街長と会合中。前編
ひんやり敷きパットは使用しているのですが、ひんやりタオルケットは使っていませんでした。
ホットフラッシュが相変わらず酷いので購入を検討しています。
毎日はいじゃって朝喉が痛いんですよね……。
何時か風邪を引きそうで、その対策に。
中庭から移動して辿り着いたのは応接室。
夫人もついてくるかな? と思ったんだけど来なかった。
子供たちから目を離せないのかもしれないし、引き続き料理を堪能したかったのかもしれない。
何となく後者な気がした。
どうぞ、とソファを勧められて腰を下ろす。
高級ソファといった座り心地。
カバーは夫人の手作りかな? 品が良く可愛らしい。
「えーと。まずは何から進めましょうか?」
それを決めるのが街長なのでは? と口には出さなかった。
ただ表情には出ていただろう。
「ラモン殿?」
代わりにスルバランが低い声でその名前を呼ぶ。
「だ! だって俺じゃあ、こんな大層なこと決められねぇよ!」
夫人召喚かな?
それともスルバランが肩代わりかな?
当然私は静観を選ぶ。
こちらが手を貸す側だからね。
最低限の礼儀でしょう?
「あーフォルス嬢?」
「はい」
「その……ミートキリトリの養殖の件から話を進めてもいいか?」
ボノがおずおずと聞いてくる。
尊敬する先輩のフォローをしたいのだろう。
気持ちはわかる。
だが、駄目だ。
「……それを、貴男が言っていいの?」
「っつ! すまねぇ。なぁ、頼むぞ、ラモン先輩。しっかりしてくれや。何時までも奥さんの手を借りるわけにゃいかねぇんだよ」
「け、けど……」
やはり夫人が交渉係の模様。
まぁ、別にそれでも私は構わない。
ただ夫人を表に立たせる責任をラモンに背負ってもらうだけだ。
「……話が長引くようであれば、私が先に話をしてもいいですか?」
「お、おお助か!」
「私はボノのように、甘くありませんので、貴男の手助けなどしませんよ。交渉した結果の失敗であれば話は別ですけれど」
だんだん冷ややかな眼差しになっていく私と違い、スルバランのそれは一気に冷め切っている。
「も、申し訳なかった。大きい仕事になるとどうにも尻込みしてしまうんだ。失敗を、恐れて」
冒険者時代のトラウマかな?
今の立場より気楽だっただろうが、人死には身近だったはずだ。
自分の決断が街の未来を左右する恐ろしさを自覚しているのは、悪くない。
だが決断すべきときに決断できないのは問題だ。
「では、街長を引退されては?」
私の言葉にラモンとボノがひゅっと喉を鳴らす。
「それこそ夫人に全権を委ねられてはよろしいのでは?」
悪手ではないが最良でもない。
夫人が優秀でも、女同士の取り引きを他の者が許すだろうか。
少なくとも副ギルド長と会頭は横やりを入れてくるに違いない。
人も離れていくだろう。
そうなってしまえば、街の運営も家族の仲も悪化の一途を辿る未来しか見えなかった。
「……わざわざ足を運んでいただいたのに、無様な醜態をさらしてしまって申し訳ございません。まずはミートキリトリの養殖の件について、詳しい御説明をいただきたいのですがよろしいでしょうか?」
体の空気を吐き出すような深呼吸をしたラモンが、真っ直ぐに私を見ながら語りかけてくる。
夫人に全権を委ねる拙さのリスクは理解できたようだ。
覚悟を決めた者の眼差しで、告げられる。
うん、これならいいだろう。
「ローズ、いい?」
肉担当のローズに説明を丸投げする。
ローズはぽいんと軽い音をさせてテーブルの上に乗った。
「こちらを御覧くださいまし」
スライム収納から、ミートキリトリの養殖についての説明書を取り出す。
すっとラモンに差し出した。
「……こいつぁ……すげぇ、詳細な説明だな。これなら一番問題なのは養殖場の確保になるだろう」
説明書にはミートキリトリの育成方法が書かれている。
繁殖ではなく増殖させるのだ。
必要なのは適度な湿気のある暗所。
ダンジョンと同じ状態が好ましい。
餌はインセクトダンジョンで取れるモンスターなら何でもいいので、低階層のモンスターがお勧めだ。
水は新鮮なものを推奨。
その条件が整えば大丈夫だというのだから驚きだ。
勿論、最初の個体はテイマーによって生きたまま連れてくる必要があるが。
案外これが一番難しいのかもしれない。
ミートキリトリをテイムする者は少ない。
