細工にも勤しむ。
つまみ細工は一度挑戦してみたいなぁと思いつつも、なかなか手が出せていません。
本屋さんで売っていた手作り籠バッグの本が面白そうでしたが、1冊の値段を考えると売られている物を買った方が間違いない気がしてきます。
オリジナリティー豊かな作品が作れるなら、また話は別なんでしょうけどね。
そしてなにより籠バッグは、肌にあたってちくちくしてしまうので、布で保護しないと駄目な感じなのですよ。
せめて作品の中で作って楽しみたいですね。
まったりとお茶もしたことだし!
と、気持ちを切り替えて細工物に取りかかる。
「えーと? 細工師に作れるアイテムっていうと……」
「準備は万端なのよ!」
ローズがテーブルの上に素材を並べてくれた。
「おーありがと。何から作ろうかなぁ。っていうか、どれが初心者向けなんだろう? 細工師のみ作れるって言ったら、細工師にならないと無理なんだよね、やっぱ」
ホワーンラビットの牙 レア
属性付の道具になる。
細工師のみ作れる。
ホワーンラビットの爪 レア
属性付の道具になる。
細工師のみ作れる。
ポークの鼻
高級食材トリュフを取る為の道具材料になる。
細工師のみ作れる。
上位種、亜種のポークで作るとより高性能となる。
クックルーの嘴
*一般的には捨てられている。
装飾品が作れる。
細工師のみ作れる。
並んだ素材を前にして腕を組んで首を傾げる。
とりあえず、ホワーンラビットの牙を手にすると。
『まだ加工できません』
頭に声が響いた。
裁縫の時は作る物が明確に決まっていたからイメージを固めやすかったけれど今回は違う。
トリュフ取りの道具は妄想が炸裂過ぎて、あんまりな品物ができそうなので、型紙や説明書が切実に欲しい。
「んーしたらば、細工師取得の為に今の私でもできる物は……」
「これなのです!」
サクラの鑑定はここでも活躍してくれるらしい。
素材が幾つかテーブルの上へ置かれた。
シルコットンの布 端切れ 彩色済
赤、青、黄、緑、桃、紫、茶、黒、金、銀。
シルコットンマスターの下、シルコットンの幼虫と成虫が仲良くせっせと増産中。
丸針で押さえながら作る、つまみ細工で装飾品ができる。
ポークの皮 端切れ
裁縫で使った皮の切れ端。
革細工に向く。
装飾品ができる。
つまみ細工は一時期嵌まった。
和物コスプレに使うと可愛くね? の流れだった。
ピンセットが欲しいところだが、丸針でもなんとかなるだろう。
革細工は体験講座でキーホルダーを作った程度。
つまみ細工よりは経験もないが、未経験よりは若干マシに違いない。
「まずは手慣らしに……」
シルコットンの布を小さく切り分けて、丸針で形を整えながら、糸で縫っていく。
ピンセットを使わない糸縛りタイプの作り方で頑張ってみた。
桃色でグラデーションをつけて重ねる。
中央に使いたいビーズが存在しないので、シルコットンの糸玉で対応。
3センチ程度のリアルサイズな桜の布細工が出来上がった。
「まぁ、こんな物かな?」
「可愛いのです! 欲しいのです! 桜色のお花飾り!」
「あ。じゃあ、あげるよ」
「ありがとう、愛! 大事にするのです」
サクラに渡すと、右上辺りに桜のつまみ細工がぺたりと張り付いた。
「落ちないの?」
「大丈夫です。装備品認識すると、ぴったりフィットして落ちなくなるのです」
「おぉ! なんだかスライムっぽいね」
張り付いた桜を引っ張るも、ぐいーむとスライムの肌? が一緒にくっついてきて離れる気配はなかった。
「……私も欲しいわよっ! っていうか、全員分作りなさい! ルンとピュアの分も忘れちゃ駄目よ!」
ローズの突っ込みに、然もありなん! と拳を握り締めるも、ルンとピュアにも張り付き機能はあるのかと、しばし思案する。
「まぁ、多分なんとかするだろう」
本人達のスペックは高いし、無理でもスライム達がなんとかしてくれるに違いない。
私はまず皆のオネダリを叶えればいいのだ。
何しろ喜ぶ皆は大変可愛い!
