教会へ行く馬車の中。
一番クジが完売御礼だったので、キャンペーン中の食べ物を購入。
普通に美味しかったです。
割引商品だったのでお得感も倍。
購入特典アイテムも一番欲しい物は残っていなかったけれど、同レベルに欲しい物はあったのでさくさく入手。
購入ポイントを消費して懸賞に応募してきました。
当選するといいなぁ。
馬車の手配はセバスチャンがしてくれた。
本当に有り難いね、執事って。
王都の宿に飽きたら召喚くださいませ、って言われました。
家の広さの空き地を確保して、セバスチャンもしくは家を想像しながら召喚! って言うだけでいいらしいよ。
凄いわー、家憑きの執事。
「……すげぇな。嬢ちゃんが姫様に見えるぜ……馬子にもい! ごふ!」
馬子にも衣装の台詞は言わせてもらえなかったようだ。
ボノの腹にローズが勢いよく突っ込んで、その口を封じている。
「すばらしいですね。総シルコットンのドレスとは! 王妃様や王女様も目の色を変えられるでしょう」
「優秀なうちの子たちが頑張って作ってくれたのよ。謁見用のドレスもバッチリよ」
「こちらのドレスは大変品格の高いドレスとお見受けしますが……」
「エンパイヤラインっていうの。珍しい?」
「初めて拝見しますね」
「失礼には当たらない?」
「現在王族の方が着ておられる衣装より品格が高く感じられます。作った方は王族専用に召し抱えられるでしょう……テイムしたモンスターであっても、求められる可能性があります。過去にもありました」
「そうなの?」
「ええ」
スルバラン曰く。
おしゃれ好きな女性冒険者がテイムしたアラクネが、城のお抱えテイマーに無理矢理主人替えをさせられたらしい。
怒ったアラクネは一見すばらしく見えるドレスを作り、お披露目のパーティーでドレスが脱げるように仕向け、会場の混乱に乗じて城のテイマーを殺して逃げたのだとか。
アラクネと冒険者は指名手配されたけれど、ギルドが庇って教会も窘めて収束したようだ。
アラクネのドレスを着た王妃と三人の王女はそのあと、公の場には一度も出なかったらしい。
そりゃそうだ。
裸を見られてショックだったんだろうけれど、自分がしでかした恥ずかしい行為にこそ羞恥を感じてほしいよね。
「えーと? そんな逸話があっても奪おうとするもの?」
「全員が王族に相応しい心根の持ち主ではないのですよ、残念ながら」
ああ、知ってる。
よく知ってる。
王族としての全てを抹消された隣国の第五王子オスカルを殺したのは私たちだ。
アランバルリに託したオスカルの罪石は、さて。
誰の手に渡ったのだろうか。
ビシタシオンの件もある。
隣国の愚かさをそろそろがっつり追求してもいいと思うのだけれど。
「麗しき貴婦人の注文なら受けつけてもいいのねー」
「私たちの淑女基準は高いと自覚しておりますけれど、一人でも目にかなうことを祈りますわ」
高く売りつけられるからね。
うちのスライムたちは王族相手に対等以上の商売をする気満々です。
テイムモンスターにもステータスが存在するなら、少なくともリリーには腹黒熟練商人の職業とか称号がついていそうだ。
「……フォルス嬢よ?」
「馬子にも衣装ですが、何か?」
「や! ちがくて! 似合ってる。心の底から似合ってる。そんじょそこらの美姫も真っ青の気品と美貌だ!」
私の言葉にスライムたちが反応する。
広くはないが狭くもない馬車の中でスライムたちがボノを飲み込もうと、その身を大きくさせた。
つい口から出てしまったのだと。
全く悪気はないのだと。
むしろきちんと普段のフォルスよりも美しいのだと。
わかっている上での言葉だとしても、許せなかったのだろう。
ボノの口から正しい賛辞がでたのを確認したスライムたちは、しゅるんとその身を元の大きさに戻した。
「……あーもー悪かった! 俺が悪かったから! 落ち着いてくれよ。俺はその十字架がフォルス嬢の物か聞きたかったんだよ」
「ああ、基本王都の教会で直接授与されるべきものなんだっけ?」
「そうですね……例外はないとされています。基本は」
「何事にも例外があるんだって、重々承知していてもやはり教会関係はなぁ……いろいろな意味で例外っていうか……」
私の規格外な様子を見続けても尚、納得できない金色の十字架。
それだけ価値が高いものなのだろう。
「アランバルリ経由で王都教会の王位継承権第三位の方からいただきました」
馬車の中に充満している緊迫した気配が、その一言で霧散した。
「あーなるほど」
「アランバルリ経由ですか……理解しました」
「私が無理を通したとでも?」
「そうじゃないってわかっていたけど、嬢ちゃんの口から直接聞きたかったんだ」
「疑っていたわけではないんです。確信が欲しかっただけで」
それぐらい重要なアイテムなのだろう。
エンパイアラインのシンプルなドレスに金色の十字架はよく目立つ。
