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クロスロード

 幾嶋が交差点の噴水前で露店を開いている女性の処へ着くと、噴水の縁にちょこんと座っていたエステルが幾嶋を見つけて満面の笑顔になり、元気に走ってきた。


「え?!」


 飛び込むように抱きついてくるエステルの体を、腰を屈めて受け止める幾嶋。

 彼はエステルに、走れるようになった足の事を真っ先に尋ねた。


「ちょっと、足はどうしたの? もう大丈夫なの?」


 ちょっと困ったような顔でどうしようかと考えていたエステルは、意を決したかのように幾嶋の耳に顔を近づけると、まるで内緒話をするように小さな声で囁いた。

 

「あのね、変なまだら模様の見たことのない服をきた8人連れの人達がここを通ってね、その中に居たジョーみたいに真っ黒な髪の毛と黒い優しい目をした背の高いお兄ちゃんがね、内緒だよって言って直してくれたの」


「それって、どれくらい前の事なの? お礼を言わなくちゃいけないから、特徴を教えてくれる?」


 無理だと諦めていたエステルの足を元通りに治してくれたという、黒髪で長身の男性を含む8人連れなら、きっと目立つだろう。

 それなら見つかるかもしれないと思って、幾嶋は彼らの特徴をエステルに尋ねた。


「えっと、直してくれた背の高い兄ちゃんは自分の事をゴリラ顔って言ったけど、ゴリラって何なのかな?」


「ん?、エステルはゴリラって見たことないのかな?」

 何の疑問も思わずにそう答える幾嶋は、この地方にゴリラが存在しないことを知らない。

 

「それでね、とっても綺麗な銀髪で恋人同士みたいな二人と、縞々の短い髪型でおっきいお兄ちゃんと、灰色の髪の毛の痩せたお兄ちゃんがいてね… 」

 エステルの説明は延々と続いたが、特徴のあるグループなので見つかりそうだと幾嶋は思った。

 

「それから私と同じくらいか、ちょっと大きい女の子が三人いたの。 一人は綺麗な薄い水色の髪の毛でメルって言ってたかな、もう一人は綺麗な薄い金髪の巻き毛の子でアーニャとか言ってたわ、それで最後の子は腰まである長い真っ直ぐな薄い金色の髪の毛で、確か名前は…… 」


 腰まである程長くて真っ直ぐな薄い金髪の女の子と聞いて、幾嶋の胸が何故かチクリと痛んだ。

 しかし、その理由に彼が気付くことは無く、不自然なモヤモヤした感情だけが残るだけであった。


「ああ、その8人連れなら覚えてるよ。 これから街を出て東に行くって言ってたねぇ…… 」


 お礼を言いがてら8人連れについて尋ねる幾嶋に向かって、露天商の女性はそう告げた。


 最後の子の名前を思い出そうとして考え込むエステルをその場に残して、幾嶋は露天商の女性にお礼だと言って借金を返すようにと、稼いだばかりの大金の一部を渡していた。


「そうだ、変な話し方をする無口な子でね、『わしはバレリーじゃ』だって。 って、ねえジョーってば、聞いてるの?」


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