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昆虫ダンジョンインセクト 20

 かさこそするGに関する描写が多いので要注意。

 書きながら、こんなんいたら軽く絶望できる! と思ってました。

 


 ブラックジーの攻撃に耐えられるのならば、この階層は何の問題もない!

 一人で胸を張っている私を、皆は生温く見守ってくれる。


「ん。御満悦の所申し訳ないけれど、お次のモンスターが来たの。ミートキリトリ三体と、フラワーキリトリ一体なのっ! ちなみにミートキリトリはころんころんなの」


「……本当にころんころんです、ありがとうございます」


 この世界でのキリトリは、向こうの世界でいうところの蟷螂だ。

 蟷螂で一番に思いつく印象は雌が雄を食べるんだよね……だったが、次点では全体的にスリムだよねー、となっている。

 あくまでも個人的な印象だよ?

 しかしこのミートキリトリはまさしくころころだ。

 ちょんと突けばどこまでも転がって行きそうな丸っと加減。


「……随分と肥えた個体ですねぇ……ドロップアイテムも多いのでしょうか? だとしたら嬉しいです。ミートキリトリの肉は美味しいんですよ」


 何となく筋張っている気がして苦笑する。

 ミートキリトリは、あちらの蟷螂とは全く違う別物だ。

 勢いよく三方向から転がってくるのに噴き出した。

 運動会の玉転がし……しかも複数人で頑張る大きさ……サイズだから、まともに食らえばそれなりの痛手を負いそうだが、これもまたユーモラスな感じがする。

 セリノもひらりと軽やかに突進を避けていた。

 対峙したのはローズ。


「ふ、つまらぬものを切ってしまいましたわ」


 何処ぞかの? 剣客のような台詞だ。

武器は多分触手だと思うけれど。

 ゆっくりとローズがその場で一回転しただけだったが、三体のミートキリトリはぱっかりと二つに割れた。

 当然即死だ。

 ミートキリトリを従えるように、その背後に立っていたフラワーキリトリの複眼が、狼狽していたのは見間違いではなさそうだ。

 そんな状態で蝶々コンビの幻惑を放たれたら効果は絶大というもの。

 フラワーキリトリは呆気なく己の首を、鋭利な鎌で切り落とした。

 転がった頭についていた瞳は昆虫特有の複眼ではなく、瞳孔部分に花が一輪咲いている。

 悍ましくも美しい。


「ミートキリトリは三体とも特殊個体なのです。フラワーキリトリはレアドロップを落としたのです」


 瞳の中に咲く花に見とれているうちに、サクラがドロップアイテムを鑑定してくれる。


 ミートキリトリの肉 

 特殊個体につき通常個体の三倍の大きさ。

直径一メートルの球体。

 味も濃厚になっている。

 何処を切っても照り焼き味。

 

 ミートキリトリの肉 レア

 特殊個体につき通常個体の三倍の大きさ。

直径一メートルの球体。

 何処を切っても塩胡椒味。

 *この味がドロップするのは初めて。


 ミートキリトリの肉 レア

 特殊個体につき通常個体の三倍の大きさ。

直径一メートルの球体。

 何処を切っても葱甘酢味。

*この味がドロップするのは初めて。


 ミートキリトリの調味料 レア

 照り焼き、塩胡椒、葱甘酢の調合調味料が小瓶に入っている。

 三本セット。

 *この調味料がドロップするのは初めて。


 フラワーキリトリの羽

 花びらの形をしている。

 花びらの形は五種類で桜、薔薇、向日葵、紫陽花、秋桜。

 今回は一番人気の薔薇がドロップ。


 フラワーキリトリの鎌

 女性の手入れ用ナイフ素材とされている。

 一番人気は薔薇の鮮やかな紅。

 熟練の細工師が作ると、可愛らしい花の紋章が浮かぶ。

 今回は薔薇がドロップ。


 フラワーキリトリの眼球 レア

 花びらが美しい眼球。

 希に花びらでなく、花が一輪収まっている物もある。

 今回は花が一輪入っている一組がドロップ。

 基本一個ずつしかドロップしない。

  

