理科室のガイコツ
5,理科室のガイコツ
「かずぅ・・・」
扉の前でしゃがみこみ、しずくはしばし呆然とする。
「・・・探さなきゃ。・・・かずを、助けなきゃ・・・」
ゆっくりと立ち上がり、しずくは必死に七不思議を思い出そうとする。いつもクラスメイトが面白半分に語っていた七不思議。かずは怖がりだったため、いつも倒れるんじゃないかと心配するほど真っ青になっていた。
「理科室・・・に一つあったわよね」
しずくは決心すると、理科室へと走り出す。しずくは気づいていなかった。まだ夕方だというのに、人の声がまったく聞こえないことに。
理科室の前まで来ると、しずくはごくりとつばを飲み込む。
「た、確か・・・ガイコツがどうのって話だった気がするけど」
しずく自身、七不思議に興味などなく、あまりにもかずがおびえるために、ろくにクラスメイトの話を聞いていなかったのだ。
理科室の扉に手をかけ、ガラッと勢いよく開け放つ。
「出て来い!ガイコツ!!」
叫んでみるが、しーんとした理科室の中で、ガイコツが動き出す気配も無い。
「・・・ガイコツが何だったっけ?あ~!思い出せない!!」
― カタカタ・・・
「!?」
かすかな音が聞こえ、しずくは耳をすます。
― カタカタカタ
今度ははっきりと聞こえる。しずくは音の聞こえるほう、理科準備室へと向かう。
「・・・ひっ!!」
準備室の扉を開けると、そこには、目のくぼみが青白く光り、カタカタとうなずくガイコツがいた。しずくは思わずひきつった叫びをあげ、扉にしがみつく。
― カタカタカタカタ・・・
ガイコツはうなずくのをやめ、今度はしずくの方を向き、来い来いと手招きする。
「・・・な・・・なによ、かずの居場所を教えてくれるの?」
― カタカタ
しずくの言葉に返事をしているのか、カタカタと再びうなずくガイコツ。
「ど、どこにいるのよ!」
あまりの不気味さに、腰が引けているが、しずくはなんとかガイコツと向かい合う。
― カタカタ・・・カタカタカタカタカタカタカタカタ!
「ひっ!!・・・もう~なんなのよ~!!!」
泣き出しそうになりながらも、しずくはガイコツの言わんとしていることに気づく。
「ひきだし?」
ガイコツが一生懸命にさしていたのは、しずくが背を向けていた、薬品棚のひきだしだった。しずくはさっそくひきだしをひっぱってみると、思いのほかかんたんに開いてしまう。
「・・・ん?何コレ・・・」
ひきだしに入っていたのは、一枚の紙。そこには赤い文字でたった一文、書かれていた。