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簡単! ホットサンド。

 ホットサンド食べたい!

 ホットサンドメーカーできっちりプレスされた物が食べたい。

 と、検索したら、ホットサンド専門店とかあって驚きました。

 行けない距離ではないので、ちょっと覗いてみたいところです。


 料理描写を書いていると大体、その料理が食べたくなるのが困りものです。

 時々、リアルで作ったりもします。

 



 狭いながらも日本の良質ホテルレベルにまで整えた部屋で、私は簡易キッチンセットを出して腕を組む。


「んっ! どうしたのっ?」


「小腹空いたんだけど、何を作ろうかと思って……」


「愛! 外の奴等が鬱陶しいからカーテンつけてもいいわねっ!」


 ローズが窓辺で外を睨み付けながら言うので、手持ちの布から良いサイズの物を出してカーテン代わりにするようにと告げる。

 3個ほどある窓からは、村人達が中を覗き込んでいて気持ちが悪い。

 声を枯らし髪を振り乱して叫んでいる様子も窺えたが、ローズの完全防御が騒音も攻撃と判断したらしく、騒音による被害は受けていなかったが鬱陶しいのには変わりなかった。

 ローズがサイと一緒に窓にカーテン代用布をつけてくれたお陰で、視線が完全に遮断される。

 

「まだ気配が鬱陶しいのです。いっそ直接的な攻撃を仕掛けてきたなら排除できるのですが……」


「うっ! 村長が止めているらしいのよっ。今までの攻撃が全反射されているから、皆指示に従っているのよっ」


「……今外へ出ると面倒なことになりそうだから、ちょっとの間我慢するのねー。食事は何か良い匂いがする物をオススメするのねー」


 執拗な視線は無視するに限ると知っていても悍ましいものだが、今はスライム達が側に居てくれるお陰でかなり軽減されている。

 奴等と対峙するのは最低限と決めた。

 今は忍耐の一手だろう。

 無論、リリーの言葉に従って反撃はするが。


「そうだねぇ。料理上手をアピールすると、奴等は一層私の価値を上げてくれるでしょうからねぇ」


 言いながら私は自分の考える暗黒微笑を浮かべた。

 スライム達が私の微笑を見て、黒愛なんて! いや、悪愛です、邪愛なのっ! と楽しそうにやりとりしている。


「厚切りポークのショウガ焼きを挟んだホットサンドとかどう?」


「最高です!」


 サクラが飛び上がって喜んでいる。

 他の子達の反応も良い。

 しかし、そうなってくると日本製の調味料が切実に欲しい。

 特に、みりん、醤油、日本酒が必須だ。

 ショウガ焼きもどきでは、盗賊達をうらやましがらせる匂いが出せそうになかった。


「……料理魔法の上限突破がどこまでてきるか解らないけど……挑戦するだけしてみよう。日本製調味料を所望します! みりん、醤油、日本酒必須です。後は……味噌、お酢、ソースもあると嬉しいです! あ! 鰹節! 荒削りと細かい方両方で!」


 塩と砂糖はこちらの物でも全く問題ない。

 ただ出汁調合のように似た食材が全てあるとも限らないので、今回希望する調味料各種に関しては召喚形の方が良さそうだ。


 容器は天才なスライム達が作ってくれた、調味料用の容器を並べて貰った。

 土の上に木のペンで描いたイラストを忠実に再現できるんだよね、この子達。

 ありがたすぎて、拝むしかないよね。

 ありがたやー。

 も一つおまけで、ありがたやー。


 心の中で拝んでいる内に調味料が出来た。


 醤油差し(蓋が白)入り 白醤油

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 血液さらさら効果有。


 醤油差し(蓋が茶)入り 薄口醤油

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 血液さらさら効果有。


 醤油差し(蓋が黒)入り 濃い口醤油

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 血液さらさら効果有。


 ボトル入り みりん

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 貧血予防効果有。


 ボトル入り 料理用日本酒

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 飲めなくはないがオススメしません。

 殺菌効果有。


 便利容器入り 味噌(白、赤、合わせ) 専用へら付

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 仕切りで分かれていて3種類の味噌が入っている便利容器仕様。

