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誰そ彼  作者: 冬華白輝
4/11

あかずの扉


4,あかずの扉


「あかずの扉・・・?」


 しずくが思わずたずねる。学校の七不思議はいくつか知っているものの、あかずの扉があるなんて、聞いたこともなかったからだ。


「うん。あかずの扉。・・・知らないのも当たり前だよ。七不思議の中でも最後の一つとこのあかずの扉だけは、危険すぎるから語られることなく終わるんだ」


 つまり、それだけ危険なものをこれから見ることになるのだ。そう理解したしずくはみぶるいする。


「僕からはなれなければ、平気だよ」


 そんなしずくに気づいてか、かずは苦笑めいたものをうかべる。


「・・・」


 すっかり無言になってしまったしずくの手を引き、かずは廊下のつきあたりにある階段のうしろに回りこむ。


「・・・これが?」


 かすれた声で、しずくがたずねると、かずはこくり、とうなずく。


「あかずの扉だよ。・・・よく知られてるお話の中でも、別世界に行ってしまうものがあるでしょ?」


「えっと、うらしまたろうとか不思議の国のアリスとか・・・?」


「そう。いろいろあるよね?・・・人には違う世界に行きたいっていう願望(がんぼう)があるんだよ。心の奥深くにね。だから、そういう話が作られる。・・・どう?しずくちゃんは、別世界に行ってみたいと思う?」


「・・・い、行きたくない」


「そう、残念だな・・・。僕は行きたいと思ってる。だって、楽しそうじゃないか」


 クスクスとかずは笑う。


「・・・行っちゃったら、帰れないんでしょ?・・・そんなのいや。・・・かずが戻ってこないのもいや」


「・・・しずくちゃん」


 おどろいた表情をうかべ、かずはしずくを見つめる。


「いやよ。・・・絶対に、いや」


 しずくははっきりと言いきると、あかずの扉を見つめる。


「これが、もし、別世界に通じているなら、あたしは、こんな扉、(こわ)してやる!」


「あはははっ!・・・しずくちゃんらしいね」


 かずはひとしきり笑うと、そんなことを言う。


「もう、僕のこと、怖くないみたいだね?」


 表情を消してたずねるかずを、しずくは静かな気持ちで見つめる。


「・・・怖く、ないよ?」


「そっか。・・・やっぱり、しずくちゃんを選んで良かった」


 かずはそう言って、あかずの扉のノブに手をかける。


「かず!」


「僕を探して、しずくちゃん。・・・赤い手に捕まった僕は、七不思議の中にいる」


 扉の向こうへ行こうとするかずの手を、しずくは夢中でつかむ。


「だめ!かず!!・・・いっちゃ、だめ!!」


「・・・残り、三つ。・・・最後の一つを探して・・・僕を・・・」


― 助けて。


 するっとつかんでいた手がはなされて、かずの体は吸いこまれるように扉の向こうへと消えてしまった。


「かず!!!」


 声の限り叫び、扉を開けようとするが、二度と扉は開くことがなかった。


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