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乙女ゲームの悪役令嬢に転生したので、攻略対象を犬にしてシナリオを全部バグらせます  作者: かんあずき
聖女編

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2 真実の愛とは浮気の別名です

「まだうちのキャサリンを追い詰めようとされるおつもり?」

「結婚は王家と我が公爵家の協定の証のようなもの。それを公衆の面前で破棄したことへの覚悟は当然しておられるのだろうな?」


二人の罵声が、コレでもかと屋敷中に響いてくる。


わたしは周囲が止めるのも聞かずベッドから出てきていた。

久しぶりに歩くんだろうけど、全くふらつきもない。

なんてご都合主義!


「へぇ、王子にここまで言えるってことは、相当この家の力関係は強いのね」


どんな顔なのか拝んでやろう。


大階段の柱の影から──


ヒョイっと


刺繍の入ったシルクのナイトガウンをはためかせながらそーっと様子を見る。

柱が邪魔だわ。

もう少し...前へ。


二人から一方的に責められている男は。


あら?


「めっちゃ、顔が良いじゃないの?」


なんだ?

キャサリンひどくない?

王子じゃなければ価値はないのかと思ったけど、顔もいい王子じゃないの。

せめて顔と身分だけ...と顔もつけてあげたらいいのに。


でも、浮気男なのよね?

どんなに顔が良くても、3日みたら飽きるというわよね。


「たしかに、いい顔だけど、婚約者というからには長い関係なんだし、顔に価値はないと判断したんでしょうね」


うーん?キャサリンって極悪だったのかしら?


顔は良くても、中身がクズで、王子という肩書きしかないってちゃんと見抜いてるじゃないの?


結構、的を得た目をしてるのかもよ。

すごいじゃん、わたし♡





その王子の目が、柱から更に覗き込もうとそーっと階段まで出てきた私を捉える。


「あっ!ああ、きゃ、キャサリン.......具合はどうだろうか?」


慌てて声をかけられる。

ああ、バレたか。


こんな格好だけど渋々下に降りていく。


「すいません?こちらの方は?」

私は、眉を顰めて両親の方を向いた。



念のため聞いておこうかしら?



だが、それがどうやらいつもと違う反応で、余計にこの両親を煽ったらしい。


「お前のせいで!キャサリンは!くぅ、キャサリン!!」

あー、お父様泣き始めたわ。


「どう責任取ってくださるの?あなたのせいで娘は記憶をなくしてしまったのよ」

お母様、扇子を折ったわよ。



目の前の男は、大袈裟に額に手を当て、くらりとよろめいている。


「う、嘘だろう...キャサリン、本当は、わかっていて困らせようとしているんだろう?な、そうだよな?」


縋るように私に寄ってくるので、触られるの嫌だわと二人の陰に隠れた。

そして、追ってきたナタリーから厚手のガウンを受け取り、男の言葉に首を傾げる。


「なんで、私は困らせなければなりませんの?」

「そりゃ...その......真実の愛の邪魔を...」


ガウンを着て、もう一度この男を見つめてみたけど...


あらあら、モゴモゴし始めたわよ。

浮気してるんだから、せめてみんなに平等に堂々と浮気したと言えばいいのに。


コレは、別れて正解。

わたしは記憶喪失だと言ってるのに、そこにいちゃもんつけるってどうなのかしらね?


「わたしはキャサリンというらしいの。あなたのお名前は?質問をちゃんと返してくださるかしら?」


「わ、私はアーサーだ。この国の第一王子で、その、先日まで君の婚約者...だ」


「なんか、歯切れ悪いですわね。お父様、お母様、この人は、私の元婚約者なのかしら?」


私は眉を顰めて、露骨に嫌な顔をする。


キャサリンはぶっ倒れるほどショックを受ける言われ方をされたわけよ。

それなのに、力が強いものの前ではウジウジと。

ああ、嫌だわ。


その顔を見て、お父様が私を背に庇う。


あら?こういうのがいい男って言うのよね。

妻と娘を守る父──キャサリンはちゃんといい男を身近で見てきてるんだわ。


「こっちが聞かせていただきたい。国王からは何も聞かされてない一方的な解消なのだから、当然それなりのことをさせていただこう」


あら?それなりって?

