メカ悪役令嬢が現われた話
「ヒィ、貴女は何者!」
今上陛下在位二十年の年。アルフドルフ公爵家の庭園に・・・
「オ・オダマリナサイマセ・・・オシタイモウシアゲテオリマセンワ!ツン!」
アルフドルフ公爵令嬢ジャニーネ嬢、そっくりな話す人形が現われた。
通称メカ悪役令嬢だ。
「何ですの?」
「オ・オダマリナサイマセ・・・オシタイモウシアゲテオリマセンワ!ツン!」
「私、そんな話し方しませんわ!それに何故、そっぽを向きますの!」
「シマセンワ・・・」
人形なのに滑らかに動くわね。目が光っているわ。
【誰か!どなたかおりませんか?!】
助けを求めたわ。
すると。1人来たわ。
「お嬢様、何ですか?」
「洗濯メイドのベッキーね」
「え、名前を覚えていてくれたのですか?」
「当たりまえよ。使用人の名前は全て暗記・・・それよりも、あれを見て」
「オジョウサマ!オジョウサマ!」
「ヒィ、今度はベッキー、そっくりなメイド人形が現われたわ!」
「ヒィ、お嬢様、怖いのです!」
現われたのはメカメイドだった。
「コレ、ベッキー、オチャヲイレナイサイ!」
「オジョウサマ!オジョウサマ!」
「「「「お嬢様、何事ですか?」」」
使用人達が来たわ。これで証人が出来るわ。
「イワン!ヘクター!リヒト!あれを見て!」
「お嬢様、私達の名前を覚えてくれていたのですか?」
「いったい、何事ですか?」
「あれよ。人形が話すのよ!」
「どこに?」
「あら・・・」
いないわ。忽然と消えたわ。
「本当よ!人形が話したのよ!ねえ。ベッキー?」
「はい、本当なのです!」
「「「「・・・・・・・」」」」
使用人達はしばらく沈黙。長いわね。お互いの顔を見合わせてやっと発言をしたわ。
「なるほど、そうですか?」
「お嬢様、乙女のようなお心をお持ちで、失礼乙女でしたね。なんら異常はありません」
「それは良かったですね」
【本当ですのよ!】
それから使用人達の態度がおかしくなった。
いつも敬遠されていたのに近づいてくる・・・
「お嬢様、お花です。綺麗ですね」
「見て下さい。鳥が飛んでおりますわ」
「そうね・・・」
「お嬢様、心の落ち着くお茶を入れました」
「お嬢様、枕は都で評判の安眠枕を買っておきました。ご覧下さい」
「どうぞ。お茶をお飲みになったらお休み下さい」
「昼の十三時ですわ!」
嫌だわ。これが殿下に知れたら・・・王子?
「ベッキー!もう、貴女しかいないのよ」
「はい、お嬢様・・・あ、お嬢様、空を見て下さい。お嬢様と私が飛んでいます」
「ええ、ほ、本当だわ!」
何か水車のような物が背中に付いていてグルグル回っているわ・・ね。
あれで飛べるのかしら。
「木に隠れたわ!」
「皆様、魔道お人形が出たのです!」
わずかな隙に移動して木々に隠れたわね。
使用人達の反応は間に合わなかったわ。
「アハハハハ、お嬢様、お疲れです」
「ベッキーもお休みなさい」
「本当ですのよ!」
「グスン、何かグルグル回って飛んでいたのです」
「それは大変ですね。さあ、メイド隊出番です!」
「「「「はい」」」」
「ヒィ、何をなさるの?」
メイド十人に捕まりベッドに運ばれたわ。
メイド長のスミス夫人が。
「あ~、お嬢様は良い子だ。お休みくださいませ~」
子守歌を歌う。
まるでおかしくなったみたいだわ。
王都のタウンハウスは私一人で切り盛りしていたわ。
父と母は領地だわ。久々に会いたいわね・・・
すぐに会えたわ。
「ジャニーネ!すまない。任せすぎた。執事長から報告を受けた」
「グスン、母が間違っていました。貴女はまだ子供です」
「16歳ですけど!」
「殿下の浮気で・・・おかしく・・・疲れたのね」
「お母様、今、おかしくと言っていませんでしたか?」
「あら、殿下は本当におかしいわね・・・」
・・・そうだ。私は殿下の浮気を目撃して・・・ショック一人で庭を散策したのだっけ・・・
☆☆☆王宮
一方、王宮ではジャニーネの変化は王子のせいだと結論づけられていた。
【馬鹿者!】
「父上・・・」
「陛下と呼べ」
「全く、生徒会室で事に及ぶとはないごとか?!マリフドルフ公爵令嬢がおかしくなったと言うではないか?」
「ゲルド・・・これは許されない事よ。でも、謝罪しなさい。許してもらうためではなくて、ケジメをつけなさい。それから婚約の継続を考えるわ。マリフドルフ家の後ろ盾がなければ王太子は無理だわ」
「分かりました・・・では、ジャニーネを王宮に呼び出します・・」
「分かっていないわね。公爵邸に出向きなさい!」
ちくしょー!王族たる我が臣下の家に出向けと。すべてジャニーネの仕業だ!
