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スルバランはドキドキが止まらない。8

 花粉が凄いですね……。

 目の対策はしていたので、そこまででもないのですが、今回は喉が渇く? らしく、空咳が酷いです。

 頭痛がないだけましだと思って頑張ります。

 


 薬の件で驚いたので、特殊個体の件はそこまで驚かなかった。

 殺したモンスターを生き返らせたと聞いて、人も蘇生できるのかと妄想を走らせたが、そうではなくて安心した。

 さすがに完全な蘇生薬は心臓に悪すぎる。

 もしかするとスルバランたちが驚くから……と秘密にしているのかもしれないが。

 恐ろしい思考を、首を振って払いのけた。

 ボノも全く同じ動作をしている。

 セリノは諦観の眼差しを湛えていた。

 共に行動するうちに、規格外のフォルス嬢に多少なりとも慣れたのだろうか。


「……で。ボスモンスターも特殊個体だったの」


「はぁ?」


 ボノが椅子を倒しながら立ち上がる。

 冒険者ギルドをまとめる者としては無理のない反応だ。


「今まではなかったのよね?」


「初めての報告だ。ボスモンスターに関してはインセクトキング、インセクトクイーン、インセクトプリンス、インセクトプリンセス、インセクトナイトのうち三種類が出るはず

なんだ」


「うーん。全種類が出たって報告は?」


「ねぇぞ」


「そうなの? 帰還できなかったパーティーで出た可能性は?」


「そこまでは……わからんなぁ。ただ何度か踏破しているパーティーからもボスモンスターが特殊個体だったって報告は一度もねぇ」


 幾度か踏破しているパーティーは、街にも馴染んでいる。

 スルバランもよく知っていた。

 虚偽の報告をするパーティーではない。


「じゃあ、今回きりなのかしら? 私たちが戦ったのは、ボスはクレスヘラオオカブトーン、お供はウマメイオクワガッタン、タンサンオオカブトーン、ホソメタリクワガッタン

だったわよ?」


「はっ! フォルス嬢たちじゃなかったら全滅だったな」


「ですね。セリノは大丈夫でしたか?」


「扉が閉まった途端宙を舞いました……」


 セリノが遠い目をする。

 体勢を整えるのも間に合わなかったか、整えても無駄だったのか。

 後者の気もする。


「それだけですんだんなら、僥倖だぜ?」


「ローズさんのお蔭です」


「あぁ、なるほど」


「しかしAランクダンジョンのモンスターですよ? 今後も出るとしたら対策をせねば」


「たぶんだけど。私が入らなければ出ないと思う」


 しばし思案したフォルス嬢がぽつりと呟く。

 彼女が言うのならばそれは現実となるのだろう。


「しかし凄かったよ、魔法攻撃。死を誘う氷結と殲滅の紅蓮花だっけ?」


「……それを喰らってかすり傷一つ負ってない、フォルス嬢のパーティーが怖すぎるわ!」


「落ち着きなさい、ボノ」


 即死必須の魔法をしのげる結界が存在すると知れたら恐ろしい。

 地位や名誉を山と積んで、国同士が争ってでも欲しがるレベルだ。


「あいつら魔法攻撃なんて、ほとんど使わねぇはずだぞ?」


「戦力差を感じて距離を取って戦いたかったみたいだよ……自爆したけど」


「はぁ?」


「や。相反する属性の、強い魔法を一度に放ったんだよ? そうなるでしょ」


 フォルス嬢がしれっと言ってのける。

 スタンビードなどの大規模戦闘ならあり得るが、このインセクトダンジョンではあり得ない。

 そこまで強い魔法を使うモンスターが出ないからだ。


「ボスモンスターの自爆かよ……フォルス嬢の運が良すぎなのか?」


「いえ。恐らくですけどフォルス様が強すぎてモンスターが狂乱したからかと」


 モンスターが恐怖するほどの戦力差とはどれほどのものなのか。

 しかもAランクダンジョンに出現するモンスターだ。

 や、ある程度の知性があるからこそ、その力の差に気がついてしまったのかもしれない。


「でね? クワガッタンがその状態だったんだけど……タンサンオオカブトーンも自爆したんだよね」


「おいおいおいおいおい!」


 ボノの狂乱は自爆したモンスターが感じたものなのだろうか。

 頭を掻きむしるボノはこう思っているのだ。

 あり得ない、と。


「固有魔法で、音魔法で、洗脳系だったみたい」


「……情報が過多すぎるぜ、嬢ちゃんよぅ」


「鎮静効果のあるハーブティーを飲むのねー」


「おう、ありがとよ……」


 すっと差し出されたカップを両掌で抱え込んで、ずずずっと啜っている。

 よほど衝撃を受けたのだろう。


「面白いね、音魔法。凄く不思議な感じだった」


