どうんとすたぱの養殖講習。
宝塚版ベルばらを見てきました。
コミックスで予習をしていったので、あーこのエピソードは採用するよねーと一人で頷いていましたよ。
今回はフェルゼン編だったんですが、オスカル編やアンドレ編も見てみたかったです……と言ったら、友人がここで見られると思うよーと、いろいろと教えてくれました。
精通している友人がいると有り難いですよね。
モルフォが指定された場所は養殖候補地。
ローズのミートキリトリ候補地よりも条件に該当する場所は多かったはずだ。
いくつかの候補地を回るのかな? と考えていたら、確定だと言われてしまった。
「ん。自信満々なボノには不安しか感じないの。スルバランは止めなかったの?」
止めても駄目だったのかもしれない。
スライムたちに怒られればいい! と内心で激怒しているスルバランが想像できた。
モルフォの考えはあながち間違っていなかったらしい。
驚くべきことに候補地に行く前に五人もの男女が道を塞いだのだ。
「のぅ、こいつか?」
「でねぇのか? 色を聞いとけば良かったわい」
『ん、これが老害なの!』
相槌がこないのを悲しく思いつつも、足腰がよぼよぼの老人たちを無視して先を急ぐ。
「ま、待つのじゃ!」
「老人を労れ、スライム!」
「これだからモンスターは駄目なのじゃ!」
『ん。駄目なのは御老人たちなの』
距離をあけてから振り返ってにやりと笑ってみせる。
スライムスマイルは悪感情を抱く者に不快感を与えるものだ。
老人たちは恐怖を覚えたらしい。
仲良く、ひ! と飛び上がっていた。
これ以上腰を痛めるような反応は止めてほしいものだ、と冷ややかな眼差しを残したモルフォはスピードをあげて老人たちを置き去りにした。
「よろしくお願いします!」
候補地で既に待っていた十人は、やる気に満ち溢れた若人だった。
『ん。この人たちで十分なの』
と内心で決めつつも、念の為に老人について聞いてみた。
「ん。ここに来る途中で御老人に絡まれたの。何か事情を知っているの?」
「あー。申し訳ありません。依頼というかお話は僕たちにいただけたのですが、その……御近所の暇をしているクソろうが! ……御老人が、わしらが監督してやるから、きりきり働けよ! と首を突っ込んできまして。止められずに申し訳ありません。御老人の御家族には一応話をしていたのですが……」
「ん。家族でも止められなかったの」
「の、ようです」
「ん。御老人は正式に依頼を受けたわけではないの?」
「はい! 全く関係ないのにしゃしゃり出てきただけです!」
「……農業経験もほとんどない方たちばかりです……」
若くて可愛い女の子がそっと囁いてきた。
御近所というか、街でも評判の困った方々なのだろう。
「ん。じゃあ、まるっと無視をして話を進めるの」
「……こちらへ押し掛けてくると思いますが……」
「ん、助っ人を呼ぶから安心してほしいの」
モルフォはローズに話しかける。
『ん、ローズ。困った人たちがいるから、排除をお願いするの』
『あら。本当にどの講習にも出没しますのね。全く空気を読んでいただきたいものですわ』
呆れた声で承諾の返事があった。
ローズに任せておけば安心だ。
スライムの中ではダントツの攻撃力を誇る。
「ん。ローズに排除を頼んだの。安心なの」
「あ、あの赤いスライムかな?」
「お上品にしゃべる子よね」
十人の表情が明らかに明るくなった。
よほど心配だったのだろう。
そして、ローズ!
貴女有名みたいなの。
「ん。ここなの」
「はい。左側がどうん、右側がすたぱ養殖予定地……と伺っています」
「ん。どちらでも問題はないの」
どうん育成に必要なのは、水、モロコシ、塩玉、ちゅうぎむ。
野生種は自分でそれらを適量摂取して体を維持している。
だから個体別に味の差が多少でたりする。
すたぱも同様。
今回の養殖では味の均一化もこっそり目標にしているのだ。
安定して美味しい物を提供!
これ大事!