 ダイエット効果有。


 ボトル入り 米酢

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 疲労回復効果有。


 ボトル入り ソース

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 老化防止効果有。


 便利容器入り 鰹節 荒削り&細削り 専用スプーン付き

 ランクSSS

 こちらの世界の食材一切なし純日本製。

 素材は全て日本製なので安心の一品。

 当然激レア味。

 仕切りで2つに分かれている。

 つかお節よりも、濃厚な出汁が出ます。

 またそのまま振りかけたり、和えたりするのもオススメ。

 ストレス解消効果有。


 うぉー!

 味噌と醤油が特に凄い。

 言わなくても3種類とか感激。

 あ。

 ソースはトンカツソースだけかな?

 ウスターは異世界食材で作れってことかしら。

 お酢も米酢だけだしなぁ。

 穀物酢はさておき、黒酢は欲しいかも。

 日本製調味料アレンジ能力とかつかないかしら。

 まぁ、今はそこまで贅沢も言うまい。

 心のメモに書いておくとしよう。


「さ! これでポークのショウガ焼きホットサンドができるのね!」


 私の心を読んだかのように、使いたい食材が作業台の上に置かれている。

 うちの子達が優秀すぎて辛いです。


「じゃあ、パンの良い匂いをさせてから、ポークのショウガ焼きにかかろうかな」


 頬を軽く叩いて気合いを入れた私は、オーブンの中へ塩玉とぱんだね? を捏ねた物を入れる。

 

「ホットサンド用のライぎむパンを宜しくー。出来た後は開けるまでそのままの状態維持で。何時もより良い匂いを振りまく感じでお願いね-」


 囁きながらスイッチを入れれば、間を置かずにパンの焼ける良い匂いが部屋中に充満する。

 壁&天井移動も自在なルンが煙突掃除もしてくれたので、焼きたてのパンの匂いが家の外へも流れ出ているだろう。

 すっげぇ美味そう! 

 俺こんなパンの良い匂い嗅いだことねぇよ!

 金払ってもいいから食わせて貰えねぇかなぁ……。

 といった、褒める言葉のみが届けられる。


「次はショウガ焼きの良い匂いを存分にさせるのね-」


 ポークロースを厚切りにスライスして少量の塩コショウを振る。

 ネギタマもたっぷり刻んだ。


「あ! 飲み物どうしよう。スープ作る? それともベリー系のティーにしておく?」


「ん! ベリー系のティーでさくさくと食べ終えたら、お買い物をするのっ!」


「う! 愛の手料理食べたさに、こちらに有利な交渉ができると思うのよっ!」


 おぉ。

 モルフォとサイがリリー化してゆく……純真なスライムが一人ぐらい居てもいいと思うのだけれど。


「まともな商品があるとは思えないのです……」


「そこを強引に交渉するのが私達の役目よ、サクラ!」


 イマヒトツ乗り気ではないサクラの背中? を叩くローズ。


「サクラの気持ちも良く解るけど、私達が人相手に買い物できる機会は滅多にないと思うのねー。初回が悪党でレベルが高いけど、ローズの言うとおりやりがいがあるのねー」


 ぽにょぷにょと跳ねて側に行ったリリーの言葉に、サクラのやる気スイッチも入ったようだ。


「解ったのです! 気合いを入れて鬼畜な交渉をするのです!」

 

