昆虫ダンジョンインセクト 3
テンプレと書きたかったのをテンプラと書いていて笑いました。
投稿前に気がついて良かったです。
大量のモンスターを押しつけられたせいで一階での依頼品は揃った。
そのまま宿に戻って休もうかと思ったんだけど。
「宝箱はコンプリートするものでしょう?」
とローズに暗黒微笑を浮かべられたので、再びダンジョンに戻った。
せっかくモルフォの素敵マップのお蔭で宝箱の位置が全部わかるんだしね。
ちなみに一階の宝箱は最大十二個まで取れるようになっているんだって!
凄くね?
今までの最高は三個の発見で、それでも一階から三個も宝箱が出るなんて凄い! って噂が回って一時期かなりの冒険者が集まったとか。
昆虫しか出ないダンジョンは旨味が少なくて、敬遠されがちだからダンジョンコア的な何かが頑張ったのかもね。
「では、宝箱探しに、レッツらゴーなのねー!」
リリーのかけ声に全員が、レッツらゴー! を復唱する。
勿論私もした。
ダンジョンへの馬車はスルバランが手配してくれた。
御者はいかにも訓練された御者で、無駄口は叩かずダンジョンまで送り届けてくれる。
今回は貸し切りだったので、ギルドに卸す分のアイテムを選別しておいた。
依頼分以外にも山とあったからね。
宝箱の中身を放出するかは要検討。
リリー曰く、レア中のレアが出る予感しかしないのねーとのことなので、死蔵になるのかもね。
イケメン門番がいないのに胸を撫で下ろす。
心がイケメンな門番が私たちに気がついて走ってきたので、名前を聞いておこうと思う。
「先ほどは御無理を申し上げてしまって申し訳ありませんでした!」
商人も真っ青の直角お辞儀がされるので、まずは頭を上げてもらう。
地味に目立たない場所に誘導してくるあたりも好感度が高いよね。
「頭を上げてください。こちらはお礼を言いたかったんですから。的確な手紙をありがとうございました。ギルドマスターが感心していましたよ」
「マスターボノは、誠実な人間を大切にしますから、常にそうであろうと心がけているんです。評価をいただけたなら嬉しいですね」
「自分はアイリーン・フォルスと申します。腰を据えてこのダンジョンを攻略するつもりですので、よろしくしてもらえると嬉しいです」
「おぉ! 御丁寧にどうも。自分はビダルです。こちらこそ、よろしくお願いいたします!」
「早速で恐縮なんだけど、ダンジョンに入るときの応対ってビダルを指名できる?」
「ええ、可能ですよ。自分、一番長く門番をしておりますが、一番下っ端です。それでもよろしいのでしょうか?」
「ああ、やっぱり実力があるんだね。私は実力者を重宝します。出世、したい?」
できる上に身分が低いから冷遇されているとみて間違いない。
今までの対応だけでも、十分出世の見込みがある。
本人がその気なら後押しするのも吝かではない。
「出世ですか……したらしたでもっと面倒な予感がするので、このままで。ただ、あれですね。決まった休みは欲しいですねぇ」
「決まった休みもないの?」
「規定ではあるんですが、自分の定休日に限って呼び出されるんですよね……」
「それはないわー。私が滞在中は、私に呼び出されて仕事をしてる設定にして休むといいよ」
「……本当に、よろしいので?」
「うん。人一倍仕事ができるからって、休みがないとかあり得ないからね。あ! 門番に仕事を依頼するのって、そもそも大丈夫なのかな?」
「少なくともうちのダンジョンでは大丈夫ですよ。俺もよく呼び出されて、無駄に使われてますし」
「じゃあ、遠慮なくこの設定でいこうね。この機会に少しゆっくりすればいいよ」
本来なら取れてしかるべきの休み。
本人も今日こそは取るぞ! と心の中で望んでも、声に出せない事情はあるのだ。
ビダルはくしゃっと表情を崩して笑った。
なかなか可愛い。
母性本能擽られる系だね。
もしかしたらこの笑顔も、駄目な周囲に警戒させる原因だったのかもしれない。
自分より重宝されてしまうと無駄に勘ぐった結果のような気がした。
「今まで休めなかった分、しばらく多めの休みを取らないとね。まずは、私が戻ったら一緒に行きましょう。あーでも、今私女性専門宿に泊まっているんだった!」
「フロイラインですか? でしたら、男性しか入れない別館がありますよ」
「そうなんだ!」
「従者が男性の高貴な方が利用されているので、あえて説明がなかったのかもしれませんね」
「なるほど。じゃあ、私の従者扱いでしばらく別館で休むといいよ」
