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昆虫ダンジョンインセクト 1

 昆虫ダンジョン。

 種類によっては行けるかなぁ……ゴキ○リ、ム○デ系、カマ○ウマがいなければ、たぶん、大丈夫……無理かな。

 異世界転移して、帰還条件がダンジョン踏破とかいわれたら、頑張れる気がします。



 宿の朝食は六時から注文可能だった。

 一時間かけてゆっくりといただく。

 本日のメニューは……スーナとトメトのモー乳スープ、クックルーの胸肉塩焼き卵載せを挟んだ黒パン。

 どちらもこの世界ではかなり洗練された料理なのだと思う。

 しかし、スープにはコンソメ、塩焼きには胡椒を少し使ってほしいと望んでしまった。

 冒険者は体力勝負なので、三食におやつ付きが基本らしい。

 ラミア美女にお弁当やおやつの注文ができる旨も伝えられた。

 きっと需要は多いのだろう。

 迷ったが一度ダンジョンに潜って様子を窺ってからにしようと、今回は断った。


 宿からダンジョンまでは、なんと馬車がでていた。

 お店の専用馬車らしい。

 なかなかの心配りだ。

 女性専門宿の矜持を感じる。

 有り難く馬車に乗った。

 

 朝の通勤ラッシュに近いのか、馬車は満席。

 六人乗りの馬車で、剣士、弓使いに魔法使いのパーティ。

 たぶん盗賊と僧侶の珍しいコンビとの同席だった。

 馬車内は静かに、ひそひそ話がされていたが、質問などはされない。

 リリーが、私たちに触りたいけど我慢するわー……と言っているのねー、と念話をくれたので、恐らく良い方々なのだろう。

 ギルドを経由せずにダンジョン直行なのは意外だった。

 私たち同様、事前に依頼を受けているのかもしれない。

 全員軽い会釈をして、馬車から降り立つ。

 最後に私たちが降りれば、馬車は宿へと戻っていった。


 さて、ダンジョンへ……と足を運びかけたとき、盗賊らしき女性がくるっと振り返った。


「ダンジョンの門番に伝言を頼めば、宿から迎えの馬車が呼べる。荷物も積んでくれるので利用すると便利。無料なので安心」


 何とも親切な情報を教えてくれた。

 

「知らない情報でした。御親切にありがとうございます」


「ん」


 返事は簡潔。

 説明も簡潔だった点から考察するに、人付き合いが苦手なのかもしれない。

 同類の気配を感じた。


「情報料代わりに受け取ってください。お昼にでもどうぞ」


 背負っていたリュックサックを手早く前に持ってくると、サンドイッチを取り出した。

 僧侶女性と食べられるように少々多めの二人分だ。


 盗賊女性は目を大きく見開いてから、そろそろと受け取る。


「……ありがとう……」


 聞こえるか聞こえないかで届くお礼の言葉にほっこりした。

 少し離れた場所で見守っている僧侶女性にも同様にほっこりさせてもらう。


 お互いもう一度会釈をしあって、門番のチェックを受けるべく、行列に並ぶ。

 これまた有象無象からの鬱陶しい視線は当然ガン無視。

 テンプレですね、ありがとうございます! なお、無断鑑定は全て弾いておいた。

 ローズがいらっとしたので、頭をせっせと撫でておく。


「インセクトダンジョンへようこそ。無理をせずに、命大事で攻略に勤しんでくださいね」


 五人もいる門番のうち、一番のイケメンに当たってしまった。

 しかも口調も丁寧な、穏やか系イケメンだ。

 苦手なので腰が引けがちになってしまうが、何とか頷いてギルドカードを差し出す。

 ギルドカードに何やら魔法をかけていた。

 入場チェックでもしているのだろうか。


「はい。問題ありません。初めてのダンジョンは想像以上に消耗します。早めの御帰還を推奨いたしますよ」


 にっこりと笑顔付きの助言。

 うさんくさいと感じてしまうのは、うがち過ぎかもしれない。

 スライムたちから警告念話もなかった。


「アドバイスありがとうございます」


 わかりやすく愛想笑いをしながら、会釈を一つして、ダンジョンへと足を踏み入れた。


「モルフォ。マップを常時展開でよろしく」


「ん! 唸れマッパー機能なのっ!」


 モルフォが視界のすみにダンジョンマップを映しだしてくれる。


「赤はモンスター、青は冒険者、金色がお宝なのっ。点滅している赤は駄目な冒険者なのっ」


 おうふ。

 突っ込むべきか迷う高性能マップだ。

 点滅の赤の数に思わず肩が落ちてしまう。

 どれだけ私を人間不信にさせたいのかしらねぇ?


「駄目冒険者にも傾向があるのねー。殺す気満々とか、犯す気満々とか、奪う気満々とかねー」


「私たちを含め愛を隷属させるなんていうのもありますわ。全く……どこまで私たちを下に見ているのかしら?」


 そんな傾向まで把握された日には、駄目冒険者もさぞやりにくかろう。

 何せこちとら、一見最弱スライムに、華奢で可憐な美少女。 

 蓋を開けてみれば、チートも真っ青の化け物なのだから。


「ん。マップ把握は私に任せて、皆は攻略に集中するの」


「う。一階で必要な素材はナナホシの羽を一つ以上。グリーンレインボーの羽一つ以上なのよ」


「じゃあ、そいつら中心に満遍なく回収する方向で」


「了解なのです。一階のモンスターは食材を落とさないので、さくさく攻略がお勧めなのです」


 昆虫ダンジョンでも、食材はでるようだ。

 蜂系モンスター=蜂蜜以外は想像がつかない。

 

