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誰そ彼  作者: 冬華白輝
3/11

鳴るピアノ


3,鳴るピアノ


 キーンコーンカーンコーン・・・・


 学校のチャイムの音に、しずくは目をさます。ハッとして起き上がると、そこは保健室のベッドの上だった。


「あれ・・・、あたし・・・」


 きょろきょろとあたりを見回し、呆然とする。


「あら、起きたの?」


「・・・あ・・・せんせぇ・・・?」


「あなた、トイレで倒れてたのよ?真っ青な顔して、貧血だろうとは思うけど・・・。ちゃんと、食事はとってるの?夜はちゃんと眠れてる?」


 保健室の先生に問われて、おずおずとうなずく。


「そう。ならいいんだけど。・・・ほら、お友達も待ってくれてるから、一緒に帰りなさい」


 お友達?と考えながら、しずくは先生の指し示す方を見て、ギョッとする。


「か・・・かず・・・」


「しずくちゃん、心配したよ・・・。トイレで倒れてるんだもん」


 ニコリと笑う顔は、普段と変わらない顔。先ほどのことがうそのようだ。


「・・・かずが・・・保健室に?」


「そうだよ~。・・・さあ、早く帰ろ?」


 手をとられ、しずくは保健室を出る。




「・・・かず」


「・・・言ったでしょ?・・・逃げられないんだよ?あの赤い手から逃げられなかったみたいに」


「・・・ッ!?」


 保健室を出て、誰もいない廊下を進みながら声をかけたしずくに、にっこりとかずは笑ってみせる。


「・・・しずくちゃん?」


 後ずさりして、かずから距離をとる。そんなしずくに気づいたかずがしずくの手をつかむ。


「だめだよ・・・僕から、離れたりしたら・・・」


 くすくすと笑い声がエコーのように響く。


「さあ、行こうか?」


「・・・どこ・・・へ?」


 かずはくすくすと笑い続け、しずくを見る。


「音楽室だよ?」


― 決まってるじゃない。


 と言って、かずはぎゅっとつかんだ手をぐいぐいとひっぱって、特別教室棟に続く階段を上がっていく。


「や・・・やだ・・・か、かず!どうしちゃったの!?・・・ね、ねえ!!」


「・・・しずくちゃん。僕は、どうもしてないよ?」


 ふりかえったかずの表情にしずくはぞくりと体をふるわせる。笑顔なのに、目が冷たい。


「・・・かず・・・」


「行こう?」


 しずくはだまってうなずいた。もう、さからう気力がわかなかったのだ。




ポーン・・・


 特別教室棟に入ると、高いピアノの音が聞こえる。


「・・・これ・・・」


「放課後にひとりでに鳴るピアノ。・・・七不思議の一つだよ」


 しずくのつぶやきに、かずが答える。


「・・・それ・・・だけ?」


「・・・しずくちゃん」


 問いには答えず、かずはしずくを音楽室に放り込むように入れる。


「最後まで聞いてなきゃ、出られないよ?ず~っとね」


 今度はかずも一緒に音楽室に入ってくる。


「・・・」


 しずくは恐怖にひきつった顔でかずを見つめる。


「ほら・・・始まる」




ポーン・・・ポーン・・・


 音を確かめるように音が鳴って、曲が始まる。


「コレって・・・レクイエム・・・?」


「そう・・・死者を送る曲だよ」


 かずは楽しそうにそう言うと、ピアノの側に立つ。


「このピアノはね、悲しみ続けてるんだ。ピアノの天板に挟まれて死んでしまった、少女のことを思ってね」


「・・・っ!」


 目を瞠るしずくに、かずは柔らかく微笑む。


「しずくちゃんが、彼女の代わりにこのピアノの曲を聴いてくれれば、ピアノもきっと満足してくれると思うんだ。だから・・・」


― おとなしくしててね。


 笑みを消して無表情のまま、かずはしずくに視線を向けた。そのとたん、しずくの体はかなしばりにあったように動かなくなる。


「・・・かず・・・」


「こんなことしなくても、動かずに聴いてくれるとは思うけど、念のために、ネ?」


 にこり、と笑う。


 その間もレクイエムの演奏が続き、しずくはおびえながらも、その演奏に聴き入っていた。曲も終わりに近づいたとき、ぼぅっと人影のようなものがピアノの前に浮かび上がる。


「・・・ひっ!」


 ひきつった悲鳴をあげるしずくに対し、かずはその人影に微笑む。


「よかったね・・・」


 人影はふぅっと消えて、音楽室は静けさをとりもどす。


「さあ、次に行こうか?」


 いつの間にか動くようになった体をかずに向けて、しずくはおずおずとうなずく。もう、疑問にも思わなくなっている自分におどろきながらも、かずにしたがって、音楽室を出る。


「つぎは・・この奥の階段の下にある・・・あかずの扉だよ」


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