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ミートキリトリの養殖講習。

 食べ放題はそろそきついはずなのに、心惹かれるお店が多くて困ります。

 そういえば今度友人といく劇場でのランチはビュッフェだった。

 友人曰く早めに食べないと劇場が混雑するのだとか……。

 

 


 ローズは他のスライムたちから羨ましがられた。

 ローズの講習を受ける者は十分に厳選されていたからだ。

 ミートキリトリの養殖。

 失敗できない街ぐるみの事業だ。

 今後の街の発展に貢献できる事業に参加したい者は少なくないだろう。

だからこそ、異分子が紛れ込んでいるのではないかと勘ぐってしまう。


 皆とは違い施設ではなく用意された養殖候補地へと向かった。

 向かう途中、子供たちに絡まれかかったが、講習の話は随分広く知れているらしく、親ではない大人たちが『スライムちゃんたちはお仕事だから、邪魔しちゃだめよ!』と注意しながら引き戻していた。

 名前を呼ぶのを許していないので仕方ないのだが『スライムちゃん』と呼ばれるのは気が抜ける。

 今もまたこっそりとずっこけてしまった。


「ここですわね?」


 ダンジョンと同じ状態が好ましいとされるミートキリトリ養殖地。

 ギルドが悩んで選んだのは、元ダンジョン跡地。

 随分と都合良くあるものだと聞いたら納得。

 インセクトダンジョンの一部が何らかの理由で分断されて、その機能をなくした、ということだった。

 そもそもダンジョンが分断されるなんてあるのか? と思ったが、この世界では比較的よく見られるらしい。

 半分に分断されたダンジョンなどは、どちらもそのままダンジョンとして機能した例もあるようだ。


 元ダンジョン跡地はモンスターこそ出ないものの、環境としては改善が難しく、ダンジョンによくある適度な湿気のある暗所としての状態を維持している。

 洞窟の入り口を前にすれば湿気がしっとりと溢れ出てくるようだった。


「ローズさん? で良かったかしら。私たちが選ばれた元テイマーと現テイマーです」


「元テイマーはドラゴンのブローチを、現テイマーはスライムのブローチをしていますわ!」


 正反対のテイマーが二人、一歩前に出た。

 老女で元テイマー。

 若い女性で現テイマー。

 気のせいでなければ二人の間には何らかの確執を感じた。

 二人の後ろでは三者三様の表情を浮かべたテイマー。

 元テイマー六人、現テイマー二人の合計十人。

 よく集めましたね? というのが第一の感想。

 現役の冒険者ギルド職員、現役の商人ギルド職員、食べる物に不自由している家族なども手配するという話だったのだが、現時点ではテイマーだけで問題ないのだろうか。

 初期の段階で顔を出していた方が良さそうだが。

 数が増えてからまた考えるのかもしれない……と一人結論づけたローズは口を開く。


「……まずはダンジョンの中を案内していただきたいわ」


「はい! 私が案内しますね!」


 現テイマーが元気よく手を上げる。

 赤いスライムバッジがきらっと輝いた。

 ローズに媚でも売っているのだろうか?

 笑顔だが目は笑っていない。

 老女元テイマーが聞こえないように溜め息を吐いた。


 説明が満足にできないなら変わってもらえばいいだろう。


「ええ、よしなに」


 言葉少なに応えれば眉毛がぴくりと不愉快な反応をする。

 若さゆえかしら。

 もう少し取り繕ってほしいものだ。


「では案内いたしまーす!」


 実にわざとらしい明るさで先導するので、その背後に続く。

 他のテイマーたちは言葉もなく、ローズに付き従った。

 まるでテイマーたちの方が、テイムされているように見える。


「こちらの元ダンジョンは三階層になっております。広さもインセクトダンジョンの半分ほどです。養殖が順調なら拡大しないとですね!」 


「水場の確保はできておりますの?」


「三階に湧き水がありますので、当初は三階で。数が順調に増えるようであれば、二階、一階と水を溜める池を作ろうかと考えております」


「ちょ! 私が答える役でしょう?」


「誰も賛成しなかったじゃろ? 皆の意見では私が説明役じゃったはず」


「うるさいなぁ! ローズだって、若い私に説明して!」


「……貴様に、名前を、許した、覚えは、ございませんのよ?」


 ~さんづけをされれば返事はする。

 そもそも老人には基本的に敬意を払う。

 アイリーンの価値観を尊重するのも庇護者の務め。

だがつけあがった若者には躾が必要だと思っている。


「で、でも!」


「……管理人は九人で事足りましょうか?」


「大丈夫でございます」


 老女がゆっくりと腰を折った。

 現テイマーの二人が何か言いかけたが口を噤んだ。

 若い彼女に対して守る情はなかったようだ。


「ふざけんな! 何のためにスライムなんかに媚を売ったと思って!」


 ふおん!