「自分がまさか男性憧れの別館に泊まれるとは思いませんでした! あくまでも女性が連れて行く男性用なので、普通に泊まれる宿ではないんです」
ビダルのくしゃくしゃ顔が続行される。
凄く嬉しいのだとわかる笑顔には、それだけで幸福をお裾分けしてもらえた。
「ちょっとお願いしたいこともあるから、滞在費はこちらで持つから安心してねー」
「えぇ? そこまで甘えるわけにはまいりません! 貯蓄もございますので、自腹でお願いしたい!」
「うんうん。言葉だけではない誠実さは本当にいいね。依頼の前金として、受けてもらえると嬉しいな」
冷遇されているならさー、村に勧誘してもいいよね? とか思っているんですよ、ええ。
スライムたちから反対の声もないので、本人が了承してくれれば、さくっと移住してもらう方向で考えている。
「依頼の前金、ですか。支払いを前金でいただくお仕事とか夢のようですね。そこまでおっしゃっていただけるなら、有り難くお受けいたします」
「良かった! 一階をくまなく探索するから時間がかかるかもしれないけれど……」
「問題ございません。姿が見えないときは詰め所にお声がけいただけると有り難いです」
「じゃあ、戻り次第そうするね。今後ともよろしく」
「はい! よろしくお願いいたします」
差し出した手は、がっちりと握られる。
不快感はなかった。
喜びが伝わってくる握手だったからだろう。
背後にビダルの視線を感じながら、私はダンジョンへと足を踏み入れる。
即座に隠蔽して、マップを展開。
近い宝箱から回収を狙っていく方針だ。
「ビダルは村への移住を勧めるのです?」
「うん。良い人材だよね? 他の人たちとも仲良くやってくれそう」
「接客に向いているけど、作業も上手なのねー。こき使われるだけの門番で終わる人材じゃないのねー」
「ん。戦闘もかなりこなすけど、武に溺れてはいないの」
「う。接客業や生産業、獣人にも抵抗がないから、ホルツリッヒ村には是非来てほしい人材なのよ」
スライムたちも念入りにチェックをしていたようだ。
ますます得がたい人材なので、スムーズに勧誘したい。
ドーベラッハへの帰属意識はそこまで強くないっぽいので、いけると踏んではいる。
「一個目から隠し宝箱ですわ。盗賊でも見つけられないと思いますの」
ローズが壁に頭突きをする。
手を上げてぎりぎり指先が届く位置だった。
ぴんぴろりん! といかにもな音がして、壁の一部が崩れる。
箱が手の上にとすっと落ちてきた。
軽い宝箱で良かったよ!
「ん。宝箱もお持ち帰りできるの」
「う。重量軽減がかかっているから小さいけど、優秀な宝箱なのよ」
優秀な宝箱とはこれいかに?
「一階の宝箱には罠がしかけられていないから安心なのです」
「さ、愛。開けて御覧あそばせ」
ローズの言葉に頷いて、留め金に手をかける。
かちっと解錠音が聞こえた。
「わぁ、綺麗……」
「グリーンレインボーの腕輪なのです。綺麗なだけではないのです」
サクラが鑑定結果をマップの隣に表示してくれる。
「おぉ。凄いね、隠蔽魔法がいらないじゃん!」
グリーンレインボーの腕輪
ランク レジェンド
希に発生する一枚羽根の、グリーンレインボーの羽で無傷の物を使用した腕輪。
神と人の間にできた双子、天才鍛冶師と細工師の作品。
同じ腕輪をする者しか見えない隠蔽効果を発揮する。
衝撃には強くないので取扱注意。
装備中は常に隠蔽が発動する。
「っていうか、ランクが何時もと違うね?」
「ランクSSS以上のアイテムで、骨董品に時々見られる表記なのです。レジェンドの上にはミソロジーとエンシェントがあるのです」
「そもそもランクがそこまで高くないダンジョンの一階で出るアイテムではないのねー。ダンジョンを楽しんでほしい誰かの計らいなのねー」
神様かダンジョンコアの計らいだろうと想像して、首を振る。
スライムたちも首? を振ったので、突っ込まない方が無難だろう。
「衝撃に強くないし、オンオフ機能まではついてないから、やっぱり魔法の方が無難なのかな?」
「う。犯罪に使われやすいアイテムだから、教会の偉い人とかに、あげるといいのよ」
あーそんな人もいたねぇ。
いろいろとお願いもしているし、腹黒さはあっても私に害はなさそうだから、プレゼントもありかな。
「ん。今は収納しておくの。もっと手軽なアイテムが出たらオークションにだしてもいいの」
宝箱にしまい直した腕輪を、モルフォは自分の収納へと入れてくれた。
「オークションか……闇オークションとか面白そうではあるよね」