自分のテイムしたモンスターを手放したくないテイマーと、腹が減ったら食べればいいさと割り切っている他のメンバーと衝突する例が多いからだ。
「……引退したテイマーに頼むか」
「事情を話せば引き受けてくれそうですよね。あとは連れてきたミートキリトリは殺さないといえば納得するのでは?」
「そのまま管理を頼むのもありだな」
引退してから他の職業に就くのは難しい。
宵越しの銭を持たないを信条にしている者が多いせいもある。
次の職業に就くまでの蓄えがない。
計画を立てて引退する者は少ないのが冒険者の世界。
大半の冒険者は怪我や体力の限界で、冒険者ができなくなって引退するからだ。
「引退したテイマー、現役の冒険者ギルド職員、同じく現役の商人ギルド職員それぞれ一人ずつ。あとは食べる物に不自由している家族を何組か……そんなところか?」
悪くないだろう。
関わる者にはミートキリトリの肉が優先して与えられる契約にすれば、更に応募が増えるに違いない。
得た肉は自分たちで食べても、何処かに卸してもいいのだ。
「テイマーと家族はこちらで選出する。現役ギルド職員はそれぞれのギルドで信頼できる奴を選出してくれ」
「了解!」
「承知いたしました」
「場所は川の近くの空き地でいいだろう」
「多少の整備は必要でしょうが……その辺は街長の依頼としてギルドを通せば人員確保できそうですね」
街長の依頼に限り、ギルドに登録していない者でも受けられるとのことだ。
街に貢献できる仕事が多いので人気は高いのだとか。
「ではそのように手配しよう。続いて同じ養殖についてがいいだろうか?」
「だって、どうする? モルフォ」
「ん。大丈夫なの」
ローズと入れ替わりでモルフォがテーブルの上に乗る。
ぷるるんと大きく揺れているので気合いが入っているのかもしれない。
「よろしく頼みます」
テーブルに両手をつけて頭を下げるラモン。
モルフォは酷く満足げだった。
「ん。前にも言ったけど、どうんとすたぱの養殖は同じ区域でも大丈夫なの。ばーそだけ乾燥区域なの。この街ならどうんとすたぱの養殖が可能なの」
「それぞれ五体までなら売却してもいいのです」
いいらしいです。
私の太ももの上でまったりしていたサクラが声を上げる。
順調らしいもんね、スライム収納内牧場。
繁殖場?
「是非お願いします! 最近この街の近くでは野生種が見られないのですよ」
「もともとそう多く生息していなかったからなぁ。不作だったときに乱獲されていなくなった感じか?」
「そうですね。多少残して捕獲するのが暗黙の了解だったんですが、質の悪い奴らがいたようです」
案外元盗賊村の面々だった気がする。
この街への襲撃は難しくても、強くないモンスターの乱獲なんて罪の意識もなくやりそうだ。
「ん。ばーそも頑張って環境を整えればこの街でも養殖は可能なの。ただ手間がかかるの。ホルツリッヒ村に伝言をくれれば何時でも対応できるように手配するの」
「重ね重ね有り難いです。その……養殖に関しては御教授いただけますので?」
「ん。現地で講習会をするの。五十体を超えるまでは相談に乗るの」
なかなかのアフターフォローつき。
途中で出荷しなければすぐに達成できそうだ。
「場所は……商人ギルドで押さえている土地を提供しましょうか?」
「大丈夫なのか?」
「のちのち街の特産品にできそうですから大丈夫ではないかと。管理人はミートキリトリと同じくらいでしょうか?」
「ん。それで大丈夫なの。明日からでも教えられるの」
「ははは。ありがてぇが、人の手配に三日はかかるなぁ」
三日でできるのは驚きだ。
それほど仕事を欲している、フットワークの軽い人たちが多いのだろうか。
喜多愛笑 キタアイ
状態 地味に緊張中
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
ここしばらくはカフェミュージックをBGMにしていたのですが、久しぶりにケルト系の曲を聴きました……気のせいでなければクト○ルフの曲といわれる旧支配者のキ○ロルが入っていたような……や、曲調が似ていただけかもしれませんが。
次回は、街長と会合中。中編(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。