「ぎゃああああ!」


 ローズの触手一振りで若い女は洞窟の外へと飛んでいった。


「誠に申し訳ございません、ローズさん。同じ現テイマーとしてお詫び申し上げます」


「止められずにすみません」


 二人が老女よりも深く頭を下げる。

 

「アビガイル師匠。申し訳ありません」


「何度も言いきかせていたのですが……」


「私への謝罪は不要じゃよ。しかし残念じゃ。テイマーとしては優秀だったのじゃがなぁ……」


 老女はアビガイルという名前らしい。

 現テイマーから師匠と呼ばれるのだ。

 優秀で信頼されているのだろう。

 管理に関しては彼女が中心で良さそうだ。


「アビガイル?」


「はい、ローズさん」


「貴女に管理人のまとめ役をお願いしてよろしいかしら?」


 アビガイルは周囲を見回す。

 反対する者はいない。

 全員が揃って頷く。


「結構な年でございますので元テイマーと現テイマーから、一人ずつ補助役をつけてもよろしゅうございますか?」


「ええ。人選はお任せいたしますわ」


「では、セレドニオ、ベルナルディタ、頼んだぞ」


 選ばれたのは三十代ぐらいの男女。

 二人は返事と同時に頭を下げる。

 他のスライムたちから見れば羨ましがられそうなスムーズさだろう。


「水についてはこれで問題ありませんわ。あとは餌ですわね」


「低階層モンスターで問題ないと伺っておりますが」


「生き餌であれば美味しくできるとサクラが言っておりましたのよ?」


 アイリーンが、黒く光り輝く奴は餌にしないでぇ! と悲鳴を上げていたが、この場でいう必要はないだろう。

 奴は六階のモンスターだ。


「では定期的にテイムしてくればよろしいでしょうか?」


「一、二階のモンスターであれば、テイムしなくても睡眠薬で捕獲は可能ですね」


「結界を張った上で繁殖させるのは不可能でしょうか?」


 次々と意見や質問が出る。

 なかなかやる気があってよろしい、とローズは頷く。


「テイムしたモンスターを、すぐ殺すことになってもかまわないのでしょうか?」


「……正直モンスターであれば、種類は問わずに抵抗はありますのじゃ。共にある相手としてテイムするのが基本でございますれば……」


「ローズさんが放逐した彼女でしたら抵抗なかったとは思いますが。テイマーの間では少数派で……は! ローズさんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」


「親しくなってからなら呼び捨てもありですわ」


「ふふふ。ローズさんのような寛容な方にあのような態度……放逐で、少しは懲りてくれればいいのですが」


 無理かなー、と言った本人どころか全員が無言で頷いている。

 どれだけの困ったちゃんだったのだろう?

 若さゆえの過ちと、遠い未来に振り返れればいいのだが。


「では現時点では睡眠薬を使用。供給が追いつかなくなったら餌の繁殖も考えましょう」


 昆虫系の繁殖は手放しで進められない。

 へたを打てば人工スタンピートにもなりかねないからだ。

 インセクトダンジョン一、二階のモンスターであれば比較的管理がしやすそうであるが、こちらは慎重にゆくべきだろう。


「では母体となるミートキリトリをテイムしに行きましょうか」


「あ。母体は必要なのですね」


「雌雄はないけれど二体必要とのことですわ。モンスターの神秘ですわね」


 神秘と表現すれば不思議そうな表情をされた。

 アイリーンに言わせればモンスターの存在もテイマーの存在も神秘らしいのだけれど。


「三組ぐらいテイムしましょうか?」


「それぞれ違う餌を与えて、味の検証などをしても良さそうですね」


「では取りあえず三組をテイムしてくださいませ。私は見学させていただきますわ」


 とローズが告げれば、ええー! と残念そうな声が上がった。

 一番大きな声を出したアビガイルが何だか可愛かった。


 は、これは老女萌え?


 萌えやすいローズはまた一つ、新たな可能性を見いだしたようだ。


 

 舞台を見に行くとき、原作があると事前に予習をしますか?

 今回は予習必須かな? と無料で見られるサイトを探し、なんとなくストーリーを把握し、メインのメンバーの関係性は理解しました。

 これで準備は万端……のはず。


 次回は、 どうんとすたぱの養殖講習。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

 

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