家事妖精付きお屋敷。前編
人気公演なのでチケットが難しいかな? と思ってがっつり申し込んだら、だぶつきました。
平日、ランチ付き、連休明けが原因かな? と推測してみました。
せっかくなんで友人達に声をかけたのですが、他の推しに力を入れたいので……、平日は休みが取りにくいので……と断られました。
残念。
案内されたのは住宅地から少し離れた庭付き一軒家。
三階建て。
外観は優しい水色で統一された洋風建築。
お菓子の家みたい。
美味しそうとか思ってない!
「美味しそうですわ」
素直に言えるローズが羨ましい。
だって好きだったマカロンに似た色だったんだよ!
『素直になればいいのね~』
リリーにそっと囁かれたがさりげなくスルーしておく。
「失礼します!」
スルバランがドアノッカーを鳴らす。
「はい。お待たせいたしました」
か、家事妖精?
現れたのは白髪が見事な老齢の執事。
想像していたメイドさんとは違った。
隙なく着こなしたタキシードが眩しい。
「この家を借りたいという方を紹介しに来たぞ!」
「この方を逃したら駄目だと思うぜ!」
ボノとラモンが何故か肩を組んだままで説明をしている。
特にラモンの説明はどうかと思う。
スライムたちに護衛された執事は、じっと私を見詰めた。
大好きな女優さんと同じ色の瞳を、こちらも観察してしまう。
透き通ったブルーだ。
「ようこそ、おいでくださいました。アイリーン・フォルス様。この館をお気に召しましたら、どうぞ気の済むまで御滞在くださいませ」
名乗ってないしー。
執事スキルかなぁ?
スライムたちにも感知できなかったのだろう、全員が凄まじい勢いで脳内会話を繰り広げていた。
「……街長さんに勧められて、この街に拠点をと。永住するわけではありませんがよろしいですか?」
「無論でございます。別荘代わりに末永くお使いくださいませ」
「この屋敷でのルールは何かあるかな?」
「特にございません……と申し上げたいところでございますが、いくつかございます。まずは屋敷の中へどうぞ」
すばらしく典雅な所作で扉が開かれる。
私とスライムが足を踏み入れた。
当然のように三人が続こうとするも。
「貴男方は御遠慮くださいませ。フォルス様への御説明にはお時間をいただきますので、本日はお帰り願います」
扉の向こうへ告げる声は声優さんのようによく通った。
『フォルス嬢大丈夫か!』
扉を激しく叩きながらボノが声をかけてくる。
「ええ、問題ありません。明日ギルドへ顔を出しますから安心して帰宅ください。本日はありがとうございました」
スライムたちが声を上げないので、三人へ帰るように促す。
『……本日は誠にありがとうございました』
「ラモンさん?」
躊躇の気配を感じて重ねて問う。
ボノには言っても無駄だろう。
『……明日、お待ちしています』
スルバランとラモンはひとまず納得したようだ。
暴れるボノが引き摺られていく様子が目に浮かぶ。
「……贅沢な申し出と重々承知しておりますが、極力。フォルス様の御家族以外に足を踏み入れていただきたくないのでございます。後日であれば客人としておもてなしさせていただきますので……」
三人に対して不信感があるのではなく、私やスライム以外の者を入れたくないらしい。
家では家族や親しい者たちと心穏やかに寛いでほしいっていうスタンスなのかもね。
別荘として使うには勿体ないなぁ……。
でも家に憑いているなら、ホルツリッヒ村や王都に移動してもらうわけにもいかないし。
「客人はアイリーンが望まない者は入れないでいいのねー。貴男はこの家に着いている妖精なのねー?」
「そうでございます。この家の初代主が女性嫌いだったがために、私が召喚されました。以来家を護り続けております」
あ、召喚型なんだ。
え、家ごと召喚されたのかしら。
だとしたらすごくない?
「ふふふ。家と一緒に召喚されたわけではございません。まず家が建築され、続いて家を護るものとして召喚されました。愛された家から生み出される妖精もおりますが、自分のような家付き妖精も少なくないのです」
「え! 私声に出してました?」
執事はにっこりと笑う。
「……アイリーンは顔に出やすいのです」
サクラにぽしょっと言われてしまった。
えー、向こうでは基本ポーカーフェイスで通ってたんだけどなぁ。
「まずは簡単に家の中を案内いたしましょう。この屋敷は地下を含めると四階建てとなっております」
「ん。まずは地下から案内してほしいの」
「畏まりました」
スライムも家族扱いなのかな。
詳しく知りたい執事スキル。
『本人に聞くといいのです。鑑定は上手く読み取れないのです』
え?
