昆虫ダンジョンインセクト 11
完結しているホラー作品が完結表示になっていませんでした……。
連載ばかり書いている弊害ですね。
とほほ。
シチューが美味しいようで何よりだ。
心得ているサクラがシチューのお代わりを盛って、モルフォがパンがみっしり詰まった籠を新しく取り出して、女性たちの前に置く。
「遠慮はいらないわ。満足するまで召し上がってくださいね」
「ありがとうございます!」
女性の中では一番肉がついている。
それでも十分に痩せている状態であるのには問題しかないが。
彼女たち次第では今度も女性として十分な肉をつけさせたい。
……そんな思いを抱かせた人物が逃がさないとばかりに、がっしりとパンを掴む。
パンがくっしゃりと潰れるのに女性は大きく目を見開いた。
「パンがこんなにやわらかいなんて!」
ぺしゃんこになったパンを端から半分ほど囓った女性は、またしても大きく目を見開く。
くわっ! と擬音が可視化された気がする。
「しかも美味しいなんて!」
「私の考えたレシピを、この子たちが忠実に再現してくれたの。商売になるかしら?」
「十分なりますね。このパンのために貴族は毎日でも店へ買いに行かせるでしょう」
「ホルツリッヒ村まで足を伸ばしてもらえるかしら?」
「むしろ専用の配達ルートができると思います」
おお、評価が高くて嬉しい。
「王都で店を出しても、繁盛すると思います。ここまで美味しい物ですと、独占は難しいと聡明な方々は静観するでしょう」
素敵だ。
女性たちは頭の回転もいいらしい。
品も良く食事をしながら、私の質問に対して想定以上の返答をくれる。
「でもまぁ、どこにでも困った人はいるからねぇ。私はそういった困ったさんを引き付けやすいし。当面はホルツリッヒ村まで御足労いただく方法でいきたいものね」
「……商業ギルドに相談するとよろしいかもしれません。ドーベラッハの商業ギルドは特に副ギルド長が有能な方ですから」
「ああ、彼なら私が納得いく手配をしてくれそうだわ」
笑顔のスルバランが脳裏に浮かぶ。
信用できる配達隊を組んでくれそうだ。
私ではなくアランバルリをホルツリッヒ村側の責任者にするのもありかな。
「食べ物もそうでございますが、私どもにくださった服……特に下着も販売されるなら、こちらはもっとすばらしい商売になると思われますが」
「量産体制は整っているから、それもありかしらね。ただホルツリッヒ村は人が少ないから……トレントを数えていいのなら、十分対応できるけども」
「食べ物はさて置き、服となれば販売員は人型の方がいいよね? トレントが販売員でも品物がいいから売れるのは間違いないけどさ」
「アグスティナ! 言葉遣いを整えなさい!」
「えぇ……」
「恩人に対しての態度ではありませんわね?」
「申し訳ありません。えーと?」
「ティナ!」
「アイリーン・フォルスよ。人目がなければアイリーンでも問題ないわ」
「それはいくらなんでも、駄目だって! あ……駄目、です。フォルス様」
「そういえば自己紹介がまだだったわね。貴女はアグスティナ」
「どうぞ、ティナとお呼びください!」
アグスティナ。
ロリ巨乳の天然?
悪い子ではなさそうだけど、距離感がちょっと微妙かな。
「本当にティナときた日には! 大変申し訳ありません。アグスティナに代わって自分がお詫び申し上げます。度重なる不敬を失礼いたしました」
「本当に気にしないで? 私はあくまでホルツリッヒ村の村長。平民よ。ただうーん。この国の人間じゃないのよ」
「いいえ、貴族平民は関係ございません。恩ある方には最大の敬意を持って接するのが道理でございます。私はベルナルディタ。連座で断罪されましたレジェス子爵家の長女にございました」
ベルナルディタ。
リーダー格の女性。
巨乳の元貴族。
子爵家で連座ってことは、それ以上の爵位の没落に巻き込まれたのかな?
