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宣言(ジャンル:恋愛?)






あなたが好きです。 今日、チョコと一緒に告白させていただきます。 返事はその場でお願いします、待たせるのも待たされるのも好きではないので。





「…………… はい?」




何気ない日常。 今日も普通に起きて普通に着替えて普通に朝食食べてフツ〜に登校した。 恐らく今日は特になにも起こらないはずだった。


下駄箱を開けただけ、靴を履き替えようと何の心の準備もせず開いた中に。 核弾頭並みの衝撃が待っていた。

待ってくれと言う暇すらない。 落ち着く暇もありゃしない。 無記名のその手紙は俺をハラハラドキドキさせるには十分な材料であった。





世間的にはチョコの日だ。 チョコをあげるのが当たり前であり、渡すことに特別な意味が込められる日である。 しかしそれはあくまで大多数の意見であり、僕のような少数派な人々にとっては何の変哲もない日である。多少の妬みと羨ましさを胸に秘め、一日を終える日である。 いや、そうであったともう過去形になってしまったが。




……… 人生初告白、そして人生初の本命チョコ。 それを、堂々と宣言されてしまった。喜びはもちろんあるが、もてない男はこういう場合不信感を抱いてしまうもので。 こんな上手い話があるものなのな、バレンタインにちなんでのイタズラではないか。 そもそも無記名の時点で怪しさ満点である。そもそも、僕のようなギリギリ平均点(自己採点)な男を好きになる女性などいるのか? いやいないだろう………



「まぁ、イタズラだろうな」



口にしてみても、手に取った手紙を鞄に入れてしまっている僕がいた。






§§§§§§






……… 休み時間。 お昼休み、そして放課後。 周りで見かけたチョコの受け渡しを横目に見ている間にもう夕日が沈みそう。 僕は黙って鞄から手紙を取り出す。 知らない間に鞄にチョコが、なんて展開もなさそうだ。



(そりゃそうだ。 だって、場所とか時間が書いてないしね)




いつ、どこで、何を。 ホウレンソウは大事だと学ばせて貰った。 この手紙には今日、告白します。 チョコを渡します、しか書かれていない。 これを信じてお利口に待っていた僕を誰か褒めてもいいのではないだろうか?





「帰ろ…………」



僕は帰ろうと思った。 今日も結局変わらぬ日常であった。 なーんのことはない、後は帰って寝て、明日の朝起きるだけだ。 僕は教室を出た。





「あの」

「はい?」



声をかけられ、俯いてた顔を上げる。 小さな女の子が僕を見上げてる。 小学生? いや、制服はうちの学校のだし……… 一年生かな?






「これ、チョコです。 あなたのために、作りました」


小さな両手には、これまた小さな箱が握られていた。 僕は状況が理解できていなかった。なのでそれをすんなり受け取ってしまった。



「あ、どうも。 ありがとうございます」

「いいえ。 あの、あなたのことが好きです。 受け取ってくれたと言うことは、それが答えと思っていいでしょうか」





………… そこまで言われて、ようやく緊急事態であることに気づく。 え、ええぇ! こ、この子⁉︎ 朝の手紙の相手って、このちっちゃい子⁉︎⁉︎




「え、いや、その……… こ、答えと言いましても……」

「はっきりお願いできますか? 先延ばしも嫌なので」



な、なんだか変な圧力があるな。 ちっちゃいのに、見上げてるの辛そうなのに。 目力すごい、大きな瞳が僕を見つめてる。 よく見れば可愛い、可愛い子が僕の返事を待っている。 神様これはどんなイタズラですか? 僕、きっとこの後ロクな目に合わないと思うのですが。



「好きか嫌いかでいいです。 なのでお答えいただけますか」



好きか嫌いかで……… どこかでお互い見たことはあるのかもしれないけどさ。 話すのは多分今日が初めてでしょ? なんでそんなグイグイ来れるの、この子は。




「……… その、とりあえず友達から」

「友達からとか、恋人だとかではなく。 好きなのか嫌いなのかお聞きしてるんです」


「そ、そう言われても。 話すの今日が初めてだよね?」

「では今話してみてどうですか? 好きになりました? それとも嫌いになりました?」





なんなのこの子は…… 0か100しかないんですか? へ、変な子だ。 素直にそう思えた。





「どっちですか?」

「……嫌いでは、ないです。 でも好きだと言うには、まだ君のことを何も知らないので……」



無難な答えだろうと自分で思う。 というか素直な意見だ。 会ってすぐの人を好きか嫌いか決めろなんてなかなか難しい話である。





「そうですか」

「はい…… あ、チョコありがとう。 嬉しいです」

「私はあなたと話せて嬉しいです」




ストレートな感想を、恥じらうこともなく投げてきた。 な、なんか変な子だけど……… どうしようすごい嬉しいんですけど。





「それでは、また明日」

「あ、はい。 また明日」



そう言って、彼女は歩き出した。 僕は受け取ったチョコを手に、その後ろ姿を見つめていた。


突然立ち止まり、振り向いた彼女。




「では。 ホワイトデーまでに、私のことを好きにさせてみせます。 なので、お返しはその返事でお願いします」


そう言って軽く頭を下げ、再び歩き出した。








立ち尽くす僕。 手にはチョコ。 初めて貰った、本命チョコ。 甘いチョコと、真っ直ぐな女の子。 それが僕の人生で、初めてバレンタインと呼べる日の記憶となった。





(あ、名前……… 聞いてなかった)





バレンタインネタですね笑

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