涙色(ジャンル:コメディ?)
「涙は透明色だよね」
「うん、透明だね」
「透明、じゃなくて。 と、う、め、い、いろ。だよね」
ん? はたして彼女はいったいぜんたい何をおっしゃっているのか全く理解出来ない誰か説明プリーズ。 オーディエンスを使ってもよろしいか? 涙は透明と言う僕の発言が間違っているのか? いやいや、涙は透明でしょ、色がないって言うのは本当はおかしい表現かもしれないが、あれは誰がどう見ても『透明』と言うでしょ。
「血の涙とか言う言葉あるでしょ? あれは赤色の涙よね」
「ん? んー、まぁそうだ…… ね。 血って言っちゃってるし」
「ね? だから、普通の涙は透明色なの」
なんだなんだ。 あれ、僕の頭が悪いせいか彼女が何言ってるか全然わからん! 辞書を引けばいいのか? ググればいいんですか⁉︎
「ねぇ…… 私が言ってる意味、分かってないよね」
「え。 ……まぁその。 ほぼ100%理解はしていないです………」
ごめんなさい。 バカで本当すみません‼︎ 僕の正直な告白に彼女はため息をつく。 あ、そんなですか。 呆れるほど僕の理解力は乏しいということですか。 あははは、なかなかショック〜……
「あのね、 私が言いたいのは。 誰もが見せる涙って言うのは。 見えているから透明ではないの。 でも言葉には限界があるから、透明と名付けているの。 意味分かる?」
あ、頭からケムリがもくもくと出そうだぁ! え、え、え。 つまりつまり、要するにあれでしょ? 透明って言葉でしか表現出来ないから仕方なくそう言ってるだけってこと? そ、そう言うことかなぁ…… 僕は自信のないまま口を開いた。
「つ、つまり…… 透明な涙はなくって。透明色の涙、があるという…… ことでしょ?」
「いや、透明な涙はあるわよ」
もうわっかんねぇ! どっちでもいいじゃん! 透明なんだから透明でいいじゃん! 透明だろうと透明『色』だろうと変わらないでしょう! なんて言ったら物凄い怒られそうだからやめておこう……
「透明な涙はね…… ココロの涙。 目には見えないココロが泣くの。 その涙は透明で、とても綺麗なんだよ」
そう言う彼女はどこか悲しそうな顔をする。
そんなの表現の仕方だろ。 ココロが泣くとか何詩人気取ってるんだ馬鹿馬鹿しい。 なんて言うやつがいるのなら。 僕はそいつを一発ぶん殴る。 腕っ節も弱いし喧嘩もしたことはないけれど。 彼女のことを知らないやつに、そんなことを言われて黙っていれるほど僕は大人ではないから。
ココロの涙か……… きっと彼女は、その涙を流す人間を沢山見てきたんだろう。
ん? でもでも…… ふと浮かんだ疑問をポロっとこぼした。
「ココロの涙が綺麗って……… 見えないのに、何で分かるの?」
「……… ふふ。 なんでかしらね。 君の身体を解剖して見せてあげようか?」
そう言う彼女の笑顔が怖い。 た、例え『医者』と呼ばれる彼女でも……… 健全な僕を解剖するなんて言わないでよ。冗談に聞こえないから。
あ。 今、僕のココロ。 彼女にビビって泣いてるかも。
どんな綺麗な涙を、流してるのかな?




