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ボノはさすがに慣れた。4

 誤字修正で別作品のキャラが混同しているとのご指摘をいただきました。

 実は同じミスをしでかしてしまい、投稿前に大幅修正したばかり。

 全部修正したと思ったら、違うキャラまで出してましたよ……キャラに愛情はあるのになぁ……。

 ちなみに今回は途中まで別視点で書いていたのに、校正の段階まで気がつきませんでした。

 今度は全部修正できている……はず!

 

 


 ボノがメモをつけ終わるのを見計らったように、リリーがにやりと笑う。

 スライムがにやりと笑う。

 ここにフォルス嬢がいなかったら夢を疑う表情だ。

 本来スライムはそこまで表情を作れるモンスターではない。


「……なんだよ、その顔は。情報は心臓に悪くない順番に小出しで頼むぜ」


「わかっているのねー。宝箱情報で凄まじいのがあるけどねー」


「その前に鱗粉系の需要はありませんの? 商人ギルドが欲しがりそうな鱗粉がありますわよ」


「蝶の方はそのまま使えますから、それなりの需要がありますが、蛾の方が薬師の力が必要なので手を出しにくい感じです」


「と、いうと?」


「割に合わねーんだよ。薬師は仕事のえり好みをする奴らしかいねー。金になるかならないか、自分の興味を惹くか惹かないか。このどちらかしかいねーんだ。真っ当な薬師とは縁が薄くてなぁ……ドーベラッハに薬師ギルドはねぇし」


 二人で仲良く溜め息を吐く。

 薬師ギルドは全体的にイマヒトツなギルドといっていい。

 捜せば個人的に良い人材はいるんだが、ボノもスルバランも何故か縁が遠いのだ。


「どっかに良い薬師っていねーか?」


「うーん。植物を使う薬ならうちの副村長が、キノコを使うならうちのキノコ娘が教えられるけど」


「本当ですか?」

「だったら是非頼みてぇ!」


 副村長は確かエルダートレント。

 キノコ娘はキノコに関するあらゆる知識を持つ種族だ。

 勿論薬の知識も少なくはないだろう。

 何よりフォルス嬢が信頼を置いていいるなら、これ以上はない講師に違いない。


「冒険者や商人の中から、興味のある人を募るってこと?」


「おうよ。そのまま薬師になるか、元の職業に戻るかは、すまねえ、本人の希望にそいたいと思ってるが」


「あとはあれですね。やる気だけで才能がない者はすっぱりと切っていただけると有り難いです」


「あー、地味で繊細な作業が多いからねぇ。あと、うちの師匠は厳しいわよ?」


 数多あるギルドの中でも、厳しいと噂なのが薬師ギルド。

 作業そのものも難しいが、何より師匠のえり好みが激しいのが困りごとらしい。

 その点を踏まえてもきっと、多くの者が講義を受けたがるだろう。


「その辺も言い含めておくぜ。冒険者ならエルダートレントとキノコ娘相手に下手はうたねーだろう……たぶん」


「商人もそうと……信じています」


 正直、勘違いする奴はいると思う。

 見た目が幼いからと侮る者は残念ながら少なくない。

 フォルス嬢や二人を怒らせたくはないが、絶対に問題を起こさないと断言はできなかった。


「人数は何人でもいいわよ? やる気があるなら身一つで来てもらって構わないわ。ただ! 村の約束事は絶対に守ってもらうし、不真面目な人間は速効放逐で、二度と村には入れないと、しっかり伝えておいてね」


「さすがに初期費用や講習料は必要じゃねえのかよ?」


「最低限の滞在費もいるのでは?」


「村は人手が足りないからねぇ。労働で払ってもらうつもり。お金払いよりそちらの方がいいのでは?」


「俺が薦めたい人材には爺さん婆さんもいるんだが……」


「大丈夫よ。爺さん婆さんでもできる仕事もあるわ」


 フォルス嬢が言うのなら、恐らくこちらが考えているより楽でやりがいのある仕事があるのだろう。

 欠損で冒険者を辞めざるを得なくて腐っている奴の中で、頭が良いやつを手配するのもありか?


