昆虫ダンジョンインセクト 27
楽しんでいるゾンビゲームのサーバー移動があって、他の同盟者さんたちの指示の元せっせと移動完了しました。
攻略サイトがないゲームだと、他のプレイヤーさんの親切に頼るしかないのが切ないところです。
出されたオオヤンマは何処までも従順だった。
スライム内で調教されたのだろう。
過度の怯えも見えない。
ただ粛々とこちらの意志に従おうという気概だけを感じる。
「名付けとかするの?」
「した方が従順度は上がるのねー」
「良い名前をつけてあげるのです」
「え? やっぱり私がつけるの?」
「勿論ですわ。ホルツリッヒ村所有にするのでしょう?」
スライムと私だけで乗るなら、個人の乗り物にしてもいいんだけどね。
スピード重視の移動手段があれば、村の健全な運営にも役立つだろうし。
「空飛ぶ系でお勧めのモンスターってどんな子たちがいるの?」
やはり憧れるじゃない?
ドラゴンとか、ペガサスとか。
「ん? 可愛い系なの? 格好良い系なの?」
「う。可愛い系ならスカイキャット、格好良い系ならエアウルフがお手頃なのよ」
猫に狼と。
どっちもいいなぁ……。
「お手頃ってことはテイムをしやすいの?」
「そうなのねー。でもアイリーンなら特殊個体をテイムする予感しかないのねー」
「スカイキャットは採取が得意で、エアウルフは戦闘が得意なのです。どちらもテイムをすればいいのです」
なるほどね。
使い分けをすればいいと。
まぁ、二頭同時に同行でもいいと思うけど。
「スピード重視ならファーストチーターかしら? 羽の生えたチーターですわ。空陸ともに最速ですの。海空最速ならブラックカジキですわね」
「え? ブラックカジキって魚じゃないの?」
「明確には空魚、ですわね。空を飛ぶ魚という種ですのよ? 他にもいますが最速ならばブラックカジキ。余談ですが大変美味ですわ!」
「や、テイムをしたモンスターを食べるのは駄目でしょうが」
人として終わってるよね、うん。
「ん。インセクトを攻略したら、飛行系モンスターのテイムをしに行ってもいいの」
「う。穀物ダンジョンは遠いから、スピード重視のモンスターをテイムするのはお勧めなのよ」
などと盛り上がっていれば、オオヤンマがしょんぼりしている気がする。
そりゃそうだよね、乗る前から自分を全否定されてる気がしちゃうよね。
ここは、そう。
名付けよ!
「……アークアンシエルでどうかしら? 虹という意味よ。貴方の羽。虹色に輝いていて、綺麗だから」
落ち込む頭を撫でながら囁く。
持ち上がった顔の大部分を占める瞳がきらきらと輝いている。
気に入ってくれたようだ。
「素敵な名前ですね。よかったな、アークアンシエル」
同じように頭を撫ぜるセリノにも抵抗はないらしい。
私が仲間だと認識していれば大丈夫なのかな。
「二人とスライムを乗せてもらっても問題ない?」
蝶々コンビはどうするのだろう。
何となくだが、嫌がる気がする。
目線を投げれば、私たちには羽があるので遠慮させていただきますわ~、と返事があった。
やはり羽持ちの矜持なんかがあるのかもしれない。
『大丈夫、デス』
あ、片言だけとしゃべれるらしい。
やはり意思疎通ができるのは有り難いよね。
セリノとスライムたちが先に乗り、私は差し伸べられた手を取って乗った。
馬よりも細い胴体に跨がる。
跨がるのと同時に手すりのある背もたれが出てきた。
節の一つが変化するらしい。
スライムたちは好きな場所に乗っている。
頭の上は、ローズだ。
『ゆっくりト、上昇シマス』
最終階層は天井も高く、広い。
アークアンシエルが自由に飛び回るのに不足はなかった。
髪の毛が一瞬ふわりと浮いて、アークアンシエルの体が空に浮く。
羽が動く音は全くしない。
『適当二飛ンデモ、よろしいデスカ?』
「ええ、特に目的があるわけではないからお任せでお願い。できれば最高速度も体感してみたいわ」
『了解、イタシマシタ』
天井と床のちょうど真ん中ぐらいの位置を維持したまま、アークアンシエルが飛ぶ。
空気抵抗などは全然感じない。
ただ頬を微かな風が滑っていく。
「空気抵抗とか、感じないんだね」
「その辺はしっかり保護してくれるのねー。ただ忠誠度が低いと手こずるのねー」
それならばこの快適さは、さぞ忠誠度が高かろう。
「うわー。すっごく速いですねー。これで最速ではないんですか?」
ぐるんとアクロバティックな空中回転をするも、不思議と目が回らない。
気がつけば安定した体勢になっているのだ。
凄い。
『マダ、最速デハありません』
どこか誇らしげにも聞こえる返事がある。
私の希望通り、徐々にスピードをあげているようだ。
景色が流れるのが速い。
「え? えええ?」
