザートという流れができていますが、おかずとしても食べられているのですよ」
「この街では普通に売られていますね。人気ですよ。ボノ殿も気に入るのでは?」
「へぇーそうなんだ。なら、肉がたっぷり入ったおかずタルトが食べてみてぇな」
ミートパイならぬ、ミートタルトとか与えておけば満足するのかしら?
むしろ、塊肉を詰めた方がいいのかしら……は!
最近ボノに対して邪険な態度の気がする。
『相手がボノなら気にすることはございませんのよ』
ローズに脳内フォローされてしまった。
良い脳筋とわかっていても、つい邪険にしてしまうのは業かしらねぇ……。
遠い目をしていると、兎獣人が心配そうな目をしている。
あ、おかずタルトが気に入らないわけじゃないのよ!
私は慌てて一口で食べられるタルトを口の中に放り込んだ。
タルト生地は甘くない物が採用されている。
卵は濃厚だ。
スライムたちが出してくれる、クックルーの卵と同レベルなのでよほど管理がいいのだろう。
ここに林檎の持つ甘みが加わる。
あくまでも仄かな甘みなので、デザートよりは卵のおかず感が強い。
正しくおかずタルトだ。
「やっぱり肉が欲しいぜ」
「このタルトに加えるならベーコンですかねぇ……」
「生ハームも合いそうでは?」
どっちもいけると思う。
「両方でもいいぜ!」
それはちょっとくどいかな?
心の中で突っ込みを入れているうちに、次の料理が提供された。
「当店自慢のバッサを使用しました、レッドアップル、イモジャガ、バッサ(鯖)の蒸し料理でございます」
「バッサかよ! 珍しいなぁ」
「ああ、バッサ専用の池が出現したらしいですね」
「神の祝福ですね。使える者は限られているらしいですが、それでも得がたい祝福です」
「え? そんな祝福ってあるの?」
「頻度は低いですが噂は比較的良く聞きますよ」
「この街は料理への研鑽が評価されたようですね。過去には一日で消えた例もありますが、この街では……」
「既に三ヶ月は経過しています!」
兎獣人が答えてくれた。
三ヶ月経過は使える者たちが善良であり続けている証なのだろう。
誇らしげな様子だ。
『ん。番で二匹もらえれば増やせるから、あとで寄るの』
『あら、街の人たち限定じゃないの?』
『う。料理に貢献している者なら誰でももらえるのよ』
『じゃあ、有り難くいただいていこうか』
こっちのバッサはどんな味かしらね。
やっぱり脂はしっかりのっている感じかしら。
「おー、魚を食ってるって感じだな」
「……貴男らしい感想ですね」
「身がしっかり詰まっているから食べ応えがありますよね」
鯖の臭い消しなら生姜の印象があるけど……。
こちらのバッサはそこまで魚臭くない。
レッドアップルの香りが勝っている。
イモジャガには魚の旨味とレッドアップルの香りが移っていて美味しい。
オリーブオイル蒸しでいいのかな?
ほんのり塩味はホワイトロックソルトだと思う。
一応メインなので前菜たちよりも食べ応えがあるのも幸せだ。
「こちらも是非食べていただきたい一品です。ウーズラン(うずら)のロースト。グリーンベリーソースでございます」
「……このウーズラン大きくね?」
「最近改良種が人気だとか……この街だったんですか?」
「いえ。何処で作られているかは不明だとか……」
「料理人にしか教えられないとのことです!」
どうやら興味深いウーズランのようだ。
料理人というのなら、私も紹介してもらえるのだろうか。
『こちらも紹介していただきましょう?』
骨ごと丸っと食べたローズに囁かれた。
ばきごきといい音がする。
どうやら美味しいようだ。
個人的にはうずらと鳩は小骨が多い印象なのだが……。
「あら、骨が取りやすい」
「はい! 料理長のスキルです。骨を取りやすく料理できるのだとか。お客様に喜ばれています」
え?
そんなスキルあるの?
私も欲しいかも。
小骨が多い魚とかにも適用されるなら、会得したいよね。
あ、久しぶりに料理魔法で会得できないかしら?
『できるのねー。次に料理をするときに頑張るのねー』
頑張れば取れるらしい。
もっと早く気がつきたかった……。
何処か負けた気分で食べた、グリーンベリーのソースがたっぷりついたウーズランのローストは大変美味しゅうございましたとさ。
喜多愛笑 キタアイ
状態 食事を堪能中
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
福袋の抽選に落選したので、新しい福袋購入を模索中。
迷います。
次回は、 レッドアップルフルコース。後編(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。