向こうではネットオークションしか参加しなかったから、リアルで挑戦してみたいんだよね。
三大希少宝石を求めて、競ったときは楽しかったっけなぁ……。
その後の支払いは憂鬱だったけどね。
こっちにもあるのかな、三大希少宝石。
「向こうでの三大希少宝石なら、こちらにもありますわよ? この世界でも希少ですわね。さすがにこのダンジョンでは出ませんわ。宝石ダンジョンもありますから、そちらに足を伸ばすのもよろしくてよ」
オークションもダンジョンも、どちらも興味はある。
でも優先順位はそこまで高くない。
村の運営が上手く回った頃に足を伸ばす感じ……かなぁ。
「ローズは好きそうだよね、宝石。でもまぁ、今はこのダンジョン攻略で、次のダンジョンは穀物ダンジョン! これ、決定!」
「そう言うと思ったのねー。美味しいお米を毎日食べたいのねー」
「こっちは他にも美味しい料理がたくさんあるけどね。やっぱり美味しいお米での炊きたて御飯は定期的に食べたいのよ」
そんな話をしながら二個目の宝箱へ足を伸ばす。
人の気配があったときは黙り込んだ。
今のところ、私たちの隠蔽を看破する者はいないらしい。
見るからに、頑張れ初心者! というパーティーの横をすり抜ける。
新人武器の棍棒で叩かれたナナホシが、こちらへ飛んでくるのをローズが跳ね返す。
かーん、こーんといい音がした。
棍棒の持ち主は首を傾げていたが、他の冒険者に肩を叩かれて喜びの声を上げている。
「ん? ドロップアイテムなし?」
「運が悪いとなしなのです」
「日頃の行いが悪いとなしとも言われておりますのよ?」
何となく後者な気がする。
ということは、あの新人冒険者はよろしくない冒険者だったのだろうか。
「先刻の冒険者は、単純に運が悪いのです。ただパーティーメンバーに行いが悪い者もいて、その影響も受けているのです」
「そんなこともわかるんだ?」
「私たちは全てわかっているのです。知らないことは多くともです」
つまりはあれだ。
知ろうとさえすれば、わかってしまうのだ。
ふぅ、慣れてきたとはいえ、相変わらずのチートです。
「こっそり忠告しちゃう? 基本としては新人たんに優しくしたいんだけど……」
今は幸せになりつつあるアランバルリを思い出して、尋ねてみる。
「ん。切りがないの」
「う。それでも気になるなら、次の縁があったら忠告するといいのよ?」
運が悪いなら縁を繋げないんじゃあと思ったが、アランバルリの件もある。
ここは皆の忠告に従おう。
「了解。今はスルーするね。二個目の宝箱は……おお、大きいね」
人が腰掛けられるサイズの宝箱が、どどーんと鎮座していた。
マップ上、奥まった場所に設置されているが、大きさを考えると見つかりやすい宝箱の気がする。
「これは蓋が重いから私が開けますわ。よっこらせっと」
貴婦人言葉が板についてきたローズの、よっこらせ。
可愛くて噴き出しそうになるのを堪えるのが大変だ。
「ん? これは何かしら。先刻拾ったときもあったけど」
「タールホライト。一個で一週間暗闇を照らせる光源。ドーベラッハが真夜中でも安心して歩ける町なのはこれのおかげ。品質が良い物は高額買い取り必須。収納されていた一ダース全てランクSに付き、高額買い取りされるのです」
拳大で緑色の水晶玉といった見た目。
薄く張っている膜を破くと光が灯る仕組みとのこと。
サクラが丁寧に説明をしてくれた。
他の人でも開けそうな宝箱だけど、品質の良さは、引き寄せスキル? が働いている気がする。
「きゃああああああ!」
タールホライトを丁寧に収納し終えたタイミングで絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
「う。今度はどんなテンプレなのよ?」
サイが不穏な言葉を呟く。
私は答えておいた。
「かかわりたくないけど、かかわらざるを得ないテンプレだと思うよ?」
と。
喜多愛笑 キタアイ
状態 不穏な気配を察知して疑心暗鬼気味 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
前書きと後書きまで書いて、投稿を忘れて削除してしまい、再度書き直したのは内緒です。
しかも数時間前の出来事なのに、何て書いたか忘れている有様。
ナニを書いたんだっけなぁ……。
次回は、昆虫ダンジョン インセクト。4(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続き宜しくお願いいたします。