サクラの鑑定を弾くとかどれだけすごいのよ、執事スキル。
「……家の説明より、自分のスキル説明を御所望でしょうか?」
「だ、大丈夫! 家の説明を先によろしく!」
読まれてる。
心、読まれてる!
ちょっとがくがくぶるぶるしたけど、私への害意を持たないのは直感的にわかったのでおうち探訪を堪能すると誓う。
執事さんの表情が若干和らいだ。
「地下はワインセラーと食料庫になっております。冷蔵庫、冷凍庫もこちらでございます。かなり拡張しておりますので、数年は補充しないでもお食事を楽しんでいただけるかと」
地下室へは階段で下りた。
扉には鍵がかかっている。
執事さんが扉を開ければ、圧巻の食料庫が広がった。
壁の一面はワインセラー。
赤、白、ロゼ、スパークリングワインに分かれている。
何故わかるかって? 説明の札がかかっているからです。
『普段使いから、オークションで良い値段がつくワインまでいろいろと揃っているのです』
サクラが教えてくれた。
執事さんお勧めのワインとチーズで晩酌も楽しそうだなぁ。
壁の一面は冷蔵庫で、一面は冷凍庫。
で一面は粉物とか調味料系。
……何畳くらいあるんだろう?
倉庫と表現されても納得の広さだった。
「ほこりっぽさとかないんだね?」
「毎日掃除をしておりますので」
「……誰もいなくても?」
「はい。それが家事妖精というものでございます。ちなみに……」
目の前にきらきらっと光の帯が走った。
「う。空気が澄んだのよ」
「掃除はこのようにいたしますので、簡単でございます。執事スキルの一つ。デイリークリーンでございますね」
毎日掃除……こ、こんなに簡単なら私でもできる!
「熟練執事のみ会得できるスキルでございます」
ですよねー。
「フォルス様がお作りになったルンとピュアは、執事スキルの上をゆかれるかと」
村に置いてきたのよ、ルンとピュア。
元気にしているかしら?
村中を掃除しまくっている気がする。
働き者だからね。
「職業が料理人とのことですので、こちらの品は御自由にお使いください。無論自分も料理は嗜みますので、基本は自分にお任せいただければ光栄でございます」
料理のできる執事、最高だよね!
「楽しみにしています」
「はい。久しぶりに腕が振るえる自分も楽しゅうございます」
軽く頭を下げられる。
「では、続いて一階でございますね」
地下へ続く扉を丁寧に施錠した執事さんは引き続き私たちを先導して、一階へと戻った。
「一階はキッチンとリビングになっております。キッチンは必要な設備がございましたら追加しますので、お申しつけくださいませ」
十人は座れるテーブルに椅子。
花瓶や絵画も飾られている。
品が良い広々リビングといった雰囲気。
キッチンは凄かった。
私が来るのを知っていたんじゃあ? というレベルで凄かった。
「……え?」
私がこちらに来て作ったキッチン用品が全て揃っている。
「パン工場があるんですけど……」
「試運転は済んでございます」
デフォルメされたスライムマークがボタンの下に可愛くついている。
このスライム印は複製不可だったはず。
スライムたちが仲良く触手を組んで悩んでいる。
「執事スキルの一つでございますね。悪用はできませんので御安心を」
「ああ、アイリーンが認めた人にしか見えませんのね」
「さようでございます」
す、ステルス機能付きのキッチン用品。
とんだハイスペックだわ。
使える者も当然限定されているのだろう。
「気になるものがあったらその都度作っていくので共有を」
「光栄にございます」
主人の許可が出るのはまた、別物のようだ。
出会ってから一番の笑顔が見れた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 家事妖精に興奮中 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
そろそろかき氷が食べたい季節になってきました。
かき氷専門店に今年こそ足を運びたいものです。
何度が挑戦しているのですが、微妙にすれ違って行けていないのですよ。
次回は、家事妖精付きお屋敷。前編(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。