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スルバランはドキドキが止まらない 5

 横浜赤レンガ倉庫街のクリスマスマーケットに行ってきました!

 土曜日だったのでそれなりに混んでいましたよ。

 食べたい物が多すぎて、選びきれなかったのが悔しい!

 友人と行く予定になっていますが、それとは別に一人で行きたいなぁ。

 そして違うメニューに挑戦したい。

 あ、ソーセージが美味しかったです。

 


 ボノが引き攣った顔をするのを見て、フォルス嬢が爽やかに笑う。


「今のところこの国からの移動は考えていないわ。ホルツリッヒ村の経営もあるしね。国外に出る機会はあっても、そちらへ永住は考えていないわ」


「最終的には南の無人島で、私たちとだけで過ごすのもいいのねー」


 慎重な対応をしないとリリーの言葉が現実になりそうで恐ろしい。

 最低でも自分とボノだけは、フォルス嬢に誠実でありたいと思う。


「ふふふ。そんな未来もありかもね。でも今は未来より現在よ。では! 皆様お待ちかねの宝箱タイム!」


「どの階でも宝箱が入手できるんだな? 腕の良い盗賊がいても難しいんだぞ?」


「うちは優秀な保護者たちがいますので」


「「「「「いますのでー」」」」」


 声が揃うときは、口調も揃うんですね。

 何とも、可愛らしい。


「さ。遠慮なく鑑定を、どうぞ?」


 フォルス嬢は速やかにテーブルの上へアイテムを置く。

 中央に大きなルビーがはめ込まれた金色のティアラと、ヒールは高いがシンプルなデザインのダンスシューズ。

 ティアラはさて置き、ダンスシューズは高位貴族の練習用にも見える。


「……どちらもオークションへの出品ですね」


「……だな」


 特に宝冠の効果が凄まじかった。

 人目のない場所でこっそりつけていれば、誰にもばれずに魅力が上がる。

 魅力値が上がった時点で、転売しても良さそうだ。

 自分が購入したときよりも高く売れるに違いない。

 王族はこぞって欲しがるはず……。

 この国の王に打診しておくべきだろうか?

