街長と会合中。後編
石像の写真にお願い事をしたら効果があるかなぁ? と写真を眺めながら言ったら、お線香の香りが漂ってきました……リアル話です。
効果があるってこと?
むしろ危険だからやめとけってこと?
結構なオカルト脳なのでいろいろなパターンが浮かんで判断しかねます。
「おお! これなら出ようと思えば全部の講習に出られますな!」
「私たちは全部参加です。いいですね、ボノ?」
「……料理の試食だけなら喜んで参加するんだがなぁ……」
本気で言っているらしいボノの頭にはスルバランとラモンの拳骨が降り注ぐ。
ボノは涙目になった。
こりないなぁ。
「私は一通りの手配が完了するまでホルツリッヒ村にいますね」
「え! ドーベラッハにいてくれるんじゃねぇのかよ」
「王都に行くとなると相談が必要だし、やっておきたいこともたくさんあるしね」
ドーベラッハから送り込んだ、新しい住民たちの様子も気になる。
厳選した住民だから皆で仲良くやってくれているとは思うけどね。
そういえば教会にはアランバルリも連れて行きたかったんだけど……今、どこに滞在中かしら?
連絡取ってあちらで待ち合わせもありかな。
一緒に行っている住民たちには一度戻ってほしい気もする。
やっぱり相談だね。
アランバルリから定期連絡はくるけど、他の人たちからの連絡ってないなぁ。
まさかと思うけど羽目を外したりしていないよね?
奥さんたち、心配じゃないのかしら。
一応奴隷だから遠慮して何も言わない感じ?
その辺り、私が管理しないと駄目なのか。
良質な管理マニュアルとか探した方がいいのかも。
王都の本屋に売っているかな?
案外教会にあるかも?
などと考え込んでいると、ボノが深々と溜め息を吐く。
「あーそりゃ、残念だわ」
「……一度ホルツリッヒ村へも伺っておきたいのですが」
スルバランがお伺いを立ててくる。
気持ちはわかるが、しばらく拘束されるので難しいだろう。
「スライムたちに連絡をくれれば何時でもどうぞ? ただ講習は疎かにしないでくださいね」
もっともだと頷くスルバランに、残念そうな顔をするラモンとボノ。
「ラモンさんの御家族がいらしてくださっても構いませんよ?」
普通の宿だけでなく高級宿も必要かな。
まだ観光地にするにはいろいろと足りていないけれど、買い物と食事は楽しめるはず。
お風呂も貸し切りにすれば大丈夫でしょう。
「おお! 妻も子も喜ぶでしょう。是非お願いしたい!」
ラモンは喰い気味に腰を上げた。
噂は広がっているので以前から強請られていたのかもしれない。
特に私の着ている服とかね。
パウラの視線が時々痛かったし。
子供たちは食さえあれば良さそうだけど、せっかくだから体験してみてもいいかもね。
農作業体験とか新鮮……じゃないのかな?
貴族なら経験がなさそうだけど。
魚釣りとかもありよね。
自分の手で収穫したり釣り上げたりした物を食べる経験って、貴重だと思うんだけど。
まぁ、その辺はスライムたちと応相談かな。
「……しばらく時間の調整が厳しそうです」
「俺は大丈夫だぜ! 副ギルド長に頑張ってもらうし」
「お前、そりゃ……やめとけ。あいつ、暴走するぞ?」
スルバランが眉根を寄せている間に、楽観的なボノをラモンが咎めている。
副ギルド長の手綱を握れる者は少ないのだ。
ボノにはその辺しっかりしていただきたい。
「今回の会合はお開きでよろしいでしょうか?」
「はい! 細かいところまで手配いただきまして誠にありがとうございました! 引き続きいいお付き合いができれば大変光栄です」
びしっと直角お辞儀をしてきたラモン。
決めるべきところで決められるトップってポイントが高いわよね。
キャラクターは随分違うけど、ボノにも見習ってほしいわ。
私の心の声に反応したのかスライムたちが、うんうんと頷いている。
「冒険者ギルドもよろしく頼むぜ。副ギルド長筆頭に暴走しがちな奴は、する前に締めておくからな!」
有言実行で頼みますよ、と生温い目線を向ければ、スライムたちも倣う。
ボノはははははと乾いた笑い声を立ててから、頬をぽりぽりと掻いた。
「準備期間の五日間はまだドーベラッハにいらっしゃるんでしょうか?」
スルバランに言われてしばし迷う。
ドーベラッハの街を散策してもいいんだけど、人の目が鬱陶しそうだ。
何しろいろいろと目立っちゃったしね。
うーん、スライムたちには隠れてもらってローブを被ればいけるかなぁ。
私の印象よりスライムの印象が強いと思うし。
この世界の買い物とかほとんどしてないからなぁ……。
異世界食材とか面白いからもっと見て回りたいんだよね。
ついダンジョン攻略に力を入れちゃったからさ。
『買い物は王都ですればよろしゅうございますわ』
『ドーベラッハの品揃えはイマヒトツなのです』
『ん。愛のお蔭でこれからのドーベラッハは凄いことになるの。だからしばらくしてからがお勧めなの』
なるほど。
でもほら。
そうなってくると発展前も見ておきたいじゃない?
