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昆虫ダンジョンインセクト 26

 健康診断に行ってきました。

 ホットフラッシュの話をすると、皆さん体験談を沢山話してくださいましたよ。

 ただ対処法が本当になくて困りますね……。

 


 ホルツリッヒ村にも何匹か欲しくなるかしら? オオヤンマ……と思いつつよく寝ているセリノを見つめる。

 スライムたちも倒れているセリノの寝顔を覗き込んでいた。


「美少年の寝顔が萌えるのはわかっているけれど、そろそろ起こしてあげるのねー」


 リリーの言葉で皆我に返る。

 それだけ強力な寝顔だったのだ。


「……この調子だとセリノは毒攻撃も受ける気がするのです」


「同意いたしますわぁ」


 サクラとローズが仲良く首? を振っている。

 私も同意しておいた。

 

 薬の投与はスライムたちにお任せする。

 微妙な加減で失敗したら怖いからね。

 今度はモルフォが引き受けた。

 

「ん。一本以上飲ませなくてもよさそうなの」


 触手が器用に傾ける瓶からは、一定量の解除薬が落ちていく。

 点滴みたいだ。

 モルフォの予想は当然的中して、解除薬のざっと三分の二ほどで覚醒する。


「えーと? 今度は催眠でしたか……面目ないです」


 がっくりという表現に使われる絵文字そのままの格好でセリノが打ちひしがれた。

 スライムたちが触手で優しく宥めている。

 きっとこの光景が繰り返されるに違いない! と確信めいて頷く。


「気にしないでいいのねー。どうせなら毒解除薬も試したいのねー」


 私の頷きに反応したのか素で鬼畜なのか。

 リリーがセリノを覗き込みながら囁く。


『悪魔なのです』


『まぁ、リリーは鬼畜ですものね』


 セリノを慮った面々は念話で伝えてきた。

 まだ不憫属性が尾を引いているらしい。


「……お役に立てるように頑張ります」


 セリノはどこまでも健気だった。

 モルフォが涙を拭く真似をしている。


「……う。またオオヤンマなのよ。今度はワンプッシュを試すのよ」


「あぁ、それもやらないとだねぇ」


 最下層なんだからと気を抜かずに検証しないと。


「まぁ、ペーパーフィッシュも隠れているようですわ。そちらも一緒に試しましょう」


「え、何処にいるの?」


「額の辺りを狙ってくださればよろしくてよ?」


 本当に擬態が上手だなぁ、ペーパーフィッシュ。

 今回もどこにいるのかわからなかった。


「え? 何体いるのよ!」


「……十五体もいましたわ。ペーパーフィッシュって随分と群れますのねぇ……」


「僕の記憶が確かであれば五匹が最高だったような……」


 何時だってフラグが押し寄せてくる。

 もう突っ込まないぞ……。


 手を思いっきり伸ばしてワンプッシュを試みる。

 二メートル手前くらい、かな?

 ぼとぼとぼとっと、ペーパーフィッシュが落ちた。

 この距離でも即死らしい。

 最後のペーパーフィッシュが死んだかなーというところで、オオヤンマの体がぐらっと傾ぐ。

 大きな目がぐるぐると回っていた。

 これだけ大きいとよく回っている様子が見られる。

 なかなかにおもしろい。

 オオヤンマはそれどころではないだろうが。

 

「ワンプッシュだと時間がかかるのです?」


「でも即死はしてくれるのねー。この大きさと距離で即死は御の字なのねー」


「死ぬまでの僅かな時間、こちらへ攻撃する余力もなかったようですわ」


 結局のところワンプッシュでいけるのだろう。

 自分で作っておいてあれだけど、凄いよね。

 虫避けスプレーの威力。


 オオヤンマが落下した。

 ぴくぴくと痙攣しているので瀕死状態といったところか。


「ペーパーフィッシュのドロップアイテムが大量なのねー。たぶんきっとすっごく喜ばれるのねー」


「レアドロップに関しては特に喜ばれると思うのです」


 さくさくドロップしているから感覚が麻痺しているけれど、本来ならここまで落ちないからレアドロップなんだよなぁ……。


「ん。拾っている途中だけど、トン三種類が押し寄せてきたの」


「う。トンブラック一匹、トンスレッド三匹、トンブラッド二匹なのよ」


「ドロップアイテムは私が全部拾うから安心するのねー」


 誰が拾うより安心するね! と心の中で叫んだのは私だけではないはず。


 リリーの声に安堵しつつ顔を上げれば、トンスレッド、トンブラッド、トンブラックが編隊を組んで浮遊している。

 逆三角形攻撃っていえばいいのかな?

 毒攻撃は遠距離タイプではないらしく、そこは一安心。

 ペーパーフィッシュは直接攻撃だったし、オオヤンマにいたっては一番弱い個体に攻撃するのがセオリーなんだってさ。


 急降下したトンスレッドが一匹、私に向かって突っ込んできた。

 弱者認定されたのかな?