 現在の王はどちらかといえば賢王寄りだ。

 魅力が増えれば寄りが取れる気もする。

 商売柄魅力がありすぎて悩んでいる方々を知っているから、ほどほどが一番! とは思っているけれど。

 不敬でないのなら、教会を通して相談しておくのも良さそうだ。


 ダンスシューズの方は、努力家の下位貴族あたりに落札してもらい、高位貴族に望まれる幸せな結末を見せてほしい。

 ダンスが上手い令嬢はこの国以外でも好まれますからねぇ……。

 あくまでも自分の願望なので、現実は厳しそうですが。


 フォルス嬢のダンジョン踏破記念オークションは前代未聞の盛り上がりを見せるだろう。

 既に胃がきりきりしている。

ボノではなくセリノをそっと見つめれば、慣れるしかありませんよ? と諦観の表情で小さく頷かれた。

 彼はフォルス嬢とパーティーを組んだ経験が功を奏し、想像以上の成長を遂げたのだろう。

 喜びではなく、諦めなのは少々不憫だが、セリノの性格上を考えても。

 フォルス嬢との出会いは僥倖以外の何物でもない。

 だからこその諦観なのだ。


 オークション会場は教会の大聖堂か、王城内の大広間で行われる可能性も出てきましたねぇと、遠い目をする横で、ボノはマイペースに話を続ける。

 彼の強さはスルバランに取っては純粋な憧れだ。

 本人に言う機会はないけれど。


「ふぅ。宝箱はどっちもオークション決定! で。次の階だな」


「あら。積極的ね。でもこの階の食べ物は美味しくないみたいよ?」


「と、おっしゃるなら、出たんですか、卵が!」


 思わず腰を上げてしまった。

 ボノも一緒に上げている。

 視界の端でセリノが、わかります、と頷いていた。


「ええ、ドロップしたわよ? ソイルカーメの卵、グラスカメーダの卵、ゴールデンカーメの卵」


 スルバランは卒倒しそうになるのを気力で堪えた。

 堪えられるのだと初めて知った。

 知りたくない経験だ。


「おいおいおいおいおい! どうしろってんだ、ああん?」


 ボノは興奮のあまり混乱しているようだ。

 無理もない。


「大丈夫ですよ、ギルド長。ギルドが抱えるテイマーにそっと育てさせればいいだけです」


 セリノが静かに呟く。


「や、セリノ、おまっ! そんな簡単に、言うけどよぉ……」


 できるだろう。

 ただ難しい。

 ギルドの敷地に足を踏み入れる冒険者全てが善人ではないのだ。

 まず、卵から孵化しても幼体の内に盗難にあうだろう。


「フォルス様はよろしいのですか?」


 どれも連れて歩くには向かない。

 ただ材料を生み出す永久機関として上手く管理する者は少なくなかった。

 グラスカメーダの卵を使って調合した撒き餌は常に需要が高い。

 フォルス嬢の手にかかれば定期的に卸してももらえそうだ。


「ええ、自分の分は確保済みだから大丈夫よ。ゴールデンカーメの卵は扱いが厳しいかもだけど、残りの二つはちゃんと育てれば、それなりの利益は出るんじゃない?」


 確かに数を増やして、定期的に間引きをすれば、良い利益にはなるだろう。

 テイムしたモンスターを戦いに連れて行くのだけがテイマーの仕事ではない。

 そうした方が評価されやすいというだけの話で、テイムしたモンスターを使っての繁殖もまた評価される仕事ではあった。


「ゴールデンカーメはオークションでいいわ。いくつあるんだ? 卵は」


「雄と雌それぞれ一ダースでどう?」


「卵の状態から雄と雌がわかるんかよ!」


「うちのスライムたちは優秀ですから」


 サクラが胸をはる。

 彼女の鑑定は本当にどこまで? 

 ……そうですね、考えるだけ無駄ですね。


「じゃあ、有り難く育てさせてもらうわ。気合い入れてテイムもさせるぜ!」


「相性もあるからね、無理はさせないように。卵以外には何か欲しい物はある?」


「あ! ソノヒグラシセットがあったら一ダースは欲しい」


「うちも同じ数いただけると有り難いです。それと一緒にウォーターアブの水玉と火玉も同じ数あると助かります」


「お、それもそうだな。うちもそれで!」


 ソノヒグラシセットは革袋に入った水、干し肉、キャラメールの三点が必ず同時にドロップするので、そう名付けられたらしい。

 随分昔の話だと聞き及んでいる。

 特にキャラメールのおかげで、持ちこたえた冒険者の数は少なくない。

 だから冒険者ギルドほどではないが、なるべく安価で提供している。

 ウォーターアブの水玉とファイヤーアブの火玉をつけるのを、前々から考えていた。

 何しろこの二つのアイテムは重さを感じないのだ。

 しかも比較的簡単に手に入る。

 自分たちが手に入れたとき、持ち帰らずに遠慮せず使ってしまえるようにとの、意識改革も含んでいた。

 この二つについてはダンジョンに持ち込む必須アイテムとして、冒険者ギルドからも通達させるべきかもしれない。

 ボノも賛成してくれるだろう。


「このダンジョンのドロップアイテムは全部かなりの数を持っているから、あとで欲しくなったら遠慮なく言ってね」


「ありがとうございます! お願いする機会は多いと思います」


「おう。俺も今まで考えられなかった使い方とかありそうだから、そのときは頼むぜ」


「あ! そうだ。これって需要あるかしら。リリー?」


「リリー特製たーもーあーみー!」


 テーブルの上に出された大きさの……なんだろう?


「これはフィッシュネット……たも網ね。小魚を掬うのに便利なのよ。各種サイズあるわ。リリー特製なの」


「小さなゴミから、大きな魚まで、つるっと取れるのねー」


 テーブルの上には五つのフィッシュネット……たも網が置かれている。

 リリーは取っ手を持ち使い方を教えてくれた。


「……魚以外にもいろいろと取れるんじゃね?」


「取れるのねー。慣れれば空飛ぶ昆虫だって捕れるのねー」


「それは虫取り網じゃないの?」


「リリー特製たーもーあーみーだから、料理にだって使えるのねー」


 一番小さい物は確かに網の目が細かく大きさも小さい。

 料理でも使えそうだ。


「売り手次第で、いろいろな用途に使えるのねー。各百本ならすぐ卸せるのねー」


「お願いします!」


「さすがはスルバランなのねー。ボノはどうするのね?」


「……お前さんのお勧めをくれ」


「ふふん。ボノもなかなかわかってきたのねー?」


 リリーが勧めたのは二種類。

 一つはフィッシュネットと呼ばれる小魚を掬うのに適した物。

 一つは虫取り網と呼ばれる蝶々や蜂類を捕まえるのに適した物。

 数は十本ずつ。

 使い方はリリーが直接冒険者に教えるとのこと。

 ボノの額から汗が二筋も伝った。

 便利なアイテムなだけに使わせる相手は厳選しなければならないだろう。

 リリーが講師なら尚更だ。


 明日ボノが五歳老けて見えても驚かない。

 自分もそう見えないように気をつけないといけないなぁ……。

 

 今どんと焼きって近所のクレームが多いのですか?

 うちの近所にあるお寺さんは住宅地の中にあるから、クレームがあるんでしょうか……。

 せっかく干した洗濯物が灰だらけになったりしたらクレームの一つも入れたくなるかもしれませんが、近所でお札系の感謝ができないのが残念です。


 

 次回は、ボノはさすがに慣れた 6(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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