表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/198

どうんとすたぱの養殖講習。

 宝塚版ベルばらを見てきました。

 コミックスで予習をしていったので、あーこのエピソードは採用するよねーと一人で頷いていましたよ。

 今回はフェルゼン編だったんですが、オスカル編やアンドレ編も見てみたかったです……と言ったら、友人がここで見られると思うよーと、いろいろと教えてくれました。

 精通している友人がいると有り難いですよね。

 


 モルフォが指定された場所は養殖候補地。

 ローズのミートキリトリ候補地よりも条件に該当する場所は多かったはずだ。

 いくつかの候補地を回るのかな? と考えていたら、確定だと言われてしまった。

 

「ん。自信満々なボノには不安しか感じないの。スルバランは止めなかったの?」


 止めても駄目だったのかもしれない。

 スライムたちに怒られればいい! と内心で激怒しているスルバランが想像できた。


 モルフォの考えはあながち間違っていなかったらしい。

 驚くべきことに候補地に行く前に五人もの男女が道を塞いだのだ。


「のぅ、こいつか?」


「でねぇのか? 色を聞いとけば良かったわい」


『ん、これが老害なの!』 


相槌がこないのを悲しく思いつつも、足腰がよぼよぼの老人たちを無視して先を急ぐ。


「ま、待つのじゃ!」


「老人を労れ、スライム!」


「これだからモンスターは駄目なのじゃ!」


『ん。駄目なのは御老人たちなの』


 距離をあけてから振り返ってにやりと笑ってみせる。

 スライムスマイルは悪感情を抱く者に不快感を与えるものだ。

 老人たちは恐怖を覚えたらしい。

 仲良く、ひ! と飛び上がっていた。

 これ以上腰を痛めるような反応は止めてほしいものだ、と冷ややかな眼差しを残したモルフォはスピードをあげて老人たちを置き去りにした。


「よろしくお願いします!」


 候補地で既に待っていた十人は、やる気に満ち溢れた若人だった。


『ん。この人たちで十分なの』


 と内心で決めつつも、念の為に老人について聞いてみた。


「ん。ここに来る途中で御老人に絡まれたの。何か事情を知っているの?」


「あー。申し訳ありません。依頼というかお話は僕たちにいただけたのですが、その……御近所の暇をしているクソろうが! ……御老人が、わしらが監督してやるから、きりきり働けよ! と首を突っ込んできまして。止められずに申し訳ありません。御老人の御家族には一応話をしていたのですが……」


「ん。家族でも止められなかったの」


「の、ようです」


「ん。御老人は正式に依頼を受けたわけではないの?」


「はい! 全く関係ないのにしゃしゃり出てきただけです!」


「……農業経験もほとんどない方たちばかりです……」


 若くて可愛い女の子がそっと囁いてきた。

 御近所というか、街でも評判の困った方々なのだろう。


「ん。じゃあ、まるっと無視をして話を進めるの」


「……こちらへ押し掛けてくると思いますが……」


「ん、助っ人を呼ぶから安心してほしいの」


 モルフォはローズに話しかける。


『ん、ローズ。困った人たちがいるから、排除をお願いするの』


『あら。本当にどの講習にも出没しますのね。全く空気を読んでいただきたいものですわ』


 呆れた声で承諾の返事があった。

 ローズに任せておけば安心だ。

 スライムの中ではダントツの攻撃力を誇る。


「ん。ローズに排除を頼んだの。安心なの」


「あ、あの赤いスライムかな?」


「お上品にしゃべる子よね」


 十人の表情が明らかに明るくなった。

 よほど心配だったのだろう。


 そして、ローズ!

 貴女有名みたいなの。


「ん。ここなの」


「はい。左側がどうん、右側がすたぱ養殖予定地……と伺っています」


「ん。どちらでも問題はないの」


どうん育成に必要なのは、水、モロコシ、塩玉、ちゅうぎむ。

 野生種は自分でそれらを適量摂取して体を維持している。

 だから個体別に味の差が多少でたりする。

 すたぱも同様。

 

 今回の養殖では味の均一化もこっそり目標にしているのだ。

 安定して美味しい物を提供!

 これ大事!