「……体の一部が欠損した者でも、学びは可能ですか?」


「ええ、可能よ」


 おぉ、すげぇな。

 発展途上の村に必要な人材からは普通、除外される者たちなんだけどな。


「むしろ率先して手配してもらいたいわ。働き次第では欠損完治が可能だと、こっそりと告げてね」


 スルバランが隣で息を呑む。


「それって、そのよ? できるって、ことでいいんだよな」


「さすがに死者蘇生は無理だけどね。四肢欠損ぐらいなら完治できるわよ。方法は……村に永住したらわかるかもね」


 嘘ではないらしい。

 四肢欠損の治癒がどんな方法でもできるなら今すぐ教会か王家に囲われるだろう。

 ……いや、無理か。

 スライムたちが許さない。

 ホルツリッヒ村の防衛も凄まじいと調べがついている。

 囲おうとした側が滅ぶに違いない。

 向こうから教えてくれたのだ。

 過度ではないオネダリならば検討してもらえる予感があった。

 無謀な手出しはするべきじゃない。


「冒険者って欠損が多いんだよ」


「でしょうね」


「村に永住しなきゃ治癒は無理か?」


「うーん。本人次第かな」


 フォルス嬢が目を瞑って思案している間。

 スライムたちがこちらを見る目が恐ろしい。

 欠損が完治しても恩を忘れたら駄目なのだろう。

 現時点では恩返し必須。

 恩返しはホルツリッヒ村への貢献といったところか。

 欠損のままでいた方がよかったと後悔するめにあうのだと思う。

 頭の中で、頼もうと思っていた何人かを外した。

 勿体ないと思うが、フォルス嬢やスライムたちの逆鱗に触れるよりはいい。


「ダンジョンとは関係ありませんが大きな話ですね。あとでボノと真剣に精査してお願いするかもしれません。お願いは許されますか」


「スルバランとボノの精査に期待するのねー」


 許されるらしい。

 でも少し怖い。

 精査が彼女たちの意に沿わなかったら、どうなるのだろう。

 背中を幾筋もの汗が伝う。


「ゆっくり考えるのです。考えた結果。お願いを取りやめてもいいのです」


 サクラの言葉に、詰めていた息が零れてしまった。

 そもそも四肢欠損の完治など、王族でも難しいのだ。

 迷うなら止めるのもありだろう。

 そこまで考えれば、気持ちも落ち着いた。

 スルバランはまだ考え込んでいる。

 高位の知り合いに恩を売りたいというよりは、お願いしたいが本人に問題があるといったところか。


「……スルバラン。この件についてはあとでゆっくり話そうぜ? まずは、ダンジョンアイテムについてを優先しねーと。フォルス嬢の時間を無駄に独占しちゃ、駄目だろうが」


 ボノの言葉にスルバランは顔を上げる。


「……そうですね。失礼しました、フォルス嬢。そもそも薬師育成の人材派遣から随分話がずれました。そちらは迅速に手配する心積もりです。鱗粉については手を出しません。冒険者ギルドはどうする?」


「うちも不要だな。魅了とか使われると恋愛沙汰で問題になりそうだ」


 そう。

 モンスターに使おうとする真っ当な冒険者よりも悲しいかな、人間に使おうとする愚かな冒険者が多いのだ。


「アゲーハとシロモンの蜜は? 昆虫ダンジョンて食べ物系が少ないでしょ?」


「お! いいな。味が薄いけど使い勝手がいいんだよな。あまり量が取れないから人気あるんだよ。どれぐらい出してもらえるんだ?」


「うちもできれば一ダースずついただけると有り難いですね」


「じゃあ、それぞれ一ダースずつ出すよ」


「こちらは一瓶10ブロンですね。定期的に卸していただけると有り難いのですが……」


「これもホルツリッヒ村特産にしたいから、体制ができたら教えに来るよ」


 どうやって村の特産にするんだ?

 と首を傾げれば、スライムたちの口が一斉ににやりと動いた。

 うん。

 たぶん、既に量産体制は整っているんだろうな。

 突っ込まないぞ、俺は!


「あとは……職人の手が必要なものっぽいから……宝箱を出しましょう! まずはこっちね」


 出されたのは、ブローチ三種類。

 アゲーハのブローチ、シロモンのブローチ。

 どちらも本来のドロップ率は低い。

 蝶系のモンスターへの攻撃力を上げてくれる上に美しく、女性冒険者からの人気が高い代物だ。

 そしてもう一つ、黒いシロモンのブローチ。

 これが問題だ。


「黒いシロモンのブローチ……俺は初めて見るが、スルバランはどうだ?」


「……私も初めて拝見しますね。華やかさには欠けますが、希少性という意味では人気が出そうです」


「これは村人にあげるつもりなんで、売るつもりはないんだ、ごめんね」


「あ、そうなんですね? またドロップした際にはよろしくお願いします」


「了解です。あ! そうだ。蝶々の卵もあるんだっけ。ほら、卵から育てるとテイマー率が上がるんでしょ? モルノフォ、パープルモン、ブルーアゲーハの卵があるよ」


 スルバランと同時にお互いの顔を見つめる。

 ボノもスルバランも欲しいときによく起きてしまう現象だ。


「フォルス様としては冒険者にと思われますか?」


「例の遺体みたいな子じゃなかったら、冒険者に。適切な子がいないなら、スルバランに任せ……」


「俺が責任を取るから! 全部冒険者ギルドで購入させてくれ!」


 ボノは大きな声を上げた。

 蝶系は昆虫系の中でも人気の高いテイムモンスターだ。

 喜んで育ててきちんとテイムできそうな冒険者が何人もいる。

 

「気合いが入ってるねぇ。私もテイマーが頑張ってくれるのは嬉しいから、今回は冒険者ギルドに全部、でいいかな?」


「フォルス嬢がそう、おっしゃるのなら。支払いは勿論、何時もより多めでお願いしますね!」


「お、おう」


 当然上乗せするつもりではいたが、スルバランの圧が酷くて更に上乗せをするはめになったが、後悔はない。

 手にした卵はどれもほんのりと温かく、ボノを喜ばせた。

  


 普段人との接触が少ない分、久しぶりの接触が続くとおたおたしてしまいます。

 映画や観劇のお誘いは嬉しいのですが、借金の申し込みはなぁ……。

 良いことと悪いことは同時にやってくるという言葉が、身に染みている今日この頃です。


 次回は、スルバランのドキドキは止まらない 4(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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