「人は使えない魔法ですからねぇ……」


「あ、そうなんだ」


「……フォルス嬢なら使えるんじゃね?」


「スライムたちは使えると思う。使う場面がなさそうだけど」


 フォルス嬢の言葉にスライムたちが胸? を張っている。

 どうやら使えるらしい。

 主人に似て規格外なスライムたちだ。


「あ、今更だけどボスと思わしきクレスヘラオオカブトーンは二体出たわ!」


 本当に今更ですよ、フォルス嬢。

 普通ボスは一体のみです。

 Aランクのボスモンスターも一体のみです。

 二体以上という例は挙がっていません。

 しかしフォルス嬢の話を聞くと、死んでしまった冒険者の中には遭遇した者がいたのかもしれませんね。


「一体は脳筋? で無謀にも突っ込んできたけど。一体が服従してくれたのよ」


「服従……モンスターが戦闘もしないのに服従……フォルス嬢だからなぁ、嬢ちゃんだからなぁ」


 ボノが遠い目をして誰に言うでもなく呟いている。

 Aランクダンジョンを踏破できなかったボノには思う所が多すぎるのだろう。

 仕方ない反応だ。

 セリノも憐憫の眼差しで見詰めている。

 スライムたちはどこか生暖かい眼差しを向けていた。


「綺麗な個体が仲間になってくれて嬉しいわ。ミュゲって名付けたの」


「お。名付けも受け入れたんなら、今後も仲良くやっていけそうだな」


「村にはオオヤンマで、私たちの移動にはクレスヘラオオカブトーンを使う感じかしらね、今のところ」


「もし許可してもらえるんなら、乗ってみてぇなぁ」


「いろいろと落ち着いたらね」


「本当か!」


「私、嘘はつかないけど?」


「楽しみにしてるぜ!」


 こんなとき、ストレートに言ってしまえるボノが少々羨ましい。

 スルバランとてどちらにも乗ってみたいのだ。


「ふふふ。了解です。でもって当然ですけど! ドロップアイテムも凄いのよ? これが一覧ね」


 フォルス嬢はドロップアイテムの一覧表を見せてくれた。


「全部欲しいです!」


 反射的に言ってしまった。

 これではボノの態度を笑えない。


「ええ、構わないわよ。あ! でもオークションに回した方がいいかしら?」


「あー、そうだなぁ。武器、防具、アクセサリーはオークション。素材に関してはギルドもしくはフォルス嬢でどうだ?」


「無難ね……ん? え! そうなの?」


「おや、何か問題でもありましたか、フォルス嬢」


「ええ、ミュゲが今回のドロップアイテム程度だったら定期的に提供できますって言ってくれたの。だから素材もギルドに全部販売するわ」


「おぉ! 友好値が最高だと、そんなびっくりなこともしてくれるんだなぁ……テイマーたちもこの話を聞いたら多少、意識改革ができるんじゃねぇだろうか」


 戦闘したあとでテイムできる流れから、力で無理矢理こちらの要求を聞かせている関係が多いと聞く。

 冒険者ギルド所属のテイマーなどは随分とフォルス嬢寄りの考え方なのだけれど。


「そっち方面でも貢献できるなら、嬉しいわね……これで報告に漏れはないかしら?」


 フォルス嬢がスライムたちに聞く。

 スライムたちは揃って頷いた。


「じゃあ、まずは口止め魔法をかけておく?」


「だな、よろしく頼むわ」


「ええ、お願いします」


「僕も忘れないでください!」


「はいはい。皆の安全のためにもきちんとしますよ」


 くすくすと笑いながらフォルス嬢が口止魔法をかけてくれる。

 

「レベル10にしておいたわ。これはこれで牽制になるでしょう?」

  

「そうですね。どんな恐ろしい情報なのだ、と判断してくれるでしょう」


 常識がある者ならば、無難な判断を下す。

 誰だって自分が可愛い。

 だが、それほどの情報ならばどんな手段を使っても、知り得たいという者も少なからず存在する。

 存在したとしても無謀者が情報を入手するのは適わないだろう。

 フォルス嬢のことだ。

 きっと情報を探ろうとするそばから記憶を消すぐらいはやりかねない。

 他の者からかけられたならいざ知らず、フォルス嬢がかけてくれた口止魔法であれば、皆安全なはずだ。


 行きつけの本屋さんが入っているショッピングモールのポイント10倍期間がやってきたので、間に合うようにいそいそと抜け巻や特装版を申し込んでおきました。

 毎回無料配送してもらうぐらいは買ってしまうのです……。


 次回は、オークションにむけて。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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