セリノが更にスピードをあげたアークアンシエルに驚きの声を上げた。
「ん? もしかして想定より速いの?」
「速いです。これだと、最速と呼ばれるファーストチーターを超えているかもしれません!」
「う。時速120キロなの。特殊個体あるあるなの」
「ん。無理すれば150キロまで出せそうなのよ。でも無理をさせたら駄目なのよ」
モルフォがポンポンと飛び跳ねれば、あと一段階スピードをあげようとした気配が消え失せる。
「そそ。無理はしないでね。末永くお付き合いしたいから」
『大変アリガタイ、オ言葉。感謝ノ極み』
飛びながらもぺこんと頭が下げられた。
随分と真面目な性格のようだ。
「ふわー! 最高です! 何時か一人で乗ってみたいなぁ……フォルス様。その、許可はいただけますか?」
「楽しそうな様子は見ているこっちも楽しいからいいわよ」
「っ! ありがとうございます。アークアンシエル。外に出たら僕を乗せて自由に飛んでくれるかな?」
『喜ンデ』
言葉は短いがアークアンシエルからも嬉しそうな気配を感じる。
この一人と一匹はきっと仲良くなるだろう。
ん?
でもそうなるとセリノはホルツリッヒ村の村民確定なのかなぁ。
一応確約はもらっておくべきだろうか……と一人で思考に耽っているうちに、テスト飛行? は終了したようだ。
ふわっと体が浮く感覚のあとに、アークアンシエルは地に降りたった。
「ありがとう。驚くほど快適で、想像以上に速かったわ。今後もよろしくね」
『はい。好きなトキにお呼ビください』
「また一緒に飛ぼうな!」
『ハイ。楽シミに待ッテおります』
出てきたときと比べて感情が豊かになった気がするアークアンシエルは、スライム収納の中へと戻っていった。
「さて! ダンジョン踏破は目の前だね!」
「ええ、ボスモンスターが待ち構えておりますわよ」
「えぇ? ボスモンスターって存在するの?」
「普通は存在するのねー。アイリーンが対峙するならきっとボスモンスターも特殊個体なのねー」
「そんなフラグはいらない」
でも立った気がする。
立つのはク○ラだけでいいのに。
「ん。三つ目の角を曲がるとボスモンスターとお供たちと遭遇するの」
「やっぱり特殊個体なの?」
「ん? そんな当たり前のことを聞いてしまうの?」
「しまいます」
「ん。当然特殊個体なの。お供まで特殊個体なの。特殊個体のオンパレードなの!」
おうふ。
なんでそんなに嬉しそうなんですかね?
うちの子たちは好戦的だよね……。
「ボスはクレスヘラオオカブトーン、お供はウマメイオクワガッタン、タンサンオオカブトーン、ホソメタリクワガッタン」
「……初めて聞くモンスターなんですが?」
「え! そうなの?」
「はい。本来であればインセクトキング、インセクトクイーン、インセクトプリンス、インセクトプリンセス、インセクトナイトのうち三種類がでるはずなのです!」
セリノ大興奮。
しかし、ダンジョンボス。
手を抜きすぎじゃない?
集合体みたいな印象なのかな。
「さすがはアイリーン。ドロップアイテムが楽しみなのねー」
「リリーはぶれないなぁ……でも死蔵アイテムになるんじゃないの?」
「そこは何時ものことなので気にしないでいいのです」
捨てるよりは死蔵だし、寄附よりは死蔵なんだけど。
経済回したい気もするのよね……。
ま、これもマスターたちに応相談かなぁ。
「マスターたちにも、さすがにこの案件は手に余る気がします」
セリノの顔色が悪い。
それ程のことなのだろうか。
まぁ、それも戦ってみてから、考えればいいよ。
洒落にならない強さとかだったら、沈黙を守ればいいだけだしね!
ヘラクレスオオカブトによく似たレリーフがはめ込まれた大きな扉が現れた。
私は皆の頷きを確認してから、大扉を開くべく力を込めて扉を押す。
押したあと、引くタイプの扉じゃなくて良かったよ! なんて、間抜けな思考を巡らせている間に、大扉がゆっくりと開き始めた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 若干興奮気味 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
口止魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
今週は主人の出張が続いて消耗が心配です。
ちなみに自分は薬の副作用で眠気が酷いですZZZ。
早くホラー企画にも手をつけないと駄目なんですけどね。
次回は、昆虫ダンジョン インセクト 28(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。