各自名前をつける時にイメージしたモチーフをメインに考えた。
ローズは薔薇、リリーは百合、 モルフォは蝶と迷って勿忘草に。
サイは緑の花……と記憶庫を探って山法師
ルンとピュアは揃って黒なので、思案の挙げ句、苧環と銀欄で白花にした。
可愛い子達には花が似合う。
仕上がる頃には、当然のスキル会得&ランクアップができた。
『スキル 細工を会得しました。細工スキルのレベルは10です』
と思ったら、ランクアップにならなかった。
同じ物ばかり作っていたからだろうか。
形はかなり違ったのだけれど。
それならばと革小物に挑戦する。
材料を選べば、型紙が頭に浮かぶ。
→材料は手に取れば裁断される。
……まではいけた。
目の前には、様々な形に切り揃えられたポークの皮がある。
「コインケースとコインケースにつけるチャームアクセサリーでも作ればいいかな?」
穴開けに悩んでいると、スライム達が触手ドリル? で器用に穴を空けてくれた。
つまみ細工と同じように、スライム達の分もお揃いで作ろうかと思ったら、スライム達は自分で作ってみたいらしい。
彼女らにできないことはないのかもしれないとしみじみ実感する。
さすがに、ルンとピュアは無理とのことで、二人の分は私が作ることにした。
「スライム型にするのっ!」
「スライムの刺繍するか、薔薇の刺繍にするか……悩みどころね」
「百合の形も可愛いけど、使い勝手が気になるのね-」
「何種類か作るのも良いと思うのです!」
「無限の選択肢があるのよ! 迷うのよ!」
スライム達が意見を交わしている間に、私はせっせと針を動かす。
つまみ細工よりはこちらの方が経験値を獲得しやすいようだ。
自分とルン&ピュアのコインケースとアクセサリーチャームを仕上げる頃には無事にランクアップをとげた。
『スキルレベルが上限に達したので、上位スキル 細工師を会得しました。上位スキル 細工師スキルのレベルは10です』
『スキルレベルが上限に達したので、最上位スキル 細工師範を会得しました。細工師範スキルのレベルは10です』
念の為確認すると、
材料を選べば、レシピ(型紙)が頭に浮かぶ。
→材料は手に取れば裁断される。
→裁断した物に一針通せば一瞬で仕上がる。
→仕上がった物は全てスライム達がコピーできる。
裁縫師範と同じ流れで大丈夫らしい。
「うし! これで、ローズが用意してくれた素材を攻略できるわね!」
手をわきわきさせながら、素材を手にする。
時間も忘れて没頭した結果。
注意!! 細工師範の作る物は全てSSSランクになる。
時々失敗することもあるらしい。
表示なき場合は、SSSランクの仕上がり。
ホワーンラビット牙のペンダント
革紐を穴開けした牙に通したシンプル仕様。
シルコットンつまみ細工の薔薇モチーフ付。
回避率上昇&速度上昇効果有。
ホワーンラビットのつけ爪
ピカピカに磨き上げられ、やわらかなピンク色をしている。
小指につける物。着脱可能。
本人には効かない猛毒効果付。
熟練者が使えば撫で切り瞬殺も可能。
トリュフマスター
ポークの鼻で作られた、高級食材トリュフを取る為の道具。
師範の手によるので、可愛くデフォルメされている。
臭いがせずに、繰り返し使える画期的な造り。
本来は結構グロテスクな形状で、装着していない時は腐臭がする。
しかし、トリュフ取得の効率は抜群なので、オーダー注文で作成→使い捨てが一般的。
クックルー嘴の髪飾り
シルコットンつまみ細工で作った花々で飾られた髪飾り。
太めピン止めに近しい造り。
隠蔽効果有。
本来捨てられる素材で作られているので、珍しい。
また小さいので、師範でないと細工はできない。
……などができました。
ペンダントはつけても良いし、売っても良い。
つけ爪は暗殺者的な何かとか、中二病的なアレが擽られる。
絶対防御があるから試してみるのもいいだろう。
髪飾りは……早速つけた。
水鏡に映してみる。
なかなか可愛い、少しづつ零れてしまう髪対策にちょうど良いのが気に入った。
効果も意外だがありがたい。
トリュフマスターは、何時か装着してふごふごいわせてみたいところ……。
まぁ、モルフォがいる以上、便利グッズとして販売が無難だろう。
個性に富んだコインケース&キーチェーンを自慢しに来るスライム達を愛でながら、ルンとピュアに仕上がった物を手渡す。
しかし二人が、コインケースを取り出すような場面はあるのだろうか。
信用できる相手ができたなら、買い物などにも行かせてあげたい。
スライム達と一緒なら、ピュアは亜種と思われるだろうが、ルンは……どうだろう?
似たモンスターがいるといいのだけれど。
「冒険者ギルドとかなら、モンスター図鑑を置いてるかしらねぇ」
がっつり読みたい派なのでできれば購入したいところだが、ラノベの設定的には高価な場合が多い。
お金なら無双で何とかなりそうだが、希少価値があったりすると色々面倒臭そうだ。
「まぁ、気長にやるけどさー」
寿命に関しては鑑定では出ていないが、そこそこ長生きしそうな予感がしないでもない。
向こうでは譲れないラインはどうにか守ってこれたが、周囲の無駄な干渉が凄まじく鬱陶しかった。
こちらでは、自分を大切に想ってくれる相手が何人もいる。
ぶっちゃけ、身内はここで完結してしまっても良い。
いっそ私は引き籠もって、スライム達に交渉をお願いするのだってありだろう。
「腹黒は、リリーだけで十分よっ!」
悪人顔でもしていたのだろうか。
ローズがアタックしてきた。
続いて無言のリリーがローズを弾き飛ばしている。
「そろそろ夕食の準備をするといいのねー」
「あー、そんな時間かぁ。リクエストある?」
「完璧などうんを所望します!」
飛ばされたローズが瞬間で戻ってきて希望を出した。
皆もぴょんぴょん跳んで賛同している。
「了解! じゃあ、完璧などうんを作るわね」
頷く私にスライム達はそれぞれの表現で喜びを示してすぐ、材料や料理器具などの準備を始めてくれた。
喜多愛笑 キタアイ
料理人 LV 2
スキル サバイバル料理 LV 3
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10 new!!
危険察知 LV6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV11 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV∞ 愛専用
命止魔法 LV3 愛専用
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
ネタ練りはもっぱらお風呂の中です。
良い感じに妄想炸裂します。
大体話の流れを考えるので問題ないのですが、細かいエピソードを思いついた時、即時メモできないのが難点です。
次回は、完璧な、どうん定食。
の予定です。
定食というと昼の印象が強いですが、最近は夜定食も結構あるようなのでいいかなぁ、と。
タイトル決めで時々、妙に細かいところで悩んだりします。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。