 心外だなぁ。

 セリノよりは強いと思うよ、私。


 正面から向き直ったあとは、ちょっと格好良く拳銃を両手で持つ要領で虫避けスプレーを構え、しっかり照準を定めて喰らわせてやりましたよ。

 急降下で襲ってきたトンスレッドは、そのまま地面にめり込みましたとさ。

 ふふふふ。


 私がトンスレッドを倒して悦に入っている隙に、皆もそれぞれ敵と対峙していた。

 スライムたちはトンスレッドとトンブラッドを蹂躙している。

 そしてセリノは自らトンブラックに挑んでいた。


「くっ!」


 今回は相打ちめいた幕引きとなった。

 トンブラックが死の間際に放った毒攻撃が、セリノにクリーンヒットした流れだ。

 セリノは首筋を押さえている。

 服によって多少の防護がされていたはずだが、それらを貫いたのか、素肌部分に運悪く突き刺さったのか。

 

「へぇ? トンブラックは毒針攻撃なのねー」


 セリノの首筋を凝視したリリーが細く長い針を抜き取った。

 ガラスでできた針のように透明で、先端からは毒液とセリノの血液が滴っている。

 しかし、どこに仕込んでいるのだろう、毒針。

 そして、どうやって打ち込むのだろう、毒針。

 その辺りは突っ込んでは駄目なのかもしれない。

 スルー案件かしら? と思いつつ、毒に呻くセリノをはらはらと見守る。


 解毒はローズが始めてくれた。

 血がぷくりと膨れている箇所に、筆にしか見えないアイテムを使い、解毒薬を薄く丁寧に塗り込めている。

 

「残りはお飲みなさい」


「じ、自分で飲めます」


「遠慮は状況を考えてするものですわ!」


 麻痺や催眠のときと違って、自分で薬を飲もうとするセリノを制したローズは、顎クイをしてセリノに解毒剤を飲ませてしまった。

 セリノの頬が赤かったのは、恋が芽生えたわけではないと思う。 


「そういえば、薬の味ってどうだった?」


「……どれも飲みやすかったです。というより、普通に飲み物として飲んでも美味しいと思います。子供に飲ませるのは少し危険かもしれませんね」


「美味しくて異常時じゃなくても飲んじゃうとか?」


「はい」


 卒倒するほどマズいのもどうかと思うけど、美味し過ぎるのも問題かしら。

 でもまぁ、その辺りは親御さんと周辺の方たちに頑張っていただく方向でお願いしたいかなぁ。


「味についてはギルドマスターたちと相談すればいいのです。美味しくするのは難しいですが、マズくするのは簡単なのです」


「それもそうだね。報連相だいじ」


 それぞれのギルドの思わくもあるだろうしね。

 薬師ギルド……あるなら意見を聞くべきかも?


「そういえば、アイリーン。貴女、オオヤンマに乗ってみたいのではなくて?」


 その言い方だと自分が乗ってみたいとしか聞こえませんよ、ローズさんや。

 乗るか乗らないかと問われれば、乗ります! と答えるけどさ。


「セリノは乗ってみたいと思うのです」


「え、ええ。勿論乗ってみたいです!」


 そうだろう、そうだろう。

 男の子はやっぱり空に憧れるものだよね……偏見かな?


「新しくテイムをする? それとも特殊個体の子に乗せてもらう?」


 恐怖系のテイムだから、試しておくのが無難かも。


「できれば特殊個体に乗りたいです!」


 しゅたっと手を上げたセリノの瞳はきらきらと期待に輝いている。

 ここまで憧れの色も強く見つめられて拒絶なんて出来やしない。

 私は微苦笑を浮かべながら、テイムをしたオオヤンマを外ヘ出してもらった。



 トンブラックの羽

 細工師の加工により包装紙になる。

黒い包装紙で保温効果が高い。


 トンブラックの口 

 細工師の加工によりスプーンになる。

 軽くて水に強く錆び知らず。


 トンブラックのトンボ玉 レア 

 活力が湧く。

 漆黒で掌サイズ。



 トンスレッドの羽

薬師の加工によりオブラートになる。

 液体を包むとゼリー状になるので料理に使われる場合も。


 トンスレッドの糸

 水を弾く効果のある糸。

 汎用性があるので人気が高い。


 トンスレッドのトンボ玉 レア

 創造力が刺激される。

 薄い水色で掌サイズ。



 トンブラッドの羽

 細工師の加工により油包み紙になる。

 油や油性の物を包むのに最適。


 トンブラッドの触覚

 持っているとモンスターを感知しやすくなる

 赤く掌サイズで軽い。


 トンブラッドのトンボ玉 レア

 飛行タイプのモンスターに遭遇しにくくなる。

 赤く爪の先サイズ。

 ペンダントにするケースが多い。


 トンブラッドのブローチ レア

 横向きのトンブラッド全体像の形。

 罠感知度が上昇する。





喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好


 料理人 LV 4

 

 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

口止魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)   




 

 企業の新作商品を試食できるイベントに応募しました。

 当たるといいなぁ。

 

 次回は、昆虫ダンジョン インセクト 27(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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