 とはアイリーン談。


 すたぱ育成に必要なのは、水、うすぎむ、きょうぎむ、塩玉、オリーブオイル、クックルーの卵。

 どうんより必要な物が多い。

 どれもそこまで入手が難しくない材料だが、しっかり与えないと味が落ちる。

 ぎむは近くで栽培させた方が良さそうだ。


「ん。水はどうすると聞いているの?」


「商人ギルドが水場の手配をしてくださるとのことです」


「ん。人が安心して飲める程度の水でないと困るの」


「あ、結構綺麗な水じゃないと駄目なんですね」


「雨水とか飲んでいるんだと思ってました」


「ん。それだと味が落ちるのね」


なるほどなるほど、と全員がメモを取っている。

 熱心でよいことだ。


「ん。できれば必要不可欠な三種類のぎむは栽培した方がいいの」


「そうなんですね? うすぎむ、ちゅうぎむ、きょうぎむ……俺は育てたことないけど」


「あ、私経験あります!」


「俺もいける。養殖地で育てていいんでしょうか? 環境的には適していると思いますが」


「ん。そうするとたっぷり食べてくれるから、美味しく育つの。どうんにはちゅうぎむ、すたぱにはうすぎむときょうぎむを食べさせるの」


 これもまたメモられている。

 広まっていない知識のようだ。

 

「ん。水とぎむは好きなだけ食べさせて大丈夫なの。ただ他の物は調整した方が美味しくなるの。加減は教えるの」


 メモの手が止まらないので、その他与えるべき物の適切な与え方を教えてゆく。

 当然質問も多い。


「塩玉はぱらぱらと振り掛ける感じでしょうか? それとも一か所からまとめて摂取させた方が良いのでしょうか?」


「ん。どちらにも満遍なく振り掛けるの。三日に一回で様子見。個体によっては欲しがるかもしれないけどあげすぎ厳禁なの。二倍までは大丈夫なの」


「クックルーの卵は新鮮な物がいいんですよね? 産みたてとか手に入るかなぁ」


「ん。産みたてが最高だけど、一か月までは安心なの。それ以上は駄目なの」


「モロコシはそのまま与えましょうか? 粉末状の方が食べやすそうな気もしますが……」


 細やかな質問に答えていると、ローズから連絡があった。


『駆除完了! ボノに丸投げいたしましたわ』


『ん。お疲れ様なの』


『今後一切関知させないと言っていましたわ。家族の許可を得て強制労働をさせると鼻息が荒くて……』 


『ん。家族にも嫌われていたの?』


『家長として、その妻や夫として傲慢に君臨し続けていたらしい……と聞きましたの』


『ん。愛には近づけたくないの』


『同感いたします。一度も遭遇しなくて幸いでしたわ』


 では引き続き頑張ってくださいませー、と応援の言葉を最後に会話が終わる。


「ん。今、ローズから連絡があって、御老人は強制労働になるらしいとあったの」


「本当ですか! やったぜ!」


「あの……御家族はなんと?」


「ん。許可は得ているの」


「ですよねー。本当に酷かったもんな、あいつら。うちのじっちゃん、ばっちゃんと同じ年とは思えないほど稚拙だったわ」


「これで御家族も安心ですわね。尻拭いから解放されてさぞ安堵されておられることでしょう」


 あちこちから喜びの声が上がる。

 皆も迷惑をかけられたが、真っ当な他の家族が随分と被害にあっていたらしい。

 もし強制労働で賃金が発生するなら、家族へ渡るように話をつけるのもありだろう。


「ん。ではまず五体ずつ出すの。与える物も提供するから、今までの説明の通り、世話をしてほしいの」


「はいはい! うわ! やわらか……」


「え? うっとりするほど良い艶加減……どうんもすたぱもこんなに綺麗な色だったかしら?」


 明らかに野生種より育ちが良さそうに見えるどうんとすたぱを、念入りにチェックした彼らがじっとモルフォを見詰める。

 モルフォは当然スライムスマイルでごまかしておいた。


 スライム内牧場でもストレスなく育てられていたどうんたちだが、プロの手はまた別物のようだ。

 しかも好みがあるらしい。

 十体がそれぞれ違う人間に懐く様子を見せたのには驚かされた。

 

「俺、絶対こいつは手放せない……」


「私も無理。こんなに懐くなんて思わなかった……」


 何と抱っこまでして愛でる者まで出だした。

 大丈夫だろうか?


「名前、つけようぜ?」


「つけると別れがたいわよ?」


「たくさん増やせば、母体となった奴らは残せるだろ? 残せますよね?」


 十人の必死な眼差しが向けられる。

 モルフォは厳かに頷いておいた。

 こうなる気は何となくしていたのだ。


「ん。残せるの」


 歓声が上がる。

 十人十色で喜んでいた。


 どうんとすたぱの養殖に関する未来はかなり明るいだろう。


   

 

 自分がプレイしているゲームの広告を見る度に、広告詐欺~と思っていたら、限定イベントで広告の内容を採用していて驚きました。

 広告詐欺クレームが入ったんでしょうか?

 イベントが多すぎて青息吐息なのですが、つい攻略してしまう今日この頃です。


 次回は、 スライム講習中のアイリーン。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