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異世界の機神 【寝過ごしたら、そこは異世界 】  作者: 藤谷和美
第三章:初級冒険者 イクシマ
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盾のゴンゾ

「ゴンゾ! お前が頼りだ、何としても一撃目を防いでくれ」


 サージェが腰の剣を抜き放ち、腰を落として構える。

 ジョリーは既に、魔法の詠唱に入っていた。

 ディールの放つ矢は、ことごとく侵入者の持つ片刃の剣によって打ち落とされている。


「ラミレス、隠れてろ! 俺たちを信じて出てくるな!」


 部屋の奥に向かって、サージェが叫ぶ。


 その時、鉄壁のゴンゾが自慢の防御スキルを発動していたにも関わらず、分厚い盾ごと襲撃者の一太刀で真っ二つに胴を両断された。


 一撃をゴンゾが防ぐ事を前提で突っ込んでいた、サージェの首が飛ぶ。

 焦って矢をつがえ損なったディールの胸元に、瞬時に歩を詰めた襲撃者の剣が突き刺さった。


 噴き出す血しぶきを避けて体を落とした男に、ジョリーの放ったファイアーボールが迫る。

 斬!と音を立ててファイアーボールが断ち切られ、その場で雲散霧消した。


「ひぃっ!」


 悲鳴を上げる間もなく、手にした長いロッドごと、ジョリーの顎から上が切り落とされて、ベチャリと床に落ちる。

 襲撃者は無言で部屋の奥に押し入り、ベッドの下に隠れていたラミレスを、その寝床ごと真っ二つに断ちきった。


 襲撃者は室内を見回し、自らの首尾を確認すると、1つ頷く。

 やがて、ブン!と音を立てて片刃の剣を振り、刀身に付着した血糊を払い落とした。



 ほぼ同時刻、カズーイの店から火の手が上がり、ルシアが駆けつけた時には、石造りの建物が幸いしてか、既に延焼は収まっていた。


 翌朝、その焼け跡から黒焦げの死体が1つ発見された。

 その小柄な死体は両の手で、重そうな鉄の塊を大事そうに抱えていたと言う。




 翌朝、小窓1つ無い狭く暗い部屋の中で、三人の男が話し合っていた。


「それで首尾は?」


「全員、切り捨てた」

「わしの方も、確実に殺してから火を付けたと報告を受けている」


「それでは、世界が平和であり続けますように、祈りましょう」


「俺は神などと言う物は好かぬ」

「わしも、金を稼ぐ世の中の仕組みが無くならねば、それで良い」


「…… 」


(ゲスに石頭めが! 愚者を導き世を正すのも、中々に疲れるわい)


 やがて、室内に人の気配は消え、午前9時を知らせる神殿の鐘が鳴る。

 町はいつも通りに活気に満ちた人々で溢れ、客を呼び込むニーリーの声が中央十字路の喧噪の中でも、ハッキリと聞こえた。


 幾嶋が旅立った日の夜に起きた事件の事を、彼は知る由も無いのである。


 世界を取り巻く闇は深く、そして根深い。 

 

 

 

 


 第三章は、これにて終了です。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 この後は、箱根越えから神奈川へ入り、旧東京へと向かいます。

 この作品とリンクしている拙作『バランスブレイカー:世界の調和を乱す者【世界が俺を拒絶するなら:異世界編】』の投稿が開始されましたので、そちらのストーリー進行に合わせて、こちらも連動した連載を再開する予定です。

 

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