告白のラミレス
前日に幾嶋がエステルを抱いて駆け込んだ神殿で、熱心に祈りを捧げる男が居た。
エステルが案内された狭い治療室とは別の、遙かに広く天井の高い場所で、その若い男は神に感謝の言葉を捧げている。
「良かったですね、ラミレスさん。 あなたの発明が現実の物となれば、多くの人を救える事でしょう」
「ありがとうございます。 これも全て神のご加護のお陰でございます」
静かに告げられる神官の言葉には、労いの意味が込められていた。
それに対して、心からの感謝の言葉で返す男。
この国の多くの人々がそうであるように、この男もまた熱心な6大神の信徒であった。
「これは個人的な忠告ですが、まだこの事は秘密にするのが良いでしょう。 この先あなたの発明が実用化されれば、大きな損をする者が出ないとも限りませんからね」
足下をも覆い隠すような真っ白な衣服を身に纏い、頭巾から目だけを覗かせている高位の神官は、ラミレスに向けて静かに告げた。
「そう言えば、最近誰かに後をつけられているような気が…… 」
男は不安そうに、そう呟きかけて止めた。
まだ、何も根拠などは無い自分の感覚だけの、単なる思い過ごしかも知れないと、そう思ったのだった。
白い神官は頭を垂れるラミレスの頭に手をかざして、呪文のような神への祈りを捧げ始める。
ラミレスと呼ばれた若い男は、白い神官の前に跪いたまま両手を組み合わせて、彼の信じる白き神に祈りを捧げるのであった。