奴隷落ちまでするとは、かなり問題があったのだろう。
村への永住を希望するのなら、一度きちんと調べておけば後顧の憂いを絶てるはずだ。
「ディタは私どものまとめ役で頭脳でもあります。自分はプルデンシア。嘗てはサンティジャン騎士爵家の末子でございました。一応この中では武に長けております……あれらよりも実力は上かと」
プルデンシア。
男装の麗人巨乳。
騎士爵と聞いて納得。
実力があるのなら、さぞ屑に性の対象としか見られないのは屈辱だっただろう。
本人が望むならトレントたちと一緒に村の防衛に当たってもらうのもいいかな。
やっぱり人間が一人はいてもらわないと何かと不便だからね。
「二人のようなすばらしい才能はありませんが、毒には強いです。あとフォルス様がご存じない料理や食材などもお教えできるかもしれません。ジェッセニアと申します。薬師の家系でエルモシージョの姓をいただいておりました」
ジェッセニア。
肉付きの良い薬師。
テンプレから外れているが彼女もどうやら優秀らしい。
屑どもの阿呆さ加減に改めて呆れた。
性の奴隷ではなく、彼女の望みを尊重したら、左うちわで暮らせたかもしれないのに。
「あたし! ……私に姓はないです。ルイサといいます。閨のことしかできない、馬鹿でごめんなさい……」
ルイサ。
つるぺた体形。
虐待されての発言か、悲劇のヒロイン体質かは微妙。
他の女性たちのフォローもないしね。
怯えながらこちらを伺う瞳には、媚がある。
……百合属性はないからなぁ……うーん。
『心配はいらないのです、愛。ルイサは虐げられた期間が長いので、自分に何ができるか全くわかっていない状態なのです。ちょっと練習させれば裁縫の上位スキルである裁縫師まで会得できる才能があるのです』
ああ、それなら大丈夫だね。
「貴女は馬鹿じゃないわ。サクラが鑑定したら、貴女には上位スキル裁縫師を会得できる才能があるんですって!」
「え? え? 私が、ですか?」
「うん。サクラの鑑定はそんじょそこらの鑑定と違う優秀なものだから、間違いないよ。そりゃ努力は必要だけどね」
「努力しただけで、裁縫師がとれるとか、私がとれるとか……夢じゃないのかな?」
「夢じゃないわよ。今までは環境が悪すぎただけ。裁縫師が会得できるなら、シルコットンを使って、貴女が着てみたい服を作れるようになるわ」
「す、すごい……あの! 私! 頑張りますので! その! ホルツリッヒ村で練習をさせて、ください!」
おぉ、こんなに前向きな子だったんだ。
自分にできることを模索していたのかもしれないなぁ。
もっと環境が良ければ才能にも気づけていただろうに。
「さようでございますか……良かったわね、ルイサ。裁縫師のスキルが取れれば、仕事に不自由することもないでしょう」
「はい! 頑張って、会得して! フォルス様にご恩返しがしたいです!」
「ご恩返しはさて置き。まずは、あいつらを冒険者ギルドに突き出して、貴女たちの身分を解放してもらわないとね。違法奴隷ではないのよね?」
「はい。奴隷落ちした経緯は全員違法ではありません。ただ……扱いは違法でした。奴らは何かしらのスキルで、私たちの自由意思を奪っていたのです」
「洗脳か魅了、もしくはそれに該当するスキルが常時使われていると、推測しています」
そこまでわかっていても抗えなかった。
確かに違法だろう。
奴隷にだって最低限の権利はあるはずなのだ。
「洗脳に魅了。どちらも使われていたとしたら?」
「どちらもとか、酷い!」
「使用が認められれば、奴らこそが犯罪者で奴隷落ち確定ですね」
「サクラの鑑定結果をギルドに教えれば、貴女たちは自由になれるわ」
全員がそれぞれの喜び方をするのに、静かに頷く。
「では、冒険者ギルドに戻って、さくっと手配をしてしまいましょう」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
「「「「よろしくお願いいたします!」」」」
ベルナルディタに続いて四人も深々と頭を下げた。
しかし何時になったら、ダンジョン踏破できるのかしらねぇ?
と、内心で深い溜め息を吐けば。
愛が想像している以上の時間がかかるのは、仕様ですわ。踏破はできますもの。その点は我慢なさいませ!
と、男たちを捕獲したまま結界の外で待機しているローズが、励まして? くれた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 心身ともにリラックス
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
ふと、スイカが食べたいなぁと思いました。
大好きなんですよね、スイカ。
この季節にしか食べられないですしね。
次回は、冒険者ギルドにて 前編(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。