 その気になったサクラの交渉は最強だろう。

 何せ彼女は鑑定スキル持ちだ。

 相手の嘘を僅かにも許さない。


「じゃあ、手早く作っちゃうね」


「ティーセットは任せるのです!」


 胸? を張るサクラがティーセットを出して、ベリーティーの用意を始める。


「私はオレンジベリーティーで宜しくねー」


 声をかけるとフライパンにポークの脂身を少量を置いて、ネギタマを炒める。

 くったりしたところで一端フライパンから上げて、陶器のトレイへとよけておく。

 続いてポークを置いた。

 こちらに脂身は必要ない。

 強火にかければ、豚肉の良い香りが部屋中に充満する。

 外の気配は先程よりも切羽詰まった気がしないでもなかったが、当然無視して料理を続けた。


 厚切りポークなので念の為に蓋をして蒸し焼きにする。

 ワインが欲しいところだ。

 鑑定には、ブラウン、ホワイト、レッドワインが表示されていた。

 盗賊ならば酒は必須だろう。

 持っているなら吐き出させたい。 


 肉に良い感じの焦げ目がついたところで、よけておいたネギタマを入れて、あらかじめ混ぜ合わせておいた酒、砂糖、醤油、みりん、サイが高速ですりおろしてくれたショウガを投入。

 調味料は混ぜておくと具材に万遍なく絡むので、洗い物が一つ増えるがやっておいた方が良いと下準備。

 特に調味料を後から投入する場合にはオススメだ。

 

 肉を何度かひっくり返して、ネギタマと調味料もよくよく絡めてから、火を止める。

 フライパンも布巾の上へ移動しておいた。

 ポークショウガ焼きの匂いは外の人々を発狂寸前まで追い込んでいるらしい。

 そんな特殊効果はついていないと思うのだが、それだけ美味しい物に飢えているのだろう。

 何人かが家へ侵入しようとして吹っ飛ばされていると、ローズが報告してくれた。


 ふわふわもちもちに仕上がっている正方形のライぎむパン白二枚を使って、ショウガ焼きを挟み込む。

 滴ってくるタレを思わず舌で嘗め取ってしまったが、好みの味に仕上がっていた。

 

「絶妙プレスでお願い。ショウガ焼きのタレがパンに染み込む感じだと更に萌えます」


 囁いてオーブンのスイッチを入れれば、次の瞬間には仕上がった。

 背後で、早く食べたい! と、飛び跳ねまくっているスライム達の情熱が伝わったのかもしれない。


「出来たよー!」


 オーブンから中身を取り出せば、待ちきれなかったスライム達が自分の皿を持ってスタンバイしていた。

 全員の皿に載せて、サクラが持っていた私用の皿にも入れる。

 簡単に片付けをしようと思ったら既に終わっていたのに苦笑して、テーブルへ移動すればテーブルの上に何時の間にか花瓶に花まで生けられているのに感動する。

 セッティングされたティーカップには、オレンジベリーを薄くスライスされた物が入ったオレンジティーが注がれていた。


「お待たせー! それでは、いただきます!」


「「「「「いただきます!」」」」」


 揃って一口で食べかけたスライム達が、私がホットサンドを半分に切っているのを見て、それに倣う。

 タレの大半をパンが吸ってくれていたので、切ってもタレが滴り落ちたりはしなかった。

 我ながら綺麗に切れた断面図に向かって齧り付く。

 焼きたてパンの食感と香ばしさが最高だ。

 ポークの脂とネギタマの甘みとショウガのピリ辛の加減が絶妙だ。

 口に残る僅かな脂もオレンジベリーティーが綺麗に拭い去ってくれる。

 うん、完璧だ!


「う! 焼きたてパンのホットサンド最高なのよっ!」


「ん! 焼きたてじゃなくてもたぶん、ホットサンドにすると最高になるのっ」


「厚切りポークは食べ応えがあるのねぇ! この甘塩っぱい味は、ご飯にもきっとあうんでしょう?」


「ご飯が早く見つかるといいのです。薄切りポークでも食べてみたいのです」


「ふっふ。美食に慣れたはずの元王族を発狂寸前まで追い込むこの香り! 愛の手料理は素晴らしいのね-」


 そうだよね。

 お米食べたいよね。

 私が何かと騒いでいるからね。

 鑑定でお米表示はまだ出ていないから、もしかしたら日本製調味料みたく召喚しなきゃならないのかも。

 ……何もかも一度にはできない。

 今でも十分に恵まれた食生活だ。

 こちらで一通り探してからにしよう。

 日本米はさておき、それ以外の米がある可能性は低くない。

 