なんか、お父様が権力チラつかせ始めた。

わくわくして、笑顔で聞いてみる。


「あら、どんなことができるんですの?お父様?」


「そうだな、まずは経済封鎖だ」


お父様は髭をピョンと伸ばして、背筋をずっと伸ばした。


「そ、それは...」


アーサーは、あわあわし始める。


経済封鎖、なんかすごい響きですわ。

これは、私の記憶にないパターンな気がします。


「アーサー王子?うちは、王家に多額の融資をしております。それは、娘が嫁いだ時に、けっしてひもじい思いや、様々な行事の格が落ちたと民から言われないため。嫁がない家へ融資をするぐらいなら、我が領土、領民にお金をしっかり使った方が良いでしょう?」


自慢げにふふんと微笑むお父様。

お母様、なかなか目が高くてよ。

こんなふうに言ってくれる旦那がいいわ。


だが──


「あなた、ぬるくってよ」


ヒールをカツカツといわせ、カッとお父様を睨みつける。

そして、壊れた扇子で王子の顎をくいっと上げさせるのがお母様。



「娘がみんなの前で恥をかかされましたのよ。更に記憶がなくなるまでのショックを与えられたんです。こちらも、それ相応のショックを与えなければならないんじゃなくて?」


うわぁ、これぞ元祖悪役令嬢。

なるほど、この二人の娘がキャサリンなわけか。


「お母様、どんなショックを?」


キラキラした目でわたしは問いかける


これも、念の為聞いておこうかしら?


「兵糧攻めですわ!公爵領を通る商隊は全て足止めです。もちろん、王都への食糧制限も行いますので、王宮も王都も食糧危機に陥りますもの。プチショックになるでしょう」


プチ...プチショック...

なるほど。


でも......でもねえ

関係ない民から、こっちまで非難されたら国外追放になりそう。

もしくは、民を苦しめた悪女としてギロチン...


それは嫌だわ。

ブンブンと頭を振る。


「あの、アーサー様は、どのように私に言ったのかしら?」


それだけのことをしてるのかしら?

そこをもう一度明確にしたいわね。


「あ、ああ。キャサリン、申し訳ないが、わたしはリリーと真実の愛に目覚めたんだ。だが、君はそれを納得せず、リリーに嫌がらせばかりしてきた。それを注意して婚約解消したいことを伝えたんだ」


ふむ...やっぱりオツムが弱かったか。


「......ええと、お父様、お母様、わたし心配ですわ。」

私は、最大限悲しそうに両親に伝えてみることにした。



「ああ、こんなことを平然と言う奴はおかしい。」

お父様が、わたしの肩に手をおく。


「ええ、だって、要は浮気です。それを真実の愛とか訳わからない言葉に置き換えた上に、浮気を納得しないから詰るって、私の記憶にある言葉で言うならクズですわ」


「なっ!クズ!!」


「ええ、大体、私がその浮気相手に嫌がらせするなんて、おかしいと思いますの」


わたしは小首を傾げて、指を顎に乗せた。


「だって、メイドがいうには、あなたは、王子以外取り柄がないと思っていたらしいんですの。」


「王子以外取り柄が.......だ、だから、君は王妃になりたくて...」


慌てたようにアーサーが、私に瑕疵があったように説明を続けようとする。、


「でも、我が家が手助けしないとダメな王家なのよね。だから、王家に入りたいというより、家と家の結婚で仕方ないけど、誰が王子じゃなければ嫁ぐものかという意味じゃないかしら?だって、あなた顔は悪くないのに、その顔すらいいと思わないほどわたしに嫌われていたみたいよ」


私は無表情に、気の毒そうな声でアーサーに事実を述べる。嘘、偽ったって仕方ない。

キャサリンがあなたを想っていた証拠が何もないんだもの。


「な!!」


アーサー王子は口をぱくぱくさせている。


「ねえ、お父様。浮気を真実の愛といい、認めないと怒るぐらいです。下手をすると、私は冤罪をかけられて国外追放になって酷い目に遭わされてもおかしくありませんわ。」


口を手で押さえ、今度は本当に悲しそうに、何が何でもこのアーサーとの縁切りを依頼することにする。


こういうのは、関わったらダメな人種だ。


「そうね。すり替えがお上手のようだし」


お母様も、すっかり眉を顰めて、アーサーを睨みつける。


「だって、私が浮気相手に嫉妬すると思い込むほど自意識過剰なんですもの。とりあえず、婚約解消させていただきたいわ。」


アーサーは慌てている。

何慌ててるんだよ!

お前の希望通り、婚約解消するからその良いだけの顔を見せるんじゃないわよ!


「ち、ちがうんだ。キャサリン聞いてくれ!俺は真実の愛を見つけたんだ。でも、見つけただけなんだ!!」


「はい?」


この王子、やっぱり本当に頭も悪かったのか...

救いがいがないな。


「浮気相手じゃないんだ。まだ、浮気にすらなってないんだ。」


は......い?


「え?つまり、勝手に片思いして、真実の愛と言っているってこと?」


「脈はあるんだ。でも、浮気まで至ってないんだよ!!」



王子の周りはシーンとなり、わたしはぶるっと震える。

寒い!寒すぎる!


なんか床から激しい冷気がして凍りつく感じ。

お父様、お母様。

この世に魔法があるなら、その床は凍っていてもおかしくない冷たさ。


だけど......


「あんた、本当にヘタレね。そこまでやって、その女をモノにしてないわけ?」


思わず、両腕を腰に当てて、思わずわたしはため息をついた。









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