昆虫ダンジョンインセクト 6
気味の悪い描写があります。
ご注意ください。
昆虫系ホラー作品にありがちな気がします。
……反射的に検索したら昆虫系のパニック作品って結構あるみたいです。
美しくも癒やされる空間から出たくなくて後ろ髪が引かれたが、何時までもいていい空間ではないだろう。
仲の良い二匹にお礼を言って別れれば、殺伐としたダンジョンに逆戻り。
一階と同じように二階は洞窟系ダンジョンにしては緑があるだけ、まだましだろう。
虫が生息するのに緑成分は必要で、それはモンスターでも変わらないようだ。
「あー、蝶々系は手を出しにくいなぁ」
「先刻お世話になったから、攻撃しにくいのはわかるのです。いっそ全部捕獲したらいいのです。蝶々は綺麗なので、レア種じゃなくても需要はあるのです」
「でも、ほら。一応全種類に対して虫避けを試さないとじゃん?」
「ええ。優先はそちらですわね。頑張ってくださいまし」
「うううう。じゃあ、なるべく捕獲の方向でやるよ」
しかし楽園から出てすぐに対峙したのは、蝶と蛾の混合パーティー。
ガイラ二匹、ガマダラ一匹、アゲーハ二匹の五匹だったのだ。
「ごめんね、アゲーハ!」
「ん。蛾には厳しいの?」
「うん。あっちの世界で、でっかい蛾に囲まれてから若干トラウマなのです」
山中の秘湯に入っていたら、蛾が凄くてさぁ……。
気がついたときには目のつく場所全てに、蛾がへばりついていたという。
あの思い出したくもない光景をがっつり思い出して途方に暮れつつも、虫避けをプッシュしまくる。
五匹とも攻撃するターンまで持ち込めず、アイテムとなった。
今回もワンプッシュの即死。
「ガイラから、鱗粉。ガマダラから触覚。アゲーハからレアドロップでブローチなのです」
「あ。ブローチ可愛いね」
「蝶々系への攻撃が若干アップするブローチなので需要は高いのです」
大きめのボタンサイズのブローチは、生きているアゲハ蝶のように緻密に作られている。 普通に装飾品としても需要が高そうだ。
「そのブローチをよこしなっ!」
えぇ?
もうトラブル遭遇?
早すぎない?
早すぎるよね!
心の中の声にスライムたちも大いに同意してくれた。
「そのブローチがあれば、私だって綺麗な蝶モンスターをテイムできるはず!」
『まぁ、想像以上にお花畑ですわ……』
『ん。図々しいにもほどがあるの……』
「売ってほしいなら、売ってあげるけど?」
「はぁ! なんでなのよ? 私が貴様らに恵んでやらなきゃならないんだよ! 貴様は、黙って、私に! そのブローチを献上すれば!」
「お断りします」
はいはい。
何を言っても聞かないパターン赤ね、わかります。
「貴女が虫すらテイムできないのは、能力がないから。ブローチをつけたところで、倒せはしても、テイムなんてできっこないわよ」
というか、そもそもこのブローチにそんな効果はないって知らないわけ?
鼻で笑いながら見下す。
空気を読んだスライムたちも巨大化して、テイマー崩れを威嚇した。
ねぇねぇ、どんな気持ち?
どんな気持ち?
の顔文字が頭に浮かぶ。
「う、うるさい! うるさい!」
「うるさいのは貴女ですよ、お漏らしちゃん?」
足をガクガク震わせながら失禁までしているのに、罵声を浴びせてくる馬鹿さ加減は放置が一番いい。
一番いいが、頭のどこかで、徹底的にやっちまいな! という声がして困る。
「ず、ずるいじゃないか! ユニーク個体を五匹も連れて! ずるいじゃないか! ずるいじゃないか!」
「えーこの子たちにだって選ぶ権利があるわよ。選ぶ権利すら与えない貴女こそ、比べようもないほどずるいと思うけど?」
『努力もせず、相手を尊重もしないとは……求めるだけの愚か者は、テイマーどころか、冒険者どころか、人間を辞めるべきだと思いますわ』
ローズさん、辛辣。
「私を選ばないなんて! モンスター如きがっ!」
「如きというのなら、テイマーなんて辞めればいいじゃないの?」
「テイマーの適性があるなら、ならないとおかしいだろう?」
本当に適性があるのだろうか。
嘘を吐かれたか、騙されたか、もしかすると提示された適性を曲解した可能性も高い。
「おかしいのは貴女の頭だと思うけれど……まぁ、頭のおかしい貴女に、慈悲をくれてやるわ!」
ブローチ一つで厄介な人物と手を切れるなら、安いものだ。
納得いかないスライムたちを宥めながら、私は女に向かってブローチを投げつけた……はずだった。
「おい、貴様っ! ふざけるな!」
「……ふざけてるのは私じゃないし。というか、ここまで徹底的に嫌われたら、無理でしょう、テイマーを名乗るのは」