ちなみに他につけているアクセサリーはフラワーキリトリのファランジリングのみ。
金色にあわせて向日葵を採用した。
ファランジリングの向日葵は角度によって黄金にも見えるからね。
「そうそう。今回教会へいろいろなレシピを提出する予定なんだけど……」
「嘘だろう?」
「何のレシピですか!」
「はいはい、落ち着いてねー。サバイバル料理とコース料理。それから薬だね」
「サバイバル料理? それなら冒険者でも簡単に作れるんじゃねぇか?」
「コース料理? 商人ギルドでは需要が高そうなレシピですね……」
二人の目がぎらぎらと輝く。
気持ちはわかるけど、どちらも教会に提出するので、そちらから手に入れてほしいです。
「薬なんだけど、ドーベラッハで講習をしたレシピも提出するわよ」
「……講習してもらった意味がねぇじゃんか」
「……私たちの選別が甘かったんだとは思いますけど……口惜しいです」
先ほどまでのぎらぎらした眼差しが、一変してどんよりとしたものになった。
実にわかりやすい変化だ。
「仕方ないでしょう? レシピどころの騒ぎじゃない、駄目加減だったんだから」
「あー聞いてる。俺には無理だ、あんなちまちました作業! って絶叫した奴もいたし」
「こちらもです。面倒な手間が多すぎると文句を言われました。希少なレシピが簡単にできるはずもないというのに……」
『愛は簡単にできるのねー』
『それ、声に出していっちゃ駄目よ?』
脳内に自慢げなリリーの声が届く。
私は完全調合を持ってるから、さくさく作れちゃうのよ。
容器付でね。
スキルがなくても時間をかけて丁寧に仕上げる工程を繰り返していれば、素敵調合のスキルぐらいは会得できるはずなんだよ。
上級スキルを会得すればもっと早く簡単な手間でできるんだけど……そこまで頑張れないのかしら。
我慢が足りない系?
「一応ドーベラッハにはお世話になっているから、レシピや販売の優先とかはお願いするつもりだけど……」
「さすがは、フォルス嬢だな!」
「感謝します! 今度は別の視点から捜してみますね!」
薬師ギルドでも腐っていない人がいるかもしれないしね。
もしいるならその人を中心に頑張ってもらった方が効率的な気がするよ。
「あ、あとね。オークション。私が今回インセクトダンジョンで入手したアイテムだけで開けそうなんだけど……あえて、教会からの出品もお願いしようかと思っているの」
「それって大丈夫なんか?」
「あくまでも打診ね。断られたらそれはそれで構わないわ」
「……ドーベラッハの商人ギルドからも出品は可能ですか?」
「あら、出してくれるの?」
「曰くつきアイテムとか死蔵されている品がいくつかあります。この機会になら大丈夫かと」
会頭が騙されて押しつけられた品とか山ほどありそうよね。
「ちょっと見てみたいかも」
「そんなんでよけりゃ、冒険者ギルドもあるぜ。死蔵アイテム」
こっちは冒険者が困り果てているのを見かねてボノが引き取ったとかかしら。
「インセクトダンジョン踏破記念もあるからね。ドーベラッハのギルドが出品してもおかしくないでしょ」
「正直、助かります」
「死蔵品を金にできる機会なんて本来ねぇからな」
そう。
だからこそ死蔵品と呼ばれるのだ。
「一応出品予定の鑑定書は見たいかな」
「フォルス嬢が買ってくれてもいいんだぞ?」
「私が入手したドロップ品より好ましい物があるとは思えないわ」
「ちがいねぇ!」
それでも村で使える物があるかもしれないじゃない?
私やスライムだけじゃなくて。
村民の生活が楽になるアイテムでもいいしね。
「誰も使いこなせない……ゆえに死蔵されているアイテムもありますからねぇ……王都ギルドが口を挟んでこないといいのですが」
「挟ませないわよ」
まぁ、それも教会での会談次第だけどね。
私がふうと軽い溜め息をつけば、馬車の中。
空中にカップスタンドが現れる。
馬車の揺れ関係なく安心してカップを置けるスタンドなのだと、サクラが教えてくれた。
カップの中身はよく冷えたベリーウォーターだった。
私が一口飲む間にボノは一杯を飲み干しており、スルバランは鑑定をしている。
またしても張り詰めていた空気が緩んだので、サクラの頭を丁寧に撫でておいた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 まったり中 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
気がつけば体にひっかき傷が……無意識に掻いてしまうんですよね。
先日は結構激しい傷を発見しました。
そんなときはオロナインです。
小さい頃からの常備薬。
お世話になっています。
次回は、 教会へ行く途中で。(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。