とはアイリーン談。
すたぱ育成に必要なのは、水、うすぎむ、きょうぎむ、塩玉、オリーブオイル、クックルーの卵。
どうんより必要な物が多い。
どれもそこまで入手が難しくない材料だが、しっかり与えないと味が落ちる。
ぎむは近くで栽培させた方が良さそうだ。
「ん。水はどうすると聞いているの?」
「商人ギルドが水場の手配をしてくださるとのことです」
「ん。人が安心して飲める程度の水でないと困るの」
「あ、結構綺麗な水じゃないと駄目なんですね」
「雨水とか飲んでいるんだと思ってました」
「ん。それだと味が落ちるのね」
なるほどなるほど、と全員がメモを取っている。
熱心でよいことだ。
「ん。できれば必要不可欠な三種類のぎむは栽培した方がいいの」
「そうなんですね? うすぎむ、ちゅうぎむ、きょうぎむ……俺は育てたことないけど」
「あ、私経験あります!」
「俺もいける。養殖地で育てていいんでしょうか? 環境的には適していると思いますが」
「ん。そうするとたっぷり食べてくれるから、美味しく育つの。どうんにはちゅうぎむ、すたぱにはうすぎむときょうぎむを食べさせるの」
これもまたメモられている。
広まっていない知識のようだ。
「ん。水とぎむは好きなだけ食べさせて大丈夫なの。ただ他の物は調整した方が美味しくなるの。加減は教えるの」
メモの手が止まらないので、その他与えるべき物の適切な与え方を教えてゆく。
当然質問も多い。
「塩玉はぱらぱらと振り掛ける感じでしょうか? それとも一か所からまとめて摂取させた方が良いのでしょうか?」
「ん。どちらにも満遍なく振り掛けるの。三日に一回で様子見。個体によっては欲しがるかもしれないけどあげすぎ厳禁なの。二倍までは大丈夫なの」
「クックルーの卵は新鮮な物がいいんですよね? 産みたてとか手に入るかなぁ」
「ん。産みたてが最高だけど、一か月までは安心なの。それ以上は駄目なの」
「モロコシはそのまま与えましょうか? 粉末状の方が食べやすそうな気もしますが……」
細やかな質問に答えていると、ローズから連絡があった。
『駆除完了! ボノに丸投げいたしましたわ』
『ん。お疲れ様なの』
『今後一切関知させないと言っていましたわ。家族の許可を得て強制労働をさせると鼻息が荒くて……』
『ん。家族にも嫌われていたの?』
『家長として、その妻や夫として傲慢に君臨し続けていたらしい……と聞きましたの』
『ん。愛には近づけたくないの』
『同感いたします。一度も遭遇しなくて幸いでしたわ』
では引き続き頑張ってくださいませー、と応援の言葉を最後に会話が終わる。
「ん。今、ローズから連絡があって、御老人は強制労働になるらしいとあったの」
「本当ですか! やったぜ!」
「あの……御家族はなんと?」
「ん。許可は得ているの」
「ですよねー。本当に酷かったもんな、あいつら。うちのじっちゃん、ばっちゃんと同じ年とは思えないほど稚拙だったわ」
「これで御家族も安心ですわね。尻拭いから解放されてさぞ安堵されておられることでしょう」
あちこちから喜びの声が上がる。
皆も迷惑をかけられたが、真っ当な他の家族が随分と被害にあっていたらしい。
もし強制労働で賃金が発生するなら、家族へ渡るように話をつけるのもありだろう。
「ん。ではまず五体ずつ出すの。与える物も提供するから、今までの説明の通り、世話をしてほしいの」
「はいはい! うわ! やわらか……」
「え? うっとりするほど良い艶加減……どうんもすたぱもこんなに綺麗な色だったかしら?」
明らかに野生種より育ちが良さそうに見えるどうんとすたぱを、念入りにチェックした彼らがじっとモルフォを見詰める。
モルフォは当然スライムスマイルでごまかしておいた。
スライム内牧場でもストレスなく育てられていたどうんたちだが、プロの手はまた別物のようだ。
しかも好みがあるらしい。
十体がそれぞれ違う人間に懐く様子を見せたのには驚かされた。
「俺、絶対こいつは手放せない……」
「私も無理。こんなに懐くなんて思わなかった……」
何と抱っこまでして愛でる者まで出だした。
大丈夫だろうか?
「名前、つけようぜ?」
「つけると別れがたいわよ?」
「たくさん増やせば、母体となった奴らは残せるだろ? 残せますよね?」
十人の必死な眼差しが向けられる。
モルフォは厳かに頷いておいた。
こうなる気は何となくしていたのだ。
「ん。残せるの」
歓声が上がる。
十人十色で喜んでいた。
どうんとすたぱの養殖に関する未来はかなり明るいだろう。
自分がプレイしているゲームの広告を見る度に、広告詐欺~と思っていたら、限定イベントで広告の内容を採用していて驚きました。
広告詐欺クレームが入ったんでしょうか?
イベントが多すぎて青息吐息なのですが、つい攻略してしまう今日この頃です。
次回は、 スライム講習中のアイリーン。(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。