街を育てるゲームとか大好きなのよ。
この世界はゲームじゃないけど、ゲーム要素が盛りだくさんで心が躍るのよね。
『冒険者ギルドと商人ギルドがある大通りならいけますかしら?』
『安全的には大丈夫です』
『ん。隠蔽魔法で気配を消しておけばいいの』
あー見て回るだけなら、それでもいいかな。
欲しい物があったら隠蔽を解いて買えばいいわけだし。
宿で英気を養ってもいいんだけど、五日間籠もりっきりも飽きるかな?
調合だの料理だのをしていれば、あっという間に経つ気もするけど。
「うーん。宿に籠もってのんびり作業でもしているよ」
ストック作りはスライムたちが全力で挑むのでやらなくてすみそうだから、新作に挑戦したいよね。
インセクトダンジョンで入手したアイテムで、便利グッズとか細工物を作るのも楽しそう。
ま、飽きたら気配を消していろいろ見て回るのもありだしね。
「滞在していただけるだけでも嬉しいです」
「本当だぜ。なぁ、宿じゃなくて拠点を作らねぇか?」
「お勧め物件は幾つもございますが……」
ボノとスルバランの圧が地味に強い。
拠点ねぇ。
フロイラインは快適だから特に必要性を感じないんだよね。
街としては有名冒険者の拠点があると安心するんだろうけど。
「今の宿がお気に入りだからね。拠点はいいかな」
「ぶっちゃけて言う! フロイラインは敷居が高ぇんだよ、俺的に!」
ボノに拳を握り締めて力説された。
男性冒険者でも頻繁に足を運んでいる人、いるけどね。
ボノタイプだと確かに辛いのかも。
「この街は好きだけど永住するつもりはないからなぁ」
ホルツリッヒ村ですら永住は考えていないんだよね。
村営に勤しんでいれば愛着が湧きそうな気もしているけれど。
あまり縛られたくないんだよね、人に。
あちらでは柵が多かったから、こちらでは極力踏み込まれたくない。
定住すると期待されるからね。
この三人だって私の許容を超えて踏み込んでくる可能性がゼロとはいえない。
現時点でもそろそろ危険な域かなぁ……と思案しているところだ。
「それでも! だよ。家事妖精つきの屋敷とか好きだろ?」
好きです、きりっ。
うわーどんな家事妖精だろう。
やっぱりメイド服を着ているのかなぁ。
好きなゲームのシルキーがそんな感じだったんだ。
一人だけなのかしら。
それともわらわらいるのかしら。
わらわらいるっていうと、シルキーよりブラウニーの印象だけど。
家事妖精っていってもいろいろいるからなぁ。
基本気まぐれで、嫌になるとすぐにいなくなっちゃうのは困るけど、妖精だから仕方ないと諦めるしかなさそう。
家系や家についたりするタイプの家事妖精だと嬉しいかもね。
私の顔を見ていけると踏んだのだろう。
早速明日、物件を見に行く約束を流れるように取りつけてしまった。
スルバランが。
ボノとラモンが可愛い喜びの声を上げて、スルバランは満足げに眼鏡を持ち上げている。
私が解せぬ! という顔をすれば、スライムたちが頭や頬や肩を触手で優しく叩いてくれた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 地味に緊張中
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
そして今年のホラー企画です。
うわさ、かぁ……漠然と浮かぶネタが多すぎるので、ホラーお題ガチャのしばりをつけてみようかしら。
がチャった結果「旧校舎」、「箱」、「ラジオ」、「アネモネ」でした。
以前にあったよね、ラジオ。
それ以外の三つを絡めてネタ練りしてみます。
次回は、執事付屋敷。前編(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。