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昆虫ダンジョンインセクト 19

 確定申告のデータ入力を始め……る前に、ソフトを最新版にしなければならず。

 その更新が何故かできず。

 数時間格闘しましたとさ。

 できなかった原因は何だったのかと、小一時間問い詰めたい今日この頃。

 

 


 宝箱を回収したら六階へ下りるかなぁ。

 予想していたより多種良質なアイテムも入手したことだし。


 一人ふむふむと頷いているうちに、モルフォが宝箱の元へと先導してくれる。


「こ、これは! 宝箱なんでしょうか?」


 疑問形にもかかわらずセリノの鼻息が荒いのも、まぁ無理はない。

 

「ゴールデンカーメの遺体に見せかけた、宝箱なのです。そもそも遺体が残らないのがダンジョンなのです」


「甲羅部分が蓋になっているのねー。この宝箱はアイリーンが開けるといいのね」


「そうなの?」


「そうなのねー」


 セリノに開けさせていたのに、ここにきて私を指名とは、何かしらのフラグが立っているのかしら。


「こ、これは?」


 中に入っていたのは、同じくゴールデンカーメの遺体らしきもの。

 ただしサイズは宝箱より一回り小さい。

 中に入っていたのだから当然だ。

 

「ゴールデンカーメの像。ランク レジェンド。効果 置いておくだけで千客万来。商売を司る神様が自ら作った、百体の中の一体。毎日磨き続ければ一年に一回、一金貨が齎される」


 サクラの鑑定結果に皆が揃って絶句する。

 ランク、もっと上でもいいんじゃない?

 千客万来効果だけでも凄いのに、年に一度一金貨なんて!

 この像を一つ持っているだけで、ホルツリッヒ村の村民全員が働かないで生活できそうだよ。


「きょ、教会か、国に献上した方が問題がない気がします……」


 聞こえるか聞こえないかの声でセリノが囁いた。

 一介の冒険者が個人で持つものではないだろう。

 ……だけど私には、その手のアイテムはごまんとある。

 頑張ってる小国辺りに寄附かなぁ……。

 ホルツリッヒ村を国にまで育てて、そこで使うのもありかしら?

 って、国造りゲームじゃないんだし。

 何にせよ、今は死蔵だね。


「セリノの意見も参考にさせてもらうけど、今は死蔵かな……」


「これも口止め対象でお願いします。ちょっと規模が大きすぎて、しゃべってしまっても、さすがにそれはないなー、と笑って流されてしまいそうですが……」


「じゃあ、こちらはリリーさん保管で」


「了解なのねー。大切に仕舞っておくのねー。勿論、毎日綺麗に磨いておくのねー。専属の担当を何人かつけるのねー」


 リリーの管理に抜かりはないだろう。

 安心して預けておく。

 しかし専属の担当は誰なのか。

 リリーの中に住んでいる誰かには違いないのだが、少し気になった。


「この宝箱も持って行けるようですね。こちらはどなたが保管されますか」


「私が保管いたしますわ。美しい黄金ですものね。効果がなくとも磨いておきますわ。輝きを失わせたくはございませんもの」


 巨大な亀形宝箱はローズがさくっと収納した。

 目には優しくない輝きだが、維持すれば価値は高いはず。

 こちらはローズ本人が一日の終わりに、うっとりと磨きそうだなぁ、などと思いつつ、もう一個あるという宝箱の場所へと移動する。


「セリノが開けると驚きすぎると思うから、これもアイリーンが開けるといいのねー」


「了解です」


 新人冒険者にしては肝が据わっているセリノが驚くレベルの宝箱なら、私も同じように驚くと思うけどねぇ……と内心釈然としないものを感じつつ、宝箱を開ける。

 ちなみにこの宝箱は、球体だった。

 球体なら宝球というべきなのだろうか。

 宝球というと別物を想像してしまうので、やはり宝箱と称するのが無難かもしれない。

 よく倒れないよなー、というのが見た瞬間の感想だ。


「僕だったら、ひっくり返して、中身を台無しにしていた気がします」


 なるほど、私は驚きすぎて硬直するから、それが良かったんだね。

 球体宝箱の中身は、水だった。

 ちょぷりと波が起きて、勢いよく飛び出してきたのはゴールデンカーメの幼生体。


「ゴールデンカーメの池。ランク アーティファクト。効果 半永久的にゴールデンカーメの幼生体が一定数繁殖する。ただし中に入っている水を一定量零してしまうと、効果が消えるので要注意。あまり動かさずに、一箇所に止めておくのをお勧めする」


「……誰のお勧めなのかしら?」


「ん。どこぞの神様辺りと推察するの」


 これも商売の神様のなせる技なのかしら。


「う。でもスライム収納では既に、たっぷりの各種幼生体を繁殖させているのよ」


「商売絡みなら商業ギルドにでも進呈しようかしら」


 スルバランなら上手に運用してくれそうじゃない?