「ん。人は多いけど、モンスターも多いの。次の角を右に曲がったら、戦闘なの。サンホシとクワガッタン、それぞれ一匹ずつなの」


「うーん。せっかくだからイモジャガの虫除けを使ってみようかな?」


「う。いいと思うのよ。たぶん効果は絶大なのよ」


 リュックの中から取りだしたスプレー式の虫除けを右手にしっかりと持った。


「目線の位置ですわ!」


 拳大のテントウムシとクワガタが目の高さでホバリングをしていた。

 ダンジョンに入ってからは、隠蔽魔法を使って気配を隠蔽しているので、二匹ともこちらには気付いていないようだ。

 私は一匹ずつスプレーを吹きかけた。

 お試しのワンプッシュだ。


「……これも大量生産するといいのねー。ギルドにお勧めするのねー」


「このダンジョンでは需要が高すぎますわね」


「その点はギルドのトップが考えればいいと思うのです」


 二匹はワンプッシュで即死した。

 ドロップアイテムは、サンホシの羽一枚、クワガッタンのハサミ一個だった。

 どちらも掌サイズ。

 何に使うのだろうか?

 首を傾げつつ、スライム収納にしまい込む。

 容量を警戒されないように、全員が分担してしまおうと話し合った。


「二つ先の曲がり角で、冒険者五人が待ち伏せしてるのねー。目的は愛に恩を着せて、いい思いを永続的にすることなのねー。捕獲して門番に預けるといいのねー」


「ん。恩を着せるために、大量のモンスターをなすりつけるつもりなの」


「一階の依頼はこれで終了いたしますわ!」


「う。あまり評判の良くない冒険者だから、ギルドからお礼もでると思うのよ」


「へぇ……隠蔽魔法を看破できるくらいなら、そこそこの使い手なんだろうにねぇ」


 力の使いどころを間違えてきたのだろう。

 やり方が派手なので、これが初めてではあるまい。


「命止魔法のレベルを上げたいけど……別の機会の方がいいかなぁ?」


 現在使える命止魔法のレベルは3。

 モンスターのレベルは低いが、数が多いので瞬殺は難しいかもしれない。


「モンスターのレベルが低いから、数がいても即時でいけそうです?」


「レア種も?」


「一階、二階の敵であれば大丈夫なのねー」


「う。万が一生き残った個体がいても、私たちが瞬殺させるの」


「ん。屑が手をだす隙なんてないのよ?」


 冒険者は立ち止まって警戒しているように見える私たちに、我慢できなかったようだ。


「おい! 逃げろ! 大量発生の罠が発動しちまったんだ。俺たちが食い止めるから!」


 リーダーらしき男が声を上げる。

 大剣を背負ったままとか、やる気がなさ過ぎて笑えた。


「ほら、こっちに来るんだ、よっ?」


 リーダーを追い抜き私の体を抱え上げようとした男は、手にごついナックルをしていたので、拳闘士だろう。

 汚れの目立つナックルをはめた手で、女性を抱き上げようとしないでほしい。


 ローズが一瞬で大きくなって、拳闘士の体をいなす。

 勢いを殺しきれなかった拳闘士は壁に激突した。


「はぁ?」


 続いて走ってきた奴らの不抜けた面を横目に、大量のモンスターに対峙する。


『命止魔法 レベル3発動』


 詠唱はしない。

 必要ない。

 ただ、頭の中で明確な文字にして、その威力を上げた。


 うるさかった羽音が瞬間で消える。

 残った数匹も更に数秒経過すれば地へ落ちた。


「なんだそりゃぁ!」


 槍を背負った男が大声を上げる。

 引き続き無視をして、スライムたちとドロップアイテムを拾った。

 レア種も多くいたようで依頼は十分に達成できている。

 グリーンレインボーの羽は、そのまま額装をしてもいいレベルに繊細で美しい。

 ナナホシの羽は真円。

 赤い真円に金色の星が七つ輝いている。

 コースターによさそうな見た目だった。

 ちなみにコカブトのドロップアイテムは、掌サイズの日本兜。

 なぜに日本兜? と疑問を抱いてはいけないのだろう。

 なかなかに凝った造りなので、置物によさそうだ。


「信じらんねぇ、ドロップ数だぜ、おい! お前、俺たちにも半分はよこせよ!」


 ぼけっと突っ立っているだけなのに、何をおぬかし遊ばしているのかと。

 小一時間は問い詰めたい。


「ってーか、どうやって倒したんだ? 貴様」


 リーダーが上から目線で問うてくる。

 教えてほしかったら、土下座でもしろってなぁ?

 まぁ、しても教えないけどさ。


 リーダーがドロップアイテムを拾い終えた私の肩を掴もうとするも、スライムたちがそんな暴挙を許すはずがない。

 大きくなったスライムたちが、冒険者を一人ずつ体内に納めた。

 捕獲が目的なので、装備を溶かしたりはしない。

 男たちが無様に暴れる様を冷ややかに見つめる。

 このまま入り口まで向かえば、男たちの評判は落ちるだろう。

 罪を犯した挙げ句、スライムに捕獲された弱者だと。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 怒りで興奮気味new!!  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)  



 ダンジョンの楽しさは探索と採取だと思っているのですが、文章にすると戦闘抜きは難しいですよね?

 戦闘はときどきでいいんだけどなぁ……。

 ダンジョン話はしばらく続きます。

 途中ダンジョン関係なくね? という話が入り込む可能性大です。

 

 次回は、昆虫ダンジョン インセクト。2(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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