 フラワーキリトリのファランジリング レア

装備していると楽器が上達する。

 王族・貴族に人気の一品。

 今回は男性が好む向日葵色のリング。


「ん? この小瓶三本の中身は何ですか。ミートキリトリにこんなドロップはなかったはずなんですけれど……」


 セリノが困惑の色も強く、そっと小瓶を手に取って眺めている。


「今回が初めてのドロップなのです」


「それって……す、凄いことなのでは?」


「凄いことなのねー。ついでにミートキリトリは塩胡椒味と葱甘酢味が初めてのドロップなのねー」


「……もしかして? この小瓶の中身は……」


「予想通りですわ。誰でも簡単に味付けのできる調味料ですのよ」


 呆然としたセリノが慌てて三本の小瓶を私に手渡してくれた。

 スライムたちの慈悲深い微笑に囲まれた私は、そっと自分のマジックバッグの中へと調味料の小瓶を入れている。


「……フォルス様と御一緒すると、いろいろと想定外のことが起こりすぎますね……精神が鍛えられます……」


 ふふふと低く笑ったセリノの瞳が何処か遠い。 


「う。ダンジョンを踏破する頃にはきっと慣れるのよ」


「そうなることを祈りますね……」


 まだ声が震えているが、セリノなら大丈夫だろう……たぶん。


「これからもドロップするなら、少しは人気が出るかもね、昆虫ダンジョン。味付きお肉がそのまま食べられるとか、便利すぎない?」


「そうですねぇ……レアドロップですから……そこまで影響が……うーん。味次第でしょうか」


「調味料も侮れないのです。料理下手な人には魅力的なアイテムなのです」


「レアドロップの検証は私たちじゃ難しいもんね。ま、帰ったらマスターたちに丸投げしましょ」


 あの二人なら上手くやってくれるに違いない。


「……お肉、お味見がしたいですわ!」


 肉好きのローズが目を輝かせた。


「うーん。休憩するところ、ある?」


「ん。あるけれど、またお客様がいらっしゃったの。オンブタッバとイナーゴ。それぞれ五体ずつなの」


「この階層、団体様が多いね」


「ん。フラグが立ったの。ホワイトジー三体が追加なの」


「ぎゃっ!」


「ホワイトジーは一体ずつしか出ないはずなのですが……」


 私のジー嫌いは今までの言動で十分に伝わっていたらしい。

 セリノが心配そうに呟いた。


『安心してくださいませ~。私たちが先行して、ジーをやっつけて参りますわ~』


『わんぷっしゅの検証用に、一匹だけリリーさんにお任せいたしますね~』


「御指名なので、容器を一個渡すのねー。さくっとやってくるのねー」


「よろしくお願いいたします!」


 直角のお辞儀をしつつ、リリーに容器を手渡した。

 たぶんジーもワンプッシュで倒せるだろう。

 本当、いいアイテムを作ったよね、私!

