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誰そ彼  作者: 冬華白輝
6/11

魔の13階段


6,魔の13階段


「・・・魔の13階段って、あの、屋上に続く階段よね」


 しずくが唯一よく知る七不思議だ。よく、かずに話して聞かせて怯えさせていた。


「これが六つめ。・・・よし、屋上ね!」


 しずくは理科室から飛び出す。ふと、廊下が暗いことに気づく。


「え?あれ・・・?」


 窓の外を見て、目を丸くする。


「あんな高いところに月?・・・さっきまで夕方だったのに」


― 別世界に通じている。


 ふいに、自分が言ったその言葉を思い出す。


「・・・そっか、七不思議は別世界への入り口なんだ」


 月をながめて、しばらく呆然としていたしずくは、気をとりなおし、屋上へと向かい始める。


 屋上までの階段。ふだんのぼれば12段なのに、数えてのぼると、13段になる。そして、13段目をのぼって屋上への扉を開くと、それは、この世界とは違う世界への扉になっている。


 それが、七不思議の魔の13階段の話だ。しずくは、カタイ表情をうかべて、ゆっくりと数を数えながら、階段をのぼり始める。


「いち、にい、さん、よん・・・・」


 だんだんと足どりが重くなる。まるで見えない手に押し返されているようだ。


「じゅーう、じゅーいち、じゅーに、じゅーさんっ!」


 しずくはたん、と階段の一番上に立つ。魔の13階段の話自体を信じていたわけではなかったが、今までの体験を思えば、ふだん12段の階段が、13段になるくらいなんてことのないように思えた。


「・・・開けるわよ?」


 誰にともなくつぶやいて、しずくは屋上への扉を開く。




「・・・・!」


 扉の先には、見たこともない光景が広がっていた。学校の屋上であるはずがない景色、一面の花畑。それも、すべて、黒いバラの。


「黒いバラ・・・」


「きれいでしょう?」


 うしろから声をかけられて、びくっとする。ゆっくりとふりかえると、そこには、


「・・・あたし?」


 そう、しずくが立っていたのだ。


「ふふ・・・。そう。あたしは、あなた。・・・もう、七不思議の秘密にはたどり着いたかしら?」


「・・・七不思議は、別世界への入り口だってこと?」


「正解。・・・じゃあ、どうやったら、かずを助けられるかしら?」


 彼女はそう問いかけてくるが、しずくにはどうしても思い当たらない。沈黙が続くと、彼女はしびれをきらしたように話し出す。


「そんなんじゃ、かずは助けられないわ。・・・よく考えて。入り口はなにも扉だけではないのよ?」


「・・・最後の一つは・・・扉があるところじゃないってことね?」


 彼女が答えへと誘導しようしていることに気づいて、しずくは確認する。


「・・・思い出して・・・はじめて七不思議にあったとき、あなたの周りには何があった?」


 しずくは必死になって、あのできごとを思い出そうとする。そこで、ふと気づく。かずは、しきりにあの話をしずくに思い出させようとしなかったか?


「赤い手・・・窓。・・・逃げてるときは夢中で・・・でも、赤い手が追ってきてて・・・。あれ、あたし、あの時、振り返る余裕なんてなかったのに・・・なんで、追ってきてることがわかったんだっけ・・・」


 しずくは考え込む。彼女は、そんなしずくにクスクスと笑いながら、問いかける。


「右が左。左が右。全部が正反対って・・・なぁんだ」


「・・・あっ!」


「わかったみたいね?・・・お願い、かずを助けてあげて?」


 しずくが気づいた瞬間、彼女の体が透けていく。


「待って!・・・どうやって助ければいいの!?」


 彼女は首を振る。


「教えて!・・・ねえ!待って!!」


 もう、うっすらとしか見えない彼女がささやく。


― ()(かれ)


「誰そ彼・・・?」


― か、れ、は、だ、れ?


 一音ずつ区切りながら、彼女は言葉をしずくに残し、姿を消した。


「 “誰そ彼”“彼は誰?”・・・それって」


 しずくは、いつの間にか元に戻った屋上にたたずみながら、以前、かずが話していたことを思い出していた。


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