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スルバランはドキドキが止まらない。7

 実家と義実家からチョコレート届いたよ連絡が届きました。

 是非堪能していただきたいものです。

 ベルギー産の人気チョコ。

 ちなみに主人と自分用は既に食べ始めています。

 贅沢にオレンジピール食べ比べです。

 


 さすがのボノも十五匹のホワイトジーを模したピンバッジを並べられて腰が引けている。

 大きなジーも気持ち悪いが、小さなジーもまた気持ち悪い。

 動いていないだけまだましだが、大量の小型ジーに囲まれた日には全力で逃げる自信しかなかった。

 その場で失神すればどんな無残な最後を迎えるか知っているからだ。

 足は速いは、空も飛べるわで、逃げおおせるのは難しいが、フォルス嬢の虫避けさえあれば安全に逃げるどころか、ジーを瞬殺できる。

 自分用は確保しておこうとスルバランは決めていた。


「あ、特にレアドロップってわけじゃねーけどイナーゴの佃煮もたくさん欲しいんだけど、あるか?」


「そういえば、リリーさんが教えてくれたんでしたっけ」


「あら、リリー。何を教えたの?」


 フォルス嬢から離れて活動しても、誰も手が出せない存在。

 それがフォルス嬢を守るスライムたちだ。

 悪人をやっつける姿を幾度も見ているせいだろう。

 正義の味方と思われている節がある。

 あんなスライムが欲しい、とテイムの依頼が相次いでいた。

 大人からも子供からも、貴族からもというのだから恐れ入る。

 フォルス嬢のスライムだけが特別なのだと知るのは、依頼主がスライムをテイムしてからだろう。

 苦情には応じないつもりだ。

 依頼の際に口を酸っぱくして説明し、あとで文句を言わないと誓約書まで書かせているくらいだった。


 そんなスライムたちはフォルス嬢がいなくても、豆知識を教えてくれる。

 与えてくれる知識は多岐にわたっていた。

 どれも未知の知識だが、食に関しての提供が多い傾向にある。


「イナーゴの佃煮の栄養価が高いって教えただけなのねー」


「確かにバランスがいいよね。あと食べやすいのもポイントが高いわー」


「そうなのねー。妊婦さんにもお勧めしたいのねー」


 インセクトダンジョンのドロップ品の中では出やすいので、安価に提供されていたイナーゴの佃煮はもともと人気があった。

 そこにリリーの豆知識が披露されて、需要が更に高まった流れだ。

食べ物関係に弱い悩みを話していたからか、リリーが豆知識を披露したのは冒険者ギルド内だった。

 身内や知り合いに妊婦を持つ者は少なくなかったらしく、その日のうちに依頼が殺到したほどだ。

 当然商人ギルドにも話は流れてきた。

 冒険者ギルドの内情を話してくれる人物は、ボノやペルペトゥアだけでもない。


「うちもお願いします。高貴な方たちの間で、妊婦は一日一本食べると赤子が安全に成長するという噂が流れているようで……」


「うーん。大きさ的にも問題ないかな? 妊婦さんにとって欲しい栄養価も十分入っているみたいだしね」


 取り出した大量のスティックから一本を取り出して、凝視したフォルス嬢が大きく頷く。

 彼女の鑑定には、自分たちの鑑定とは違う情報が見えるのかもしれない。


「これに関しちゃあ、ドロップ率が高くてありがてぇわ」


「頑張って六階まで潜ろうとする冒険者も増えそうですね」


「おうよ! イナーゴは養殖の検討もされたんだが、モンスターの養殖はなかなか難しくてなぁ……」


 ボノが遠い目をする。

 スルバランもイナーゴの養殖を考えたが街長に止められたのだ。

 イナーゴの繁殖力は想像を絶するので、許可できないと。

 街長が冒険者時代にイナーゴのスタンピードが起きたらしい。

 街の食べ物という食べ物が食い尽くされたと聞く。

 家の一部すらも食べたのだとか。

 避難が完了していたので死者がでなかったのが不幸中の幸いだったそうだ。


「そうねぇ。イナーゴは管理が難しく……ないのね?」


 スライムたちの手にかかれば簡単らしい。

 色とりどりのスライムたちが胸? を張っている。


「お。これはスライムたちに依頼するべきか?」


「イナーゴの佃煮以外にもドロップ品は使えますからねぇ」


 イナーゴの羽も調味料として人気だし、イナーゴの触覚も素人でもある程度加工ができるので、使い勝手が良かった。


「永久に卸すのは無理だけど、年単位の交渉は受けてもいいのねー」


「いいの?」


「いいのねー。懇意にしている街があるのは悪くないのねー」


 なるほど、ホルツリッヒ村の今後を考えての対応か。

 しかし世の中は広い。

 村の経営をできるスライムがいるのだから。


「ではホルツリッヒ村経由で、他の商品と一緒に納品していただく形にいたしますか?」


「それでいいのねー。あとでまとめて出してほしいのねー」


「継続でまとまった数を入手できるのはありがてぇ。が! それとは別に、十ダースぐらい欲しいんだよな」


「うちでも同じ数は欲しいです!」


 本当はもっと欲しい。

 が。

 そこまで強欲にはなれない。


「在庫はスライムたちが把握しているから……大丈夫?」


「問題ないのねー。明日には百ダースが余裕で用意できるのねー」


 ……既に養殖体制が整っているのだろうか?