「そう、ですね。最終的には王都の商業ギルド辺りに献上しないと、駄目な予感がありますけれど」


 王都の商業ギルドか……何時かは行くだろうけれど、今はパスかなぁ。

 王都に着いたら、まずは教会だよね。

 教会に行く覚悟はできてるけれど、商業ギルド関係はスルバランに丸投げしたいかも。


「ダンジョン踏破したらスルバランと相談するわ」


「それが良さそうですね。モルフォさん。まだ宝箱はありますか?」


「う。まだ二個あるけれど、持っている素材と同じ物が入っているだけなので、特に行かなくてもいいのよ」


 モルフォがジャンプをしながら教えてくれる。

 そう言えば何時の間にか、開ける前にその中身までも把握しているのか。

 うちのスライムたちが優秀過ぎて怖い。


「モルフォが言うなら、六階に下りようか……六階は、どんな依頼を受けているんだっけ?」


「フラワーキリトリの眼球一組以上とホワイトジーの触覚一本以上ですわ」


「あー来ましたね、来ましたよ。ジー」


「ん? 嫌いなのねー?」


「や、奴を好きな方とかいらっしゃるんで?」


 向こうの世界での黒光りするあいつですよ。

 ゴで始まる四文字で、かさこそ移動するド畜生ですよ。


「うーん。ホワイトジーの方はレアなので、剥製にして飾る方もいるとか、いないとか」


「ひぃ!」


 セリノの説明に思わず悲鳴を上げてしまう。

 飾っちゃう人がいるんだ……。


「基本は幼児と同程度の大きさなのです。ですが時々大人の大きさの個体もいるのです。アイリーンは覚悟するといいのです」


「いやああああ!」


 本気の絶叫が放たれる。

 喉が痛みでビリビリと震えた。

 ダンジョンで叫ぶとか死亡フラグ! そんな考えが一瞬だけ走ったが、悲鳴は止められなかった。


「だ、大丈夫ですよ、フォルス様! 近くに来る前に倒しますから!」


『自分たちも励みますわ~』


『どうぞ、心配なさらないでくださいませ~』


 セリノと蝶々コンビが必死に宥めてくれる。

 少しだけ恐怖が薄れた。

 頭の中では、ローズの絶対防御が守ってくれると信じて疑わないのだけれど。

 それでも怖いのが、奴なのだ。


「う。一度は視界に入れておかないと駄目なのよ?」


「ん。二回目以降は視界に入らないように、駆除するの」


 できるだけ、小さい個体であってほしい。

 ひとまず心の中で祈っておく。


「覚悟が決まったのなら、六階に下りますわよ!」


「う。頑張るのよ?」


 ローズとモルフォの先導で六階へと足を踏み入れる。

 その前に私の悲鳴で寄ってきたモンスターを、モルフォとサイが殲滅させていた。

 結構な数、いたようだ。

 面目ない。


「……う。アイリーンに残念なお知らせがあるのよ」


「覚悟完了しておりますので、遠慮なく言ってくださいまし」


「……言葉遣いが既におかしいのねー。ローズ。防御強めでお願いするのねー」


「お願いされましたわ。さ! モルフォ、教えてあげてくださいまし」


「う。ブラックジーの団体様御一行が待ち構えているのよ。サイズは子供サイズなのよ」


「お、大人よりはマシ、大人よりはマシ」


「呪文のようになっているのです……」


 指先どころか全身ががたがた震えている。

 どうして団体様なのかと小一時間問い詰めたい。

 一匹見たら、十匹いると思えは、異世界でも適応されるのかしら。


 かさ、こそ。

 と、あの特有の足音がする。

 そんなところまで同じじゃなくていい。


「あ! それなら大丈夫!」


 六階へと足を踏み入れた瞬間視界に入ってきたのは、なんと十二体のブラックジー。

 しかし、全員が仁王立ちで腕組みをしていた。

 そのコミカルさに、恐怖が若干薄れる。


 私の様子を窺っていた皆は、少しだけ安堵しつつも、十二体のブラックジーを瞬殺してくれた。

 四体をセリノが、二体をローズが、残りは蝶々コンビの手による。


「今後も仁王立ちで出てくれるといいなぁ……」


「地面を這うと昆虫っぽいですけど、仁王立ちは人間っぽいですよね。僕、初めて見ました」


「もしかしたら、アイリーンのためにダンジョンが空気を読んだのかもしれないのねー」


 ありがとう、ダンジョンマスター!

 今後もジーに関しては、仁王立ちでお願いしたいです。


 私がいるかもしれないダンジョンマスターに感謝とお願いをしているうちに、ドロップアイテムが回収される。


 ブラックジーの触覚

 二本で一セット。

 持っていると匂いに敏感になる。

 一本だと、生き物の匂い。

 二本だと、+して食べ物の匂いに反応する。

 三本以上は、お勧めしない。


 ブラックジーの羽

 二枚で一セット。

 持っていると壁に貼り付き、移動できる。

 一枚だと、一分程度。

 二枚だと、五分程度。

 三枚以上は、お勧めしない。


 ブラックジーのど根性 レア

 黒いレースのリボン。

 よく見るとブラックジーの透かし模様が施されている。

 身につけていると、命にかかわる攻撃を一回のみ回避可能。

 十個以上身につけている猛者もいるようだ。 



 ど根性の性能が凄い。

 さすがは生命力に満ち溢れた生き物だと関心する。

 と同時に思うのだ。

 私はスライムたちに勧められても身につけないだろうな、と。





喜多愛笑 キタアイ


 状態 若干興奮気味 new!!


 料理人 LV 4

 

 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

口止魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)   



 氷の世界で頑張るアプリを堪能していたのですが、似た設定でもっと難しいアプリが出る模様。

 事前登録はしたものの、攻め込まれる描写があるんですよね。

 戦闘は苦手なんだよなぁ……。

 防衛って難しいですよね。


 次回は、昆虫ダンジョン インセクト 20(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 



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