先生へ
若い女性は急いでいました。
仕事に遅れそうだったのです。
職場へと向かう街中で募金箱を抱えた男性が近づいてきました。
「すみません。病気の子供たちを救う募金にご協力をお願いします」
若い女性は言いました。
「ごめんなさい。急いでるんです。今度募金します」
若い女性は足早に通り過ぎようとしました。
募金箱を抱えた男性はこう言いました。
「毎日何万人もの子供が病気で死んでいるんです。あなたはそれを放って行くつもりですか?」
若い女性は言いました。
「すみません。本当に急いでるんです」
募金箱を抱えた男性は言いました。
「子供たちの未来を奪うのですか?」
若い女性は口調を強めて言いました。
「夕方の6時に仕事が終わります。終わったらまたここを通って帰ってきます。子供たちの未来を願うなら、それまでここで待っていてください」
若い女性はそう言って足を進めました。
仕事が終わると若い女性は約束通り、朝と同じ場所を通りました。
でもそこに募金箱を抱えた男性はいませんでした。
先生へ、あなたはこの募金箱を抱えた人です。
完成日不詳