 指摘はしないが、間違いなさそうだ。

 ボノも言いかけて口を噤んだ。

 セリノが頷いている。

 そう、精神が持たないので突っ込みは必要最低限にするべきなのだ。


「あ、あとオンブタッバのおんぶ紐も一ダースほどお願いできますか? 需要が高いのですがレアドロップなので常に品薄なのです」


「ええ、大丈夫よ。ボノは大丈夫?」


「うちももらっとくかな。意外に依頼があるんだよな」


「この街でも地味に人気のあるアイテムですよね」


 産まれたときからこの街に住んでいれば当たり前なのだが、街の外から来た者たちは揃って驚く。

 そしてこんなに便利な物が広まっていないのはおかしい! と文句をつけてくるのだ。

 レアドロップだから仕方ない。

 文句があるなら自分で潜れ! と返しても納得するのは冒険者ぐらいだ。


「そうよね。この手のアイテムはもっと広がってほしいわー。今後、ドロップ率が上がるといいわねー」


「アイリーンが望めば、上がるのねー」


「ちょ、それ、俺らの前で言ったら駄目な秘匿事項!」


 ボノが慌てている。

 セリノも同様だ。

 だが、スルバランに動揺はない。


「最後にまとめて口止魔法を使っていただければ問題はないかと」


「あ! そうでした」


「お、おぅ。そうだったな」


 忘れていたようだ。

 

「あら。死なば諸共……こほん。一蓮托生で使わなくてもいいのよ?」


「どうか、使わせてください!」


 商人ギルドの副会頭には手に余る案件だ。

 今の爆弾発言に限らず、今までの取り引き全てが。


「うん。俺も馬鹿だが、これは頷いちゃマズいやつだって、わかるぞ?」


 ボノの顔色が悪い。

 彼の場合は直感で判断しているのだろう。

 セリノは凄まじい勢いで頷いていた。


「そうね……私たちの身の安全も確保しないとだし」


「アイリーンの安全は私たちが完璧に確保しておりますわよ?」


 心外とばかりにローズが口を挟んできた。

 体の安全どころか精神の安全も完璧なのだろう、けれど。

 欲に駆られた者たちが、想像を絶する力を発揮した例もある。

 お互いのためにも、口止魔法なのだ。


「ふふふ。貴方たちを信じているわ。でも私、人の悪意も信じているの。だから安心してね? 口止魔法は使うわ」


 一瞬、背筋が怖気立つほどの冷気を感じた。

 規格外のフォルス嬢だからこそ、人を信じられなくなる目にも多く遭遇したのだろう。


「……それではそろそろ七階についてのお話をお聞かせ願えますか?」


「六階についてはもう大丈夫なの?」


「ええ、私は」


「おぉ、俺も問題ねーぞ」


「じゃあ、七階ね。何から話そうかしら……」


 ふむと思案するその時間が恐ろしい。

 最終階ではどれほどの情報やアイテムがもたらされるのだろうか。


「……状態異常に対する治癒薬からがいいかしら?」


「っつ!」


「はぁ?」


 またしても爆弾が投下された。

 ボノは何故か怒りまで覚えているようだ。

 セリノがボノの怒りを収めるように怪しい動きをしている。


「ボノ!」


「……すまねぇ、フォルス嬢」


「ふふふ。今まで苦労したんでしょう? それが原因で死者も多く出たのね? だから簡単に完治できる治癒薬の話が出れば怒るのは無理ないわ」


 何処まで懐が深いのだろう。

 ボノも申し訳なさに髪の毛を掻きむしっている。


「さ、三種類あるわ。しっかりと鑑定してね」


 色も形も違う容器が置かれる。

 瓶には主要素材が彫り込まれていた。

 どんな技術だろう……。

 薬の効能に驚くべきなのだろうが、スルバランは商品価値が高そうな容器に、しばし心を奪われてしまった。

 

 放置していたアプリを再び始めました。

 当然更新が必要でした。

 時々こうやって放置していたアプリを使います。

 削除すると新しいアプリを入れている気がします。


 次回は、ボノはさすがに慣れた。8(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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