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誰そ彼  作者: 冬華白輝
10/11

七不思議の協力


10,七不思議の協力


 和弥が言った瞬間、屋上にバラの香りが充満(じゅうまん)する。


「これって・・・!」


 しずくは昨夜のことを思い出す。彼女と会ったとき、一面に広がっていた黒いバラ。


「・・・(こた)えた」


 ホッとして、和弥が微笑(ほほえ)む。


「・・・かず!」


 しずくが和弥のうしろを指さす。


「!・・・魔の・・・13階段」


「・・・かず・・・しずく。・・・呼んでくれてありがとう。・・・これで、存分に力がふるえる」


 和弥が名を呼ぶと、魔の13階段の“怪談”は、ニッと笑う。


どん!


 ひときわ大きくゆれて、学校のゆれがおさまる。


「うあ~・・・すごっ!」


 しずくが素直にそう言うと、彼女はうれしそうに微笑む。


「私は、人の信じる力を(かて)にする。・・・かずやしずくの信じる気持ちは、とても、ここちが良いの」


「ねえ、あの子たちは何なの?」


「・・・元からこの学校にはいたんだけど、まだ怪談にはなっていなかったの。・・・一貴もあの子たちをかわいがっていたんだけど・・・ダメね。・・・怪談になった瞬間に、別ものになってしまった」


 しずくの問いに答え、彼女はかなしそうに目をふせる。


「・・・だから、同じ、怪談として・・・私が止めなければならないわ」


 そう言うやいなや、彼女はすう、と手を空にむける。


「・・・降りていらっしゃい。・・・悪い子にはおしおきよ」


― バラのお姉さま・・・なんでじゃまをするの!


― そいつらがいなくなれば、ほかの人間なんて、七不思議にかんたんに取り込めるのに。


「・・・ダメよ。・・・七不思議に気づいてしまったものが引き込まれるのは、仕方のないこと。・・・でも、こちらから気づかせるのは、タブー・・・」


 彼女がにらみつけると、少女たちは、ビクリとおびえたようにふるえた。


― どうして!


― なんで、だめなの!


「・・・あの方が望んでないからよ。」


― あの方が・・・


― 望んでない。


 あの方、と彼女が言うと、少女たちはピクリ、と反応した後、シュンとうなだれる。


「・・・あの方って・・・?」


 おずおずとしずくが問うと、彼女はやんわりと微笑む。


「あなたたちの呼び方にすれば・・・ざしきぼっこ、とか、ざしきわらしっていうところね。・・・この学校をずっと守ってきた、神の末席(まっせき)につらなる方のことよ」


「か、神様だったの!ざしきわらしって!!・・・っていうか、学校にもいるんだ」


 しずくが大げさにおどろくと、彼女はますます笑みをふかめる。


「ふふ・・・そうね。・・・学校にいるざしきわらしっていうのも、なかなかいないものよ。・・・この地は特別なの。・・・とくに、この学校のある付近は、神降地(かみこうち)と言ってね、霊が存在しやすい土地なのよ」


「そうか、それで、この学校はとくに、七不思議とか、怪談というのが多いのか・・・」


 和弥が納得(なっとく)したようにつぶやくと、彼女はこくりとうなずく。


― あの方、おこってるかな?


― バラのお姉さま、どうしよう!?


 おろおろとする少女たちに、厳しい表情をむけ、彼女は言う。


「全て、片付けた後に、ゆっくりとあの方に怒られていらっしゃい。・・・まずは、学校中の人たちから、あなたたちのやったことを忘れさせてくるのよ」


 彼女の言葉に、コクコクとうなずき、少女たちは消える。


「・・・あたしたちも、忘れるの?」


 不安そうな表情で、しずくが彼女を見やる。


「・・・いいえ。あなたたちは、七不思議を見つけ、体験し、生還(せいかん)した。だから、忘れる必要はないわ」


「・・・そっか」


 安心したのか、しずくの顔がゆるむ。


「・・・ねえ、あなたの名前ってあるの?・・・あの子たちはバラのお姉さまって呼んでたけど。・・・その、なんか、呼びづらいじゃない。魔の13階段の怪談って・・・」


「・・・そうね・・・黒バラ、と呼んでくれればいいわ」


「黒バラさん・・・」


 しずくが呼ぶと、にこり、と黒バラは微笑む。


「・・・本当に、迷惑をかけて、ごめんなさいね。・・・あの子たちには、きつく言っておくわ」


「行っちゃうの?」


 和弥が問う。


「・・・ええ。また、機会があったら、会いましょう?・・・あなたたちさえ望めば、いつでも会えるわ」


 そう言い、黒バラは微笑みを残したまま、すうっと消えていった。


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