なんと投げつけたブローチを、どこからともなく現れたアゲーハがキャッチ。
そしてリターンしてきたのだ。
しかも、私の装備の邪魔にならない位置にしっかりと留められてしまった。
「きさまっ! きさまさえ、いなければ!」
いなければ、そもそもブローチをもらえる機会すらなかっただろうに。
女が理不尽な思い込みを口にしながら距離を縮めようとするも、無理だった。
蝶と蛾のスタンピードですか? と問いかけたくなる数の蝶と蛾が、女に向かって一斉に襲いかかったのだ。
「!」
悲鳴を上げる間もなかった。
女が苦悶の表情を浮かべながら、地面を転がりまくる。
私に向かって転がりそうになったときは、ローズが弾いてくれた。
時間にしてほんの数分。
女を何重にも覆い尽くした蝶と蛾が何時の間にか消えている。
「死んだのかな?」
「ええ。死んでおりますわ」
「ん。鱗粉による窒息死なの。女の胸を開いたならば鱗粉が雪崩のように零れ落ちてくるの」
ホラー耐性がなかったら、吐きそうな表現だ。
そこまでの憎悪が向けられていたという点が、何よりも悍ましい。
「迷惑をかけられた冒険者は多いようですわ。遺体は速やかに回収して、ギルドに提出いたしましょう。ついでに胸を開いて回収した鱗粉を売却するとよろしゅうございますわ。それなりの値段になりますもの」
どうやらこの女が解剖されるのは必須のようだ。
モルフォが回収を買って出る。
あとでサイに渡して解体をお願いするのかもしれない。
「しかし、こう。次から次へと……起こるわよねぇ」
「悪いことばかりでもないのです。悪いことが多い気もしますが、良いこともあるので、挫けては駄目なのです」
「ははは……既におなかいっぱいだけど、頑張らないとだよね……」
肩を落とせば、スライムたちがぷにぽよと全身を使って慰めてくれる。
モンスターが襲ってこないのは、先刻の女が死んですっきりしたからなのだろうか。
スライムたちに癒やされて、何とか探索を再開する。
モンスターを倒すのもいいが、宝箱を忘れてはいけない! と気持ちを切り替えて宝箱へと足を運ぶ。
「おぉ……」
「宝箱というよりは、贅を尽くした宝石箱みたいですわ。素敵ですわ!」
ローズのテンションが上がるのも無理はない。
どうやら隠し宝箱らしく木の中にひっそりと埋まっていた。
宝箱が埋まっていそうな洞ではなく、木の中にあったので、特殊な能力がない限りはまず、見つけられなさそうな宝箱だった。
蝶の集いし宝石箱
隠し宝箱。
厳選されたレア種モンスターの羽で作られている、蝶の形を模した宝石箱。
ランク レジェンド
宝石箱に隠蔽効果があるので、持ち主以外は見えない。
宝物を隠すのに最適。
中には、モルノフォの首飾り(アイテムドロップ率アップ効果有)、パープルモンのサークレット(詳細鑑定効果有)、ブルーアゲーハの指輪(アイテムボックス効果有)が入っている。
アクセサリーのランクはアーティファクト。
「まぁ。宝箱だけではなく、中のアクセサリーもすばらしゅうございますわ!」
「パープルモンサークレットの詳細鑑定は、なかなかに使えるのです。私がいないとき、愛に持っていてほしいのです」
「ん。首飾りも、指輪も凄いの。売りに出さずに使うといいの」
「……首飾りと指輪はさて置き。サークレットって目立たない?」
「そうでもありませんわ」
「ん。装着必須の職業や種族もあるから、愛が考えているほど目立たないの」
サークレットなんてコスプレでもなければつけない。
おそるおそるつけてみると、スライムたちが可愛い、よく似合うと絶賛してくれるので、まんざらでもなくなった。
「ん。一階ごとにレジェンドアイテムとか、ドロップ効果があがったらどうなるの?」
「数が増えるのです。もしくはレア度が上がるのです」
「次にレア度が上がるアイテムが出る気がしますわ!」
死蔵しないでなるべく売りに出して、経済を回すべきかもしれない……などと考えつつ、私たちは二階の探索と虫避けの効果確認に勤しんだ。
喜多愛笑 キタアイ
状態 興奮気味 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
エアコンから奇っ怪な音がするので調べてみたら、業者さんを呼ばないと駄目な故障だった模様。
自分で直せるなら頑張るのですが、そもそも不器用でがさつなので、業者さんに頼んだ方が……と書かれていれば、そちらを選択する昨今です。
次回は、昆虫ダンジョン インセクト 7(仮)の予定です
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。