☆☆☆マリフドルフ公爵家
あれから私は使用人達からの評判が良くなったわ。
「使用人の名前を全て覚えていらっしゃるそうよ」
「働き過ぎなのよ」
「心配だわ・・・」
「ベッキーを呼んで頂戴!」
もはや、彼女が唯一の理解者よ。部屋に呼んだ。
「ベッキーなのです」
「ベッキー、良く来たわね」
「あの、お嬢様、愛の形は人それぞれですわ。私達はお呼びがかかるまで決して部屋に入りませんわ」
「スミス夫人!そんなではないわよ!」
「グスン、メイド長、違うのです」
さあ、どうしようかしら。と思ったら、突然、殿下が来訪された。
先触れも無し。
珍しい。
どうしようかしら・・・
「会いますわ」
「殿下は二人っきりで会いたいと仰せになっていますが・・」
「嫌だわ。ベッキーと一緒に・・・」
さすがに私の部屋では嫌だわ・・・・
ベッキーと共にテラスでお会いすることになった。
「ゲルド殿下にご挨拶申し上げます」
「うむ。実は生徒会室でのことだが・・・」
「もう、婚約は終わりにしとうございますわ」
生徒会室で男爵令嬢に後ろから覆い被さっていたわ・・・
「何を言っている!お前のせいで!父上に叱られたではないか?!」
「キャア!」
「ヒィ、誰かー来て欲しいのです!」
剣を抜いたわ。
もうだめだ。と目をつぶった瞬間。
グサと音がしたが痛くない。
あの声が聞こえた。
「オ・オダマリナサイマセ・・・オシタイモウシアゲテオリマセンワ!ツン!」
「オジョウサマ!オジョウサマ!」
空から降りて来たようだわ。グルグル回る物がついている。
「何だ。これは?」
魔道人形が私の前に立ち塞がり殿下の剣を受けたわ。
「え、何だ。お前ら!」
「アクヤクレイジョウ、ロケットパンチ!」
魔道人形の腕が飛んで殿下を攻撃する。
腕一本が殿下の腹部に当たったわ。
私そっくりな人形は倒れたわ・・・守ってくれたのかしら・・・
「何だ。これは!ウワ!」
「オジョウサマ、オジョウサマ、グルグルパンチ!」
ベッキーにそっくりな人形は手をグルグル回して殿下を攻撃する・・・
バキボキと骨が砕ける音がするわ。
「ギャアアーー」
しかし、殿下も剣を振り回してメイド人形を攻撃する。
「もう、やめて・・・」
「如何されましたか?」
「な、何だ。殿下が人形を攻撃している!」
護衛騎士達がやってきたわ。
「ここよ。殿下に剣で攻撃されましたわ!」
「殿下、お止め下さい!」
「殿下を取り押さえろ!」
「はあ、はあ、我は王子だぞ!殺させろ!」
「お嬢様、ご無事で?」
「ええ、この魔道人形が助けて・・・あら、いないわ・・・」
また、忽然と消えたわ。
どこに行ったのかしら・・・
☆☆☆2050年日本某会社研究室
「おーい、佐々木さん。試作悪役令嬢型防犯メカはどこにいったか?
試作悪役令嬢補助メカメイドもいないぞ」
「主任、分かりません・・・」
悪役令嬢、ネット小説で大流行したが2030年に下火になった。また2050年代になって人気が復活した。
きっと、忍者物のように流行を繰り返すのだろう。
だから、防犯を主とする我社が悪役令嬢のウェーブに乗って開発したのだが、
「もしかして、転移したのか?防犯グッズ会社だから防犯は国の機関並だからな・・もしかして異世界に」
「さあ?」
「あれは自動太陽光発電、ドローン機能付。主人と認識した物を守る仕様だ。『オ・オダマリナサイマセ・・・オシタイモウシアゲテオリマセンワ!ツン!』が主人と認識する合図だ。金かかっているのにな・・」
「売れると本気で思っています?」
その時ピカ!と閃光が研究室を包んだ。
「キャア!」
「何だ!」
次の瞬間、ボロボロになったメカ悪役令嬢とメカメイドロボが現われていた。
「ジャニーネ、とベッキー・・・ボロボロだが、良い目をしている。きっと良い主人に出会ったのか?」
「・・・・処分ではなく、ロボ葬をしますか?」
「修復するぞ!」
☆☆☆マリフドルフ家
あれから婚約解消が決まったわ。ベッキーをレディースメイドにしたわ。
「お嬢様・・・」
「あれは何だったのかしらね」
「分からないのです・・・もしかして、精霊様なのかもしれないのです」
年代記に曰く。
マリフドルフ公爵家に令嬢とメイドそっくりな精霊が現われた。
「オ・オダマリナサイマセ・・・オシタイモウシアゲテオリマセンワ!ツン!」
「オジョウサマ、オジョウサマ」
と叫び消えたとだけ記されている。
後の賢者はこの精霊の分類に頭を悩ませたと云う。
最後までお読み頂き有難うございました。




