控え室
軽い感じで見てください。
控え室にはただならぬ空気が流れていた。だが入った瞬間にみんながこちらをいっせいに向きビクリとした。
勝はみんなからの視線を背けながらロッカーへ向かった。
「これであと一人だな。」
20代前半だろうか、100キロ以上ありそうなデブの男が呟いた。誰もその言葉に反応せずただただ沈黙が続いた。勝も何も反応せず着替えをしている。
だがそのとき、勝に話しかけてくる男がいた。
「君さーいい体してるねー、何かスポーツやってるでしょ?」
いかにもお調子者みたいなやつが喋ってきた。静かな控え室で話をするのはコイツだけ。注目を集めてるかもしれない。正直、話しかけないでほしいから俺は無視した。
「おいおい無視かよつまんねーなー、こんなときこそ何か喋んなきゃやってらんないぜ。」
この状況で無神経に喋ってくる青年に勝は少しイライラした。が、そこは落ち着いて青年に返答した。
「今、気分が悪いんだ。喋りかけないでくれ・・・。」
これで完璧・・・そう思った・・・
「大丈夫か?これから運動するのに、テンション上げてーテンション!」
カチンときた。
「君さあ何で俺に喋りかけてくるわけ?さっき他の人がしゃべってたけど全く反応しなかったじゃん!ストレスだってたまってんだからいちいち喋りかけるな!」
この青年に対して吐き出したいものをすべて吐き出した。
「え?誰か何か言ってた?あーごめんごめんさっき音楽聴いてたわ。けど調子よさそうで良かった良かった。同じチームなんだから頑張ろうぜ!」
ダメだ・・・こいつには何を言ってもわかんない。勝は鞄からルールブックを取り出し最初から読み始めた。
「なあなあ、そのルールブックさー肝心の野球のルールが書かれてないんだよね。なんで?」
知るか!と言いたいところだがたしかにおかしいとも勝は思った。ここのルールブックには獲得賞金しか書かれていない。
「たしかに、変だ・・・」
ついつい口に出してしまった。やってしまったと後悔した。
「お、やっと普通にしゃべってくれたな!ウジウジしててもつまんないぜ!おっ、そうだ!名前教えてくれよ、俺は遠山和人。22歳だ。」
俺と同い年かよ・・・もうすぐ社会人なんだからそのしゃべり方なんとかしたほうが良いだろう。まあでも最初はイラついてたがコイツのおかげで少し気持ちが楽になったかもしれないと、勝は思いはじめていた。
「古林勝、お前と同じ22歳。」
そのとき遠山より先に反応してきた人がいた。
「き、君ってもしかして神奈川県の柏鳥高校の古林勝選手・・・?」
中年のおじさんが喋りかけてきて勝は驚いた。
「盛り上がってるところ悪いんだけど、4年前の夏甲子園で、今やプロに行き大活躍している成宮選手から逆転満塁ホームランを打った古林選手ですか?」
勝にとって最も思い出したくない記憶がフラッシュバックしてきた。急に言われて勝は少し萎縮してしまった。
「は、はい。そうです。」
その後遠山まで話に割り込んできた。
「マジかよ!?そんなすごいやつだったのかよ!」
「ああ、すごかったんだよ彼は、最強の1番打者って呼ばれてたぐらいだから。」
「けどそんな前の事よくおっさん覚えてるな。」
「まあね。おじさん高校野球大好きなんだよ。あんな若い子達がたった一つしかない頂点目指して3年間の高校生活を野球漬けにするんだよ?おじさん見てるだけで感動しちゃって。」
「へー俺は別になんとも思わないけどな。」
二人が盛り上がって話しているところを俺はただただ黙って聞いていた。
「へーだけどプロに行けなかったんだ。そんなにすごかったのに。」
そのとき勝のかカラダが震えだした。
「ああ、それはね・・・」
中年のおじさんがこちらをチラ見しながら遠山に続きを話しかけた。
俺はカラダの震えが最高潮に達していた。
「古林君が守備のときに・・・」
「ヤメローーッ!!」
勝が言い放った瞬間、その場の空気が凍りついた・・・。何がなんだか分かんなくなっていた。
「ご、ごめんね。つい・・・。」
中年のおじさんが言ったそのとき、扉が激しく開かれた。
感想、レビュー、ptなどがなくてモチベーション的にあれなんで休みます。