「サクラー料理鑑定して貰っても良いかなぁ? 幾ら何でも匂いへの反応が凄すぎる気がするんだよねー」


「愛の懸念はサクラの鑑定で解消されるのです。はい、どうぞ!」


 ポークのショウガ焼きホットサンド

 ランクSSS

 日本製調味料がたっぷりと使われている、この世界にない味のホットサンド。

 また、サンドイッチは貴族仕様の高級品。

 ホットサンドは存在していない為、超希少な料理。

 このホットサンドのみの販売でも、一財産作れる代物。

 食欲増進効果有。

 やみつき効果有。


 オレンジベリーティー

 ランクA

 新鮮なオレンジベリーのスライスを浮かべたおしゃれな一品。

 使われている砂糖は、3種類の砂糖の中でも一番希少とされる茶砂糖を使っているので高く評価された。

 またスライム達が頑張った結果、茶葉の完璧な乾燥のお陰で既存の物よりも芳香豊かな逸品に仕上がっている。

 リラックス効果有。

 

「匂いだけでも効果が出るのねー。 食欲が増進しているにも関わらず食べられないからバッドステータスの飢餓がついてる奴等もいるのねー」


「好き勝手に生きてきた犯罪者だから我慢がきかなくて暴走してるみたいよ!」


「あら、じゃあ今外へ出たら危険かしら?」


「普通に考えたら危険なのです。でも、ローズが居る限り私達に危険はないのです」


「それもそっかー」


 当初の予定通り食事を終えたら何食わぬ顔をして外へ出て 、スライム達に買い物を楽しんで貰うのが良さそうだ。


「ん! まさか食べさせてあげるのっ?」


「取引の条件に使うだけかなぁ。たぶん取引内容に我慢できなくなって逆切れすると思うし」


 しかも取引相手がスライムだったら、呆気ないほど簡単に怒り狂ってくれるだろう。

 相手が屑であればあるほど、人を殺す禁忌が薄れる。

 初めての対人戦が屑で良かったと、しみじみしてしまいそうだ。


「危険察知と命止魔法がどこまで上げられるか楽しみだなぁ……あ! ローズ以外は、どう戦うの?」


「う! 今まで通りなのよっ。そもそも物理攻撃無効だから、魔法を避けながら丸呑み消化するのよっ。盗賊に味は期待していないのよっ」


 確かに汚れてるから美味しくはなさそうだよね、うん。


 ちなみに一般的なスライムは弱い魔法で倒せてしまうらしい。

 うちの子達は極悪な魔法ですら回避できるので、攻撃無効。

 つまりは出会ったら即時逃げるのが一番有効な手段なのだ。

 現に知恵のあるモンスター達は、逃げの一手だった。

 また、白旗を上げたモンスターもいた。

 基本的に駆逐対象ではあるが、命乞いする者をいたぶる趣味はない。

 そもそも意思の疎通ができるモンスターは希少なので、二度と敵意を向けない条件で解放している。

 今の所、条件が破られた例はなかった。

 人より余程信用できるというものだ。

 

「さ! 片付けたら行くわよー」


 ローズの声に、テーブルの上の食器類があっという間に片付けられる。

 新しく出した家具なども、全部スライム達の中に収納された。

 置いておいたが最後、家を留守にしているうちに全部盗まれるのは目に見えていたからだ。

 盗賊の手にかかれば簡易な鍵など意味はなさないだろう。


 きらきらと期待に輝くスライム達の視線を一身に浴びた私は、色々な交渉パターンを頭の中で練りながらドアを大きく開け放した。






喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 3


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用 new!!

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化 


 称号 シルコットンマスター(サイ) 


 料理魔法 レベル13 日本製調味料召喚

 次回は、せっかく人が出てきたので、盗賊サイドのお話を書こうかと思います。


 盗賊達の密談。


 長くなりすぎそうな予感がするので、登場人物は絞り込む所存です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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