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昆虫ダンジョンインセクト 5

 ワクチン接種三回目を無事終了したのですが、一週間以上経過しても肩が痛いんですよね。

 時々ちくっと針を刺されたような痛みが走るんですよね。

 もう少し経過を見て医者に相談に行った方がいいのかしら? 

 


 三人から朝寝坊を満喫すると聞いていたので、朝食をともにはしなかった。

 今日のメニューは、キャノベツとネギタマと白身魚のスープが特に目を惹く。

 一口食べて感心した。

 白身魚は生臭さが全くない。

 何の魚だろうと首を傾げているとサクラが鑑定してくれた。

 

 ウフギ(鰻)

 異世界産の天然鰻。

 養殖物は脂が乗っていて濃厚なお味だが、凄くお高い。

 フロイラインでは冒険者に新鮮なウフギ釣りを依頼している。

 庶民でも比較的安価に手に入れられる魚。

 熟練の料理人にかかれば、骨や皮は綺麗な形で取り除かれ、別料理になる模様。


 おぉ!

 こちらの鰻は絶滅危惧種じゃないんだ。

 お偉い人は養殖物に走るみたいだし、いい傾向なのかな?

 蒲焼きなんかもあるなら食べてみたい。

 向こうでは控えめにしてたんだよね。

 絶滅しちゃったら二度と食べられないでしょ?

 マイルールでは年に一回でした。

 嗜みとして土用の丑の日は避けてましたよ。

 空いているときに美味しくいただいていましたとも。


『しかしこのスープ……酸っぱいよね?』


『こっちでは酸っぱいスープが結構多いのねー』


『向こうでもあったけどね。これはフルーツも入ってるのかな?』


『レッドアップルとプラムン(プラム)が入っているのです』


『あー。ドイツ料理に似たような感じの物があった、ような?』


 改めて口にしてみる。

 うん。

 これはこれで美味しい。

 朝から具沢山スープはいいよね!

 あと体が温まるとダンジョンでも動きやすいよね、たぶん。


焼き芋ジャガとクックルーの目玉焼きを挟んだ黒パンは、マヨネーズとバターが欲しい。

 しかもバターは発酵バターが欲しい!

 と切実に思ってしまう。

 贅沢な悩みだと、わかっているけどね。


 今日はお弁当も頼んでみた。

 中身は見えないが四角い箱に入っている。

 たぶん黒パンでサンドされた物だろう。

 ダンジョンの中でなら、手を加えて食べてもいいよね?


 今日も今日とて専用馬車を出してもらう。

 リリーとサイには三人を村へ案内する任務を与えたので、ここで離脱。

 わちゃわちゃとやりとりするスライムたちは今日も可愛い。

 別れを惜しみつつ馬車に乗る。


 五人組のパーティーと一緒だった。

 五人組にはどうにも悪い印象しかない。

 残念ながらこのパーティーも二人ほど失礼な奴がいた。

 馬車の中に入った途端に、ダブルで鑑定されましたよ。

 ローズがドヤ顔で弾いていたのに驚いたのか、それ以上はしてこなかったけどね。

 ひそひそ話すらしなかったけどね。

 リーダーらしき人が、鑑定した二人を目で威嚇してたよ。

 うんうん。

 その調子でそもそも鑑定は許可を得てからするように、躾けてほしいよね。


 ダンジョンへ着いたので会釈一つで先に下ろしてもらう。

 ま、一人とスライムだから普通は人数が少ない方からだろう。

 舌打ちした誰かは、拳骨を喰らってたよ。

 鑑定の件で学習しないとか、流行のパーティー追放をするといいんじゃないかな?


 イケメン門番は五人組パーティーに押しつけて、これといって特徴のない門番に手配してもらってさくさくとダンジョンへ足を踏み入れた。


 モルフォが頼むまでもなくマップを展開してくれる。

 一階の宝箱は三個らしい。

 昨日は初回特典的な扱いだったのだろうか。


「宝箱はやはり入手の方向で?」


「ん。赤冒険者が多いので、隠蔽して避けつつ、二階へ下りるのを優先なの」


「昨日と比べると一般的な中身なのです」


 それでも入手したくなる今日この頃。

 宝箱コンプリートって他のコンプリートより萌えるのよね。

 でもまぁ、スライムたちの意見に従う。

 萌えよりも優先すべきことがあるって、理解しているオタクですからね、私。


 モルフォの指摘通り、見るからにやばそげなパーティーが多かった。

 男性冒険者のパーティーもさることながら、女性冒険者のパーティーも大概だったよ。

 百合陵辱を考えていたり、如何にして顔や体に残る傷をつけるか延々と話し合ったりしてるんだよ!

 呆れるしかないよね。

 立て続けに冒険者を犯罪者として突き出してるから、後ろ暗い輩には反感を買うのはわかりきっていたけどさ。

 萎えるわー。


 二階へ下りる階段で待ち伏せしていたパーティーに、スライムたちと一緒にあっかんべーをしてから、降りてやった。

 これだけでちょっとすっきりしたよ。

向こうには見えていないからこそ、やってやったぜ感が強い。

 あっかんべーの効果って、凄いね!