 自画自賛しながら、両手に容器を握り締める。


「オンブタッバとイナーゴ。一体ずつ、私が倒すから、他はよろしく!」


「はい!」


「「「はーい」」」


 ローズと蝶々コンビはオンブタッバをスルーしていった。

 セリノの経験値用にと気遣ったのだろう。


 私は大人が背中に乗れるサイズの、オンブタッバの顔面にワンプッシュで吹きかける。

 飛びかかろうと跳躍準備をしたオンブタッバは、つんのめったように顔面を地面に打ち付けた。

 即死で間違いなさそうだ。


「どわっ!」


 オンブタッバの遺体を乗り越えてイナーゴが飛びかかってくる。

 私はのけぞりでどうにか、イナーゴをかわしつつ、その腹部辺りにワンプッシュをくらわせた。

 地面に降りたったイナーゴが向きを変えて、再び私に向かって襲いかかろうとしたが、オンブタッバと同じように、つんのめって顔面から地面へ滑り込んだ。

 顔に吹きかけるよりは効果が弱かったらしく、死亡まで数秒のタイムラグがあったものの、これならば即死と考えて良さそうだ。


 のけぞりで痛めるまでにはいたらなかった腰を、とんとんと叩いている隙に、殲滅は終わったようだった。


「依頼品も入手できましたので安心なさいませ。勿論ワンプッシュで倒せましたわ。本当に良かったですわね」


 ローズがホワイトジーの触覚らしき物を頭上に掲げながらこちらへ戻ってきた。

 おっきい触覚だなぁ。

 あの触覚から察するに、ホワイトジーのサイズは軽く人間の大人か、それ以上。


 かたたたたっと全身が震えてしまう。

 こればかりは自分の意思ではどうしようもないのだ。


「安心するのです。もうホワイトジーは死亡しているのです。死亡していれば、ただのお金なのです」


 え!

 サクラからまさか言わないだろう、お金の亡者発言が出た。

 驚きに、震えも止まった。


「そして、その価値を鑑定するのです。いいのです? ホワイトジー、死んでしまえば、ただの金、なのです」


「死んでしまえば、ただのお金……」


 ホワイトジーの部分はなぞらえて口にはせず、サクラの鑑定結果を見守った。


 オンブタッバの羽

 薬の素材。

 薬師の手により、仲直りの薬になる。

 仲直りの薬を飲むと、何故かお互いをおんぶしあう。


 オンブタッバの眼球

 薬の素材。

 薬師の手により、跳躍力上昇の薬になる。

 薬の効果はおよそ一分。

 意外と使い道が多く、冒険者以外にも気軽に使用される。

 

 オンブタッバのおんぶ紐 レア

 これを使うと背負っている間、対象者は大人しい。

 連続して二時間以上使おうとすると、酷い悪臭がするので要注意。

 妊娠発覚と同時に手配されるアイテムの一つ。


 イナーゴの触覚

 薬の素材。

 薬師の手により、貧血予防の薬や免疫力強化の薬になる。

 丁寧に乾燥されたものをそのまま使用しても多少の効果有。


 イナーゴの羽

 乾燥させてすり潰してから、調味料的に使用。

 料理に香ばしさが追加される。

 貧血気味の女性に人気。

 

 イナーゴの佃煮

 食べやすいスティックタイプ。

 イナーゴの栄養分がすり潰されて、凝縮されている。

 甘みが強いので、おやつ代わりに子供も食べる安心安全食品。


 ホワイトジーの触覚

 家の壁などにそのまま塗り込めると、ジー系統の昆虫やモンスターからの侵入を防いでくれる。

 また家が劣化すると、かさこそとジーが徘徊する警戒音で教えてくれる。

 間違えて飾ってしまうと、逆に引き寄せてしまうので取り扱いには注意。


 ホワイトジーの羽 

 二枚で一セット。

 細工師の手により、加工された物を装備すると三分間空が飛べる。

 大きいのと使い切りなので、使いどころが難しい。


 ホワイトジーの野望 レア

 ホワイトジーの形をしたピンバッジ。

 ジー系統モンスターとの遭遇率を減らしてくれる。

 十個つければ、絶対に遇わない……という都市伝説あり。

 

 ホワイトジーの夢 レア

 水虫避けトゥーリング。

 装備していると水虫に悩まされない。

 男女ともに人気があって、常に品薄。

 足の指に装着するので、周囲にばれにくいのも人気の理由。


 相変わらず突っ込みどころが多すぎる鑑定結果だった。

 特に、ホワイトジーの野望は酷い。

 一個つけるのだって勇気がいる。

 しかも十個もつけて、また出会った日には……軽く絶望するよね?    





喜多愛笑 キタアイ


 状態 若干興奮気味


 料理人 LV 4

 

 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

口止魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)   



 

 バレンタイン当日狩りに出ようと思ったら体調不良で撃沈。

 余計に食べるなってことですか、そうですか。

  

 次回は、昆虫ダンジョン インセクト 21(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

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