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乙女ゲームの悪役令嬢に転生したので、攻略対象を犬にしてシナリオを全部バグらせます  作者: かんあずき
聖女編

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6 廊下は走るな

リリーは廊下を走って、走って、そして予定通り??


「ああっ!」


ほら転ぶ。

わたしは頭を抱えた。


だが、助けに入ると思っていたアーサーは、思わず数歩後ずさってしまい、わたしは目を見開く。


ずざっ!!

頭からヘッドスライディング!


「あっ!ご、ごめん。リリー、大丈夫?」


アーサーは予想以上のリリーの転倒に慌てて手を差し出した。


「ひどいよぉ、アーサーぁ。わたしがドジっ子だからって、体をわざと引くなんて呆れちゃったの?」

「ち、ちがうよ。呆れてないよ。ごめんね。」


わたしが、洗脳恐るべしと呆れる中、リリーが、顔から地面にぶっ飛んでいるのを、アーサーは急いで引き上げる。


「おい、何やってるんだよ、アーサー!大丈夫か?リリー!怪我はないか?」


クルトが急いで廊下を猛ダッシュ!

だから廊下をなぜ走る?

ここの奴らはオツムが弱いから、マナーも知らないのね。

極悪令嬢のキャサリンですら、マナーは身につけているのに......


ため息をつく甲斐もないわ。


「うん、大丈夫だよ。アーサー、ごめんね。目の前にキャサリンさんがいたら助けられないよね。大丈夫、わかってるんだ。キャサリンさんは、私がアーサーと仲良くしているからって許せないんだよ」


悲しげに、涙を目に溜めるリリー。


まるで貰い事故のようにわたしはリリーの巻き起こす渦にとり込まれていく。

いや、これは想定内。

なぜ、リリーに睨まれるのかは知らんけど。


「そうなのか!おい、キャサリン!お前、なんなんだよ!」


クルトは、私に向き合いドンッっと突き飛ばす。

おっと!


もちろん、わたしは記憶のパターン通り吹っ飛ばされてみせますわ。

ただ......


「ああっ!」


ずさっ!床に吹っ飛ばされるわたし。

ちょっと、予定外にこのキャサリン体重が軽すぎるわ。

違うか?クルトがマジの馬鹿力なのか?


「アーサー、クルトさんという方は、弱い方に優しい方ではなかったんですの?」


私はとりあえずアーサーにクレームをいれてみる。


「お前が弱いリリーを虐めるからだ。」


クルトが拳を震わせ、顔を真っ赤にしてぶるぶる震えている。

ははーん、偽正義ね。

そっちが、その手なら......


わたしはポロリと涙を流し、聞こえよがしに床に倒されたまま泣き叫ぶ。


「私、記憶を取り戻すために学園に来ましたのに。こんなふうに、いつも皆様から暴力を振るわれていましたのね」


「な、な...」


クルトが、ギョッとしたようにわたしを見る。


「アーサー様、わたしは記憶もなくて、誰が誰かもわからないのに、誰を虐めたのでしょうか?」


震えるふりをしつつ、しっかりと目の端にアーサーを捉える。


クルトが弱いものに優しいっていうのも、聞いて呆れるし、キャサリンが今までどんなに極悪令嬢だったとしても、やり方が手慣れすぎていませんこと?


「うるさい!そんなのお前がリリーをいじめたのは明らかだろうが」


ほら見てごらん。

わたしが言った通りに、何の根拠もなく言い返してくるでしょうよ。

おそらく、100%キャサリンはこうやって普段から言われてるわよ。


怒りに震えるクルトを前に、わたしの怒りも最高潮。


んなわけあるか!


マジで心で呆れ、涙を流し女優になる。


「私が??リリーさんを?ところで、リリーさんとは誰ですの?」


「は?」


アーサーは、決まりが悪そうに下を向く。


事前にこのパターンが来ますと伝えておいたものが、恐ろしいほどにドンピシャその通りになっている。


そろそろ、今までのこのリリーのトラブルパターンを知ったようだ。


「ええっ!キャサリンさん、記憶喪失なんですか?私が責めたってそういうアピールがしたくて記憶喪失を?ひどい!」


「お前!そういう魂胆か!リリーをどれだけ責めたら気が済むんだ!」


「キャッ!」


クルトは、怒りのあまり私の髪を引っ張る。


「おい!やめろ!クルト!何やってるんだよ」


アーサーとクルトが取っ組み合いを始める。

二人は思いっきり殴り合う。


バギッ!

ドカッ!


ええと、誰のためにお互い殴っておられるのかしら?

わたしはだれに加勢すべき?


「二人とも!私を守るために喧嘩なんて嫌だよ!」


あっ!二人ともあなたのためなのね。

じゃあ、静観でいいわ。

だけど......本当にそうなのかしら?


「リリーさんとおっしゃったかしら?この喧嘩はあなたのための喧嘩なの?」


「そうよ。二人とも私を大切にしてくれるお兄さんのような存在なのだから」


そう勝ち誇ったかのように言うリリーに私は大きく頷いた。


「そう、では、私が今怪我を負わされているのは誰のため?」


わたしは、リリーに聞く。


先ほど突き飛ばされたところが、腫れている。

受け身は習ってないみたいね。

やれやれ、こんな綺麗な脚になんてことするんだ。


「やめろ!リリーを責めるな。お前がリリーを責めるから、俺が突き飛ばしたんだ」

「なるほど。では、これはリリー様のためにやった行為?」

「当たり前だろ!!」


クルトは怒鳴りながら返答する横で、アーサーが頭を抱えている。先にこのパターンも教えておいたからね。


「では、これはリリー様が望まれた行為というわけですね」

「な、なにを!お前がアーサーとリリーの邪魔をしなければこんなことはしない。」

「私が、アーサー様とリリー様の邪魔をしたら、この行為が許されるのはなぜなのでしょう?アーサー、わたし、記憶がないから教えてくださる?」

「い、いや!許されない!言い訳がない。だって、君は私の婚約者で、わたしが別の女性と真実の愛を語っていたら、邪魔をするのは当たり前だ」


アーサーがあわあわとしている。

わたしはふーっと息をついて、アーサーに伝える。


「アーサー様、もう一度根本を皆さんの前でお伝えしましょう。キャサリンさんは、あなたのことをどうおもっていたんでしたっけ?」


「キャ...キャサリンは俺のことを...好きじゃなかった」


「そうでしたわね。婚約破棄も受け入れている。それなのに、あなたとリリー様の間を邪魔した上に、わたしは怪我をしている理由は、リリー様が望まれたことだと、クルト様は言うのですけど?」


その頃には、人だかりができていた。


「王子が別れたいと言っていたキャサリンと別れてやらない上に、浮気したってさ」

「可哀想!キャサリン様、怪我しておられるわ」

「クルトのやつが突き飛ばしてるのを見たぞ。」

「あの平民が指示したってさ」


あら?リリー様は平民なのね。

なるほど...これは、優秀で、みんなから妬まれて虐められているヒロインを、男7.8人で守るアレですわね。


あら?

アレ...って何でしたっけ?







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