「ん。二階も赤色冒険者はいるけど、一階ほどじゃあないの」


「大人数パーティーはいないのです。三人パーティーとソロなのです」


「え! ソロで私らを狙ってるってこと?」


「身の程知らずな愚か者ですわ! 虫すらテイムできないテイマーですわ!」


「お、おぉ……」


 不憫な冒険者だった。

 そこにいたるまでの経過にはいろいろあるだろうが、それでも不憫には違いない。


「同情の余地はない女なのです。いっそのこと虫の餌になればいいのです」


 サクラが攻撃的なのは珍しい。

 癇に障る過去があるのだろうが、ここは敢えて突っ込まないでおこう。

 スライムたちが拒否するものにはかかわらないのが一番なのだ。


「えーと? 二階での依頼は何かあったっけ?」


「ん。二階、三階はないの。一応全種類アタックして、虫避けの効果を確認しつつ、宝箱をあさるのっ!」


「了解! おぉ? 綺麗だねぇ……」


 打ち合わせをしている最中に、蝶々がひらひらと飛んできた。

 拳二個分サイズの蝶々が二匹。

 何だか仲睦まじそうだ。


「あら? この個体は攻撃の意思がございませんわ」


「珍しいの?」


「ん。基本はあり得ないの」


「そうなんだ? でも攻撃意思がないんじゃあ、こっちから攻撃するのも失礼かしら?」


「モルノフォとブルーアゲーハなのです。本来は仲が良くも悪くもないのですが、別種族と一緒に行動する個体は珍しいのです」


 二匹はひらひらと私たちの頭上を舞う。

 降り注ぐ、青銀に輝く鱗粉が綺麗だった。


「! 凄い効果の鱗粉なのです! 四階以降の麻痺攻撃を無効にするのです! ダンジョンを出るまで継続効果があるのです」


「あら、素敵。どうもありがとう。何かお礼をしたいのだけれど、欲しいものやしてほしいことはあるかしら?」


 もらいっぱなしは駄目だろう。

 好意には好意で返しておきたい。


「蝶々なら花の蜜かしら? 何かあったっけ?」


「各種取り揃えておりますわ。欲しいものを選んでいただきましょう。全部でも問題ありませんの。巣まで運んであげてもよろしくてよ?」


 ローズの提案に迷うのか、二匹の体が右に左にと傾いでいる。

準備された花蜜は小瓶に入っているが、十二種類もあるのだ。

 選ぶのも運ぶのも大変だろう。


 覚悟を決めたらしい二匹が、優雅に飛び始めたのであとに続く。

 マップには表示されない箇所に、いつの間にか入り込んでいた。

 と思ったら、次の瞬間には花畑に佇んでいた。


「うわー! 綺麗ー!」


 一面の花畑は終わりが見えない。

 自分たちが立っている場所には青い花が咲き乱れている。

 遠くでは違う色の花が咲いているようなので、ここが二匹の生息区域なのかもしれない。

 モルノフォとブルーアゲーハがそれぞれ固まって飛んでいる。

 もう一種類、数は少ないが違う蝶も飛んでいた。

 鮮やかな紫色から察するにパープルモンだろうか。


 ひときわ大きな花の前に案内される。

 私の顔ぐらいのサイズだ。

 形はネモフィラに似ていたが、色はもっと深い。


「この中に入れればいいのです?」


「え? 入るの?」


 なんとこの花はマジックボックスと同じ機能があるらしい。

 リリーが小瓶を花の中央におけば、音もなく消えていく。

 

「とても綺麗な収納ですわね」


「ん。アイリーンも欲しいの?」


「素敵だけどね。うちには手作りのマジックバッグもあるし。スライム収納もあるし。観賞用の花と見せかけてマジックボックスとか、楽しいし、可愛いけどさ。希望したらもらいすぎでしょう?」


 十二種類の花蜜の小瓶をそれぞれ一ダースほど収納して満足したローズが、二匹と何やら会話をしている。

 

「お花のマジックボックスは、作るのに時間がかかるけど、それでよければ作ってくれるそうですわ。お一人様一個までとのことですの」


「気持ちは嬉しいけど、大変そうだから大丈夫ですよ」


 申し出は心から嬉しいが、忙しい思いをさせてまで望むものではない。

 攻撃をしてこなかった上に、思いがけない高性能な効果を与えてくれただけでも十分満足なのだから。


「遠慮はしないでほしいそうなのです。モルフォのマップに場所の表示を許可するから、十日後にまた来てほしいそうなのです。あと、麻痺無効効果の鱗粉がみっちり入った小瓶も一ダースくれるそうなのです」


「も、もらいすぎでしょう!」


「殺そうとしなかったのは、私たちが初めてだそうなのです。記念にたくさんもらってほしいそうなのです」


「そこまで言ってもらえるなら……有り難くいただきますね!」


 拳を握り締めて告げれば、二匹が再び優雅な舞を見せてくれた。

 喜びの舞だと、サクラが教えてくれる。


 荒み成分が加算されていたダンジョン攻略の中で、ここまで癒やされるとは思わなかった。

 嬉しい誤算だ。

 スライムたちも二匹と一緒に喜びの舞を披露してくれた。

 うん、可愛い。


 優しく鼻を擽る花の香りに包まれながら、スライムと二匹たちの戯れを飽きることなく堪能した。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好new!! 

 


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)  



  

 

 大好きな作家さんが亡くなってしまい意気消沈。

 作家さんのお名前を見る度にほろっとしてしまいます。

 亡くなる前に予約した新刊はそのまま発売されるそうなので、サイトと一緒に読み比べようと思います。


 次回は、昆虫ダンジョン インセクト 6(仮)の予定です


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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